2020.10.02

出生前診断

羊水検査と絨毛検査について。その違い、リスクや検査方法など

新型出生前診断後の確定診断について

妊娠9週以降から受けられる新型出生前診断。検査で陽性がみられた妊婦さんの中には、不安を感じている人もいるのではないでしょうか。実際におなかの赤ちゃんの染色体異常があるかどうかを調べるには、確定診断を受ける必要があります。

そこで、新型出生前診断後の確定診断について解説します。これから新型出生前診断を受けようと考えている人も参考にしてみてください。

NIPTが陽性になったら受けるべき確定検査(染色体検査)―非確定検査との違い
NIPTが陽性になったら受けるべき確定検査(染色体検査)―非確定検査との違い 新型出生前診断を検討している人の中には、検査を受ければ特定の病気かどうか分かると考える人も多くいます。実際には、検査で陽性にな...

新型出生前診断で陽性が出た場合どうすればいいのか

新型出生前診断で陽性が出た場合どうすればいいのか

出生前診断には非確定検査と確定検査があります。非確定検査はそれだけでは診断がつかないスクリーニング検査とされており、確定検査とはそれだけで診断が確定する検査とされています。

新型出生前診断は非確定検査の1つでお母さんの血液中に流れ出た胎児の遺伝子を解析することで、胎児の遺伝子疾患の有無を調べることができます。従来の非確定検査と比較すると採血のみで結果が分かるためお母さんに痛みがなく、胎児にも流産の危険性がない上に精度も非常に高いことが特徴です。

  非確定検査 確定検査
  新型出生前診断
(NIPT)
精密超音波検査 母体血清マーカー 羊水検査 絨毛検査
精度 99.9% 80~85% 80~85% 100% 100%

新型出生前診断は確定審査と遜色ないほどの精度の高い検査ですが、スクリーニング検査という位置づけとなっています。この理由として陽性的中率がお母さんの年齢によって変化することが挙げられます。お母さんの年齢が若い場合、陽性的中率は下がってしまいます。もしも新型出生前診断で陽性であった場合、確定診断である羊水検査や絨毛検査を受けることを推奨しています。その際弊社では羊水検査の費用を全額負担させていただいておりますので費用面での心配はございません。

羊水検査について

羊水検査について

胎児はお母さんの子宮の中で羊水に包まれて育っています。羊水の中には胎児の古くなった皮膚の細胞やおしっこが含まれています。
羊水検査とはお母さんのおなかに針を刺し、羊水を採取することにより胎児の染色体や遺伝子を調べる検査のことを言います。羊水を直接検査するので精度が高く、確定検査とされています。
羊水検査を実施する時期は妊娠15~18週(妊娠4~5ヵ月頃)です。 精度の高い検査を早めの週数で受けたいところですが、15週より前だと 羊水の量が十分でないから検査ができません。
最近では、確定検査の次に精度の高い検査の「新型出生前診断(NIPT)」で異常を認めた場合の確定診断としても用いられます。

対象疾患

  • 染色体異常
    • 数の異常
      21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パト―症候群)性染色体異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群)など
    • 構造の異常
      転座、欠失など
  • 開放性神経管奇形(二分脊椎、無脳症など)
  • 遺伝的に特定の遺伝疾患の確立が高い場合や、超音波検査で特定の疾患の可能性が指摘されている場合は、その遺伝子の変異についての検査を実施

羊水検査の対象者

羊水検査は、

  • 非確定検査(新型出生前診断、超音波検査、母体血清マーカー)で胎児の異常の可能性が指摘された場合
  • 染色体異常・遺伝子疾患の保因者
  • 高年齢
  • 反復流産

などの理由がある場合に行われます。ただし任意の検査ですので夫婦の希望がある場合のみ実施されます。

羊水検査の費用は?

費用はどのくらいかかるのでしょうか。
羊水検査は保険適応外となるため、自費になります。
検査内容や病院によって異なりますが、10~20万円程度が多いようです。

費用は検査内容によっても変わってくるので、事前に確かめましょう。

新型出生前診断の微小欠失検査で異常を認めた場合、マイクロアレイ検査が必要です。この検査は高額になりますので新型出生前診断を受けられるなら、羊水検査費用の全額負担をしてくれるところで、検査をするのが安心です。

羊水検査はいつから受けられる?

羊水検査を受けられる時期は決まっています。流産率が低く、安全に実施できる期間になりますので、一般的に妊娠15~18週(妊娠4~5ヵ月頃)行われます。病院によっては妊娠19週でも受けられるところはありますが確認が必要です。

羊水検査で染色体異常が出た場合について

羊水検査で染色体異常があるとわかった場合は、出生前に必要なケアを考えられる利点があります。しかし異常の種類によっては、中絶を検討するご夫婦もいらっしゃいます。日本では、母体保護法で胎児の染色体異常を理由に人工妊娠中絶を受けることはできません。ただし母親が身体的、精神的苦痛を強く受けるという「母体保護」を理由に実際は人工妊娠中絶を受けられています。

中絶が可能な時期はいつまででしょうか。日本では妊娠21週6日までとされています。検査後は夫婦での話し合いが最も重要です。検査の結果、障害があるとわかったが受け入れて育てていくと出産を決断する人もいます。

検査を受ける前に「もしも染色体異常だったら」と事前に考えておきましょう。授かった命への考え方や人生観は、人それぞれ違います。夫婦のどんな決断も尊重されるべきでしょう。

検査方法

採取した羊水の検査方法は、染色体分染法・FISH法・マイクロアレイ法・qf-PCR法があります。ここでは、それぞれの方法の特徴についてみていきます。

  • G分染法
    スライドガラス内で羊水を培養した後、ギムザと呼ばれる染色液で染色する方法です。ギムザ染色により、染色体の縞模様が分かるため、染色体の構造や数を大まかに把握することが可能になります。
  • FISH法
    染色体の特定の部位を蛍光色で光らせる方法です。染色体欠失や重複など特定の染色体異常を診断にするのに役立ちます。その一方で、細かい異常について調べることはできません。
  • マイクロアレイ法
    胎児の染色体を細かく分けて、蛍光物質をつける方法です。G分染法よりも、さらに細かく染色体を調べることが可能です。前述の染色体分染法では見つけることができない染色体の異常を発見するのに役立ちます。
  • qf-PCR法
    特定の染色体をPCRという方法で遺伝子を増幅させて、染色体異常の可能性を調べます。21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パト―症候群)、ターナー症候群、トリプルエックス症候群、クラインフェルター症候群など、特定の染色体異常を調べるための検査キットがあります。

羊水検査後の流れ

採血で行われる新型出生前診断(NIPT)とは異なり、羊水検査に不安を抱いている人もいるかもしれません。ここでは羊水検査の流れをみていきます。

  1. エコー検査で胎児の状態を確認
    超音波が出る機器を用いて、お腹の赤ちゃんの心拍や発育状態、羊水の量や胎盤の位置を確認します。
  2. お腹に針を刺す
    妊婦さんのお腹を消毒した後、エコーで確認しながらおへその下の部分に細い針を刺します。
  3. 羊水を採取
    穿刺針から羊水を20mlほど採取します。その後は針を抜いて、穿刺部位を消毒した後、絆創膏を貼ります。
  4. エコーで再確認
    エコー検査を再び行い、胎児に異常がないかをチェックします。30分ほど安静になり、エコー検査でもう一度確認してから検査終了です。

羊水検査というと、体に大きな負担がかかるイメージですが、穿刺時間は15~20秒ほどで、採血よりも痛くないという妊婦さんもいます。痛みの感じ方は個人差があるので、不安が強い人は医師に相談しましょう。

羊水検査のリスク

羊水検査は直接子宮の中へ針を刺すのでリスクが伴います。羊水検査後に胎児を流産する可能性は0.1~0.3%と言われています。針を刺した後に0.1%程度の人に出血や破水、下腹部痛が生じます。また、1.5%程度は採取した羊水から赤ちゃんの細胞を十分に培養できず検査が実施できない場合があります。

絨毛検査について

絨毛検査について

絨毛検査とは妊娠早期の胎盤の一部を採取して胎児の染色体異常や遺伝子疾患を調べる検査です。絨毛検査は妊娠11~14週に実施されます。絨毛検査の対象疾患や対象者は羊水検査と同様です。

検査方法

絨毛検査の検査方法はお腹に針を刺す経腹法と膣から子宮頚管へ器具を通して採取する経腟法の2種類あります。このどちらの検査を実施するかは胎盤の位置によって決まります。

経腹法

  • 胎盤が子宮の前壁や底部の付着しているかどうかを確認します。
  • 超音波で胎児の心音や発育、位置、姿勢、羊水量、胎盤の位置を確認します。
  • お母さんのおなかを消毒し清潔な布を覆います。
  • 穿刺部位に局所麻酔を行います。
  • お腹から胎盤へ針を挿入し絨毛を採取します。
  • 検査後エコーで赤ちゃんの様子に変化がないかを確認します。

経腟法

  • 胎盤が子宮の後壁や子宮頚部近くに付着していることを確認します。
  • 内診台の上に乗り超音波で胎児の心音や発育、位置、姿勢、羊水量、胎盤の位置を確認します。
  • 膣から子宮頚管、胎盤へ絨毛生検鉗子という器具を挿入して絨毛を採取します。
  • 検査後エコーで赤ちゃんの様子に変化がないかを確認します。

絨毛検査後の流れ

検査後、赤ちゃんの様子に変化がなくお母さんにも子宮収縮や頸管長の変化がなければ帰宅できます。感染予防のための抗生物質と子宮収縮抑制剤が処方されるので内服をします。採取後、しばらくは下腹部に違和感や出血がみられることがありますので数日は安静にする必要があります。

絨毛検査は約2~3週間で結果が出ます。

絨毛検査のリスク

絨毛検査は胎盤へ直接刺激をするので、流産のリスクが約1%程度と言われています。流産に至らなくても出血や破水の可能性があります。

絨毛は、胎児の細胞ではなく胎盤の細胞を採取するため約1%で「胎盤限定モザイク」という染色体の正常と異常が混在した状態が結果として報告されることがあります。その場合、胎児の染色体異常の有無については判断できません。このような場合には、妊娠16週以降に羊水検査を実施して確定診断をする必要があります。

羊水検査と絨毛検査の違い

羊水検査と絨毛検査の違い

羊水検査と絨毛検査の違いは大きく4つあります。

  • 実施できる時期の違い
    羊水検査は妊娠15~18週、絨毛検査は妊娠11~14週と、絨毛検査の方が早く実施することができます。絨毛検査は早く実施できることで、不安に感じている期間が短くすみますが、妊娠早期に行われるので、羊水検査よりも流産率が高いというデメリットがあります。
  • 診断結果
    羊水検査は羊水に含まれる胎児の細胞を培養して検査をするため、胎児の染色体・遺伝子異常を確実に診断することができます。しかし、絨毛検査は胎盤の細胞を検査するため「胎盤限定モザイク」という染色体の正常と異常が混在した状態の可能性が約1%あり診断がつかないこともごくまれにあります。
  • 胎児への接触の可能性
    羊水検査は胎児を包んでいる羊水へ針を挿入するので針が胎児に接触する可能性が0ではありません。絨毛検査は、超音波で確認しながら胎盤の位置に応じて検査方法を変えるため胎児に接触する可能性はありません。
  • 手技の難しさ
    羊水検査よりも絨毛検査の方が検査の手技が難しく実施している医療機関が限られます。

このように絨毛検査には早期に検査できるというメリットがありますが、デメリットも複数ありますので、確定検査としては羊水検査が主流となっています。

 

まとめ

新型出生前診断は、さまざまな検査の中でも精度が高いという特徴があります。一方で、検査結果は100%確証するものではないので、診断のために確定検査を行う必要があります。新型出生前診断で陽性になったら、重大な決断をする前に、確定検査を受けることも選択肢に入れましょう。

確定検査は、少なからず母子に負担もかかるので、確率は低いものの流産のリスクをともないます。新型出生前診断を受けるときは、陽性になったときのことも想定することが大切です。

新型出生前診断における認可施設と認可外施設の違い
新型出生前診断における認可施設と認可外施設の違い 新型出生前診断(NIPT)は採血のみで胎児の染色体異常の有無を高精度で知ることができる検査として近年注目されています。しかし、...

ABOUT ME

大河友美
国立大学医学部保健学看護科卒業後、大学病院で6年、看護師として勤務。その後、国立大学医学部保健学大学院へ進学し修士号取得。現在は、子育てをしながら医療ライター・監修者として活動中。学歴:平成21年 国立大学医学部保健学看護科 卒業、平成28年 国立大学医学部保健学大学院 修了。取得資格:看護師、保健師、修士(保健学)。

前後の記事

新型出生前診断における認可施設と認可外施設の違い
新型出生前診断で分かること

同じカテゴリーの記事