2021.01.29

出生前診断

出生前診断は誰が受けるべき?

出生前診断は誰が受けるべき?

新たな命をお腹に授かって、親が何よりも願うことは、赤ちゃんに無事に元気で生まれてきてほしいということではないでしょうか。お腹の中の赤ちゃんに病気がないか、生まれてくる前に知りたいと思う人もいると思います。今回は、出生前診断は誰が受けるべきかについて詳しく説明していきます。

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出生前診断とは?

出生前診断とは?

日本産科婦人科学会が定める出生前検査・診断の概念は、「妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合や、胎児の異常はあきらかではないが、何らかの理由で胎児が疾患を有する可能性が高くなっていると考えられる場合に、その正確な病態を知る目的で検査を行うこと」であるとされています。近年では、出産年齢が上昇していることにより、胎児が疾患を有する可能性が高くなっている人が増加しています。そのような方は、出生前診断を受けることによって、不安要素を減らすことができると言えます。

出生前診断を行うことで、事前にお腹の中の赤ちゃんのことを知ることができ、場合によっては妊娠中から治療を行うこともあります。また、出産直後から高度な医療が必要となる場合があるため、十分な治療を受けられる病院へ転院したり情報共有を行ったりして、出産後の治療環境を整えることができます。他にも、出産前に情報を知ることによって、ご夫婦で情報を共有し合ってしっかりと話し合う時間を持つことや、出産後の育てていく環境もあらかじめ整えることができます。出生前診断を行うことによって、さまざまなメリットがあると言えます。

しかし、一方で出生前診断を受けたことによって、結果によっては思い悩んで辛い思いをする方もいます。また、命の選別につながるという考え方もあり、結果に対してどのような選択を行っていくのか、正しい情報を得ながら自己決定していく必要があります。そのため、出生前診断を受ける際には、必ず遺伝カウンセリングが受けられる体制が整っている施設で受けることが大切です。

出生前診断で分かること

出生前診断で分かること

お腹の中の赤ちゃんが先天的(生まれつき)に何らかの疾患を持っている可能性は、全体の3~5%程度と言われています。およそ25人に1人の割合で、何らかの異常がみられるということです。出生前診断で分かることは、赤ちゃんの何らかの形の異常(超音波エコー検査で見た目で分かる異常)や染色体異常のみで、すべての先天性疾患が分かるわけではありません。視覚や聴覚などの疾患、自閉症などの疾患など、出生前診断では分からずに出産した後に発覚する疾患も多くあります。

先天的な疾患として最も多いとされているのは心臓などの奇形です。特に心室中隔欠損症は先天性心疾患の約6割程度とされています。心室中隔欠損症などの心疾患は、超音波エコー検査で発見されることが多いと言われており、心疾患を見つけるためにわざわざ検査を実施するというよりは、普段の妊婦検診で赤ちゃんの心臓を診察しているときに発覚することが多いです。

次いで先天性疾患の中で多いのが、「ダウン症候群」です。遺伝子情報の詰まったDNAが折りたたまれたものを染色体と言います。染色体は本来であれば2本で1対であり、22種類(44本)の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体で私たちの身体は構成されています。ダウン症候群は、この21番目の染色体が3本で1対になっていることで発症します(21トリソミー)。このような染色体異常は、先天的な疾患全体の約1/4とされていて、この染色体異常の中でもダウン症候群が約半数を占めており、生まれてくる赤ちゃん全体の500人に1人の割合でダウン症候群と言われています。ダウン症候群などの染色体異常も出生前診断で発見することができます。出生前診断の超音波検査や母体の血液検査などの非確定検査の結果から疑われた場合、羊水穿刺や絨毛検査などの確定検査が実施されます。近年では、「新型出生前診断(NIPT)」という、母体の採血を行うことで母体の血液中に含まれている赤ちゃんのDNAの断片を調べて染色体異常の有無を調べる検査も行われています。

その他、口唇口蓋裂や多指症などの身体的奇形なども超音波エコー検査で出生前に分かることがあります。

近年の妊娠・出産の現状

近年の妊娠・出産の現状

近年、女性の社会進出などを背景に結婚年齢の高齢化が進んでいます。それに伴って出産年齢も高くなっており、35歳以上の分娩数は20年前と比較して2倍以上に増えています。近年では、医療の発展もあり、35歳以上の高齢出産でも安全に妊娠・出産を迎えることができるようになっています。

しかし、出産年齢が高くなることによって、さまざまなリスクが上昇することが分かっています。例えば、妊娠高血圧症候群や早産などのリスクは母体の年齢が上がる程高まります。また、母体の年齢とお腹の中の赤ちゃんの染色体疾患の発生率は相関しており、母体が30歳を過ぎたころから発生率は上昇し始めます。ダウン症候群では、母体年齢が30歳のときよりも40歳になると、発症頻度が10倍以上であるというデータもあり、母体年齢が40歳のときには約80人に1人の確率でお腹の中の赤ちゃんが「ダウン症候群」と言われています。

このように、出産年齢が上がることで、母体にも赤ちゃんにもさまざまなリスクが高くなるため、出生前診断の需要が高まっていると言えます。

出生前診断を受けられる対象

出生前診断を受けられる対象

超音波エコー検査は、通常の妊婦検診で行われる通常超音波検査(分娩予定日の決定、胎盤位置や胎児発育、胎児健康度の評価など)と、出生前診断を目的とした胎児超音波検査に分けられます。

出生前診断は、全妊婦が受けられるというわけではありません。日本産科婦人科学会は、

 ・夫婦のいずれかが、染色体異常の保因者である場合

 ・染色体異常症に罹患した子どもを妊娠、分娩したことがある場合

 ・高齢妊娠の場合

 ・その他、胎児が重篤な疾患に罹患する可能性がある場合

これらの場合に、遺伝医学的専門知識を備えた専門職が検査前に適切な遺伝カウンセリングを実施した上で行うべきであるという指針を示しています。

また、「新型出生前診断(NIPT)」に関しては、

 ・胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された場合

 ・母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された場合

 ・染色体数的異常を有する子どもを妊娠した既往がある場合

 ・高齢妊娠の場合

 ・夫婦のいずれかが、染色体異常の保因者である場合

これらのいずれかに該当する場合に、検査の対象となると定めています。

出生前診断は、事前に赤ちゃんの情報を知ることができるだけではなく、命の選択という社会的倫理的問題も同時に発生するため、誰でも気軽にスクーリングとして検査ができるというわけではありません。

出生前診断で、どのようなことを知ることができるのか、出産した場合どのような状況になるのかなど、さまざまな正しい情報をまずは知る必要があります。その上で、夫婦や家族で考え、話し合い、自己決定をしていかなければなりません。

まとめ

出生前診断は誰が受けるべき?まとめ

出生前診断は、妊娠中にお腹の中の赤ちゃんの先天性疾患の有無について調べることができます。近年、出産年齢の高齢化により、赤ちゃんが先天性の疾患を持って生まれてくるリスクが高まっている中で、妊娠中からの治療や出産後の環境を整えるために、非常に重要なツールであると考えられます。

しかし、一方で結果に対して思い悩んでしまったり、命の選別をしてしまうという倫理的問題点も発生しています。出生前診断は、妊婦さん全員が受けられるものではなく、ある一定の条件を満たしている妊婦さんが受けられるものです。さらに、遺伝カウンセリングが受けられる施設で出生前診断を受けることが非常に大切になってきます。出生前診断の結果がどのようなものであっても、きちんと受け止めてどのように決断していくのかを専門家と一緒になって意思決定していく必要があります。

DNA先端医療株式会社では、「新型出生前診断(NIPT)」を実施する際に、妊婦さんの知りたいという意思を尊重して、出生前診断の先進国と同じ水準に合わせ検査を希望する妊婦さん全員が出生前診断を受けられる体制を整えています。上記の理由で他院での検査を断られた方も弊社では検査可能です。検査を受けたいけれどあきらめた方も来院されております。

また認定遺伝カウンセラーとの無料電話相談ができる環境が整っており、安心して検査を受けていただくことができます。お腹の中の赤ちゃんの健康状態が気になる方、赤ちゃんが先天性の疾患を持つリスクが高いのではと感じる方はぜひ1度お気軽にご相談ください。

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大河友美
国立大学医学部保健学看護科卒業後、大学病院で6年、看護師として勤務。その後、国立大学医学部保健学大学院へ進学し修士号取得。現在は、子育てをしながら医療ライター・監修者として活動中。学歴:平成21年 国立大学医学部保健学看護科 卒業、平成28年 国立大学医学部保健学大学院 修了。取得資格:看護師、保健師、修士(保健学)。

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