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出生前診断

新型出生前診断で分からない障害―性染色体疾患について

新型出生前診断を受ければ、おなかの赤ちゃんの遺伝子に異常があるかどうか分かると考える人は多いでしょう。実は検査で分かるのは、3つの遺伝子の病気のみです。この記事では、新型出生前診断と関連のある染色体や、分からない障害について紹介します。

新型出生前診断とは?メカニズムについて

新型出生前診断は、妊婦さんを採血して胎児由来のDNAを解析する検査です。新型出生前診断を受けると、おなかの赤ちゃんに特定の先天異常があるかどうかを確認できます。

先天異常は、赤ちゃんが生まれつき持っている病気が障害のことをいいます。新型出生前診断を受ければ、赤ちゃんの先天異常がすべて分かると考える人も多いでしょう。

実際に検査で分かるのは、一部の遺伝子の病気となります。ここで、新型出生前診断で分かる病気を知るのにポイントとなるのが、染色体です。以降では、新型出生前診断とかかわる染色体の仕組みや、分かる障害と分からない障害についてみていきます。

遺伝子についてー新型出生前診断をより理解する

人間の体は60兆もの細胞で構成されており、1つ1つに染色体が存在します。染色体には、遺伝情報を持つDNAが存在しています。遺伝情報は親から子へ受け継がれるもので、見た目の特徴や病気のなりやすさを決定します。

分かりやすく説明すると、染色体を一冊の本とするならば、DNAは文字、遺伝情報は文章のようなものといえます。

染色体は2種類ある

ここで高校の生物の授業を思い出してみましょう。遺伝情報の詰まった染色体は常染色体と性染色体があります。染色体は合計46本あり、それぞれペア(対)になっています。

常染色体は22対あり、性染色体は女性がX染色体の対(XX)、男性がX染色体とY染色体の対(XY)になります。

染色体が遺伝に及ぼす影響

子どもが父親と母親の両方の遺伝的な要因を受け継ぐことは、誰もが知っているでしょう。卵子と精子の染色体は対になっておらず、卵子は22本の染色体とX染色体、精子は22本の染色体とX染色体またはY染色体のいずれかになります。

受精が起こったときに、卵子と精子の染色体が対になり、胎児の遺伝要因を決定します。しかしながら、受精時に両親から1本ずつもらうはずの染色体が2本であったり、欠けてしまったりなど異常が起こることがあります。
すると、胎児の染色体に異常が生じて、遺伝子の病気や障害を持って生まれるのです。

新型出生前診断で分からない障害がある

新型出生前診断は、主に常染色体の数の異常である、以下の病気の可能性について分かります。

  • 21トリソミー(ダウン症)
  • 18トリソミー
  • 13トリソミー

トリソミーは1本余分にある染色体をいい、対の2本ではなく合計3本の染色体がある状態をいいます。トリソミーの前の番号は、常染色体の番号を指しています。

先天異常のうち、染色体による病気は約 25%を占めるといわれています。そのうち、21トリソミー(ダウン症)の割合は53%、18トリソミーは13%、13トリソミーは5%と、染色体異常の約70%を占めます。

新型出生前診断で分かる染色体数異常は限定されているものの、主な病気については知れるといえるでしょう。

出典:昭和大学医学部産婦人科学講座/出生前診断 より
http://jsog.umin.ac.jp/70/jsog70/2-1_Dr.Sekizawa.pdf

性染色体の異常による病気―新型出生前診断で分からない障害

新型出生前診断の対象とならないのが性染色体異常です。性染色体疾患は、遺伝子の病気の中でも5%を占めます。

以降では、新型出生前診断では分からない障害である、性染色体異常による病気を挙げていきます。

クラインフェルター症候群

生まれた男児の500人に1人にみられ、最も頻度の高い性染色体異常です。男性の性染色体は「XY」ですが、クラインフェルター症候群では、1本以上の余分なX染色体を持ち、「XXXY」などがあります。余分なX染色体は母親由来のものであり、高齢出産が要因となることがあります。

クラインフェルター症候群の特徴的な症状は、体に女性らしさが現れることです。小さいうちは、普通の男の子と変わらないため、気づかれにくい特徴があります。

一方、思春期を迎えると、第二次性徴による男らしい発達に問題が起こり、筋肉や体毛が十分に発達しません。また精巣が発達しにくく、生殖能力がないことがほとんどです。

反対に、女性のような胸の膨らみが現れるようになります。そのほかにも、身長が高く、手足が長くなる傾向があります。

クラインフェルター症候群の治療は、テストテロンを使ったホルモン補充療法を行います。また、知能に問題がある場合は、言語療法を行うこともあります。

ターナー症候群

ターナー症候群は、生まれた女児の2500人に1人にみられる性染色体異常です。先に説明したように、女性の性染色体は「XX」になります。ターナー症候群では、2本あるべきX染色体のうち、片方の一部や全体が欠けていることによって引き起こされる病気です。なおターナー症候群は、母親の高齢出産による影響はありません。

ターナー症候群の主な症状には、低身長や性的成熟の遅れがあります。身体の特徴的な症状として、手や足の甲のむくみ、首の後ろの腫れやたるみ、首の横の皮膚が余る(翼状頸)などがみられます。

また、ターナー症候群の女の子の多くは、ADHD(注意欠如・多動性障害)や学習障害がみられます。知的障害はないため、言語の知能は平均以上になりますが、数学など特定の科目の点数が低くなることがあります。

ターナー症候群に対する根本的な治療はありませんが、思春期が来るようにホルモン療法などが行われます。

トリプルX症候群

トリプルX症候群は、生まれた女児1000人に1人にみられる性染色体異常です。女性の性染色体は「XX」ですが、トリプルX染色体はその名前の通り、1本余分なX染色体が存在し、「XXX(Xトリソミー)」になります。余分なX染色体は母親由来のもので、高齢出産でリスクが高くなります。

トリプルX症候群は、身体的な異常はほとんど起こりませんが、人によっては月経不順や不妊症になることがあります。知能がやや低くなるため、言葉の発達が遅れたり、学校等の社会生活で問題が起こったりするケースもあります。

XYY症候群

XYY症候群は、生まれた男児の1000人に1人の頻度でみられる性染色体異常です。男性の性染色体は「XY」ですが、XYY症候群ではその名前の通り、1本余分のY染色体があります。

XYY症候群の身体的な特徴は、身長が高い点です。知能はやや低くなりやすく、言語の問題を抱えることがあります。また、ADHDや学習障害が現れるケースもみられます。

以前まで、XYY症候群は攻撃的で犯罪を起こしやすいと考えられていましたが、近年ではこの行動に関する説は否定されています。

まとめ

新型出生前診断は、妊婦さんへの採血によって胎児由来のDNAを解析することで、染色体異常の有無の可能性を知ることができます。検査では、先天異常の7割を占める常染色体数の異常である3つの病気が分かります。

その一方で、新型出生前診断では性染色体異常など分からない障害もあります。検査を検討している人は、今一度分かる障害と分からない障害について確認してみましょう。

ABOUT ME
原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴 2005年 国立大学看護学部卒業 取得資格 看護師、保健師