2022.09.30

出生前診断

ディジョージ症候群とは?具体的な症状や原因を解説

ディジョージ症候群の原因や診断、症状や治療方法、予後について紹介します。新型出生前診断(NIPT)において、ディジョージ症候群はトリソミー検査では検知できない、染色体の微細な欠失を検査で確認することができます。今回の記事を読んで、ディジョージ症候群についての理解が深まりましたら幸いです。

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ディジョージ症候群とは?

ディジョージ症候群という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃるでしょうか?おそらく聞いたことがない、なじみがないという方がほとんどかと思います。 ディジョージ(DiGeorge)症候群は22q11.2欠失症候群とも呼ばれています。

22q11.2欠失症候群の読み方について、染色体の長い方をq(長腕)、短い方をp(短腕)と表します。

ディジョージ症候群は22番染色体の長腕q11.2に小さな欠失がある疾患で、約4000~6000人に1人の割合で発症するというデータがあります(※①)。

ディジョージ症候群の原因

ディジョージ症候群は染色体22q11.2の微細欠失で発生しますが、結論から申しますと確実な原因ははっきりと分かっていません。

染色体異常の原因の1つに細胞分裂の異常があります。染色体異常のほとんどが突然変異で発症しますが、遺伝的にディジョージ症候群を発症する人は約10%程度と言われています。

難病情報センターによると、TBX1というヒトの心臓や大血管の形を決める遺伝子の欠失によって、心疾患としてファロー四徴症(+肺動脈弁欠損、肺動脈閉鎖、主要体肺側副動脈)や大動脈離断症の合併が多いとされています。遺伝子異常(22q11.2欠失)が子どもに遺伝する確率は50%というデータがあります(※②)。

ディジョージ症候群の診断、NIPTで診断できる?

ディジョージ症候群は、22番染色体の一部に小さな欠失があると診断されます。またディジョージ症候群は、患者さんの80%に先天性疾患があると言われおり、多くに心臓や副甲状腺、顔面形成に異常があります。妊娠中の超音波検査(エコー検査)で兆候を確認できる場合もありますが、多くは出生後の症状から診断が行われています。

心臓や副甲状腺、顔面形成が確認できた場合、血液検査でさらに詳しい心エコー検査で確定診断を行います。

  • 血液検査で分かること:T細胞とB細胞の数、副甲状腺の機能など
  • 心エコー検査でわかること:先天異常など心臓の構造的異常など

妊娠中の非確定検査(スクリーニング検査)の1つにNIPT(新型出生前診断)があります。NIPTは採血のみで検査可能で、母体や胎児への負担が少ないという大きなメリットがあります。

DNA先端医療株式会社では、ディジョージ症候群をはじめとした微小欠失検査が可能です。微小欠失検査はトリソミー検査では検知できない、染色体の微細な欠失を検査し、ディジョージ症候群以外にも、1p36欠失症候群、4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)、5p欠失症候群(猫鳴き症候群)、プラダー・ウィリ症候群、アンジェルマン症候群などを調べることができます。

そのほかに当社は微小欠失検査以外の検査も実施しております。具体的には、13トリソミー(パトー症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)などのトリソミー検査や性染色体検査、全染色体検査が可能です。

ディジョージ症候群の症状と治療方法、予後

ディジョージ症候群は胸腺がない、もしくは未発達なことから、胸腺低形成症候群とも呼ばれています。多くは心臓や副甲状腺、顔面形成などに異常が見られます。また精神発達遅滞、言語発達遅滞などを伴うこともありますが、個人差があります。

先天性心疾患

ディジョージ症候群で最も多く見られるのが先天性心疾患です。先天性心疾患は心臓に生まれつき異常があることで、具体的にはファロー四徴症や大動脈離断症などがあります。

ディジョージ症候群における先天性心疾患で最も多いと言われているのがファロー四徴症です。ファロー四徴症の患者の15%程度がディジョージ症候群とも言われています(※②)。

ファロー四徴症は心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗、右心室肥大の4つの特徴をもった先天性心疾患(※③)です。程度や合併症などにより症状は様々ですが、生後2~3ヶ月の時期から低酸素血症のため唇や爪の色が紫色になるチアノーゼが出現します。

そのほかに体重増加不良や哺乳困難、呼吸切迫などの心不全の症状が見られる場合もあります。

治療としては手術を行い、合わせて薬物療法、生活指導を行います。

副甲状腺機能低下症

ディジョージ症候群は副甲状腺が低形成の場合があります。通常副甲状腺からは副甲状腺ホルモンが分泌されており、血液中のカルシウム濃度を維持しています。副甲状腺機能低下症の場合、血中のカルシウム濃度の低下が発生し、手足の筋肉の痙攣(テタニー)、しびれなどが発生します。

症状に合わせて、活性型ビタミンD製剤やカルシウム製剤などの内服で治療を行います。

胸腺の低形成

ディジョージ症候群は別名胸腺低形成症候群とも呼ばれることがあり、胸腺がない、もしくは未発達です。胸腺は免疫機能に重要とされるT細胞の発達に必要な臓器です。胸腺がない、もしくは未発達の場合、ウイルスや細菌に対する免疫力が低くなります。

免疫力の低下に対しては、造血幹細胞移植や抗生物質で治療を行う場合があります。また胸腺組織を移植する治療も報告されています。

特異的顔貌

ディジョージ症候群では下記のような特異的顔貌が見られます。

  • 小さな口
  • 小顎症
  • 短い人中
  • 耳が低い位置にある
  • 目と目の間があいている
  • 口蓋裂(口の中の天井に当たる部分が割れており、口と鼻がつながっているように見える)

口蓋裂の場合、言葉を覚え始める1歳半から2歳ごろに手術を行い、手術後に正しい発音ができるように言語治療を行います(※④)。言葉を覚え始める1歳半から2歳ごろに口蓋形成術(こうがいけいせいじゅつ)を行うのが理想的です。手術後は正しい発音ができるように言語治療を行います。

精神発達遅滞、言語発達遅滞など

ディジョージ症候群は精神発達遅滞、言語発達遅滞などがみられる場合があります。小学校就学前からの学童期の前から目立つことが多いとされていますが、程度や症状には個人差があります。

個人に合わせた、幼少期からの介入や療育を継続的に行うことが重要とされています。

ディジョージ症候群のまとめ

今回の記事では、ディジョージ症候群について、原因や診断、様々な症状の治療法や予後などについて紹介しました。

ディジョージ症候群とは、22番染色体の一部(22q11.2)に小さな欠失がある疾患で、約4000~6000人に1人の割合で発生すると言われています。確実な原因ははっきりと分かっておらず、胸腺がない、もしくは未発達なことから、胸腺低形成症候群とも呼ばれています。

多くは心臓や副甲状腺、顔面形成などに異常が見られます。また精神発達遅滞、言語発達遅滞などを伴うこともあるため、症状や程度に合わせて治療を行います。

【参考文献】
小児慢性特定疾病情報センター – 胸腺低形成(ディ・ジョージ(DiGeorge)症候群/22q11.2欠失症候群)
難病指定センター – 22q11.2欠失症候群(指定難病203)
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター – ファロー四徴症(tetralogy of Fallot)
口腔外科相談室 – 口唇裂口蓋裂などの先天異常

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平野香菜子
内科、精神科にて看護業務に従事経験を持つ看護師・保健師のライター。2020年には、食事や運動をはじめとした生活習慣改善のための保健指導などを行う企業保健師としても活動中。 略歴:2016年 美容系専門学校講師、2017年 大学教員(助手)、2018年 看護師、2020年 企業保健師。取得資格:看護師、保健師。

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