2022.02.21

出産

陣痛促進剤 とは?使われるタイミングや誘発剤との違いについて

陣痛促進剤 とは?使われるタイミングや誘発剤との違いについて

出産を控えている妊婦さんの中には、陣痛促進剤について聞いたことがある人もいるかもしれません。陣痛促進剤はどのようなときに使うのか気になる人もいるでしょう。この記事では陣痛促進剤の特徴や費用について紹介します。お産のときに陣痛促進剤を使うケースもあるので、参考にしてみてください。

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陣痛促進剤とは

人工的に子宮の収縮を起こして陣痛を促す薬剤です。その作用から陣痛促進剤は人工収縮剤とも呼ばれています。適切に使用すれば、妊婦さんの陣痛をコントロールして、安全なお産を導くことができます。

原則的に陣痛促進剤は使用にあたって妊婦さんの同意が必要になります。陣痛促進剤が必要な理由や、使用しなかったときのリスクなど、気になる点があれば医師に確認するようにしましょう。

陣痛促進剤と誘発剤の違い

陣痛促進剤とよく似ている言葉に陣痛誘発剤があります。陣痛誘発剤は、陣痛促進剤と同じ薬を使います。以下のようなケースで陣痛促進剤を使う場合は、その目的から陣痛誘発剤と呼ばれることがあります。

  • 過期妊娠
    出産予定日から2週間以上を過ぎていることをいいます。妊娠が長引きすぎると、胎盤の機能が低下しやすくなり、妊婦さんやおなかの赤ちゃんへのリスクが高くなります。ただし、妊娠42週までであれば正常な範囲です。出産予定日を過ぎても心配しすぎることはありません。
  • 計画分娩
    前もって分娩する日を決めておき、その日に陣痛促進剤を使用して人工的に長南を始める方法です。日本の多くの医療機関では、計画分娩によるお産を行っています。計画分娩と無痛分娩を組み合わせた計画無痛分娩が行われることがあります。

陣痛促進剤の種類について

陣痛促進剤の種類について

陣痛促進剤にはプロスタグランジン系とオキシトシン系の2種類があります。それぞれの陣痛促進剤の特徴は以下のものがあります。

  • プロスタグランジン系
    子宮頸管を熟化させる作用があります。子宮の入り口が軟らかくなり開きやすくします。プロスタグランジン系の陣痛促進剤は、飲み薬タイプと点滴タイプがあります。
    持病で喘息や緑内障がある方は、プロスタグランジン系の陣痛促進剤を使用できません。プロスタグランジンにより、気管支が収縮して喘息の発作が起こりやすくなったり、緑内障の要因である眼圧が上昇したりするためです。
  • オキシトシン系
    オキシトシン系の陣痛促進剤は点滴タイプのみです。オキシトシンは、お産時に脳から分泌されるホルモンです。投与開始から子宮収縮がみられますが、効果には個人差があります。安全に配慮するため、少しずつ投与していきます。

陣痛促進剤が使用される例

陣痛促進剤が使用される例

どのようなときに陣痛促進剤使われるのか気になる人もいるでしょう。以下のようなケースで行われます。

  • 分娩誘発
    陣痛が来ていない妊婦さんに対して、陣痛促進剤を使用してお産に導きます。妊娠の継続が妊婦さんにとって負担になるときや、おなかの赤ちゃんに問題が起きた時に行われます。
    破水後に陣痛がなかなか来ないときや、妊娠高血圧症候群を合併しているとき、また赤ちゃんに子宮内感染のリスクがあるときになどに行われます。
  • 計画分娩
    計画分娩により平日の日中の分娩を目指し、より安全にお産を迎えられます。計画分娩の一般的なスケジュールは、妊娠37週に子宮口を確認した後、数日内に入院して陣痛促進剤を使用してお産を行います。

陣痛促進剤の使用が禁忌となる例

陣痛促進剤は、以下のような帝王切開の対象となるお産には使用されません。

  • 前置胎盤
    胎盤が子宮体部ではなく、子宮の入り口の全部または一部を覆っている状態です。分娩時に赤ちゃんよりも先に胎盤が出ることで、大量の出血をしたり、赤ちゃんへの必要な酸素や栄養分の供給が途切れたりする恐れがあるため、帝王切開による分娩が行われます。
  • 常位胎盤早期剥離
    お産前におなかの赤ちゃんが出る前に、胎盤が子宮から剥がれる状態です。常位胎盤早期剥離が起こると、母子ともに危険な状態になる可能性があるため、帝王切開など速やかな医療処置が必要になります。

陣痛促進剤のデメリット

陣痛促進剤のデメリット

陣痛促進剤の反応は一律ではなく、妊婦さんによって個人差があります。時には適切でない使用によって、母子の健康に影響を与える例もまれにみられます。

陣痛促進剤を使用する場合は、分娩監視装置でおなかの赤ちゃんの心拍をモニタリングしながら行い、細心の注意が払われます。妊婦さんの陣痛の状態をみながら、薬剤の調節をします。

陣痛促進剤の効き方は妊婦さんによっても個人差があります。計画分娩の場合、医療機関によっては、日中に陣痛促進剤を投与して、陣痛がみられなかった場合、翌日に投与するところもあります。

陣痛促進剤の合併症

陣痛促進剤の合併症は、必ずしも薬剤の副作用ではなく、不適切な使用(投与速度が速い・モニタリングが不十分など)によるものと考えられています。陣痛促進剤には以下のような合併症のリスクがあります。

  • 過強陣痛
    子宮口が十分に開いていないときに、陣痛が強く起きることです。過強陣痛により出血や会陰裂傷などが起こり、妊婦さんの体に負担がかかります。また、おなかの赤ちゃんが仮死状態になるリスクもあります。
  • 子宮破裂
    分娩時に子宮が裂けることをいいます。母子ともに命の危険があるので、早急な対応が必要になります。帝王切開後のお産は子宮破裂のリスクがあるものの、自然にはあまりみられません。陣痛促進剤の使用により子宮破裂を起こした例が報告されています。

上記の合併症が起こることで、妊婦さんや赤ちゃんが命を落としてしまうケースもみられています。

陣痛促進剤の費用について

陣痛促進剤の費用について

陣痛促進剤の費用は、医療機関や薬剤を使う目的によっても異なります。お産の進行が遅れていて、陣痛促進剤を使って出産をした場合は、自然分娩と同じ扱いになります。健康保険が適用されないため、費用が3万円ほど追加になります。また計画分娩の場合は、通常の分娩費用に15万円ほど追加になります。

医療処置の場合は保険適用となることも

お産が正常に進行しない異常分娩で、医療処置として陣痛促進剤を使用したときは、健康保険が適用される可能性があります。

  • 前期破水
    分娩前に起こる破水です。ほとんどの場合、破水が起こると陣痛が始まります。破水後は赤ちゃんの感染リスクが高くなるので、一定時間を待っても陣痛が来ない場合は、陣痛促進剤を使用して誘発分娩を行います。
  • 長時間の微弱陣痛
    陣痛そのものが弱い、陣痛の時間が短い、次の陣痛までの時間が長いのうち、いずれかがみられる状態。お産が遅れることで、妊婦さんが疲労したり、赤ちゃんの心拍が下がったりすることがあるので、陣痛促進剤を使用することがあります。
  • 妊娠高血圧症候群のある妊婦さんのお産
    妊娠の継続が妊婦さんにとって危険になることがあります。陣痛促進剤を使ってお産を早く進めることで、妊婦さんの体に負担がかかりすぎないようにします。

まとめ

陣痛促進剤は、人工的に子宮の収縮を起こして、安全なお産を導くことを目的とした薬剤です。近年では計画分娩で陣痛促進剤を使うこともあるので、薬剤の作用や合併症のリスクについて理解することが大切です。

参考:
産婦人科診療ガイドラインー産科編2020
陣痛促進剤による子宮破裂・胎児仮死

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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