2023.06.12

出生前診断

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p欠失症候群)とは?原因や症状について解説

妊婦さんの中には、お腹の赤ちゃんの健康について気になっている人もいるのではないでしょうか?生まれつきの先天異常に、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群という病気があります。

この記事では、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群について解説しています。病気の症状や原因、治療法について知りたい方は参考にしてみてください。

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ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは、染色体の異常によって起こる遺伝疾患です。染色体の異常がある部分にちなんで、「4p欠失(よんぴー)症候群」ともいわれています。病気の頻度は出生5万あたり1人で、患者数は1000人以下と推測されています。男女比は1:2で、男児よりも女児にみられます。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の主な症状には、特徴的な顔貌や成長障害、重度精神遅滞、筋緊張低下、難治性てんかん、摂食障害があります。遺伝疾患であるため根本的な治療法はありませんが、状態に合わせた治療やリハビリを受ける必要があります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の症状

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の主な症状として挙げられるのが、特徴的な顔貌です。個人差がありますが、鼻筋が幅広く、目が離れ気味で、おでこが広くなります。

また、眉毛は弓なりのカーブがあり、人中が短く、口角が下がり気味であることが多いです。全体的に頭が小さいめで、顎も小さくなります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群では、赤ちゃんが子宮にいる時から成長障害がみられます。筋肉がしっかりしておらず、程度に差はありますが、運動機能や発達に遅れがみられます。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の合併症

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群ではさまざまな合併症がみられます。けいれんは半数以上にみられ、骨格異常は60~70%、心疾患が30~50%、脳の構造の異常が30%、聴覚障害が40%以上の割合でみられます。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の原因

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は「4p欠失症候群」という名前もあるように、4番染色体の短腕(p)が欠けていることによって起こります。染色体は23種類あり、それぞれ番号が振られています。1本1本の染色体は、真ん中あたりにくびれがあり、くびれを境に短い部分を短腕(p)、長い部分を長腕(q)があります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは、4番染色体の短腕の欠失によって起こりますが、具体的にどの部分の欠失が特定の症状と関連しているかまでは明らかになっていません。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は遺伝する?

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の過半数は、遺伝子の突然変異によって起こります。そのため、どの家族でもウォルフ・ヒルシュホーン症候群の赤ちゃんが生まれる可能性があります。

一方で、「不均衡型相互転座」が原因で病気になることもあります。不均衡型相互転座とは遺伝子のアンバランス(不均衡)によって起こります。不均衡型相互転座が起こりやすいのが、両親のいずれかの遺伝子が「均衡型相互転座」である場合です。

均衡型相互転座は、遺伝子の一部が入れ替わっている状態で、遺伝子の過不足はないため、本人の健康に問題は起こりません。しかしながら、卵子や精子を作る際は、2対である染色体が1対になるため、遺伝子にアンバランスが生じやすくなります。

両親のどちらかが均衡型相互転座の場合、赤ちゃんがウォルフ・ヒルシュホーン症候群を発症する可能性は数~十数%とされていますが、流産する可能性もあります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の治療法

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は遺伝疾患であるため、根本的な解決を目指す治療法はありません。病気に対しては、症状の緩和やコントロールを目指すための対症療法が行われます。合併症で心不全やてんかんがあれば、内服による治療を行います。

また、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の子どもは発達の遅れがみられることが多いので、療育訓練を受けることが大切です。作業療法や言語療法を通じて、社会性を身に付けたり、理学療法で体に良い刺激を与えたりすることができます。

なお、自分やパートナーが均衡型相互転座の遺伝子を持っている可能性がある方は、検査を受けてみるのもよいでしょう。検査結果によっては、妊娠や出産にあたって、専門家による遺伝カウンセリングを受けるのもおすすめです。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の経過

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の患者さんにみられる症状は、個人差があります。そのため、病気の経過は、合併症の程度や治療によっても異なります。

日常生活では、病状に合わせた治療やリハビリを受けることが大切です。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群を持つ人の多くは、コミュニケーションへの意欲があるため、ジェスチャーやサインを使った意思疎通を図れることもあります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の検査

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群かどうかを調べる検査は、遺伝子検査によって調べることができます。特徴的な顔貌や成長障害などの症状からウォルフ・ヒルシュホーン症候群を疑い、遺伝子検査を行うこともあります。

遺伝子検査では遺伝子の配列を確認しますが、方法によって、原因となる染色体の欠失を検出できる度合いは異なります。蛍光物質をつけたプローブ(ターゲットとなる遺伝子と相補的な配列を持つ遺伝子)を使ったFISH法を用いると、95%以上の確率で検出できます。

NIPT(新型出生前診断)について

妊娠中にウォルフ・ヒルシュホーン症候群の可能性を調べる検査には、NIPT(新型出生前診断)もあります。NIPT(新型出生前診断)は妊婦さんの血液

中に含まれる胎児のDNAのかけらを調べる検査です。

NIPT(新型出生前診断)は、日本医学会などが認可した認可施設と、非認可施設で受けられます。受験される方は半々ぐらいで受けられているという統計があります。認可施設では、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの3つの遺伝疾患のみの可能性を調べるため、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群について調べることはできません。

DNA先端医療株式会社のNIPT(新型出生前診断)は、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群についても調べることができます。

また、検査で陽性となった場合は、確定診断をするためには羊水検査などの精密検査を受ける必要があります。

※DNA先端医療株式会社では、陽性になった場合、確定診断をするための羊水検査代を全額負担しております。

NIPT(新型出生前診断)の検査は採血だけで受けられますが、検査結果によっては妊娠の継続を悩まれる方もいらっしゃいます。遺伝カウンセリングや受験後の方針をよく検討した上で、NIPT(新型出生前診断)を受けることが大切です。

まとめ

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は、4番染色体の短腕が欠けていることによって起こる遺伝疾患です。遺伝子に異常が起きる原因の半数以上は突発的に起こるものですが、両親のいずれかが均衡型相互転座の遺伝子を持つ場合は、子どもがウォルフ・ヒルシュホーン症候群を発症することがあります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の症状は、特徴的な顔貌や成長障害のほかに、さまざまな合併症を有することがあります。子どもの病状や発達に合わせて、必要な治療やリハビリを受けることが大切です。

参考:
奇形症候群|ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(平成22年度)
4p欠失症候群

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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