2022.09.30

妊娠

女性ホルモンの役割とは?妊娠中の変化も解説

私たちの体は様々なホルモンの働きで支えられており、女性ホルモンも例外ではありません。女性ホルモンは月経や妊娠、出産とも深く関わりがあり、ホルモンバランスの変化によって様々な影響があります。

今回の記事では、女性ホルモンについて、ホルモンバランスを整える方法、妊娠中のホルモンバランスの変化について紹介します。

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女性ホルモンとは?ホルモンについても紹介

女性ホルモンとは女性の健康や体のリズム、妊娠や出産などにも大きく関わりのある大切なホルモンです。様々な種類があり、体の機能や組織をコントロールしています。 女性ホルモン以外にも、人間の体は様々なホルモンの働きで支えられています。

ホルモンとは?

女性ホルモンの話をする前に、少しホルモンの働きについて紹介します。
ホルモンとは、私達の体の様々な働きを調整する物質です。ホルモンが分泌される量は、女性ホルモンの場合一生でティースプーン1杯程度と言われており、多すぎても少なすぎても体に様々な影響があるため、注意が必要です。現在は100種類以上のホルモンが発見されており、これからもまだ増えると考えられています(※①)。

女性ホルモン以外にもホルモンは様々種類があり、卵巣をはじめ、脳下垂体や甲状腺・副甲状腺など、全身のいたるところでホルモンは作られます。作られたホルモンは血液を通って必要な細胞に作用することが分かっています。

代表的な女性ホルモンの役割

女性の健康や体に様々な影響を与える女性ホルモンについて、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類を紹介します。どちらも女性の体の機能の維持、妊娠や出産などに欠かせないホルモンであり、個人差はあるものの8歳くらいから分泌がはじまると言われています。

エストロゲン(卵胞ホルモン)の役割

  • 丸みのある体つきや乳房の発育など、女性らしい体をつくる
  • 自律神経の働きを安定させる
  • 骨や関節、血管、皮膚などを健康に保つ
  • 妊娠に備える体作りをする

エストロゲン(卵胞ホルモン)は女性らしい体を作るなどの役割があり、卵胞から出ることから「卵胞ホルモン」とも呼ばれています。一般的に月経のはじまる思春期からエストロゲンの分泌量が増え、閉経の前後5年間あたりで分泌量が低下します。

エストロゲン(卵胞ホルモン)は多すぎても、少なすぎても様々な影響があります。エストロゲン(卵胞ホルモン)と関わりのある代表的な疾患は、PMS(月経前症候群)や子宮内膜症、子宮筋腫や更年期障害、骨粗しょう症などです。

例えば更年期障害は、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が低下したことによりホルモンバランスが乱れ、頭痛やめまい、イライラや不安感など、様々な心身の不調が現れます。

また女性が骨粗しょう症になりやすい理由の1つにも、エストロゲン(卵胞ホルモン)が関係しています。エストロゲン(卵胞ホルモン)は骨の吸収を抑制する働きがあります。エストロゲンが欠乏すると骨密度が低くなるため骨粗しょう症のリスクが高まり、50歳以上の女性の約24%が骨粗しょう症になるといわれています(※②)。

プロゲステロン(黄体ホルモン)の役割

  • 妊娠をしやすい状態にする
  • 妊娠を継続する
  • 乳腺を発達させる
  • 基礎体温を上げる
  • 食欲を増やす

プロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠を助ける、継続させるホルモンで、月経とも大きく関わりがあります。 エストロゲンとプロゲステロンの分泌は対の関係で、エストロゲンが増えるとプロゲステロンは減るという関係があります。

プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が大きく増えるのは月経でいう黄体期で、子宮内膜をふかふかにして、受精卵が着床しやすい状態にします。妊娠が成立しなかった場合、排卵の1週間後くらいからプロゲステロンの分泌は減少します。

ホルモンバランスを整える方法

女性ホルモンの量は、一生を通してティースプーン一杯程度と言われています。そんな少量の女性ホルモンですが、多すぎても少なすぎても、様々な影響があります。ホルモンバランスを整える方法を紹介します。

  • 毎日起床、就寝時間を一定にし、規則正しい生活をおくる
  • バランスのよい食事摂取をこころがける
  • 適度な運動を継続的に行う
  • 睡眠時間を削らない(できれば7時間以上の睡眠を心がける)

※女性ホルモンは、生理とも密接な関わりがあります。月経痛や不正出血、PMS(月経前症候群)などの症状がある場合は、一度婦人科を受診し、医師の指示に従ってください。

妊娠中のホルモンバランスの変化

女性ホルモンは妊娠、出産にも密接に関わりがあります。女性ホルモンは妊娠を継続するために、通常と分泌量が変化します。妊娠中のホルモンバランスの変化を紹介します。

妊娠成立時(着床時)の女性ホルモンの変化

女性の体は、プロゲステロン(黄体ホルモン)の働きにより、子宮内膜が整えられ、着床しやすい状態になります。妊娠が成立しない場合はプロゲステロン(黄体ホルモン)が減り、ふかふかの子宮内膜が剥がれ、いわゆる「月経」となります。 妊娠成立時(着床時)の場合、プロゲステロン(黄体ホルモン)は右肩あがりで増えていきます。

妊娠を確認するサインの1つに、妊娠検査薬があります。妊娠検査薬は、尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と呼ばれるホルモンを検知する検査です。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は胎盤の絨毛組織から分泌される性腺刺激ホルモンです。

妊娠初期の女性ホルモンの変化

妊娠初期は妊娠成立~4ヵ月頃(0週~15週)の約4ヵ月間を指します。 妊娠成立時(着床時)からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が分泌されることで、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量も増加しています。

エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増加することは、妊娠の継続に一役買っていますが、妊娠中の様々な症状を引き起こす原因にもなります。 妊娠初期のエストロゲンの増加は、吐き気や嘔吐の原因になると言われています。これはいわゆる妊娠初期の「つわり」です。

また妊娠初期のプロゲステロンの増加は、便秘、お腹が張る、ガスが溜まるなどの症状の原因になると言われています。プロゲステロンは、腸の働きを抑えるという作用があります。妊娠中に便秘になりやすいといった症状があるのは、このプロゲステロンの分泌も原因の1つと言われています。

加えて、プロゲステロンには体に水分を溜めるという働きがあります。妊娠中にむくみやすいのは、プロゲステロンの作用が原因の1つと言われています。

妊娠中期の女性ホルモンの変化

妊娠中期は妊娠5ヵ月~7ヵ月頃(16週~27週)の約3ヵ月間を指します。妊娠中期においても、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量は通常右肩あがりで増加し続けています。

多くの場合、胎盤が完成する15週~16週頃には、つわりはおさまると言われています。(ただしつわりの程度や症状には個人差があります)

妊娠後期の女性ホルモンの変化

妊娠後期は妊娠8ヵ月以降(28週~)を指します。エストロゲンとプロゲステロンは出産まで右肩上がりで増加し続けています。プロゲステロンが増え続けることで、日中に強い眠気を感じる方も多いです。

分娩後の女性ホルモンの変化

妊娠中に増加し続けていたエストロゲンとプロゲステロンは、出産直後にほぼゼロとなります。一方、妊娠初期からプロラクチン(乳腺刺激ホルモン)も右肩上がりで上昇していました。プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)は乳腺を発達させ、母乳を分泌するホルモンです。プロゲステロンが出産直後にゼロになったことで、母乳が作られるようになります。

このように、妊娠中から出産、出産後にかけて、女性の体はホルモンの大変動が起きています。産後のホルモンの急激な変動は産後うつが原因の1つと言われており、現在産後3~6カ月以内の10~20%の女性が産後うつが見られるとされています。

女性ホルモンのまとめ

今回の記事では、ホルモンの働きや女性ホルモンについて、また代表的な女性ホルモンの役割や、妊娠中のホルモンバランスの変化について紹介しました。 ホルモンとは、私達の体の様々な働きを調整する物質で、多すぎても少なすぎても私達の体に様々な影響を与えます。

女性ホルモンの代表的なものに、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」があり、女性の体の機能の維持や妊娠、出産などに欠かせないホルモンです。

女性ホルモンの量は生涯を通してティースプーン一杯程度と言われており、個人差はあるものの8歳くらいから分泌がはじまり、女性らしい体つきや月経、妊娠や出産に様々な影響を与えます。

ホルモンバランスを整えるためには、規則正しい生活やバランスのよい食事摂取、適度な運動や良質な睡眠が重要です。

【参考文献】
一般社団法人 日本内分泌学会 – ホルモンについて
千葉県 – 女性はなぜ骨粗鬆症になりやすいのですか。

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ABOUT ME

平野香菜子
内科、精神科にて看護業務に従事経験を持つ看護師・保健師のライター。2020年には、食事や運動をはじめとした生活習慣改善のための保健指導などを行う企業保健師としても活動中。 略歴:2016年 美容系専門学校講師、2017年 大学教員(助手)、2018年 看護師、2020年 企業保健師。取得資格:看護師、保健師。

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