2021.11.29

出産

帝王切開にかかる時間や費用、母体への影響や産後の回復まで

帝王切開とは?その種類

妊娠中の女性の中には、帝王切開での出産を予定している方もいるでしょう。経腟分娩の予定の妊婦さんでも、今後の経過や出産当日の状況によっては、帝王切開で赤ちゃんを取り出す可能性もあります。この記事では、帝王切開がどのように行われるのか、手術後の経過や費用について解説します。

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帝王切開とは?その種類

帝王切開は手術で赤ちゃんを出産する方法です。母体やお腹の赤ちゃんに何らかの問題が起こり、経腟分娩が難しいと判断されたときに、帝王切開が選択されます。

年々、帝王切開する妊婦さんの割合が増えており、現在では妊婦さんの5人に1人が、帝王切開で分娩を行っています。帝王切開には、状況別に以下の2種類に分けられます。

予定帝王切開

妊娠37週までに自然分娩が難しいと判断されたときに行われる帝王切開で、妊娠38週頃に手術が行われます。予定帝王切開の対象となるのは、以下のケースがあります。

骨盤位

いわゆる逆子のことで、子宮口に赤ちゃんの頭がある「頭位」ではなく、反対向きになっている状態をいいます。逆子の経腟分娩はリスクが伴うため、帝王切開が行われます。

多胎妊娠(双子以上の妊娠)

双子以上の妊娠の70%は帝王切開が行われます。双子の妊娠でも、妊娠週数、胎児の位置や体重などの条件が当てはまれば、経腟分娩が行われるケースがあります。

前置胎盤

胎盤が子宮口を覆っている状態をいいます。出産時に出血のリスクがあったり、胎盤が赤ちゃんよりも先に出ることで酸素や栄養が途切れてしまったりするリスクがあるため、帝王切開を行います。

1人目が帝王切開

1人目の赤ちゃんを帝王切開で出産した場合は、2人目も帝王切開が勧められています。経腟分娩により帝王切開の傷跡が開いて、子宮が破裂するリスクがあるためです。

緊急帝王切開

母体や赤ちゃんに問題が起きて、緊急手術で赤ちゃんを取り出す必要がある帝王切開です。緊急帝王切開の対象には、以下のケースがあります。

遷延分娩

お産が長引いている場合は、経腟分娩から帝王切開に切り替えることがあります。

胎児機能不全

赤ちゃんの健康状態に問題があったり、問題が生じる可能性があったりする場合、帝王切開が行われます。

常位胎盤早期剝離

赤ちゃんが生まれる前に胎盤が子宮から剥がれる症状です。子宮内で大量出血が起こるので、帝王切開でお腹の赤ちゃんを取り出す必要があります。

帝王切開は麻酔を使っておこなわれる

帝王切開の予定がある妊婦さんの中には、痛みについて不安を感じている人もいるでしょう。

帝王切開では麻酔をしてから手術をします。帝王切開でおこなわれる麻酔には、大きく分けて「局所麻酔」「全身麻酔」の2種類があります。

ここではそれぞれの麻酔方法についてみていきましょう。

局所麻酔

局所麻酔では、麻酔剤が脳には作用せず妊婦さんの意識があるため、赤ちゃんの顔を見たり泣き声を聞いたりすることができます。局所麻酔は少量の麻酔剤を使うため、赤ちゃんへの影響が少ない特徴があります。

帝王切開の局所麻酔には以下があります。

脊髄くも膜下麻酔

硬膜内に直接麻酔剤を入れる方法。カテーテルの挿入の必要がなく、麻酔の効きが早い特徴がある。

硬膜外併用脊髄くも膜下麻酔

脊髄くも膜下麻酔に硬膜下麻酔を併用した麻酔方法のこと。硬膜外麻酔は無痛分娩でもおこなわれる麻酔で、背中から硬膜外に管を入れて麻酔剤を注入する。

全身麻酔

帝王切開では局所麻酔が第一選択となりますが、全身麻酔がおこなわれることもあります。全身麻酔をかけると、妊婦さんの意識がなくなり眠っている状態になり、呼吸の補助が必要になります。

帝王切開の全身麻酔は点滴や吸入により投与しますが、局所麻酔と比べると、麻酔剤の量が多く、胎盤を通って赤ちゃんにも届きます。そのため、全身麻酔の帝王切開で生まれた赤ちゃんは、一時的に眠そうだったり、呼吸が弱めだったりすることがあります。

帝王切開で全身麻酔がおこなわれるのは以下のような例です。

  • 急いで赤ちゃんを取り出す必要がある(赤ちゃんの心臓の動きが弱くなっている、妊婦さんに大量出血が起きている等)
  • 体質等により、妊婦さんの血液が固まりにくい
  • 妊婦さんの背中が変形している、または背中の神経の病気を抱えている
  • 局所麻酔剤にアレルギーがある

帝王切開の手術方法

帝王切開は妊婦さんに麻酔をかけて、開腹し子宮から赤ちゃんを取り出します。帝王切開のアプローチには、メスで切る方向によって「縦切開」と「横切開」があります。ここでは2つの切開法の特徴についてみていきましょう。

縦切開による帝王切開

帝王切開の縦切開は、お腹の中央をメスで縦方向に切る方法です。腹部の筋肉や腱は縦方向に位置するため、自然な切開方法になります。

縦切開は出血量を抑えられ、手術時間が短めであるのがメリットです。一方で、縦切開による帝王切開は傷跡がケロイド化しやすく、手術後の傷跡が目立ちやすいデメリットがあります。

横切開による帝王切開

陰毛の上部分をメスで横方向に切開する方法です。縦切開よりも手術時間がかかりますが、傷跡が目立ちにくいメリットがあります。近年は多くの医療機関で横切開による帝王切開がおこなわれています。

しかし、前回の帝王切開で縦切開を受けた場合や、緊急手術で帝王切開になった場合には、横切開ではなく縦切開による帝王切開がおこなわれます。

帝王切開を受けるリスク

帝王切開は比較的安全性の高い手術ですが、いくつかのリスクもあります。ここでは帝王切開でみられるリスクについてみていきましょう。

出血

帝王切開では、妊娠により血流が豊富になっている子宮を切開するため、出血がみられます。帝王切開による出血量は500ml以上になることもありますが、輸血が必要になるほどの大出血はまれです。

お産後は子宮収縮が起こることで、自然に出血量が抑えられますが、子宮収縮が十分に起こらないこともあります。帝王切開後に子宮収縮が不十分で、出血が多くみられるときは、輸血がおこなわれます。

感染

帝王切開による傷口に感染が起こることがあります。帝王切開の傷口の感染で注意すべきなのが、子宮の傷口の細菌感染です。傷口の感染を防ぐために、帝王切開の際には抗生剤が投与されます。

周りの臓器の損傷

子宮の周りには、膀胱・大腸・小腸などの臓器があります。過去に帝王切開を受けていると、子宮が周囲の臓器と癒着を起こしていることもあります。

そのため、帝王切開による手術操作で癒着している臓器を傷つけてしまうことがあります。帝王切開で子宮の周りの臓器が傷ついた場合は、手術中に処置がおこなわれます。

腸閉塞

帝王切開に限らず開腹手術を受けると、臓器の癒着などにより腸の動きが悪くなることがあります。腸の内容物が滞りやすくなると腸閉塞の状態になります。手術後に腸閉塞になった場合は、絶食や鼻からカテーテルを通して、腸の内容物を取り除く治療をします。

新生児一過性多呼吸

帝王切開で生まれた赤ちゃんには、「新生児一過性多呼吸」がみられることがあります。新生児一過性多呼吸とは、赤ちゃんの肺内にある羊水の吸収・排出

がスムーズにいかないことで起こる呼吸障害です。

症状が軽いことが多く、赤ちゃんに酸素を吸入して呼吸を助けます。

帝王切開後の傷跡はどうなる?

帝王切開後の傷跡は腹部にあるため、どのような見た目になるのか気になっている人もいるでしょう。帝王切開後の傷跡は、ケロイドになりやすい特徴があります。

ケロイドとは傷跡の組織が過剰に増殖して、ミミズ腫れのように盛り上がっている状態をいいます。一般に、治癒が遅れて傷口の炎症が続くと、傷跡部分の血管や繊維組織が増えたりして、ケロイドになることがあります。

手術後の傷跡がケロイドになるかどうかは、妊婦さんの体質によるものが大きいです。また、傷跡部分に過剰な張力がかかると、ケロイドができやすくなります。特に縦切開による帝王切開は傷口に張力がかかりやすく、ケロイドになりやすい特徴があります。

帝王切開の傷跡をケロイドにしないための対策

産院では、帝王切開後の1ヵ月健診にて帝王切開の傷跡を確認します。傷跡がケロイドになりかけている場合は、治療のために専用のテープを貼ります。

帝王切開では皮膚を深く切開します。手術後数日には皮膚の表面は治癒してきますが、真皮の治癒には3ヵ月以上、筋膜にいたっては治癒まで1年以上かかります。 そのため、ケロイド体質の人では、1~2年ほど傷跡を固定するためのテープを貼ることもあります。

帝王切開が行われる流れー入院から退院まで

帝王切開が行われる流れー入院から退院まで

帝王切開の手術で赤ちゃんを取り出す場合、どのような流れで行われるのか、何を行うのか、不安を抱えている妊婦さんもいるかもしれません。ここでは入院から帝王切開による出産までの流れについてみていきます。

入院当日

予定帝王切開の場合、入院当日に妊婦さんやお腹の赤ちゃんの健康状態を確認します。入院当日には、帝王切開の手術内容の説明も行われます。

手術当日

帝王切開の当日は、手術に備えて飲食ができません。尿を出すために細い管を入れたり、体に水分や栄養分を補給するための点滴を行ったりします。唇やのどが渇くことがありますが、口をゆすぐと気分を紛らわすことができます。

帝王切開の手術

帝王切開の手術では、麻酔が行われるので、痛みを感じることはありません。手術では、下腹部を横に一文字に切開するか、おへそから下を縦に切開します。

その後、切開した部分から赤ちゃんを取り出し、子宮とお腹の傷口を縫い合わせます。帝王切開の手術は30~60分くらいです。帝王切開の麻酔が全身麻酔でなければ、赤ちゃんの顔を見ることができます。

手術後は回復室に移動し、体の経過をチェックします。母子の健康に問題がなければ、この時点で赤ちゃんを抱くことができます。

手術から退院までの流れ

手術後の経過は、母子の状態や医療機関によっても異なりますが、ここでは一般的な流れについてみていきます。

手術後1日目

飲水が可能になります。ママと赤ちゃんの健康に問題がなければ、ベッド上で母乳を与えることができます。

手術後2日目

帝王切開による痛みはありますが、ママや赤ちゃんの健康状態が良ければ、オムツ交換などお世話を始めます。手術後の血栓症を予防するために、少しずつ歩いたりしましょう。

手術後5~7日

お腹の傷口を抜糸します。通常は、抜糸後からシャワーが可能ですが、医療機関によっては、抜糸前から保護テープをしてシャワーに入ることができます。

退院

帝王切開の入院期間は7~10日間で、経腟分娩の入院期間が1~3日であるのに比べると少し長くなります。入院期間中は、妊婦さんの体調に合わせながら、赤ちゃんの抱き方、授乳やおっぱいマッサージ、オムツ交換、沐浴の方法について学んでいきます。

帝王切開の退院後は開腹手術後なので、体が回復するには1~2か月ほどかかります。退院後は、ママが1人で育児を頑張り過ぎることがないよう、家族など周りのサポートが大切です。

帝王切開の入院であると便利なグッズ

帝王切開の入院であると便利なグッズ

帝王切開による入院は手術を行うので、経腟分娩の入院と経過が異なります。特に、手術後は思うように体を動かせないこともあるかもしれません。ここでは、帝王切開の入院である便利な用品についてみていきます。

  • リップクリーム
    帝王切開当日は、手術に備えて飲食ができません。唇が渇くことがあるので、リップクリームがあると唇を潤せます。
  • メガネ
    帝王切開前は体に装着している物を全て外さなければなりません。手術前はコンタクトレンズも外さなければならず、手術後の視界がぼやけてしまうこともあります。医療機関によっては、医療スタッフにメガネを預けることも可能です。
  • スマートフォン
    帝王切開の場合、手術中に赤ちゃんの顔が見られてもすぐに面会できないことがあります。スマホがあれば、医療スタッフに赤ちゃんの写真を撮ってもらったり、遠方にいる家族に写真を送ったりできます。
  • ストロー付きのキャップボトル
    帝王切開後、痛みで起き上がれない場合があります。キャップボトルがあれば、枕元にも置けるので便利です。

帝王切開にかかる費用について

帝王切開にかかる費用について

医療機関によっても異なりますが、自然分娩の出産費用はおよそ50万円かかります。この費用は、入院中の食事代や部屋代の費用のほか、分娩費用、生まれた赤ちゃんの保育費用、産後のママの指導費用などが含まれています。

出産そのものは病気の治療ではないため、健康保険が適用とならず、すべて自費となります。しかしながら、ほとんどの費用は出産育児一時金でまかなうことができます。

帝王切開の場合、上記の出産費用にプラスして手術代がかかります。帝王切開は保険診療であるため、どの医療機関で手術を受けても費用は同じです。

予定帝王切開であれば、手術費用は約20万、緊急帝王切開であれば約22万円です。そのため、自己負担額が3割であれば、手術代だけで6万円程度の費用がプラスになります。帝王切開では高度療養費制度を活用できるので、収入に合わせた限度額までの自己負担にすることも可能です。

帝王切開でよくみられる質問

帝王切開を予定している人の中には、不安や疑問がある人も多いでしょう。ここでは、帝王切開でよくみられる質問とその回答についてみていきます。

帝王切開は立ち合いができる?

一般的に、帝王切開は立ち合いができず、妊婦さんが一人でお産を迎えます。ただ産院によっては、予定帝王切開であれば立ち合いができる施設もあります。帝王切開の立ち会いは夫1名であることが多く、緊急の帝王切開では立ち合いができない施設が多くなります。

近年は高齢出産にともない帝王切開でお産をする人が増えています。産院を選ぶときは、帝王切開が立ち合いできるかも確認するとよいでしょう。

帝王切開後は悪露が出るの?

悪露は産後に膣から排出される分泌液のことで、血液やリンパ液を含みます。産後3日ほどは赤色の悪露が出ますが、子宮の回復とともに少しずつ血液の量が減っていくので、褐色から黄色に変化します。 経腟分娩では、日数とともに悪露が少しずつ減っていきます。一方、帝王切開後は産後2週間頃までは悪露の量が多く、その後は減少していきます。悪露の出方は個人差がありますが、量が急に増えていたり、発熱がみられたりする場合は、産院を受診しましょう。

まとめ

帝王切開は、妊婦さんやお腹の赤ちゃんに何らかの問題があり、自然分娩ではなく手術で赤ちゃんを取り出す方法です。逆子や双子の妊娠などで帝王切開の手術を決定しているケースだけでなく、緊急時に帝王切開が行われることがあります。

予定帝王切開の妊婦さんだけでなく、自然分娩予定の妊婦さんも、帝王切開でどんなことが行われているか知っておくとよいでしょう。

参考:
前置胎盤

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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