2023.12.14

妊娠

着床出血はいつ起こる?生理との違いや症状について解説

着床出血はいつ起こる?生理との違いや症状について解説

着床出血と生理は時期が近いため、どちらの出血か疑問に思う方も多いです。また妊娠の着床出血ではなく、不正出血の可能性も考えられます。今回は着床出血と生理との違いや症状、不正出血の原因と症状について紹介します。

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着床出血とは?

着床出血とは、妊娠初期に起こる出血のことです。出血がありびっくりする、心配になる方も多いかと思いますが、決して異常な出血ではありません。着床出血は妊婦全員に起こるわけではなく、着床出血が見られる割合はおおよそ4人に1人程度と言われています。

着床出血のメカニズムについて説明します。

受精卵が着床する際、受精卵から伸びた絨毛が、子宮内膜を傷つけてしまい、出血となることがあります。これは受精卵が子宮内膜に定着するための出血であり、胎盤を形成するためです。

着床出血はいつ起こる?

一般的に、着床出血は妊娠3〜4週目あたりに起きると言われています。生理周期が28日の場合、次の生理予定日の1週間前〜2・3日前後で見られることが多いです。

排卵日に精子と卵子が出会った場合、受精までは約48時間から72時間(約2~3日)程度かかると言われています。

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管から子宮へ向かって移動し、受精から5~7日後ごろで着床が開始します。

受精からおおよそ12日程度で着床は完了しますが、着床出血は着床開始〜着床完了までの期間に起きます。

ちょうどこの時期が妊娠3〜4週目あたりで、生理予定日の2〜3日前後で着床出血がある場合もあるため、生理の出血と勘違いする方もいらっしゃいます。

着床出血と生理との違いや症状

着床出血と生理は、時期も似ていることから、どちらの出血か分からない、と不安に思う方も多いです。着床出血と生理の違いや症状について解説します。

出血量や色

着床出血の場合、生理の出血と比べて量は少ない事が多いです。大体の人はショーツが汚れる程度やティッシュで拭き取ることができる程度、まれにナプキンが必要なくらいの人もいますが、数回の取り替えで終了することが多いようです。

出血の色や性状も違いがあります。

着床出血の色はおりものに血が混ざったような薄い赤、ピンク色の場合や、鮮血のような真っ赤な色、時間が経過した場合は茶色っぽい色が多いです。

性状はさらっとしているか、おりもの程度の粘性がほとんどです。

生理の出血の場合、いわゆる血の色(暗赤色)でドロっとした血の塊が出ることがありますが、着床出血でドロっとした血の塊が出ることはほとんどありません。

通常の生理の場合、出血量は2〜3日目がピークですが、着床出血の場合、出血量が増えるといったことは少なく、血の塊が出ることもありません。

出血の期間

着床出血の場合、出血は1〜2日程度、長くても4日程度と、生理と比べて期間が短いことが特徴です。ショーツに1回血がついて、生理だと思ったらすぐに出血が止まった などの場合は、生理ではなく着床出血の可能性が高いでしょう。

腹痛などの身体症状

生理痛の場合、生理期間中ずっと腹痛などの症状があるという方もいらっしゃいます。

着床出血の場合、チクチクとしたお腹の痛みを感じる方もいらっしゃいますが、個人差があり、全く痛みがなかったという方もいらっしゃいます。またこの腹痛も、1〜4日程度でおさまることがほとんどです。

生理痛ほど重い痛みではないなら、生理痛ではなく着床出血の症状の可能性があります。

その他妊娠超初期症状として、眠気やだるさ、熱っぽさの症状が見られることもあります。ただしこれらの症状は生理時の症状ともよく似ているため、生理と間違う方も多いです。

基礎体温の変化

一般的に、妊娠していない場合、生理がはじまると基礎体温が下がり、低温期がはじまります。

一方妊娠が成立していると、基礎体温が下がらず、高温期が継続します。これはホルモンの変化によるもので、妊娠が成立すると、卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)が妊娠後期まで増え続け、妊娠の継続を助けます。

高温期が続いている場合は、妊娠の可能性があります。

着床出血以外に、着床したサインはある?

受精卵が着床したときにみられる着床出血は、妊娠のサインともいえます。一方で、着床にともなう出血は非常にわずかであるため、着床出血が見られない人もいます。ここでは、着床出血以外にみられる受精卵の着床サインについてみていきましょう。

生理が来ない

多くの人がご存知のように、妊娠中は生理の訪れがありません。妊娠の成立は受精卵が子宮内膜に着床してからになります。そのため、卵子と精子が出会う受精の瞬間とは異なります。

通常、生理は妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が不要になり、経血として排出されることで起こります。受精卵が着床すると妊娠成立するため、女性ホルモンの分泌が維持されることにより、子宮内膜が剥がれることはありません。

乳房の張る

受精卵が着床すると妊娠成立となるため、胸の張りを感じるようになります。生理前に女性ホルモンの分泌が高まることで、胸の張りを感じる人は多くいるでしょう。

妊娠により女性ホルモンの分泌レベルが維持されると、胸の張りが続きます。また、妊娠週数が進むにつれて、女性ホルモンの分泌がさらに増えるため、胸のサイズがアップしたり、乳頭が敏感になったりします。

熱っぽさ

受精卵が着床後には、体に熱っぽさを感じるようになります。妊娠により女性ホルモンの分泌レベルが維持されて、高温期が持続されるためです。妊娠初期のあいだは熱っぽさを感じやすくなりますが、妊娠中期になると、妊娠の熱っぽさが治まってきます。

この頃になると、赤ちゃんの胎盤が完成して、妊娠を維持する女性ホルモンの分泌が安定してくるためです。

だるさ

受精卵の着床後にはだるさを感じる妊婦さんも多くいます。妊娠初期の熱っぽさと同様に、女性ホルモンの分泌レベルが高まるためです。

特に、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)は、脳の神経に作用するため、だるさを感じやすくなります。人によっては、イライラなど気分の変化を感じることもあるでしょう。

受精卵の着床後のだるさは、妊娠初期のあいだは続きますが、妊娠中期になるとおさまってきます。妊娠が分かったら、十分な睡眠や休息を取りながら、体調に合わせて過ごすようにしましょう。

つわり

着床出血直後ではありませんが、着床出血から2週間ほどするとつわりが現れることがあります。つわりは妊娠にともなう吐き気や嘔吐のことで、妊婦さんの半数から8割にみられる症状です。

つわりの症状には個人差があり、胃のムカムカを感じる程度の人もいれば、吐き気と嘔吐により食事や水分が全く取れない人もいます。妊娠初期の赤ちゃんに必要なカロリーがそれほど多くありません。

そのため、つわりで食事量が少し減っても、赤ちゃんの成長に心配はないでしょう。ただ、妊娠前と比べて5%以上の体重減少がみられたり、水分摂取が十分できなかったりする場合は、医療機関で治療を受ける必要があります。

着床出血以外の不正出血?原因と症状

着床出血や月経以外に出血する場合もあります。不正出血の原因と症状を紹介します。

子宮外妊娠

通常受精卵は子宮内膜で着床しますが、子宮外妊娠は子宮内膜以外で着床します。

異所性妊娠とも呼び、全妊娠の1〜2%の割合で発生するなど、決して珍しくはありません。

子宮外妊娠の症状の1つに出血があります。超音波検査(経膣超音波検査)で子宮以外の場所に胎児が確認できた場合、子宮外妊娠となります。

子宮外妊娠で最も多い場所は卵管で、その他卵巣や腹腔などが子宮外妊娠の場所として挙げられます。大変残念ですが妊婦の身体にも危険があるため、妊娠の継続はできません。

胞状奇胎

胞状奇胎とは何らかの原因で受精がうまくいかず、胎盤を作る組織の絨毛が、つぶつぶのように変化する疾患です。ぶどうの粒のように増殖することから、「ぶどう子」と呼ばれていたこともあるようです。頻度は全妊娠の500-1000回に1回程度と言われており(※③)、こちらも残念ながら多くの場合妊娠の継続はできません。

症状として性器出血や腹痛があり、週数が進んだ場合は高血圧・浮腫・蛋白尿などの症状がある場合もあります。超音波検査で確認をします。

絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫とは、胎囊と子宮筋層の間に血腫(血液がたまること)がある状態で、妊婦の4~22 %程度に見られると報告されています(※②)。

絨毛膜下血腫の症状には性器出血と子宮収縮があり、超音波検査で絨毛膜下血腫の大きさを確認します。

多くの場合が安静などの経過観察で改善しますが、血腫が大きい場合や、不正出血が続く場合は注意が必要です。

子宮内膜症

子宮内膜症とは子宮内膜またはそれに似た組織が、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患です。20~30代の女性で発症することが多く(※①)、女性の約10%程度が子宮内膜症というデータもあります。

出血以外にも、月経痛や下腹部痛、腰痛や、排便痛、性交痛などの症状があります。年齢や妊娠希望に合わせて、薬物療法や手術などを選択します。

子宮膣部びらん

子宮の出口付近の炎症で、若い女性に一般的に見られる状態です。性交や内診などの刺激で出血が見られたり、女性ホルモンの影響で出血がある場合があります。まれに子宮頸がんの初期の場合もあるため、注意が必要です(※④)。

子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮の筋肉組織由来の良性腫瘍で、若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患です(※⑤)。

症状の程度はそれぞれで、不正出血や腰痛、月経過多や月経痛などがあります。子宮筋腫は不妊や流早産の原因にもなります。内診や超音波検査、MRI検査などで診断します。

子宮頸がん・子宮体がん

子宮頸がん・子宮体がんなどの悪性腫瘍にも、不正出血の症状が見られる場合があります(※⑥)。

その他排尿時痛や性交時痛、下腹部の痛みなどの症状がある場合もありますが、無症状の場合もあり、症状には個人差があります。

着床出血があったら妊娠検査薬で妊娠が分かる?

自宅で妊娠を確認するのに用いられるのが妊娠検査薬です。着床出血がみられた人のなかには、自分が妊娠しているかどうか確認している人もいるでしょう。

着床出血は妊娠3週目(次回生理予定日の1週間前)に起こります。しかし、妊娠検査薬で妊娠を判定できるのは、次回生理予定日の1週間後に当たる妊娠5週目からになります。

受精卵の着床後に妊娠が成立しているのにもかかわらず、妊娠検査薬による判定にタイムラグが生じるのはなぜかを見ていきましょう。

妊娠検査薬の仕組みについて

妊娠検査薬は、妊婦さんの尿中に含まれているhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンにより、妊娠を判定します。hCGは妊娠を維持するためのホルモンで、着床してから分泌されるようになります。

しかし、着床出血がみられる妊娠3週目はhCGの分泌量が少なく、市販の妊娠検査薬で検知できません。そのため、妊娠検査薬を早い時期に使うと、妊娠をしていても結果が陰性となることがあります。

妊娠検査薬を使えるのは妊娠5週目から

妊娠4週目になり、受精卵の着床から1週間経つと、hCGの分泌はかなり増えます。ただ市販の妊娠検査薬の多くは、より確実な検査結果を出せるように、「次回の生理予定日から1週間後以降(妊娠5週目以降)」の使用を勧めています。

市販の検査薬のなかには、妊娠4週目から使える早期妊娠検査薬もあります。妊活中などで、着床出血後に妊娠の判定を早めにしたい人は、早期妊娠検査薬を使うのもおすすめです。

妊娠検査薬で陽性になったら

着床出血後、しばらくしてから市販の妊娠検査薬で陽性になったら、妊娠していることが分かります。市販の検査薬で妊娠の判定をしたら、早めに産婦人科を受診しましょう。

産婦人科では尿検査によるhCG測定で妊娠を診断します。妊娠週数が経っている人では、超音波検査(エコー)をおこなうこともあります。 妊娠検査薬だけではおなかの赤ちゃんが子宮内にいるかどうか分かりません。異所性妊娠(子宮外妊娠)でも、妊娠検査薬で陽性となります。着床出血後の妊娠検査薬で陽性になった人は、正常な妊娠かどうか知るためにも、産婦人科を欠かさず受診するようにしましょう。

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着床出血があるときに気を付ける点

着床出血がみられたら、しっかり妊娠を継続したいと考える人もいるのではないでしょうか。

妊娠中にみられる流産の9割は、妊娠12週前に起こる初期流産になります。また、初期流産の原因は、胎児の染色体異常など、赤ちゃん側に原因があることがほとんどです。

妊活中などで着床出血後の生活に注意を払いたい人もいるかもしれません。ここでは、着床出血がみられた注意すべき点についてみていきます。

葉酸を摂取する

着床出血で妊娠の可能性があると分かったら、意識して葉酸を摂取し始めましょう。葉酸はビタミンB群の一種で、細胞の分裂や成熟にかかわる栄養素です。妊娠初期に葉酸の摂取量が不足すると、二分脊椎など神経管閉鎖障害のリスクが高くなることが分かっています。

葉酸が含まれているのは植物性食品や動物性食品に含まれていますが、妊娠初期はサプリメントによる葉酸の摂取が推奨されています。

アルコールとタバコを控える

妊娠が分かったら、お酒や喫煙をやめるようにしましょう。妊娠中にお酒を飲んだり、タバコを吸ったりすると、妊婦さんの血液を介して子宮内膜にもアルコールや有害物質が届き、受精卵の成長に悪影響を及ぼします。

妊娠期間は禁酒と禁煙が必要なので、着床出血後からお酒とタバコを断つようにしましょう。自分1人で禁酒や禁煙ができない人は、医療機関の治療を受けるのもおすすめです。

睡眠をしっかり取る

着床出血後は、女性ホルモンの分泌が高まるため、熱っぽさやだるさを感じる人もいます。体に不調を感じる場合は、無理をせずにしっかり休息を取るようにしましょう。

激しい運動を控える

着床出血後から妊娠初期は、激しい運動を避けるようにします。転倒や接触の可能性があるスポーツは避けた方が無難です。妊娠前から運動習慣がある人は、ウォーキングやスイミングなど、体に大きな負担がかからない運動を選ぶのがおすすめです。

着床出血と妊娠の関係についてのまとめ

今回の記事では、着床出血について、生理との違いや症状について紹介しました。

着床出血は妊娠3〜4週目あたりの出血のことで、おおよそ4人に1人程度の割合で見られます。

生理の出血と違い多くは1〜2日程度、長くても4日程度で、量も少なく、生理のようにドロッとした経血の出血はありません。

着床出血や月経以外に出血する場合もありますが、症状や程度には個人差がある上、着床出血と症状も似ている場合があります。

妊娠検査薬で陽性反応があった場合は産婦人科を受診し妊娠の確認を、それ以外で不正出血や症状が続く場合は婦人科を受診し、医師の指示に従いましょう。

【参考文献】
公益社団法人日本産科婦人科学会 – 子宮内膜症
公益社団法人日本産婦人科医会 – 3.絨毛膜下血腫/ 感染性流産による流産
和歌山県立医科大学 産科婦人科学教室 – 婦人科【絨毛性疾患】
公益社団法人日本産科婦人科学会 – 不正出血
公益社団法人日本婦人科腫瘍学会 – 市民の皆さまへ 子宮筋腫
がん情報サービス – 子宮体がん(子宮内膜がん)
ロート製薬 – 排卵日の基本を解説
新宿駅前婦人科クリニック – 着床出血とは?生理との違いについて

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ABOUT ME

平野香菜子
内科、精神科にて看護業務に従事経験を持つ看護師・保健師のライター。2020年には、食事や運動をはじめとした生活習慣改善のための保健指導などを行う企業保健師としても活動中。 略歴:2016年 美容系専門学校講師、2017年 大学教員(助手)、2018年 看護師、2020年 企業保健師。取得資格:看護師、保健師。

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