2024.01.25

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プラダーウィリー症候群とは?気付かないで大人になる?特徴について解説

プラダーウィリー症候群とは?気付かないで大人になる?特徴について解説

筋緊張や色素低下をきっかけに気づかれやすいプラダーウィリ症候群。プラダーウィリ症候群は、染色体異常によって起こる先天性の病気です。この記事では、プラダーウィリ症候群について解説します。

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プラダーウィリ症候群とは?症状について

プラダーウィリ症候群は、15番染色体の長い部分の異常により、視床下部の機能に異常が起こる病気です。

プラダーウィリ症候群の頻度は生まれてくる赤ちゃんの1.5万人に1人といわれており、人種による頻度の違いはありません。

プラダーウィリ症候群の症状

プラダーウィリ症候群では、脳の視床下部の機能の異常により、ホルモン分泌や神経に関する症状がみられます。プラダーウィリ症候群の具体的な症状は以下です。

ホルモン分泌の異常による症状低身長、肥満、性機能障害、糖尿病
神経の異常筋緊張の低下、特徴的な性格、異常な行動
身体的な症状全身の色素が薄い、アーモンド目、手足が小さい

プラダーウィリ症候群の原因

プラダーウィリ症候群の原因は、15番染色体の長腕q11-13の父親由来の遺伝子の働きが失われることです。

染色体には、22ペアの常染色体と1ペアの性染色体があります。常染色体にはそれぞれ番号が振られています。

真ん中部分を境に短腕(p)と長腕(q)があり、それぞれバンドのような模様があります。染色体の短腕と長腕の模様部分には番号が振られています。

プラダーウィリ症候群では15番目の常染色体の長腕q11-13の部分に異常がみられます。

プラダーウィリ症候群の原因は父親にある?

プラダーウィリ症候群の15番染色体の異常では、父親由来の遺伝子の働きが失われるため、原因は父親にあると考える人もいるかもしれません。

プラダーウィリ症候群により、15番染色体の長腕q11-13の父親由来の遺伝子の働きが失われる仕組みには、以下の原因が知られています。

  • 15番染色体のq11-q13の父由来染色体の微細欠失(70%)
  • 15番染色体の母性片親性ダイソミー ※Robertson転座を含む (20%)
  • ゲノムインプリンティングの障害による刷り込み変異 (5%)

その他、非常にまれですが、以下の例もみられます。

  • インプリンティング領域内のSNORD116を含むが、インプリンティングセンターを含まないタイプの極微細欠失
  • ホスト遺伝子の「SNRPN/SNRUF」の変異
  • ホスト遺伝子とSNORD116の連続性を破壊する染色体異常や染色体転座

プラダーウィリ症候群の遺伝について

プラダーウィリ症候群が遺伝するかどうかは、15番染色体の長腕q11からq13の父親由来の遺伝子の働きが失われる原因によっても異なります。

15番染色体のq11-q13の父由来染色体の微細欠失や母性片親性ダイソミーでは遺伝することはありません。また、刷り込み変異は受精後の細胞分裂で生じるため、家族内での発症は報告されていません。

一方で、以下については遺伝する可能性があるため、妊娠時に遺伝子診断などの検査や専門家による遺伝カウンセリングを受けることを検討しましょう。

  • ローバトソン転座
  • インプリンティング領域内のSNORD116を含んで、インプリンティングセンターを含まない極微細欠失
  • ホスト遺伝子とSNRD116の連続性を破壊する染色体異常

プラダーウィリ症候群は気付く?

いくつかの所見から、生まれてきた赤ちゃんがプラダーウィリ症候群だと気づくことができます。プラダーウィリ症候群の赤ちゃんは、以下の症状がみられます。

  • 筋緊張の低下
  • 全身の色素が薄い
  • 外性器の形成が十分でない

筋緊張の低下が強いと、乳頭を吸啜できないため人工栄養となることもあります。また、色素低下により全身の皮膚が白っぽくなるのに加えて、頭髪も白っぽくなり、瞳の色も青や灰色になります。その見た目から、生まれたときに白皮症と誤診されることもあるようです。

外性器については、男の子の赤ちゃんの90%にミクロペニスがみられます。女の子の赤ちゃんででも、陰唇や陰核の形成が十分でありませんが、見逃されてしまうことがあります。

プラダーウィリ症候群の子どもは、3~4歳になると、過食がみられるようになり、肥満や低身長がみられるようになります。また、小学校入学後は、学校の成績の低下やこだわりの強さやパニック症状など行動の問題が目立つようになることがあります。

中学校に入り思春期を迎える頃には、二次性徴がはっきり発現しないなどの例がみられるでしょう。

このように、プラダーウィリ症候群は、年齢によって症状が多岐にわたります。症状の現れ方には個人差がありますが、小さな異常に気付くことで、疾患の診断につながります。

プラダーウィリ症候群の治療

プラダーウィリ症候群は遺伝子の異常によって起こるため、根本的に治療する方法はなく、対症療法をおこないます。

低身長の改善には、成長ホルモン療法がおこなわれます。成長ホルモン療法では身長を伸ばすだけでなく、筋肉質の体に近づけるので、肥満の予防にもなります。体の筋肉量が増えることで、子どもの活動が増えるでしょう。

またプラダーウィリ症候群では、早い段階からの栄養管理が必須です。疾患により一度肥満になると、減量するのが困難になります。そのため、適切な食事療法により肥満を予防することが大切です。

発達の遅れについては、療育や特別支援教室を通じたフォローを受ける必要があります。

プラダーウィリ症候群の経過

プラダーウィリ症候群では、乳児期に運動の発達遅延がみられますが、少しずつ追いついてくため歩行開始後は健康な子どもと大きな差はみられません。

多くの場合、プラダーウィリ症候群の子どもには知能の遅れがみられるため、支援を受ける必要あります。プラダーウィリ症候群の子どもは成人後、障がい者就労施設で働くことを目指します。

知能の遅れの程度によっては、仕事にうまくなじむのが難しいケースもあるでしょう。特に、こだわりやパニック症状は、有効な治療薬がありません。プラダーウィリ症候群を抱える人は、早いうちから社会参加を目指し、周囲の人の理解や支援が必要になります。

プラダーウィリ症候群の検査

プラダーウィリ症候群は、FISH法と呼ばれる遺伝子検査によって調べることができます。多くの場合、赤ちゃんの筋緊張の低下や全身の色素の少なさ等の所見をきっかけに、FISH検査をおこないます。

FISH検査では、蛍光物質を用いて特定の遺伝子の断片の欠失や位置を調べられます。

妊娠中にもプラダーウィリ症候群の可能性を調べられる

妊娠中におなかの赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べる検査にNIPT(新型出生前診断)があります。NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液に含まれている胎児のDNAのかけらを調べる検査です。

NIPT(新型出生前診断)を受けられる認定施設では、ダウン症を含む3つの染色体異常についてのみ調べられます。プラダーウィリ症候群について調べることはできません。

DNA先端医療株式会社では、世界基準の項目数で検査をしています。妊娠中に赤ちゃんがプラダーウィリ症候群かどうか知りたい場合は、調べることができます。お気軽にご相談くださいませ。

まとめ

プラダーウィリ症候群は、15番染色体の長腕q11-13の父親由来の遺伝子の働き失われている先天異常です。プラダーウィリ症候群の症状は年代によっても大きく変わるので、適切な治療や支援を受けることが大切です。

参考:
プラダーウィリ症候群(指定難病193)
プラダー・ウィリ(Prader-Willi)症候群

ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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