2024.10.02

妊娠

妊娠後期(8ヵ月・9ヵ月・10ヵ月)の過ごし方と知っておくべきこと

妊娠後期(8ヵ月・9ヵ月・10ヵ月)の過ごし方と知っておくべきこと

出産がいよいよ近づいている妊娠後期。出産に向けて期待と不安を抱える妊娠後期の過ごし方について気になっている方も多いのではないでしょうか? 自分や赤ちゃんの体に負担のかからないように過ごして、万全の体勢で出産を迎えたいですよね。

この記事では、妊娠後期の過ごし方について解説しています。妊娠後期を迎える妊婦さんはぜひ参考にしてみてください。

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妊娠後期はいつから?

妊娠8ヵ月から10ヵ月の時期です。お腹も大きく膨らみ、赤ちゃんの胎動も活発になるので、赤ちゃんの存在を強く感じるとともに、出産への意識が強く向く時期になります。

臨月との違い

臨月は出産が起こりうる月のことで、妊娠10ヵ月目が該当します。出産予定日は妊娠40週0日ですが、妊娠36~39週を臨月と呼びます。臨月はいつ出産になってもおかしくない時期であるため、妊婦健診も2週間に1回から1週間に1回の頻度になります。

妊娠後期のママと赤ちゃんの様子

妊娠後期は赤ちゃんも大分大きくなり、ママの体にもさまざまな影響がみられ、体調不良を感じやすい時期です。妊娠後期にみられるママと赤ちゃんの体の状態についてみていきましょう。

妊娠8ヵ月(妊娠28~31週)

妊娠8ヵ月のお腹の大きさはカボチャ1個分ほどです。おなかの赤ちゃんの身長は約43cm、体重は約1,800gになります。赤ちゃんの筋肉が発達し、体の基礎がほぼできあがります。この時期の赤ちゃんは網膜が完成し、明るさを感じることができます。

赤ちゃんの体が大きくなることで、ママのお腹の皮膚が急激に引っ張られるので、妊娠線がみられることがあります。また大きくなった子宮により、胃が押し上げられるため、食事がつかえることもあります。

妊娠9ヵ月(妊娠32~35週)

妊娠9ヵ月のお腹の大きさは、白菜1個分ほどです。おなかの赤ちゃんの身長は約47cm、体重は約2,500gです。赤ちゃんの体に皮下脂肪がつき、丸みのある体つきになります。おなかの中で、赤ちゃんは20分おきに睡眠と覚醒を繰り返します。

赤ちゃんの体格が大きくなると、内臓が圧迫されるようになります。胃がつかえて胃酸が上がったり、少しの運動で動悸や息切れしたりすることも。また、女性ホルモンの作用により、おりものの量が増えます。

妊娠10ヵ月(妊娠36~39週)

妊娠10ヵ月のお腹の大きさはスイカ1個分ほどになります。おなかの赤ちゃんの身長は約50㎝、体重は約3,100gです。赤ちゃんの発育が完了し、新生児とほぼ同じ状態まで成長します。

出産が近くなると、赤ちゃんが子宮の出口に向かって下に降りるので、胃の圧迫感がなくなります。骨盤内で頭が固定されるため、赤ちゃんの動きが少なくなります。お産が始まる兆候として、おしるし(少量の出血)や破水が起こります。

妊娠後期で注意する点

赤ちゃんの成長や成熟が完了しつつある妊娠後期は、ママの健康にも気を付けなければなりません。妊娠後期は以下の健康トラブルに気を付けましょう。

頻尿・尿漏れ

妊娠後期で子宮が大きくなると、膀胱が圧迫されて尿の回数が増えます。また、骨盤底筋のゆるみにより、くしゃみの拍子に尿漏れも起こしやすくなります。

腰痛

お腹が大きくなると、体のバランスを保つために、重心が前へ移動し、背中を反るような姿勢になります。背中や腰に負担がかかるため、腰痛が起こる原因になるので、正しい姿勢を心がけて腰痛を予防しましょう。

むくみ

妊娠後期でお腹が大きくなると、太い静脈を圧迫するため、足にむくみが現れやすくなります。長い時間座っていたり、立っていたりすると、血行が悪くなり、むくみが悪化しやすくなります。

適度な運動を取り入れたり、休息時に足を上にしたりするのもおすすめです。

便秘

妊娠後期は腸が圧迫されるため、便秘になりやすくなります。予防のために十分な水分を摂取し、食物繊維が豊富な食品を積極的に取りましょう。

全身運動を取り入れると、腸の動きが促進されるので、便秘の改善が期待できます。

吐き気

妊娠後期になると、吐き気やげっぷがみられることがあります。赤ちゃんの成長にともないお腹が大きくなることで、胃腸を圧迫するためです。胃のムカつきで気持ち悪いと感じることもあるでしょう。

妊娠後期では吐き気を感じるときは、1回の食事量を減らして小分けに食べるのがおすすめです。また妊娠週数が進み出産が近くなると、赤ちゃんが下に降りてくるので、症状がおさまってきます。

肌のかゆみ

妊娠後期に妊娠線ができると、肌のかゆみがみられやすい時期です。妊娠線は妊娠により急激にお腹が大きくなり、皮膚の伸びがついていけずに、真皮層が断裂することで起こります。妊娠線ができるときに、肌のかゆみを感じることもあります。

また、妊娠中はホルモンバランスの変化等により、肌のかゆみが生じることがあります(妊娠性搔痒:にんしんせいそうよう)。

妊娠後期に肌のかゆみがみられるときは、まずはかゆみのある部分の保湿を子心がけましょう。かゆみのある部分を掻きむしると、かゆみ物質が分泌されるので症状の悪化につながります。

肌の保湿をしていてもかゆみが改善されない場合は、皮膚科医を受診するようにします。

妊娠後期に注意すべき健康リスク

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に発症した高血圧のことです。妊婦さんの血圧が上昇することをいいます。妊娠高血圧症に蛋白尿をともなうと、妊娠高血圧腎症と呼ばれ、厳重な管理が必要になります。

妊娠高血圧症候群が悪化すると、母子に次の健康リスクがあります。

≪ママの健康リスク≫
子癇発作(けいれん)・脳出血

≪赤ちゃんへの健康リスク≫
発育不良・低出生体重児・死産

一般的に、妊娠高血圧症候群は出産後に軽快していきます。しかし、近年では将来的に高血圧やメタボリックシンドローム、心筋梗塞の発症リスクを高めることが分かっています。

とくに妊娠後期は妊娠高血圧症候群になりやすい時期です。塩分の取りすぎや過剰な体重増加を避けて、妊娠高血圧症候群を予防しましょう。

切迫早産

切迫早産とは早産になる一歩手前のこといいます。妊娠37週以前であるのにもかかわらず、規則的な子宮収縮が起きたり、破水が起きたりして、赤ちゃんの頭が外に出そうになります。

通常、正期産と呼ばれるのは妊娠37週から42週未満で生まれることをいいます。正期産よりも赤ちゃんが早く生まれると、体の機能や免疫力が未熟で、さまざまな合併症がみられやすくなります。

切迫早産の原因には、子宮内感染や子宮の入り口部分のゆるみ(子宮頚管無力症)があります。また、妊娠後期に体に無理をすると、切迫早産の原因になることがあります。

切迫早産を予防するには、妊娠中は心身に無理のかかることを避けるように過ごすことが大切です。また、お腹の張りや出血など早産の兆候がみられるときは、早めに医療機関を受診しましょう。

妊娠後期の過ごし方のポイント

お腹が大きくなる妊娠後期は、極力無理をしないことが大切です。ここでは妊娠後期の過ごし方についてみていきましょう。

食事

妊娠後期でお腹が大きくなると、胃が圧迫されて1度にたくさん食べられなくなることがあります。1回の食事量が少ない場合は、小分けにして食べる回数を増やすとよいでしょう。

便秘になりやすい時期なので、ヨーグルトのような発酵食品や、野菜や果物など食物繊維が豊富な食事を取るのもおすすめです。

妊娠後期に必要な微量栄養素

妊娠後期はおなかの赤ちゃんも大きくなり、必要なエネルギーや栄養素も増加する時期です。妊娠時は受精卵だった赤ちゃんも、出産時には約3000gまでに成長します。

妊娠前と妊娠後期に必要なカロリーと栄養素は次のとおりです。

時期エネルギー (kcal)たんぱく質(g)カルシウム(mg)鉄(mg)ビタミン
A(㎍RAE)B1(mg)B2(mg)葉酸(㎍)C(mg)
妊娠前2,0005065010.56501.11.2240100
妊娠後期2,450 7565016.07301.31.5480110

上記のように、妊娠後期はエネルギーや各種栄養素の摂取を増やす必要があります。妊娠中の体重増加が順調であれば、主食を1.3倍に、たんぱく質のおかずを気持ち増やしましょう。妊娠中を通して、野菜や果物から微量栄養素を過不足なく取ることも大切です。

家事

妊娠後期は大きくなったお腹により、足元が見えにくくなり、転倒を起こしやすくなります。足が滑りやすい浴槽の掃除や、段差につまずきやすい階段の掃除は気を付けて行いましょう。

布団の上げ下げなど、お腹に力が入る家事は避け、体には無理のない範囲で行いましょう。

運動

妊娠後期も運動することができます。体調が良いときにできる範囲で運動をしましょう。妊娠後期に適した運動には、ストレッチやウォーキング、マタニティビクスなどがあります。

妊娠後期は、大きくなった子宮により、骨盤底筋がゆるむことで尿漏れを起こしやすくなります。骨盤底筋体操で、機能を維持に努めるのもおすすめです。

入浴

妊婦さんの体重も増加して体温が上がりやすくなるため、発汗量が増えます。おりものの量も増えるので、毎日お風呂に入って体の清潔を保ちましょう。

シャワーではなく湯船に浸かること、血液の循環が良くなり、むくみの改善も期待できます。

性行為

妊娠後期でも体調に問題なく、夫婦の気持ちが一致していればセックスもすることができます。ただ時期的に、妊婦さんのお腹がだいぶ大きくなっているため、性行為時の体位や動きに配慮する必要があります。

セックスの際には、妊婦さんが楽に感じる姿勢でゆっくりと行うようにしましょう。途中でお腹の張りや痛みを感じたときは、すみやかに性行為を中止する必要があります。

また、妊娠中はママの免疫力が低くなっています。妊娠後期に子宮内感染を起こすと、破水などの健康トラブルを引き起こす可能性があります。夫婦間のセックスでも、コンドームを使用するようにしましょう。

服装

妊娠後期は、汗をかきやすいので通気性や吸湿性のよい素材の衣類を用いるのがおすすめです。体のバランスを崩しやすいので、サンダルやハイヒールなど、かかとに高さのある靴は避けましょう。

休息

妊娠後期になると、多くの妊婦さんが疲れやすさを感じるようになります。この時期の妊婦さんは、赤ちゃんや胎盤、羊水や血液の増加分などを含め、8~10kgもの重さを抱えているのと同じ状態になります。

普通の生活を送るだけでも、疲れを感じるようになるでしょう。また、眠りが浅くなったり、夜間にトイレへ行く回数が増えたりするため、日中に眠気を感じる妊婦さんも多くいます。

妊娠後期は体に無理をせずに、休めるときに休息を取るようにしましょう。

妊娠後期ですべきこと

妊娠後期は、いつでも出産のための入院ができるように準備しておくことが大切です。妊娠後期は以下のことも行いましょう。

出産方法を確認

妊娠後期に入ったら、パートナーと出産方法について話し合いましょう。立ち合い出産はコロナ禍で制限されていましたが、現在では多くの医療施設で再開しています。

単に夫が出産を見学するものではなく、立ち会い出産は妻の出産過程をサポートするものです。立ち合い出産の割合は全体の3割程度です。しかし、当日の言動がきっかけで、夫婦間にしこりが残ることも少なくありません。

出産は夫婦にとって大切なイベントであるからこそ、妊娠後期のうちからお互いの希望について話し合うのがおすすめです。また、赤ちゃんの出産後には育児が待っています。赤ちゃんの育て方の大まかな方針についても話しておくのもよいでしょう。

緊急時の対応を確認

妊娠予定日があっても、当日スケジュール通りにお産があるわけではありません。体調の変化により出産が早まることもあります。通常のお産時の対応だけでなく、緊急時も想定した対応を家族で話し合いましょう。

出産前後に必要な手続きの確認

働いている妊婦さんの場合、出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)に産休が取れます。

また、出産後は、出生届の提出、出産一時金の申請、赤ちゃんの健康保険の手続きなど多くの手続きが控えています。産後にスムーズに手続きが行えるよう、申請場所や申請箇所について確認しておきましょう。

産前休暇の取得

仕事をしている妊婦さんは、出産予定日の6週間前から産前休暇を取ることができます(双子以上を妊娠している場合は14週間前から)。産前休暇の取得は任意であるため、希望があれば出産直前まで働くことが可能です。

しかし妊娠9月以降は、いつ出産の兆候がみられてもおかしくありません。特に問題がなくても、産前休暇の取得を検討するとよいでしょう。出産前に休暇を取るのにあたって、仕事の引継ぎのための準備も必要です。

上の子の預け先を確認する

第2子以降の出産を控えていて、上の子どもがまだ小さい場合、出産で入院する際に誰が上の子の世話をするか決める必要があります。パパや祖父母が対応できない場合は、子連れ入院を受け入れてくれる病院を選んだり、保育園の緊急保育や民間のシッターサービスを利用したりする方法があります。

里帰り出産のための帰省

里帰り出産をする場合、32~35週までに帰省しましょう。遠方で飛行機を乗る必要がある場合は、かかりつけ医の診断書が必要です。最近ではマタニティ旅行をする方も増えていますが、妊娠中は体調が変化しやすいので、妊娠後期で遠方への旅行はおすすめできません。

まとめ

妊娠後期はお腹の赤ちゃんも成熟し、出産が間近に迫っている時期です。子宮が大きくなることで、妊婦さんの体調不良も生じやすいので、体に無理をし過ぎないようにしましょう。

DNA先端医療株式会社では、他にも妊娠中に役立つ記事が多数用意してあります。

参考にしていただければ幸いです。また、新型出生前診断(NIPT)のお問い合わせもお気軽にご相談くださいませ。

参考:
妊娠中の過ごし方
妊娠中の過ごし方 – 横浜市旭区
妊娠高血圧症候群-富山大学学術研究部医学系 産科婦人科教室
妊娠中の食事ついて

妊娠中の移動について
妊娠中の移動について 妊娠中お腹の中に赤ちゃんがいて、自分だけの身体じゃないとなると自分の行動の何が正しくて何が悪いのかが分からなくなることが多いと...

ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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