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出生前診断

出生前診断の変遷

 近年少子化が社会問題となっており昨年度の出生数は86.4万人と初めて90万人を下回りました。これらの原因の1つとして晩婚化に伴う出産年齢の高年齢化が考えられており、2018年度の平均出生時年齢は第1子で30歳を超えています。

 出産年齢の高年齢化により生まれてくる赤ちゃんの染色体異常の確率は上昇します。そのためこれまで様々な出生前診断が実施されてきました。最近では、新型出生前診断の導入によりお母さんに負担がなく高精度の検査結果が得られるようになりました。

 今回は出生前診断のこれまでの変遷について説明していきます。

日本国内での出生前診断をめぐる動き

 日本では昭和の初期までは妊娠・出産に医師が関与することはほぼありませんでしたが、戦後徐々に妊婦検診システムが普及していきました。これにより徐々に検診技術が向上していきました。

 出生前診断をめぐる動きについて年表にまとめました。

1948年優生保護法制定
1956年羊水穿刺法による性染色質診断開始
1965年画像診断(単純造影法)開始
1966年羊水穿刺法による染色体分析開始
1968年日本で羊水検査が導入される
1968年絨毛採取が海外で実施される。
1972年胎児鏡を用いた胎児生検開始
1972年画像診断(超音波診断法)開始
1976年羊水穿刺法によるDNA分析開始
1990年代絨毛検査が国内で実施開始
1994年母体血清マーカーが海外より日本に導入
1996年母体保護法成立
1997年母体血漿内に胎児由来DNAの存在が報告される
2011年母体血漿内の胎児由来DNAから21トリソミー検査開始
2012年母体血漿内の胎児由来DNAから18トリソミー、13トリソミー検査開始
2013年NIPTが日本に導入

 日本における出生前診断は1960年代に羊水検査、1970年代に超音波診断、1990年代に絨毛検査、母体血清マーカーが普及しました。

 胎児の細胞を培養して染色体を調べる検査ができるようになり、羊水検査で21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの検査を実施できるようになりました。

 その後、超音波検査が発達しこれまでに徐々に解析度が上がってきたことで、心臓、消化器、脳などの形に現れる病気などを事前に診断することができるようになりました。

 母体血清マーカーは、1994年に海外から日本に導入され、徐々に実施数が増えて2016年の時点で10年前と比較して10倍まで増加しました。

 逆に羊水検査は2014年までは実施件数は増加傾向でしたが、2015年からは減少に転じました。2018年までに約5000人減少しており羊水検査に伴う流産リスクを考えると10人の流産を回避したことになります。これは、陰性的中率が高い新型出生前診断の普及により不要な羊水検査の実施がなくなったことが一因と考えられます。

 これらの従来の出生前診断は導入時にはそれぞれ大きな混乱と社会問題を招きましたが長い年月をかけて受け入れられてきました。

新型出生前診断の研究

 1997年にLoらによって母体血漿内に胎児由来DNAが存在することが報告されました。この胎児由来DNAは、妊娠週数が進むにつれて母体血中濃度が上昇することが判明しています。

 2008年には21番染色体由来のDNA断片の量的な変化を定量することで染色体の数的異常を診断するMPS法が開発されました。

 その後2011年に米国にて21トリソミーの検査、2012年に18トリソミーと13トリソミーの検査が開始されました。日本では2013年に日本産科婦人科学会が指針を発表し、4月から臨床研究として国内10施設で検査が開始されました。2018年3月からは一般診療化しています。

 この新型出生前診断はお母さんの採血のみで検査ができるため、これまでの羊水検査や絨毛検査と比較してお母さんにも胎児にも痛みやリスクがなく安全な検査として普及しました。また、超音波検査や母体血清マーカーとの決定的な違いは精度の高さであり、負担が少ない上に精度が高いため多くの妊婦さんに大きなメリットをもたらしました。

新型出生前診断の実績

日本におけるNIPTの受検者数は58150人(2013年4月~2018年3月までの5年間)で、そのうち高齢妊娠の方が94.5%を占めています。陽性率は21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーを含めて1.79%でした。

 NIPTの受検者数は年々増加しており、陰性的中率が極めて高いという特徴から痛みやリスクを伴う確定検査を回避することを可能にしています。

出生前診断の指針の変遷

 日本産科婦人科学会は、1988年に日本における最初の出生前診断の指針として、「先天異常の胎児診断、特に妊娠絨毛検査に関する見解」を発表しました。

 その後、2回の改変後2013年6月に「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」を発表し現在での出生前診断における基準を示しています。この指針は、妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合にその正確な病態を知る目的でそれぞれの検査を実施し診断を行うということが基本的な概念です。

新型出生診断に対しては、2013年3月に「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針」も示されました。

新型出生前診断の今後の展望

新型出生前診断の今後の展望として、さらなる精度の上昇や検査の簡略化と受検条件の軟化が挙げられます。

 新型出生前診断の精度は上がってきており、将来的には確定検査と同等の検査となることが期待されています。

 簡略化としては現在採血による新型出生前診断が実施されていますが、将来的には血糖測定のようなごく少量の血液からその場で検査結果が分かるようになることが望まれています。

条件の軟化に関しては世界では全妊婦が希望すればわずか900円ほどで、21トリソミーのNIPTが実施できるような体制となっている国もあります。日本では現在認可施設の数に限りがあり、認可施設で受検する場合には年齢制限などのさまざまな条件をクリアする必要があります。世界では新型出生前診断の一般妊婦に対してのスクーリング検査としての有用性が報告されており、今後日本でも年齢制限などの受検制限なく行われることが望まれます。

 無認可施設ではこのような条件の制限がない施設がありますが、遺伝カウンセリングとの連携が不十分であることがあります。

弊社では認可施設と同様に認定遺伝カウンセリングを実施しており、受検条件なくすべての妊娠している方に検査を受けていただくことができます。新型出生前診断において、遺伝カウンセリングは非常に重要とされているため、弊社では検査後のフォローも充実していることから安心して検査を実施していただけます。

新型出生前診断で、胎児疾患が正確に診断されることで周産期センターでの分娩や分娩後の管理がしっかり行われ、安心して妊娠・分娩管理が行われるようになることが望まれます。

まとめ

 以前の出生前診断は羊水検査から始まり、超音波診断や母体血清マーカーなどの従来の検査が普及してきました。1997年に母体血漿内に胎児由来のDNAの存在が確認されてからは研究が進み、日本では2013年に新型出生前診断が導入されました。

 この新型出生前診断は精度が非常に高く特に陰性的中率が高いことから、新型出生前診断で陰性と診断された人は痛みやリスクのある羊水検査などの確定検査を回避できます。実際に、新型出生前診断を受検する人が増える一方で、羊水検査を実施する人は減少傾向となっています。

 時代と共に医療が進み出生診断はよりリスクがなく精度の高いものへと変遷していきます。これからの時代は正しい情報と知識を身につけ、どの検査をどこで受けるのかを的確に選択していくことが今後の妊婦さんに求められていると言えます。

ABOUT ME
大河友美
国立大学医学部保健学看護科卒業後、大学病院で6年看護師として勤務。 その後、国立大学医学部保健学大学院へ進学し修士号取得。 現在は、子育てをしながら医療ライター・監修者として活動中。 学歴 平成21年 国立大学医学部保健学看護科 卒業 平成28年 国立大学医学部保健学大学院 卒業 取得資格 看護師国家資格 保健師国家資格