更新日:2026.09.22
妊娠

妊娠してから昼過ぎまで眠ってしまい、夜になると目が冴える。そんな昼夜逆転の生活に戸惑っていませんか。赤ちゃんへの影響が心配になる方もいるはずです。
妊婦の昼夜逆転は、意志の弱さではなく妊娠に伴う体の変化が背景にあります。原因がわかれば、今の時期に合った方法で生活リズムを戻していけます。
この記事では、妊娠の時期ごとに昼夜逆転が起こる原因と対処法、赤ちゃんへの影響、生活リズムを直す5つの方法を解説します。

主な原因は次の3つです。原因ごとに対処法もあわせて説明します。
妊娠初期は日中の眠気が強まり、そこから生活リズムが崩れていきます。
妊娠中は眠気をもたらすプロゲステロンの分泌量が増えます。加えて妊娠初期は夜間の頻尿や吐き気、腰痛、乳房の痛みなどによって夜の睡眠の質が下がるため、日中の眠気がいっそう強まります。
体内時計は、朝の光を浴びることで毎日リセットされています。日中に長く眠って起床が遅くなると、このリセットが行われず、その夜に寝つける時刻は少しずつ後ろへずれていきます。このずれが積み重なることで、妊婦の生活は昼夜逆転へと傾いていきます。
日中の眠気に抗う必要はありませんが、仮眠は午後の早い時刻に30分以内が目安です。必要以上に長く眠ると目覚めが悪くなり、翌朝の起床時刻もさらに後ろへずれてしまいます。
妊娠初期は基礎体温が高い状態が続き、寝つきにくくなります。
プロゲステロンには体温を上昇させる働きがあります。妊娠が成立しなかった場合は月経とともに体温が下がりますが、妊娠が成立すると高温期はそのまま続きます。この状態が続くのは、胎盤ができあがる妊娠12週から14週頃までが目安です。
人が眠くなる時間帯は、脳の温度が急速に下がる時間と重なっています。基礎体温が高いままだと1日の体温の高低差が小さくなり、寝つきの悪さや寝苦しさにつながることがあります。
体温の下がるタイミングをつくるには、入浴の時間帯が役立ちます。就寝の1〜2時間前に、40℃の湯船に10〜15分ほど浸かる方法が勧められています。
妊娠中の不安や緊張は、そのまま寝つきの悪さにつながります。
はじめての妊娠では、赤ちゃんが健康に育っているか、親としてやっていけるかといった悩みを抱えがちです。出産や育児への不安は多くの妊婦が経験するもので、周囲のサポートが乏しい状況では妊娠中の抑うつのリスク要因にもなります。
不安を抱えたまま布団に入ると、寝つくまでに時間がかかります。眠れないこと自体が新たな不安を生み、悪循環に陥ることも少なくありません。
不安は一人で抱え込まないようにしましょう。パートナーや家族に気持ちを話すだけでも負担は軽くなります。就寝前にはカフェインを含まない温かい飲み物を選ぶ、散歩やストレッチで気分を切り替えるといった方法も効果的です。ただし妊娠初期はまだ体が安定していない時期のため、運動の可否は主治医に確認しておきましょう。
出典:
厚生労働省 e-ヘルスネット
健康づくりのための睡眠指針2014

妊娠中期は、妊娠期間の中では夜の睡眠が比較的安定しやすい時期です。それでも日中の眠気は残りやすく、昼夜逆転が続くことがあります。
この時期の原因は次の2つです。原因ごとに対処法もあわせて説明します。
妊娠中期は女性ホルモンの変化に体が慣れ、夜の睡眠は落ち着いてきます。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、妊娠中期は女性ホルモンの変化に体が慣れて睡眠も安定すると説明されています。国内で妊婦37名を追跡した小規模な調査でも、睡眠の質の低下が疑われる人の割合は妊娠初期の54.0%から中期には32.4%へ下がりました。
ただし中期なら眠れるとは限りません。同じ調査では、日中に強い眠気がある人の割合は中期でも48.6%と半数近くを占めています。夜は眠れるようになっても日中の眠気だけが残る点が、この時期の特徴です。
眠気に任せて日中に長く眠ると、整いはじめた夜の睡眠が再び後ろへずれてしまいます。夜の睡眠が落ち着いてくる中期は、生活リズムを立て直しやすいタイミングでもあります。まずは毎日の起床時刻をそろえることから始めましょう。
妊娠中期に体を動かす機会が減ると、睡眠の質を上げる手立てがひとつ減ります。
適度な運動は良い眠りにつながります。中期は子宮が大きくなることによる負担が比較的軽く、体を動かしやすい時期です。つわりが落ち着いた後も生活が不活発なままだと、この効果を受け取れません。
妊娠経過に問題がなく、主治医から運動を制限されていなければ、無理のない散歩やストレッチから始めてみましょう。まとまった時間を確保する必要はありません。マタニティスイミングやヨガなど運動として取り組む場合は、内容と量を事前に主治医へ確認してください。
就寝の直前は避けます。遅くとも就寝の2〜4時間前までに済ませ、寝る前1時間以内の激しい運動は控えましょう。
出典:
厚生労働省 e-ヘルスネット
日本看護科学会誌|縦断調査による妊娠初期,中期,後期の睡眠障害と自律神経活動との関連
日本臨床スポーツ医学会|妊婦スポーツの安全管理基準

妊娠後期は、いったん落ち着いた睡眠が再び乱れやすくなる時期です。国内で妊婦37名を追跡した調査では、睡眠の質の低下が疑われる人の割合は中期の32.4%から後期には62.1%へ増えています。体重の増加に伴っていびきや胸やけが加わることもあります。
この時期の原因は次の4つです。原因ごとに対処法もあわせて説明します。
妊娠後期はお腹が大きくなり、楽な姿勢を取ることが難しくなります。
あおむけで寝ることや寝返りを打つことがしづらくなり、睡眠の質が落ちます。大きくなった子宮が背中側を通る太い静脈を圧迫し、血液の流れが滞りやすくなることも関係しています。
妊娠28週以降は、横向きで眠り始めることが勧められています。オーストラリア・ニュージーランド周産期学会の提言では、左右どちらを下にしても安全性に差はないとされています。国内では左向きを勧める医療機関もありますが、いずれも共通しているのは、あおむけで眠り始めるのを避けるという点です。
膝を軽く曲げ、抱き枕や授乳クッションを挟むと姿勢が安定します。夜中に目が覚めたときにあおむけになっていても、心配する必要はありません。横向きに戻して眠り直せば問題ないとされています。
妊娠後期は夜中にトイレで目が覚める回数が増えます。
大きくなった子宮が膀胱を圧迫するため、ためられる尿の量が減り、排尿の回数が増えます。夜間に何度も起きると睡眠は細切れになり、その分だけ日中の眠気が強まります。
水分は日中にこまめにとり、就寝の直前は控えめにしましょう。妊娠中は脱水を避ける必要があるため、1日の総量まで減らさないよう注意してください。
夜中にトイレへ立つときは、必要以上に明るい照明をつけないようにしましょう。足元だけを照らす明かりにしておくと、目が冴えにくくなります。
妊娠後期はふくらはぎがつって目が覚めることがあります。
原因はひとつに特定されていません。ミネラルバランスの変化や血行不良、筋肉の疲労など複数の要因が関係すると考えられています。
つったときは、つま先を体のほうへ向けてふくらはぎをゆっくり伸ばすと落ち着きます。
予防には、就寝前の入浴や10〜15分程度の足浴で下半身を温める方法があります。日中のストレッチと、普段の食事と水分補給を心がけましょう。鉄やマグネシウムなどのサプリメントを自己判断で追加する必要はありません。
なお、つるというより脚がむずむずしてじっとしていられず眠れない場合は、むずむず脚症候群の可能性があります。妊娠後期に起こりやすい症状のため、頻繁に続くようなら妊婦健診で相談してください。
出産が近づくにつれて不安や緊張が強まり、眠れなくなることがあります。
妊娠後期の不眠には、分娩への不安が関わっていることが調査でも指摘されています。加えて、長く続いた生活の制限や、眠れない日が積み重なった疲れも負担になります。
不安は一人で抱え込まず、妊婦健診の場で主治医や助産師に伝えましょう。出産の流れをあらかじめ聞いておくだけでも、見通しが立って気持ちが落ち着きます。
眠れない夜が続くときは、無理に寝ようとせず、いったん布団を出て静かに過ごすほうが楽になることもあります。
出典:
厚生労働省 e-ヘルスネット
日本看護科学会誌|縦断調査による妊娠初期,中期,後期の睡眠障害と自律神経活動との関連
オーストラリア・ニュージーランド周産期学会|Mothers’ going-to-sleep position in late pregnancy

眠れない夜が続いても、赤ちゃんがそのぶん休めなくなるわけではありません。赤ちゃんは母親の睡眠とは関係なく、活動と休息を数十分ごとに繰り返しているためです。
昼寝が長くなることも、それ自体を心配する必要はありません。毎日の昼寝との関連を指摘した研究はありますが、昼寝が原因かどうかはわかっておらず、控えるべきだという結論は出ていません。
ただし眠れない状態が何週間も続く場合は別です。睡眠時間が短い妊婦や睡眠の質が低い妊婦で早産が多いという報告があり、因果関係は証明されていないものの、放置せず相談する材料になります。
出典:
九州大学学術情報リポジトリ|ヒト胎児の行動発達
厚生労働省 e-ヘルスネット・PLOS ONE|Associations between symptoms of sleep-disordered breathing and maternal sleep patterns with late stillbirth

昼夜逆転は、寝る時刻ではなく起きる時刻から立て直します。
取り組む順番は次の5つです。
夜に眠れなかった日でも、朝起きる時刻は遅らせないようにします。
寝つけた時刻が遅くても、起床時刻は一定に保つことが基本です。眠れなかった分を朝に取り戻そうとして寝床で長く過ごすと、体内時計は後ろへずれ、夜型化が進みます。
すでに昼夜が逆転している場合は、いきなり数時間早めようとしないでください。今の起床時刻から15分から30分ずつ前倒しし、その時刻に慣れてから次を早める進め方が現実的です。
起きた後すぐに活動する必要はありません。決めた時刻に目を覚ますことだけを守り、足りない睡眠は日中の早い時間帯に短く補いましょう。強い眠気が残っている状態での運転は避けてください。
起床後はなるべく早く太陽の光を浴びます。
体内時計は朝の光でリセットされ、その15〜16時間後に眠気が現れます。朝7時に光を浴びた日は、夜10時から11時頃に自然な眠気が訪れる計算です。逆に毎朝のリセットが行われないと、その夜に寝つける時刻は少しずつ遅れていきます。
外へ出る必要はありません。起きたらカーテンを開けて部屋を明るくし、しばらく窓際で過ごすだけでも効果があります。休日も同じ時刻に起きて光を浴びましょう。
日中の眠気は我慢せず、時間を区切って昼寝をします。
昼寝は午後の早い時刻に30分以内が目安です。必要以上に長く眠ると目覚めが悪くなり、翌朝の起床時刻も後ろへずれてしまいます。
妊娠28週以降は、昼寝のときも横向きで眠り始めるようにしましょう。ソファでうとうとするより、時間を決めて横になるほうが体への負担も少なくなります。
日中に体を動かすと、夜の眠りが深くなります。
適度な運動は良い眠りにつながります。ただし就寝の直前は逆効果になるため、遅くとも就寝の2〜4時間前までに済ませ、寝る前1時間以内の激しい運動は避けてください。
妊娠中の運動には、妊娠経過が正常であることなどの条件があります。散歩やストレッチから始め、内容と量は主治医に確認しておきましょう。
就寝前は照明を落とし、明るい光を避けます。
入眠前に普段の室内より明るい光の下で数十分過ごすだけでも、寝つきは妨げられます。特に青白い光は覚醒作用が強く、寝そべってスマートフォンを見ると画面が目に近づくため影響が大きくなります。
デジタル機器は寝室に持ち込まず、別の部屋に置いておきましょう。眠くなってから布団に入るようにすると、寝つけないまま横になる時間が減ります。

生活の工夫を続けても改善しないときは、次の妊婦健診で伝えてください。
眠れない状態の裏に、治療が必要な原因が隠れていることがあります。特に次の場合は早めに相談しましょう。
いびきの奥には睡眠時無呼吸が、脚の不快感の奥にはむずむず脚症候群が隠れていることがあります。どちらも妊娠後期に起こりやすく、生活の工夫だけでは解決しません。
市販の睡眠改善薬を自己判断で使うことは避けてください。医師と相談して使う薬であれば、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。
出典:日本精神神経学会・日本産科婦人科学会|妊娠中・出産後に「眠れなく」なった方のためのQ&A
妊婦の昼夜逆転を戻す入口は、夜ではなく朝にあります。眠気は朝の光を浴びてから15〜16時間後に現れるため、就寝時刻を早めることよりも、起床時刻をそろえることが先になります。
眠れない人ほど、必要な睡眠時間から逆算して早めに布団へ入りがちです。しかしこの入り方は寝床で眠れないまま過ごす時間を長くし、「今夜も眠れないのではないか」という不安を強めてしまいます。決めるのは起床時刻だけにして、眠気が出てから布団に入りましょう。日中の眠気も、時間を区切るのであれば我慢する必要はありません。
昼夜逆転の背景は時期によって変わります。妊娠初期は強い眠気と高い基礎体温、後期はお腹の圧迫感や頻尿が中心です。すべてを一度に整えようとせず、今の時期に当てはまる対策から始めてください。
生活の工夫を続けても改善しない場合、家族から大きないびきを指摘された場合、気分の落ち込みを伴う場合は、次の妊婦健診で伝えましょう。眠れない状態を一人で抱え続ける必要はありません。

足立明彦先生
赤十字病院副部長・国立大学非常勤講師。首都圏の徳洲会やセンター病院での勤務歴もあり。学歴:2003年 薬学部卒業、2007年 医学部卒業、2014年 大学院修了。取得資格:薬剤師、医師、博士(医学)、複数分野の専門医・指導医。
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