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妊娠

人工妊娠中絶について

 人工妊娠中絶とは、手術をして妊娠を人工的に中断させることを言います。身体的や経済的な理由により妊娠の継続や分娩が困難で母体の健康を害する場合や、暴行や脅迫などによって妊娠した場合に母体保護法に基づいて行われます。胎児が母体の中で発育が進まなかったり死亡してしまった場合には、流産と言われ人工妊娠中絶とは異なります。今回は、人工妊娠中絶についてその条件や具体的な経過について詳しく説明していきます。

人工妊娠中絶の条件と受けられる期間

 人工妊娠中絶手術とは『胎児が母体外では生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその付属物を母体外に排出すること』と定義されており、誰でも受けられるものではなく母体保護法に基づいて実施されます。また、実施には本人と配偶者の同意が必要になります。

 人工妊娠中絶は、『妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるもの』『暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの』のどちらかに当てはまる場合にのみ実施されます。

 人工妊娠中絶手術は、妊娠22週未満まで受けることができます。妊娠週数の数え方は最後に月経が来た日を0週0日として計算します。妊娠11週6日までの妊娠初期と妊娠12週0日~妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)の妊娠中期では手術の方法やその後の経過も異なります。妊娠22週以降はどのような理由があったとしても人工妊娠中絶手術はできませんので、望まない妊娠をしてしまった場合には、なるべく早く病院で相談することが重要になります。

妊娠初期の人工妊娠中絶手術

妊娠11週までの妊娠初期の人工妊娠中絶手術では、静脈麻酔をして子宮頚管を広げ、器具で胎児とその付属物をかきだします。その他に吸引キュレットを使用して胎児と胎盤を吸い取る方法もあります。10~15分程度で手術は終了し、痛みや出血も少ないので問題なければ数時間休んだ後その日のうちに帰宅することができます。

妊娠中期の人工妊娠中絶手術

妊娠12週~22週未満の妊娠中期の人工妊娠中絶手術では、薬剤で人工的に陣痛を起こし本物の出産と同様に胎児と胎盤を出し、その後残った組織をかき出します。妊娠12週以降の中期中絶手術では、死産届と胎児の埋葬許可証をもらう必要があります。出産と同様であるため、身体への負担が大きく数日間の入院が必要になります。

人工妊娠中絶手術の影響

 人工妊娠中絶手術は、手術が問題なく終われば子宮は元の状態に戻ります。ただし中絶手術を受けることで、子宮を傷つけてしまったり手術後に感染症を起こしてしまうリスクがあります。さらに中絶手術を受けることで精神的なダメージを受けてホルモンバランスが崩れ次の妊娠出産が難しくなることもあります。人工妊娠中絶手術を受ける際は、各都道府県の医師会が指定した母体保護法指定医が在籍しており、メンタルケアも十分に行ってくれる病院を選ぶようにしましょう。

 基本的に、人工妊娠中絶手術を行うことでの不妊は心配しなくてもよいのですが、複数回手術を繰り返すと癒着が起こり妊娠しづらくなることはあります。

術後の経過

人工妊娠中絶の術後は、体力を消耗し子宮も傷ついた状態となるので日常生活では体力が回復するまで安静に過ごすことが大切です。過度な運動や性交渉は避ける必要があります。また、感染症にかかるリスクがありますので、清潔に保つ必要がありますが術後1週間は湯舟につからずシャワーのみで済ませるようにしましょう。

出血の量は手術を行った時期などによって個人差があります。少量の出血が続く場合はそれほど問題ないとされていますが、大量に出血が続く場合は処置が必要な場合があるので病院への連絡が必要です。

  手術後は1か月前後で月経がきますが、ストレスにより排卵時期がずれてしまうことがあったり、これまでの排卵周期ではなくなるため排卵時期を特定することが難しく、中絶手術を行った後すぐに妊娠してしまうこともあります。手術後、妊娠を望まない場合には必ず避妊を行うようにしましょう。

望まない妊娠をしないために

 複雑な事情を抱え悩みぬいた末で決断するという方が多い人工妊娠中絶手術ですが、手術を受けた後、子宮は元に戻っても心の傷は元に戻らないことも多くあります。望まない妊娠をしないためには、効果の高い避妊をすることが大切です。そのためにはパートナーと家族計画についてしっかりと話し合い協力をしてもらうことも重要です。主な避妊方法について表にまとめました。避妊方法については、その時の家族計画や生活様式などを考慮して無理なく確実に継続できる方法を選択するようにしましょう。

コンドーム

しくみ男性器にかぶせて精子の放出を防ぐ 女性ホルモンを含んだ低用量ピルを正しく服用し月経周期を整える 子宮の中に器具を入れることで黄体ホルモンが放出され受精卵の着床や精子が子宮内に侵入するのを妨げる
メリット・性感染症も予防することができる
・入手しやすい
デメリット装着できていなかったり男性主体となりがちで失敗率が高い
購入方法薬局コンビニなどで購入可能
避妊失敗率15%前後

低用量ピル

しくみ女性ホルモンを含んだ低用量ピルを正しく服用し月経周期を整える
メリット・月経周期が規則的になる
・生理痛が軽くなる
・女性主体で避妊することができる
デメリット・毎日服用しなければならない
・医師による処方が必要
購入方法婦人科で処方
避妊失敗率10%前後

IUS(子宮内システム)

しくみ子宮の中に器具を入れることで黄体ホルモンが放出され受精卵の着床や精子が子宮内に侵入するのを妨げる
メリット・薬の飲み忘れがないため確実に避妊できる
・生理痛が軽くなる
・女性主体で避妊することができる
デメリット・挿入後数か月は出血が続くことがある
・医師による挿入と除去が必要
購入方法婦人科で処方処置
避妊失敗率0.2%

IUD(子宮内避妊用具)

しくみ子宮の中に器具を入れ直接精子の侵入を防ぐ
メリット・薬の飲み忘れがないため確実に避妊できる
・授乳中でも使用できる
・女性主体で避妊することができる
デメリット・生理の量が増える
・医師による挿入と除去が必要
購入方法婦人科で処置
避妊失敗率0.8%

避妊手術

しくみ管を糸で結んで卵子や精子の通路を遮断する
メリット確実に避妊できる
デメリット・手術が必要
・妊娠したいときに不妊になりやすい
購入方法医療機関で処置
避妊失敗率0.5%

基礎体温計測法

しくみ基礎体温を測定することで排卵期を知る
メリット副作用がない
デメリット少しの生活習慣の乱れで基礎体温は変動するので確実に排卵期を見極めることができない
購入方法婦人体温計は薬局などで購入可能
避妊失敗率25%前後

本来であれば、男性も女性も同様に避妊について真剣に考える必要がありますが、実際に妊娠した場合どうしても負担が大きくなるのは女性です。女性主体で避妊することができる避妊法も多くありますので、男性だけに頼らずに自分の身体は自分で守るようにするために正しい知識を身につけておくことが大切です。

まとめ

人工妊娠中絶手術は、どのような方でも受けられるわけではなく母体保護法で受けられる条件が定められています。手術は少なからず母体に負担がかかりますので、様々な事情により妊娠の継続が不可能である場合には、なるべく早くに病院を受診し相談することが大切です。また、人工妊娠中絶手術を受けることで、心に大きな傷を負う場合があります。大切なことは望まない妊娠をしないことです。性交渉をするということは、妊娠の可能性があるということを大前提として、パートナーとしっかりと話し合い妊娠を望まない場合にはより確実な方法で避妊をするようにしましょう。

ABOUT ME
大河友美
国立大学医学部保健学看護科卒業後、大学病院で6年看護師として勤務。 その後、国立大学医学部保健学大学院へ進学し修士号取得。 現在は、子育てをしながら医療ライター・監修者として活動中。 学歴 平成21年 国立大学医学部保健学看護科 卒業 平成28年 国立大学医学部保健学大学院 卒業 取得資格 看護師国家資格 保健師国家資格