2020.10.02
出生前診断
新型出生前診断(NIPT)ではお母さんの採血のみで精度高く染色体異常について検査することができます。染色体異常の中でも21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)が全染色体疾患の約7割を占めていて、その中でも21トリソミーが全体の半数となっています。
今回はそれぞれの疾患について詳しく説明していきます。
21トリソミー(ダウン症候群)は22対ある常染色体のうち、21番目の染色体の数が正常の場合2本であるのに対して、3本あるという数の異常で発症します。
染色体の構造の違いによって、標準型、転座型、モザイク型に分類されます。
ダウン症は約600~800人に1人の割合で出生します。妊娠の時点で実際には2倍程度の確率ですが、自然流産や胎児死亡が起きやすいため、実際に生まれてくる割合はこの程度と言われています。
また、ダウン症はお母さんの出産年齢に依存して発症確率が上がります。お母さんが20代前半では発症率が1/1000であるのに対し、お母さんの年齢が上がるごとに徐々に確率が上がり、40歳以上になると1/100となります。
21トリソミーでは、様々な典型症状が存在します。
両目が少し離れていてやや吊り上がりきれいな二重瞼、鼻が小さめ、舌が大きめ、耳が下の方に位置している、後頭部が絶壁などです。
筋力や言葉の遅れが指摘されます。
心内膜欠損症、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症などの先天性の心疾患を50%のダウン症児がもって生まれてきます。近年では、胎児の段階でエコーで心疾患の診断ができるため、出産後のフォローや手術の実施などの治療が積極的になされています。
ダウン症児は、通常の10~20倍白血病になりやすいという報告があります。
十二指腸閉鎖、鎖肛
これらの症状があるため、以前は平均寿命が短い先天性疾患とされていましたが、最近では医療の発達とともに平均寿命も延び、約60歳と言われています。
ダウン症の子どもは地域の小中学校へ通い普通学級か特別支援学級で学ぶか、特別支援学校へ通うかを選択することができます。高校では特別支援学校へ大半が進学します。仕事は施設や作業所での軽作業や飲食店などの様々な分野で、その人の個性を生かした就職をしています。
18トリソミー(エドワーズ症候群)は、22対ある常染色体のうち、18番目の染色体の数が正常の場合2本であるのに対して、3本あるという数の異常で発症します。
18トリソミーは3500~8500人に1人の頻度で発生し、女児に多いことが知られています。(男:女=1:3)自然流産となることが多くお母さんの出産年齢が高くなるにつれてリスクが増大します。
18番染色体全長が重複している(フルトリソミー)場合
出生時低身長、小頭症、後頭部突出、耳の位置が低い、手指の重なり、短い胸骨、揺り椅子状の足などがあります。
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存、大動脈狭窄などの先天性心疾患をもって生まれてくる場合が多いです。
上気道閉塞、無呼吸発作、横隔膜子鑑賞など
食堂閉塞、鎖肛、胃食道逆流など
馬蹄腎、水腎症、鼠径ヘルニアなど
多指症、合指症、関節拘縮、側弯症など
モザイク型トリソミーの場合(正常の細胞とトリソミーの細胞が共存している場合)フルトリソミーと同様の症状で、やや軽症傾向であることが多いです。
18トリソミーそのものに対する治療方法はありません。先天性心疾患によってうっ血性心疾患や肺高血圧症が進展しやすいため、標準新生児集中治療や心臓手術などの治療が行われます。また、上下気道病変や無呼吸発作によって呼吸不全をおこしやすいため、呼吸器管理を基本とした全身管理がなされます。
18トリソミーの子どもは妊娠中に50~90%は胎児死亡してしまいます。半数以上は生後2か月以内に死亡し、生後1年まで生存する確率は10%未満と言われています。しかし、ゆっくりであれ確実に成長していき周囲のことを理解して笑顔を見せたり、反応を見せるようになっていきます。医療の発達により1歳以上でも頑張って生きている子どももいます。
13トリソミー(パト―症候群)は、22対ある常染色体のうち、13番目の染色体の数が正常の場合2本であるのに対して、3本あるという数の異常で発症します。
13トリソミーは、5000~12000人に1人の発症確率とされています。お母さんの出産時の年齢が高ければ高いほどリスクが増大します。
出生時低身長、頭が小さい、口唇口蓋裂、眼球が小さい、耳の位置が低い、指が多い、指が屈曲をしている
心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、両大血管右室起始症など
無呼吸発作、喉頭・気管軟化症
全前脳胞症、けいれん
胃食道逆流症、臍帯ヘルニアなど
停留精巣、水腎症など
甲状腺機能低下症など
13トリソミーそのものに対する治療はありません。合併症に合わせた治療を行っていきます。特に心疾患や呼吸器合併症が重篤な場合が多いので、早期の心臓手術や酸素投与、人工呼吸器による呼吸管理などのさまざまなサポートが実施されます。
また、経口哺乳がうまくいかないことがあるため、経管栄養や胃ろうの造設などの栄養管理も行われます。
13トリソミーの子は出産に至るのは4%と言われています。出生しても約80%が生後1か月以内に死亡します。1年以上生存できる割合は10%未満とされています。しかし、中には10年後でも生存している報告があり、合併症の度合いや個々の生命力によって左右されると言えます。
2000~3000人の1人の割合で、性染色体のX染色体が1つしか存在しないことで発症します。症状は、低身長、卵巣機能不全、月経異常、奇形兆候(外反肘などの骨格異常、翼状頚などの軟部組織異常、大動脈縮窄などの内臓奇形)などがあります。治療は月経異常などに対してはホルモン療法が実施されています。長期予後には大きな問題がない疾患とされています。
1000人に1人の割合で、性染色体がXXYという構造で発症します。症状は学習障害や長い腕と足、小さな精巣、無精子症などがあります。青年期からはテストステロン療法を実施します。長期予後には大きな問題がない疾患とされています。
1000人に1人の割合で性染色体がXXXという構造で発症します。症状は軽い知的障害のみで妊娠・出産も可能です。
1000人に1人の割合で、性染色体がXYYという構造で発症します。症状は、高身長、多動などが言われていますが、障害を通じて気付かれない場合が多いです。
弊社における新型出生前診断では、全染色体異常を検査することができます。
常染色体の数的異常に関しては、前述した21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー以外はごくまれにしか存在しません。理由としては、上記3つ以外の常染色体は遺伝情報が多くトリソミーによる変化が致死的で、そもそも着床しないことや早期に流産してしまうことが多いためです。
出産報告なし
モザイク(正常細胞と異常細胞が混在)でごく稀に出産例あり
ごく稀に出産例あり
モノソミー(通常2本の常染色体が1本のみ)、倍数体(3本ずつですべてそろった三倍体など)などの常染色体の数的異常は通常流産してしまいます。
弊社では、染色体の数的異常だけでなく構造上の異常も検査をすることができます。主な微小欠失症候群は以下の通りです。
心疾患など
成長障害、てんかんなど
精神発達遅延など
成長障害、猫のような泣き声など
精神発達遅延など
DNA先端医療株式会社における新型出生前診断(NIPT)において、診断可能な染色体異常について詳しくまとめてみました。全染色体異常の約半数を占める21トリソミー(ダウン症)においては、近年平均寿命が伸びており、進学や就職についても情報を得る必要があります。18トリソミー、13トリソミーにおいても生命予後は不良ではありますが、その子の合併症の状態や生命力によっては平均寿命をはるかに超えて生きる子もいます。
一言で染色体異常といっても、その子によってさまざまな特徴を有して生まれてきます。新型出生前診断で染色体異常について知ることで、事前に出産する環境や出産後の環境を整えることができます。また、疾患について正しい知識を身に着けることで心の準備をすることもできます。どのような子においても生まれてくるための環境を事前に整えてあげることが非常に重要と言えます。
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