2023.05.22
出生前診断
1p36欠失症候群は、染色体異常による先天性の遺伝疾患です。妊婦さんの中には、1p36欠失症候群について気になっている人もいるのではないでしょうか?
この記事では、1p36欠失症候群の原因や症状について詳しく解説しています。1p36欠失症候群について知りたい人はぜひ参考にしてみてください。
1p36欠失症候群は、1番染色体のp36という領域が欠けていることによって起こる遺伝疾患で、主な症状は、特徴的な顔貌、けいれん・てんかん発作があります。
1p36欠失症候群は5,000人に1人生まれるとされており、疾患を持つ赤ちゃんが年間10~20人生まれています。男女比は3:7で、男の子よりも女の子の方がよくみられます。
1p36欠失症候群は認知がされていないことも多く、検査や診断に至らずに、重症な心身障がい者としてケアを受けている子もいます。
1p36欠失症候群は、身体的な症状と精神的な症状がみられます。症状の種類や程度の関連は明らかにはなっていませんが、染色体の欠損の程度も影響されるとされています。具体的な症状は以下になります。
1p36欠失症候群の身体的な症状に特徴的な顔貌があります。疾患のある人は、落ちくぼんだ目、真っすぐな眉毛、長い人中、突き出た顎、低い位置の耳、鼻根が広い等があります。顔貌の他にも、小頭症や大泉門閉鎖不全がみられることがあります。
また、1p36欠失症候群の子どもは7割に心臓の合併症がみられたり、半数にてんかんがみられたりします。筋肉のハリが弱いことも多く、赤ちゃんが母乳やミルクを吸えなかったり、飲み込みが上手くできないことも多いです。
その他にみられる身体的な症状には、斜視などの目の異常や、難聴、骨格や腎臓の異常がみられることがあります。
1p36欠失症候群の持つ人の9割に精神発達の遅れがみられ、残りの1割は軽度または中等度になります。特に、言葉の遅れが目立ち、7割以上の人は言葉を発せません。残りの3割の人は単語のみの発語になり、コミュニケーションに問題が生じる原因になります。
さらに、半数の患者に行動異常がみられるとされ、かんしゃくや自傷行為がみられることもあります。
1p36欠失症候群は、1番染色体のp36という領域が欠けていることが原因で起こります。人間の染色体は23種類46本あり、それぞれに番号が振られています。
1本の染色体は中心部を境に短い部分(短腕:p)と長い部分(長腕:q)に分かれており、それぞれの領域に番地のような数字が付けられています。1p36欠失症候群では、名前の通り1番染色体の短腕の36番領域が欠けていることを意味します。
1p36欠失症候群は、赤ちゃんの染色体が突然変異を起こしたり、両親のいずれかの染色体が「均衡転座」であることによって起こります。そのため、人種や生活習慣などで起こる病気ではありません。
均衡転座とは、染色体の2カ所が切断し、再結合により入れ替わっている状態です。染色体に均衡転座がみられていても、染色体の数は変わらないので、本人の見た目や健康に問題ありません。
しかしながら、均衡転座を持つ人が、卵子や精子を作り出すときに、不均衡が生じるため、赤ちゃんの1p36欠失症候群の原因となります。1p36欠失症候群の染色体を持つ赤ちゃんは流産の原因になりやすいですが、出産までたどり着くケースもあります。
1p36欠失症候群は遺伝疾患であるため、病気を治すための根本的な治療はなく、治療の中心となるのが、症状に応じた対症療法です。1p36欠失症候群で心臓の病気がある子どもは、手術により治療を行うこともあります。
筋の緊張低下や発語障害がある子どもは、乳幼児の早い段階から療育指導を受けることで、症状の緩和を期待できます。てんかんに対しては、薬によるコントロールを行います。
1p36欠失症候群の子どもを抱える家族は、障がい児の子どもを育てるにあたって、専門家による遺伝カウンセリングを受けることも重要です。また、1p36欠失症候群の家族会もあるので、参加すると悩みを打ち明けあったり、情報交換をしたりするのに役立ちます。
家族会では東京と大阪では毎年1回ずつ交流会を行っているので、直接知り合うことも可能です。
1p36欠失症候群で心疾患を合併している場合は、心臓の状態が寿命に大きな影響を与えます。疾患を抱えている人の100人に2人程度の頻度で、突然死を起こるといわれています。てんかん発作は一生続きますが、薬によって発作を抑えるようにします。
1p36欠失症候群による障がいの程度は個人差があり、療育訓練やリハビリテーションによって、筋緊張の低下が改善したり、ハンドサインでコミュニケ―ションが取れるようになったりすることもあります。
飲み込み問題がなく食事を取れる場合は、食べ過ぎになりやすいので、肥満にならないように配慮する必要があります。
1p36欠失症候群の検査には、精密な遺伝子検査を行います。DNAを構成する塩基にはアデニン(A)・グアニン・(G)・チミン(T)・シトシン(C)があります。
4つの塩基には相補性がありAはTと、GはCと結合する性質を利用して、検査ではプローブというターゲットになる遺伝子の対の塩基配列を作成し、蛍光色で染め上げて、検査を行います(FISH法)。
1p36欠失症候群かどうかを知る検査に、NIPT(新型出生前診断)があります。NIPT(新型出生前診断)は妊婦さんに採血をして、血液中に含まれる赤ちゃん由来のDNAのかけらを調べる検査です。
NIPT(新型出生前診断)は、日本医学会と日本産婦人科学会の指針に基づいて認可された施設と、そうでない非認可施設で受けられます。認可施設のNIPT(新型出生前診断)は、検査対象となるのは21トリソミー(ダウン症)を含む3つの遺伝疾患のみです。
一方、非認可施設のNIPT(新型出生前診断)は、性別をはじめさらに多くの遺伝疾患の可能性を調べられます。認可を受けていないからといって検査を受けることは、法律上何の問題もありません。
NIPT(新型出生前診断)で1p36欠失症候群や他の遺伝疾患が陽性になった場合は、羊水検査などの精密検査を受けることをおすすめしています。
DNA先端医療株式会社では、弊社でNIPTを受検されて陽性だった場合、羊水検査費用を全額負担させていただいております。
また、NIPT(新型出生前診断)は採血のみで比較的妊婦さんが受けやすいですが、検査結果によっては流産への不安が大きくなったり、障がい児の育児をしていくかどうかの判断を求められたりすることになります。
1p36欠失症候群のためにNIPT(新型出生前診断)を受けようと考えている人は、メリットやデメリットを十分理解した上で検査をするかどうかを決めることが大切です。
1p36欠失症候群は1番染色体のp36領域が欠損していることで起こる先天性の遺伝疾患です。
DNA先端医療株式会社では、1p36欠失症候群など微小欠検査の項目を含むNIPT(新型出生前診断)も行っています。お腹の赤ちゃんの1p36欠失症候群の可能性について気になる方は、検討してみてください。
参考:
1p36欠失症候群(指定難病197)
1p36欠失症候群とは?
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