2021.06.04
妊娠
妊娠のごく初期に少量の出血が起こることがあり、戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。妊娠初期の出血は(妊娠初期にはまだ妊娠の事実に気付いてない人も多いですが)、なにか異常があるのではないか気になりますよね。
この記事では、妊娠初期に出血が起こるメカニズムや原因、妊娠初期の出血で注意したい例について解説します。
妊娠初期にみられる出血の多くは、着床出血と呼ばれる生理的な出血です。着床出血は妊娠4〜11週頃にみられる出血です。時期によっては本人も妊娠の事実に気付いていないことも多いでしょう。基礎体温を計測している女性の中には、妊娠の可能性に気付いている人もいるかもしれません
着床出血は、受精卵が子宮内膜に着床することによって起こる少量の出血です。以下の項目では、着床出血以外の妊娠初期にみられる出血について解説してゆきます。
着床出血は、妊婦さんの約3割にみられるもので、妊娠に際して必ずみられる症状ではありません。妊娠によって起こる着床出血の仕組みについて説明します。
排卵期に卵巣から出た卵子は、精子と出会って受精卵となります。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管から子宮内へと移動していきます。子宮にたどり着いた卵子が子宮内膜に入り込むことを着床といい、ここで妊娠の成立となります。卵子が受精して子宮内膜に着床するまで、およそ5~7日かかります。
受精卵が子宮内膜に根付くのは胎盤を形成するためで、受精卵は子宮内膜に絨毛という組織を伸ばして根を張ります。この際に子宮内膜の血管が破れることによって、少量の出血が起こることがあり、着床出血と呼ばれています。人によっては、妊娠初期の着床出血で、お腹の痛みを感じることもあります。
着床出血そのものは異常ではないので、赤ちゃんの元となる胎芽が問題なく成長していれば、そのまま経過観察となります。とはいえ、妊娠初期は出血しやすい時期なので、自宅で安静して過ごすようにしましょう。
妊娠初期の出血には種類がありますが、その多くは着床出血です。着床出血がみられた場合は、医療機関で流産の心配がないと分かれば、安静を指示されることがほとんどです。
安静といっても、着床出血であれば、1日中寝室で横にならなければいけないわけではありません。入浴や家事など日常生活の行動であれば、制限なく行えます。運動や性交は控えた方がベターですが、デスクワークなど体に負担がかかない仕事なら、行っても問題ないでしょう。
仕事を休む必要がある場合は、医師が着床出血の診断書を作成することが可能です。着床出血がみられる場合は、旅行は体に負担がかかるので控えるようにしましょう。
妊娠中の出血というと、流産をイメ―ジする人も少なくないかもしれません。妊娠中の出血の8割を占める着床出血は受精卵が子宮内膜で胎盤を形成する際に、生理的に起こる出血であるため、流産を意味するわけではありません。妊娠初期に着床出血がみられても、反対に着床出血がみられなくても、妊娠中に流産する確率は変わらないといわれています。
一方で、妊娠初期は流産する確率が高い傾向があります。妊娠中に流産する確率は全体の15%(厚労省資料 8頁目(pdf10頁目))ほどですが、妊娠初期の流産の場合は、女性が妊娠している事実に気付いていないケースも多くあります。
妊娠中に流産が起こると、妊婦さんの過ごし方が悪いと考えられがちですが、妊娠初期の流産のほとんどは、胎児が一定の確率で持つなんらかの異常によって起こることが明らかになっています。
着床出血は異常ではない妊娠初期の出血ですが、出血が着床出血によるものなのか、そうでないものなのか判断しにくいことがあります。一般に、着床出血でみられる血液量はごく少量です。色は赤や茶色であることが多く、出血がごくわずかな場合、おりものに血液が混ざってピンク色のおりものがみられることもあります。出血が茶色なのは、古い血液で出血から時間を経ていることを意味します。
着床出血の量は少量であるものの、トイレ時にティッシュに付着する程度のものから、下着が血液で染まるもの、レバーのような血の塊が出るものなど、人によってさまざまです。
着床出血の有無によって、流産の確率が変わらないのと同様に、着床出血そのものの色や量によって、流産の確率が上がるわけではありません。着床出血がみられても、過剰に心配することなく、安心して過ごすようにしましょう。
一方で、着床出血以外の何らかの異常によって妊娠初期に出血が見られることもあります。妊娠初期の出血でも、出血量が多かったり、出血がダラダラ続いたりするときは、医療機関を受診することが大切です。以降では、着床出血以外にみられる妊娠初期の出血についてみていきます。
妊娠初期の出血が着床出血であれば経過観察となりますが、妊婦さんによっては、なんらかの異常により出血量が多いケースがみられます。妊娠初期の出血が多い場合に考えられる症状や疾患には以下のものがあります。
また、妊娠とは関係なく、子宮頚管ポリープや膣炎など女性器の病気によって、妊娠初期に出血がみられることもあります。
妊娠初期にみられる出血の8割は、妊婦さんの子宮内膜に受精卵が入り込むことによって起こる生理的な出血です。妊娠時の出血は流産と考えがちですが、着床出血であれば、おなかの赤ちゃんに問題ありません。
一方で、妊娠初期でも妊娠中の異常によって出血がみられることがあります。妊娠初期に大量の出血や少量の出血がダラダラ続く場合は、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。
足立明彦先生
赤十字病院副部長・国立大学非常勤講師。首都圏の徳洲会やセンター病院での勤務歴もあり。妊娠初期に絨毛膜下血腫を患った家族を看病していた経験もあり、妊娠初期の出血には特に詳しい。学歴:2003年 薬学部卒業、2007年 医学部卒業、2014年 大学院修了。取得資格:薬剤師、医師、博士(医学)、複数分野の専門医・指導医。
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