2023.05.22
出生前診断
染色体異常による先天性の病気の中に、XYY症候群(ヤコブ症候群)があります。妊婦さんの中には、XYY症候群(ヤコブ症候群)について気になっている人もいるのではないでしょうか?
この記事では、XYY症候群(ヤコブ症候群)の症状や原因、治療法や予後について解説しています、XYY症候群(ヤコブ症候群)の詳しい内容を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
XYY症候群(ヤコブ症候群)とは、男児にみられる性染色体異常です。性染色体は赤ちゃんの性別を決定する染色体で、男児が「XY」、女児なら「XX」となります。
XYY症候群(ヤコブ症候群)はY染色体が1本余分にある「XYY」となります。通常、染色体の数は23対46本ですが、XYY症候群(ヤコブ症候群)では、Y染色体が余分にあるため47本になります。
XYY症候群(ヤコブ症候群)の男児は出生1,000人あたり1人の頻度でみられます。しかしながら、染色体異常による障がいの程度が軽いため、すぐに診断されるわけではありません。
XYY症候群(ヤコブ症候群)のように、性染色体異常によって起こる男児の病気にクラインフェルター症候群があります。クラインフェルター症候群の性染色体は「XXY」で、母親由来のX染色体が1本余分にある状態です。
頻度はXYY症候群(ヤコブ症候群)よりも高く、出生した赤ちゃん500人に1人の割合でみられます。
XYY症候群(ヤコブ症候群)は、他の遺伝子疾患と比べると、症状が軽度といえます。身体的な特徴には、大きな歯・平らな足・脊椎の左右の湾曲などがあります。
身長が平均より高くなることが多いですが、筋緊張が低いので、発達が遅れることがあります。
また、男児によってはチックや喘息がみられることもあります。知能は家族より低くなる傾向があり、言葉の発達が遅れがちで、他人とのコミュニケーションが苦手なことが多いです。
XYY症候群(ヤコブ症候群)により、発達障害がみられることがあります。近年、自閉症やスペクトラムや注意欠陥・多動性(ADHD)男児の発症率が高めであることから、性染色体が関わっていると考えられています。
行動異常がみられることもありますが、過去に言及されていたような暴力的な行動はみられません。ただ、こだわりが強く、物事の変化を受け入れにくさがみられることもあります。人によっては感覚に過敏なこともあれば、鈍い反応をすることもあります。
遺伝情報を含む染色体は、父親と母親から受け継ぐためペアになっており、性染色体は男性が「XY」、女性が「XX」になります。
一般の細胞の染色体はペアになっているので、23対46本ありますが、精子や卵子などの性細胞はペアになっておらず、23本です。これは受精により、精子と卵子が結合するためです。
精子や卵子などの生殖細胞は、分裂により染色体が半分になります(減数分裂)。例えば、男性の精子であれば「XY」が分裂して、X染色体とY染色体に、女性の卵子は「XX」が分裂して、2つのX染色体ができます。
前置きが長くなりましたが、XYY症候群(ヤコブ症候群)は、減数分裂で染色体が分離されないままコピーされるため、余分に1本多くなります。減数分裂で不分離が起こる原因については明らかになっていません。
多くの場合、XYY症候群(ヤコブ症候群)は、次世代に遺伝することはほとんどありません。XYY症候群(ヤコブ症候群)は減数分裂のエラーによって起こるためです。
同様の理由で、一部の細胞にXXYの染色体がみられるXYY症候群(ヤコブ症候群)のモザイク型もほとんど遺伝しません。言い方を変えれば、どのカップルでもXYY症候群(ヤコブ症候群)が起こる可能性があるといえます。
なお、XYY症候群(ヤコブ症候群)は、高齢出産との関連はありません。余分なY染色体は父親由来のもので、女性はY染色体を持たないためです。また、生殖細胞の分離の際にエラーが起こるのは、年齢によるものではないとされています。
XYY症候群(ヤコブ症候群)は遺伝子疾患であるため、根本的な治療法はありません。身体的な症状に合わせた対症療法や、発達障害に合わせた療育を受けることが大切です。
XYY症候群(ヤコブ症候群)そのものは、命に関わる病気ではありません。知能の発達は患者さんごとに異なりますが、高等教育を受けられるケースも多いです。発達障害や行動異常が見られる場合は、療育訓練により、社会の中で生きていくのに必要なコミュニケーションやスキルを学べます。
XYY症候群(ヤコブ症候群)による発達障害は、個性として捉えることもできるでしょう。
XYY症候群(ヤコブ症候群)の生殖能力は、患者さんによって異なります。XYY症候群(ヤコブ症候群)を持つ男性の半数は、精子を作る能力が低いとされていますが、中には生殖能力があり子どもを持つ方もいます。
そのため、男性不妊をきっかけにXYY症候群(ヤコブ症候群)が判明することもあります。
XYY症候群(ヤコブ症候群)は、染色体検査によって行います。患者さんから採取した血液や細胞を培養し、そこから出た染色体を固定して調べます。XYY症候群(ヤコブ症候群)では、異質なY染色体を探しやすくために、蛍光色で染色して検査をします。
XYY症候群(ヤコブ症候群)の検査は、妊婦さんに行うNIPT(新型出生前診断)でも行えます。NIPT(新型出生前診断)は認可施設と非認可施設で受けられますが、認可施設は調べられる病気が3つに限定されているのでXYY症候群(ヤコブ症候群)は調べられません。
非認可施設のNIPT(新型出生前診断)は、さまざまな遺伝疾患を調べられるので、お腹の赤ちゃんがXYY症候群(ヤコブ症候群)の可能性についても知ることができます。
検査で陽性になった場合は、確定診断を受けるには、羊水検査などの精密検査を受ける必要があります。XYY症候群(ヤコブ症候群)は一部の遺伝疾患のように重度の障害が見られることは少ないですが、病気について詳しく知るために専門家による遺伝カウンセリングを受けることをおすすめします。
XYY症候群(ヤコブ症候群)は、男性由来のY染色体が1本余分にある染色体異常です。精子を作る際の減数分裂のエラーによって起こりますが、両親の年齢が原因ではありません。
XYY症候群(ヤコブ症候群)による症状は、他の遺伝疾患と比べると軽度ですが、発達障害や不妊がみられることがあります。子どもの頃に診断されるケースも少ないですが、症状に合わせた療育を受けることもできます。
DNA先端医療株式会社では、妊婦さんに対するNIPT(新型出生前診断)を行っています。受検を検討している人は、ぜひご相談ください。
参考:
疾患詳細
ADHDの原因は分かっているの?
XYY 症候群 の一幼児例
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