2024.06.05
妊娠
妊娠を待ち望んでいる人や月経が予定通りに来ていない人は、いま妊娠をしているのかが気になりますよね。妊娠しているのであれば、1日でも早く結果を知りたいと思う方もいるでしょう。
いきなり病院へ行くのはハードルが高いかもしれませんが、現在では市販の妊娠検査薬で高精度の結果を得ることができます。しかし、妊娠検査薬をどのタイミングで使用したらよいのか、正しい使い方ができているのか不安な方もいらっしゃると思います。
今回は、妊娠検査薬を使うタイミングや使い方について詳しく説明していきます。
妊娠検査薬は、排出される尿の中に含まれるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを検出します。
このhCGは妊娠初期に胎盤の一部(絨毛を子宮内膜につなぎとめている部分:絨毛膜の合胞体栄養膜細胞)から分泌されるホルモンで、受精卵が着床することで分泌が開始されるため、妊娠していない女性では分泌されていません。
妊娠検査薬は、hCGが尿の中に一定量以上含まれていることで陽性反応となります。
妊娠検査薬の値段は1~2回分500~1,000円とお手頃な価格で購入できます。妊娠検査薬を初めて使う人は、タイミングや使い方を誤ったりすることもあるので、2回分の妊娠検査薬を選ぶのがおすすめです。
産婦人科の病院やクリニックでの妊娠検査の費用は、3,000円から5,000円ほどかかります。妊娠は病気ではないので、健康保険が適用されないためです。
市販の妊娠検査薬と病院の妊娠検査薬の違いは精度です。一般的に市販の妊娠検査薬では次回の生理予定日から1週間後に妊娠の有無の判定ができます。
一方、病院の妊娠検査は市販の妊娠検査薬よりも精度が良いため、数日ほど早く判定結果を得られます。とはいえ、市販の妊娠検査薬の精度が低いというわけではありません。
市販の妊娠検査薬は正しいタイミングと正しい方法で使えば、99%の精度といわれています。妊娠検査薬で陽性になったら、産婦人科で定期的に妊婦健診を受ける必要があります。
ただ不要なコストの発生を避けるためには、市販の妊娠検査薬の結果が陽性になったら、病院やクリニックの妊娠検査を受けるという流れにするのがおすすめです。
妊活中の人でなるべく早く結果を知りたい人は、市販の妊娠検査薬の使用を待たずに、医療機関の産婦人科で妊娠検査を検討するのもよいでしょう。
早期妊娠検査薬とは、一般の妊娠検査薬よりも早く使用できる妊娠検査薬です。一般的な妊娠検査薬を使用するタイミングは、次の生理予定日から1週間後です。
一方、早期妊娠検査薬は次回の生理予定日の1週間後よりも前に使えます。製品によっては次回の生理予定日から使用できるものもあります。妊活中で早く妊娠の可能性を知りたい人は、早期妊娠検薬を使用してみるのもよいでしょう。
早期妊娠検査薬と一般の妊娠検査薬の違いは感度です。妊娠検査薬は、妊婦さんの尿中に含まれるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の量を感知します。
尿の中にhCGが検出されるようになるのは妊娠4週頃です。生理周期が28日の人が妊娠していれば、次回の生理予定日には尿中にhCGが含まれています。
ただ、一般的な妊娠検査薬で判定を出すには、尿に含まれているhCGが一定以上の濃度でなければなりません(50mIU/mL)。尿中のhCGが十分な量に達するのは、妊娠5週目くらいです。
そのため、多くの市販の妊娠検査薬を使うタイミングが次の生理予定日の1週間後以降となります。一方、早期妊娠検査薬は感度が高いので、25mIU/mLとhCGの量が少なくても判定できます。
一般の妊娠検査薬よりも感度が高い早期妊娠検査薬は、購入先に注意が必要です。一般的な妊娠検査薬は「第2類医薬品」のため、薬局以外にも一般的な医薬品を取り扱うドラッグストアやインターネットのECサイトでも購入が可能です。
しかし早期妊娠検査薬は「医療用体外診断用医薬品」に分類されるため、薬剤師のいる薬局のみで購入できます。早期妊娠検査薬を使用したい人は、薬局で扱っているか確認してから購入しましょう。
妊娠検査薬を早めの時期に使うことをフライング検査と呼ばれることがあるようです。妊娠検査薬で正しい判定結果を得るには、正しいタイミングで使わなければなりません。妊娠検査薬の種類によっても検査する時期が異なります。
妊娠検査薬は尿中のhCG濃度によって妊娠の可能性を判定します。そのため、上記に挙げた時期よりも前に妊娠検査薬を使うと、「実際に妊娠しているのに判定が陰性になる」など、正しい判定を得られない原因になります。
妊娠を心待ちにしている人にとっては、早く妊娠しているかどうかを知りたい人も多いものです。妊娠検査薬を使うタイミングよりも、早い時期に使うと、再度検査薬を使うことにもなりかねません。
妊娠検査薬で正しい結果を得るためにも、検査薬の用法にしたがったタイミングで検査を受けるようにしましょう。
次回の生理予定日から1週間後に使う妊娠検査薬ですが、使う時期が遅すぎると、正しい判定が得られなくなることがあります。尿中のhCG濃度は、妊娠8~12週でピークを迎えますが、その後少しずつ濃度が下がっていきます。
ピークを過ぎた後のhCG濃度は妊婦さんによっても幅があり、人によっては妊娠成立と同じくらいの濃度にまで落ちる人もいます。このような場合は、市販の妊娠検査薬を使っても、判定結果が陽性にならない可能性があります。
とはいえ、hCGのピークを過ぎる頃には、つわりがみられたり、お腹がふっくらしたりなど妊娠サインに気づく女性が多いものです。早い段階で妊娠検査薬を使えないときは、医療機関の産婦人科を受診して、超音波検査(エコー)で妊娠しているかどうか調べてもらいましょう。
妊娠検査薬を使う女性の中には、検査薬を使うのが初めての人もいるかもしれません。ここでは、妊娠検査薬の基本的な使い方についてみていきます。
≪妊娠検査薬の使い方≫
判定窓にラインが出れば陽性で妊娠している可能性があり、ラインが出ていなければ陰性であれば妊娠の可能性がない。
妊娠検査薬の基本的な使い方です。実際に妊娠検査薬を使うときは、製品の添付文書をよく確認して、正しい方法で使いましょう。
妊娠検査薬を使うときに多い失敗が、採尿部に上手く尿をかけられないことです。採尿部に尿をかけるのが難しいと感じる人は、紙コップなどに排尿し、採尿部を浸しましょう。
妊娠検査薬の採尿部に尿を浸すときは、判定部まで浸らないようにします。市販の妊娠検査薬の中には、採尿カップが付属されているものもあります。
また、採尿部に尿を浸した後は、水平状態で判定結果を待ちます。
妊娠検査薬の偽陽性とは、妊娠していないのに判定で陽性が出ることをいいます。妊娠検査薬で偽陽性が出るのは、妊娠検査薬が妊娠そのものを検査するのではなく、妊娠に関連するhCG濃度を検査するためです。
そのため、妊娠の理由以外で尿中にhCGが含まれている場合は、偽陽性となることがあります。妊娠検査薬の偽陽性の原因は以下のものがあります。
市販の妊娠検査薬で陽性になっても、実際に妊娠していないこともあります。妊娠検査薬で陽性になったら、正常な妊娠かどうか調べるためにも必ず産婦人科を受診しましょう。
妊娠検査薬の偽陰性は、妊娠しているのに判定で陰性が出ることをいいます。妊娠検査薬で偽陰性になる原因には以下のものがあります。
妊娠検査薬で偽陰性が出た時は、原因を考えてもう一度検査してみましょう。
女性は思春期から月経がはじまり、ホルモンバランスによってその周期が保たれています。月経に関する女性ホルモンは、分泌される場所によって3つに分類されます。そして妊娠した場合にはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌されます。
ホルモンの分泌をコントロールする大元は間脳の視床下部にあります。月経に関する女性ホルモンは、視床下部から分泌されるGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン)によって指示されています。
GnRHからの指示を受けて分泌されるのがFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)です。この2つを性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)と言います。
FSHは卵巣にある卵胞(卵子が入っている袋)を成長させ、後述するエストロゲンの分泌を促します。
LHは卵胞を成長させ排卵を促します。排卵後には、黄体(排卵された後の卵胞)を刺激して後述するプロゲステロンの分泌を促します。
ゴナドトロピンによって分泌を促されるのが「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモンの一種)」という2つのホルモンで、このホルモンが約28日の周期で増減を繰り返すことで月経を起こしています。
エストロゲンは卵胞ホルモンで、卵巣の中の卵子が入っている卵胞を成熟させ、排卵や受精、着床の準備をします。排卵前から分泌が増え、排卵後には受精した際に着床しやすいように子宮内膜を厚くしていく作用があります。着床しなかった場合、エストロゲンの分泌は減り、分厚くなっていた子宮内膜の層が剥がれ月経となります。
プロゲステロンは、排卵後から受精に備えてエストロゲンの作用で厚くなった子宮内膜を維持するために分泌が増えます。こちらも着床しなかった場合には分泌が減っていきます。
エストロゲンもプロゲステロンも着床して妊娠した場合には増え続けます。さらに着床した場合に新たに分泌されるのがヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)です。絨毛とは胎盤にある組織ですので、このホルモンが分泌されるということは妊娠して胎盤が形成されたことを意味しています。着床後に分泌され、妊娠8~10週頃に分泌量のピークを迎えます。
妊娠検査薬の陽性・陰性を判定しているのは、尿に含まれているhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の濃度です。着床して胎盤が形成されてから分泌が始まり、妊娠4週目頃から尿中に検出されます。
通常の妊娠検査薬は尿中のhCG濃度が50[IU/L]以上で陽性判定となりますが、この濃度に十分に達するのは妊娠5週頃と言われています。
妊娠週数の数え方は、最終月経(直前の月経)の始まりの日を0週0日と数えます。ですから、妊娠5週目とは、次の月経が始まる予定であった日の1週間後となります。一般的な妊娠検査薬の注意書きにも、生理予定日の約1週間後からの使用が推奨されています。
妊娠したかもしれないと思うと、1日でも早く結果が知りたいと思われるかもしれませんが、あまり早くから検査薬を使用してもhCGの分泌量が充分でなく、誤った結果が出てしまう可能性もあります。
また、1週早く陽性反応を知れたとしても病院へ行って妊娠を確定するには早すぎるため、1週間後に再受診しなければならないケースがほとんどです。月経予定日の1週間後に使用するのが確実な結果を得られる最適なタイミングです。
中には、排卵の時期がずれてしまって次回月経予定日の1週間後でも陰性判定が出る方もいます。そのような方はさらに1週間待って検査をしてみましょう。
女性の身体はとても繊細ですので、少しのストレスや生活習慣の乱れによって簡単に排卵日がずれ月経周期が乱れてしまっていることがあります。妊娠検査薬の結果や身体の調子に不安がある場合には医療機関を受診するようにしましょう。
検査可能な時期になったら妊娠検査薬を使用してみましょう。妊娠検査薬のメーカーによって検査方法が違う場合があるので、必ず説明書を読みましょう。多くの妊娠検査薬では、スティック状の器具の先に尿をかけて水平な場所に置いて判定を待ちます。判定窓に陽性の印が出た場合妊娠しているということになります。
検査する時間は何時でもよいのですが一般的に朝1番の尿が濃いためhCG濃度も高く、妊娠していた場合に陽性反応が出やすいです。また、水分をたくさん摂取したりして尿が薄い場合は、妊娠していても誤って陰性となる場合があります。
妊娠検査薬には使用期限がありますので、期限は必ず守るようにしましょう。他にも、長時間取り置いていた尿では雑菌が湧いて正しい判定ができない場合があるので注意しましょう。
妊娠検査薬は非常に精度が高いため、陽性判定が出た場合は妊娠はほぼ確定と言えます。妊娠5週目以降(月経予定日の1週間後以降)に胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)を確認するために産婦人科を受診しましょう。5週目以降であれば胎嚢の確認が可能であり、6週以降になると心拍の確認ができるようになります(この週数は個人差があります)。
注意しなければならないのは、妊娠検査薬で陽性判定が出たからといって正常な妊娠であるとは限らないということです。通常、卵巣から排出された卵子が精子と出会い、受精卵となって卵管を通って子宮へと移動し子宮内膜へと着床することで妊娠が成立します。しかし、途中の卵管などで着床してしまう場合があり、それを異所性妊娠(子宮外妊娠)といいます。
その場合でも、hCGは分泌されますので陽性反応が出ます。特に卵管で着床してしまった場合、赤ちゃんが成長してしまうと卵管が破裂してしまうことがあります。このような事態を避けるためにも、妊娠検査薬で妊娠が判明したら産婦人科を受診して、赤ちゃんがきちんと子宮に着床しているかを確認しましょう。
妊娠検査薬を使用した際に、陽性反応が薄い場合があります。そのような時は、水分をたくさん摂取していて尿が薄かったり、排卵日がずれていてhCG濃度が規定より足りていない場合が考えられますので、後日改めて検査してみましょう。
女性の身体は様々な部位からホルモンが分泌されて妊娠への準備をしています。妊娠した女性に特有のホルモンはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)で、妊娠検査薬はこのhCGの尿中の濃度によって判定が出ます。hCGは妊娠4週目以降から急激に増え始め、妊娠5週目には妊娠の有無を判定するのに充分な濃度に達します。妊娠しているかを早く知りたいと思う方もいらっしゃると思いますが、月経予定日の1週間後を目安に検査することで確実な結果を得ることができますので、適切なタイミングと方法を守って使用するようにしましょう。
足立明彦先生
赤十字病院副部長・国立大学非常勤講師。首都圏の徳洲会やセンター病院での勤務歴もあり。下錐体静脈洞や海綿静脈洞からのマイクロカテーテルを用いた採血の手技に長け、視床下部・下垂体ホルモンに詳しい。学歴:2003年 薬学部卒業、2007年 医学部卒業、2014年 大学院修了。取得資格:薬剤師、医師、博士(医学)、複数分野の専門医・指導医。
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