妊婦の不安はなぜ起きる?原因と和らげ方、相談先を解説 | DNA先端医療

妊婦の不安はなぜ起きる?原因と和らげ方、相談先を解説

更新日:2026.09.22

妊娠

妊婦が感じる不安について

妊娠がわかってうれしいはずなのに、気持ちが落ち着かない。おなかの赤ちゃんは無事に育っているか、出産に耐えられるか、考え出すと止まらなくなる。そんな状態が続いていませんか。

妊娠中の不安には、多くの人が経験するものと、生活に支障が出るほど強いものがあります。原因がわかれば、自分がどちらなのかも見えてきます。

この記事では、妊婦が不安になる原因と時期ごとの傾向、赤ちゃんへの影響、和らげる方法、相談できる窓口を、公的機関や学会の資料をもとに解説します。

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妊婦が不安になる主な原因

胎児は健康であるかという不安

妊娠中の不安は、体の変化と気持ちの変化、そして周囲の環境の変化が重なって起こります。こども家庭庁の研修資料も、周産期のメンタルヘルスに関わる要因を、ホルモンなどの生物学的要因、不安やうつの症状といった心理的要因、支えてくれる人の不足や経済的な問題といった社会的要因の3つに整理しています。

妊婦が不安を感じる主な原因は次の5つです。

  • ホルモンバランスの変化
  • つわりや体調の変化
  • 出産・育児という未知への不安
  • 頼れる人が近くにいない
  • 情報を集めすぎて判断できなくなる

出典:こども家庭庁|周産期メンタルヘルスの基礎知識

ホルモンバランスの変化

妊娠すると、女性ホルモンの分泌量が妊娠前と大きく変わります。この変化が、睡眠の浅さや体調の変化と重なり、気分の揺れに関係することがあります。

うれしいはずの場面で涙が出る、些細なことでいらだつ、理由を説明できないまま気分が沈む。こうした状態は、意志の力で抑えられるものではありません。

ホルモンは要因のひとつです。気分の揺れが自分の性格の問題や、母親としての自覚不足によるものだと考える必要はありません。

つわりや体調の変化

体調が優れない状態が続くと、それ自体が悩みになります。妊娠初期の妊婦64名を対象にした調査では、55名がつわりや腰痛などの不調(マイナートラブル)を経験していました。割合にすると85.9%です。

この調査は2022年に1つの市の8施設で行われた小規模なもので、精神疾患の治療歴がある人は対象から外れています。すべての妊婦にあてはまる数値ではありませんが、体調の不調を抱える人が多いことは読み取れます。

吐き気で食事がとれない、においを受けつけない、強い眠気が続く。こうした不調は外から見えにくく、周囲に伝わりにくいという特徴があります。

体の余力が落ちている時期は、同じ心配ごとでも重く感じられます。

出典:香川大学看護学雑誌|妊娠初期の精神的健康および生活行動

出産・育児という未知への不安

出産や育児は、経験するまで実感を持ちにくい出来事です。どのくらい痛むのか、無事に産めるのか、生まれたあとの生活がどう変わるのか。答えを持たないまま日々が過ぎることが、不安の原因になります。

初めての出産であれば、比べられる経験がありません。2人目以降であっても、前回と同じように進む保証はありません。

妊婦健診で経過が順調だと言われても、この種の不安は残ります。わからないこと自体が原因だからです。

頼れる人が近くにいない

支えてくれる人が身近にいないことも、不安を強める要因になります。こども家庭庁の資料は、社会的要因として支援してくれる人の不足、不安定な夫婦関係、経済的な問題を挙げています。

里帰りができない、パートナーの帰りが遅い、実家が遠い。こうした状況では、心配ごとを口に出す相手がいないまま時間が過ぎます。

出産や育児にかかるお金の見通しが立たないことも、同じように負担になります。

情報を集めすぎて判断できなくなる

調べるほど安心できるとは限りません。国立精神・神経医療研究センターの情報サイトは、ネガティブな情報に多くふれると不安が強くなったり、落ち込みが強くなったりすることがわかっていると説明しています。

妊娠中の悩みを検索すると、重い事例や例外的なケースから目に入ります。自分にあてはまらない情報まで抱え込むことになり、心配の材料だけが積み上がります。

情報が増えるほど、どれを信じてよいかもわからなくなります。判断できない状態が続くこと自体が、不安を長引かせます。

出典:国立精神・神経医療研究センター|苦しくならないよう、ネガティブな情報にふれる時間を短くする

妊娠初期・後期で変わる妊婦の不安

妊娠中の不安は、体の状態と出産までの距離が変わるにつれて中身が入れ替わります。時期によって多い不安は次の2つです。 

  • 妊娠初期に多い不安
  • 妊娠後期に多い不安

それぞれ説明していきます。 

妊娠初期に多い不安

妊娠初期に多いのは、おなかの赤ちゃんが無事に育っているかという不安です。先ほどの小規模な調査では、妊婦64名のうち37名が悩みがあると答えました。自由記述で最も多かったのは児の健康に関する記述で14件です。無事に生まれるか、先天的な病気がないか、流産しないかという内容でした。

同じ調査では、体調の悩みが13件、仕事と家庭生活の両立が5件と続きます。件数は人数ではなく、書かれた内容の数です。

妊娠初期の悩みは、赤ちゃんのことと自分の体のことに集中しやすい傾向があります。

出典:香川大学看護学雑誌|妊娠初期の精神的健康および生活行動

妊娠後期に多い不安

妊娠後期に多いのは、出産そのものへの不安です。この時期は体の不調に加えて、出産や育児への不安が加わります。

出産は痛みを伴う予測のできない経験であり、不安を感じることは当然だとされています。恐怖の中身は、出産時の痛みへの恐れと、自分でコントロールできないことへの恐れです。一度出産を経験している場合も、つらかった体験から強い不安を感じることがあります。

不安が強く、日常生活や学業、仕事に影響が出ている場合は、分娩恐怖症の可能性があります。分娩恐怖症は妊婦の15人に1人が経験すると報告されており、早めに専門機関へ相談するよう勧められています。

出典:
日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「眠れなく」なった方のためのQ&A
国立精神・神経医療研究センター|私にできるの?出産への恐怖

妊婦の不安は赤ちゃんに影響する?

一時的に不安を感じたからといって、それだけで赤ちゃんに影響が出ると決まるわけではありません。

指摘されているのは、強い不安が続いた場合です。不安が強いと、妊娠中のトラブルや、生まれた赤ちゃんの体調や発達に影響が出る可能性があるとされています。可能性があるという書き方であり、一人ひとりの結果を予測できるものではありません。

妊娠中に不安が起こることはまれではなく、意志が弱いからでも人として弱いからでもありません。不安を感じたこと自体を心配する必要はありません。

気にかけたいのは、強い不安が続いて生活に支障が出ている場合です。そうした場合には薬を使う治療も選択肢になり、無理に不安に耐えようとするより、治療を受けるほうがメリットは大きいと考えられています。

出典:日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「不安が強く」なった方のためのQ&A

妊婦の不安を和らげる方法

不安は、考え方の整理と生活の立て直しで和らぐことがあります。すべてを一度に試す必要はありません。

妊婦の不安を和らげる方法は次の4つです。

  • 心配を2種類に分けて整理する
  • 情報にふれる時間を決める
  • 睡眠のリズムを整える
  • 支えになる人に話す

それぞれ説明していきます。

心配を2種類に分けて整理する

国立精神・神経医療研究センターの情報サイトは、心配を「役に立つ心配」と「役に立たない心配」の2つに分ける方法を紹介しています。役に立つ心配は、近い将来に解決できる可能性がある具体的な問題です。役に立たない心配は、実際にはほとんどありそうもない最悪の事態に関するものです。

まず、心配していることを書き出します。役に立つ心配は、解決方法をできるだけ多く挙げ、それぞれのメリットとデメリットを検討します。

役に立たない心配は、考えても苦しくなる一方なので、あまり向き合わないほうがよいとされています。それでも考えてしまう場合は、時間を決めてその時間だけ心配ごとを書き出す「心配タイム」という方法も紹介されています。

分類が難しいときは、まず役に立つ心配として考えてみることが勧められています。

出典:国立精神・神経医療研究センター|色々なことを心配し過ぎてしまうときは、心配を分類する

情報にふれる時間を決める

1日のうち情報を入れる時間を決めることが勧められています。寝る前は見ない、ふとんの中でスマートフォンを開かないと決めるだけでも変わります。

見る情報源も決めておきます。ネットの情報に振り回されず、公的機関や学会、通院先が出している情報を選ぶことが大切です。

調べても答えが出ない疑問は、次の妊婦健診で産科医に直接聞くほうが早く解決します。

出典:
国立精神・神経医療研究センター|苦しくならないよう、ネガティブな情報にふれる時間を短くする
日本精神神経学会|こころの不調や病気と妊娠・出産のガイド

睡眠のリズムを整える

妊娠中は体の変化によって、眠りが浅くなったり、途中で目が覚めたりしやすくなります。日本精神神経学会と日本産科婦人科学会が監修したQ&Aでは、約8割の妊産婦が妊娠中に不眠の状態になるとされています。眠れない状態が続くと、日中の眠気や疲労感、いらだち、集中力の低下につながることがあります。

次の点を心がけましょう。

  • 起床時刻を毎日一定にする
  • カフェイン飲料を避ける
  • 日中に運動する(無理はしない)
  • ふとんの中でスマートフォンを見ない
  • 眠くなってからふとんに入る

それでも眠れない状態が続く場合は、なるべく早いうちに医師に相談してください。

出典:日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「眠れなく」なった方のためのQ&A

支えになる人に話す

自分にとって力になってくれる人のアドバイスを聞くようにするとよいとされています。

一方で、「もっとしっかりしなさい」「弱音を吐いたらダメ」といった、無理なことを要求する反応が返ってくる人の言葉は受け流すとよいとも書かれています。

話す相手は選んで構いません。全員に理解してもらう必要はありません。

出典:日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「不安が強く」なった方のためのQ&A

一人で抱え込まない|妊婦の不安の相談先

産科での相談で足りる場合もあれば、専門の窓口が必要な場合もあります。

妊婦が不安を相談できる主な窓口は次の4つです。

  • かかりつけの産婦人科・助産師外来
  • こども家庭センター
  • 精神科・心療内科
  • 都道府県の妊産婦向け相談窓口

それぞれ説明していきます。

出典:日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「不安が強く」なった方のためのQ&A

かかりつけの産婦人科・助産師外来

妊婦健診で通っている産婦人科が、最初の相談先になります。精神科の受診が必要な状態であれば、産科医から紹介してもらえます。

助産師外来を設けている医療機関もあります。日本看護協会によると、助助産師が産科医師と役割分担をし、妊婦や産後の女性とその家族の意向を尊重しながら、健康診査や保健指導を行う体制です。妊娠に関する相談やバースプランの作成も含まれます。

問い合わせ先は通院先の受付です。助産師外来の有無は、医療機関の公式サイトか受付で確認できます。

出典:日本看護協会|妊娠・出産・産後における助産師によるケア

こども家庭センター

こども家庭センターは、市区町村が設置する相談窓口です。令和6年4月から、子育て世代包括支援センターと市区町村子ども家庭総合支援拠点を統合する形で置かれています。

妊娠・出産・育児の相談に応じ、情報提供や助言、保健指導を行います。母子保健と児童福祉を一体で扱うため、こころの不安から生活や経済面の困りごとまでまとめて相談できます。

問い合わせ先はお住まいの市区町村の窓口です。設置は努力義務とされ、名称も自治体によって異なります。母子健康手帳を受け取った窓口に問い合わせてください。

出典:こども家庭庁|こども家庭センターガイドライン

精神科・心療内科

不安が強くなる、同じ心配が繰り返し浮かぶ、眠れない、食べられない、健診や仕事に行けない。こうした状態が続いている場合は、精神科や心療内科への相談が選択肢になります。生活に差しつかえるようになった時が、受診のタイミングです。

受診先は産科医からの紹介が勧められています。どこに相談すればよいかわからない場合は、都道府県と政令指定都市が設置する精神保健福祉センターで、こころの健康に関する相談や地域の支援先の情報を得られます。

厚生労働省が全国のセンターの所在地と電話番号を公開しています。

出典:日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「不安が強く」なった方のためのQ&A

都道府県の妊産婦向け相談窓口

都道府県が独自に妊産婦向けの窓口を設けている場合があります。大阪府の大阪府妊産婦こころの相談センターのように、精神科医師や産婦人科医師、保健師、心理士が電話で相談に応じ、妊産婦本人だけでなく家族も利用できる窓口です。

こうした窓口はすべての都道府県にあるわけではありません。妊娠に関する悩みの窓口は、こども家庭庁の性や妊娠などの悩みについての相談窓口から都道府県別に探せます。

出典:こども家庭庁|性や妊娠などの悩みについての相談窓口

パートナー・家族ができること

強い不安が続くと、気持ちの落ち込みにつながることがあります。次に挙げるのは、落ち込みが強い妊婦への周囲の関わり方として示されている内容で、不安が強いときにも参考になります。

パートナーや家族ができることは次の4つです。

  • 話を最後まで聞く
  • 家事を引き受けて休ませる
  • 受診に付き添う
  • 保健師に相談する

それぞれ説明していきます。

出典:日本精神神経学会|妊娠中・出産後に「うつ」になった方のためのQ&A

話を最後まで聞く

何でも相談にのることを勧められています。一方で、叱咤激励や、自分がつらさを乗り切った経験談は届きにくいとしています。心身のエネルギーが下がっている状態では、はげまされても思うようにできないためです。必要なのは、あたたかい見守りと援助だと書かれています。

本人を傷つけやすい発言として、次の3つが例示されています。

  • 「元気そうなのに、どうしてできないの?」
  • 「母親になるのだからもっとしっかりしなさい」
  • 「妊娠はみんな大変なの、あなただけじゃないのよ」

家事を引き受けて休ませる

妊婦の負担を減らすように工夫し、無理をさせずになるべく休んでもらうことが勧められています。

本人に向けても、家事などをできるだけ任せて自分の負担を減らすのは甘えではなく賢い選択だと書かれています。休養と睡眠は回復にとても大切だとされています。周囲が引き受ければ、本人が遠慮する場面も減ります。

受診に付き添う

生活に支障がある場合は、本人につきそって心療内科あるいは精神科を受診するとよいとされています。精神的不調で日常生活に支障が出ている場合は、早めに受診の手はずを整えるよう勧めています。

うつ状態は周囲に気づかれにくいとも書かれています。本人から言い出せないこともあるため、周囲が動く場面があります。

保健師に相談する

どこに相談すればよいかわからない場合は、保健センターの保健師などに相談する方法があります。相談するのは本人でなくても構いません。

保健センターの連絡先は、お住まいの市区町村のサイトで確認できます。

赤ちゃんの病気が心配なときの選択肢|出生前検査

おなかの赤ちゃんに病気がないか気になる場合、まずは妊婦健診や超音波検査の結果について、かかりつけの産婦人科に相談してください。そのうえで、出生前検査という選択肢があります。

NIPT(新型出生前診断)は、妊婦の血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAを分析し、染色体の病気の可能性を調べる検査です。結果を確定させる検査ではないため、陽性の場合はさらに羊水検査などが必要になります。

日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会によると、対象はダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つです。同委員会は、生まれつき病気がある赤ちゃんのうち、染色体の病気がある赤ちゃんは4人に1人だとしています。NIPTで調べられる病気は、生まれつき病気がある赤ちゃん全体の2割に満たないとされています。陰性は「病気がない」を意味しません。

受けるかどうかは自分で決めることです。厚生労働省の専門委員会も、必ずしもすべての妊婦が受ける必要がある検査ではないとしています。受けないという選択も同じように尊重されます。検査を検討する場合は、事前に十分な説明や遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。

検査の詳しい内容は次のページで解説しています。

出典:出生前検査認証制度等運営委員会|お腹の赤ちゃんの検査の種類/厚生労働省|NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(第7回)

まとめ|不安が続く・強くなるときは早めに相談する

不安をゼロにすることは目標になりません。妊娠中に不安が起こることはまれではなく、意志が弱いからでも人として弱いからでもありません。

相談するのに、生活に支障が出るまで待つ必要はありません。不安で困った時点で、産科医や助産師、保健師に伝えて構いません。不安が普段より強かったり、繰り返し起こるようになったりして生活に差しつかえるようになった時は、精神科や心療内科の受診を検討してください。

我慢を続けることが赤ちゃんのためになるわけではありません。無理に不安に耐えようとするより、治療を受けるほうがメリットは大きいと考えられています。

死にたい気持ちを抑えられない、現実感がなくなる、自分や周囲を傷つけてしまいそうだと感じる。こうした状態のときは、すぐに通院先か地域の救急相談に連絡してください。厚生労働省のまもろうよ こころでは、電話やSNSの相談窓口をまとめています。

最初の一歩は、次の妊婦健診で産科医に一言伝えることです。そこから、こども家庭センターや精神科への相談につながります。

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ABOUT ME

大河友美
国立大学医学部保健学看護科卒業後、大学病院で6年、看護師として勤務。その後、国立大学医学部保健学大学院へ進学し修士号取得。現在は、子育てをしながら医療ライター・監修者として活動中。学歴:平成21年 国立大学医学部保健学看護科 卒業、平成28年 国立大学医学部保健学大学院 修了。取得資格:看護師、保健師、修士(保健学)。

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