
皆さんは「切迫早産」という言葉をご存知でしょうか。現在妊娠をされている方は、切迫早産について、病院から指導があった方もいるのではないでしょうか。また似たような言葉に「早産」がありますが、言葉の意味に違いはあるのでしょうか。今回はそんな切迫早産・早産についてのお話です。切迫早産の原因や症状、治療方法や日常生活の注意点ついてご紹介しますので、参考になりましたら幸いです。

切迫早産とは ―早産との違いについてー
まずはじめに切迫早産についてご説明します。切迫早産とは、妊娠22週以降37週未満の時期に、早産が切迫した状態、すなわち早産に至る可能性が高い状態のことを言います。
一方早産とは、22週以降37週未満の出産自体のことを呼びます。早産の場合は、出産となった週数や赤ちゃんの大きさによって、医療処置を必要とするため、なるべく早産を避けるようにする必要があります。
切迫早産と早産の違いについてまとめると、
妊娠22週以降37週未満で、まだ生まれていないけど生まれそう(早産が切迫した状態)が切迫早産で、22週以降37週未満の出産(生まれた)が早産です。
その他、出産の区分になります。
流産:妊娠22週未満の妊娠の中断
早産(早期産):妊娠22週から37週未満の出産
正期産:分娩予定日を含む妊娠37週から41週6日までの出産
過期産:42週以降の出産
※分娩予定日は、最終月経の初日に280日を足した日として計算しています。
早産をなるべく避ける理由として、早産では赤ちゃんの発育が不十分なことから、低出生体重児になることが多いとされています。
低出生体重児は、体重あたりの体表面積が大きくなることから、体温を保つのが難しく、低体温に陥りやすいとされています。また通常の赤ちゃんと比べて体力の消耗が激しくなり、低血糖、貧血、黄疸のリスクが挙げられます。
その他低出生体重児のリスクとして、呼吸障害があります。
わたしたち人間は肺で呼吸を行いますが、肺は一番最後に作られる器官であり、だいたい妊娠34週頃に完成すると言われています。それより早く産まれた場合は、呼吸窮迫症候群(RDS)などの呼吸障害を起こしやすい可能性があり、より手厚いケアが必要となります。
出産後について、赤ちゃんの産まれた週数や状態によっては、NICU(新生児集中治療室)などで治療しながら成長を促します。赤ちゃんの大きさによっては、NICU に入らないで経過を見ることもあります。
切迫早産の原因と症状

続いて切迫早産の原因と症状についてご説明します。
原因
切迫早産で一番多い原因は感染症です。特に膣炎からの感染により発症する絨毛膜羊膜炎は、前期破水や早産になる原因として重要視されています。絨毛膜羊膜炎を発症すると、サイトカインというタンパク質が放出され、細胞に影響を与えた結果、卵膜の脆弱化が起こったり、子宮口が開きやすくなったり、子宮収縮が起こったり、破水を誘発すると考えられています。
その他持病のある場合の妊娠、双子、三つ子といった多胎妊娠、妊娠高血圧症候群、高年妊娠、喫煙、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、胎児機能不全、羊水過多など、切迫早産の原因は様々です。妊娠中からの正しい管理を行い、リスクを下げることが必要です。
症状
切迫早産の症状として、いつもとは少し違う、規則的なお腹の張りや痛みがあります。また出血も特徴的な症状の一つです。感染症が原因の場合は、悪臭のあるおりものが出ることがあります。破水してしまった場合は、水っぽいおりもの(前期破水)が継続的に出ます。
治療方法

続いて治療方法についてご説明します。場合によっては赤ちゃんが子宮内で生きられない状態になり、人工的に早産にせざる得ないこともあります。早産、すなわち予定よりも早く出産してしまった場合は、出産となった週数や赤ちゃんの大きさによって、医療処置を必要とします。ゆえに切迫早産の場合は、早産にならないための治療を行います。
切迫早産の治療の目的は、子宮収縮を起こさないよう、安静にすることです。正期産である37週未満に陣痛や前期破水など、お産の兆候が見られたら必要時入院をします。入院中は安静を保つことや子宮収縮抑制薬を継続的に投与することにより、できるだけ妊娠期間を延長させ、正期産での出産を目指します。感染兆候が見られる場合には、抗菌薬を投与し、治療を行います。
切迫早産における日常生活の注意点

切迫早産の治療法の一つとして、入院はせずに、自宅で安静にして経過を見る場合があります。 また、入院が必要でも、上のお子さんがいる、周囲の協力を得ることが難しいことから、入院はせずに自宅での安静を行うことがあります。
切迫早産の場合、赤ちゃんはお腹に止まっている状態なので、できるだけ妊娠を継続できるよう、自宅療養の場合でも、安静が第一です。状態によっては長期安静の指示があることもあります。気持ちをリラックスさせて、食事や睡眠が十分取れるよう、環境を整えましょう
自宅療養における日常生活の注意点として、なるべく子宮収縮が起こらないようにすることが大切です。自分一人の体ではないことを自覚し、大切にいたわりましょう。
程度にもよりますが、なるべく横になる時間を長くするよう指示がある場合があります。「これくらいは大丈夫かな」と無理をするのではなく、医師の指示を守り、安静を保ちましょう。入浴はシャワー浴ではなく清拭(ベッドの上で濡れタオルで体を拭くなど)の指示がでることもあります。
安静にしていると、運動不足から便秘になりやすくなることがあります。便秘になると子宮が圧迫されたり、トイレでいきんだりすることによって子宮収縮を起こしかねません。便秘については妊娠中でも使えるお薬があります。主治医の先生に相談しながら排便のコントロールと治療を行いましょう。
仕事への配慮について、職場に配慮してほしいと伝えにくい時は、「母性健康管理指導事項連絡カード」の使用をお勧めします。働く妊婦や産後の女性の健康状態を守るために、医師から指示事項(通勤緩和や休憩について)を職場に正しく伝えるために利用できる書類です。特に切迫早産の場合、仕事内容や休憩について、綿密な配慮が必要な場合や、仕事自体が難しい場合もありますので、こちらのカードを使用し、仕事内容の調整を行うことをおすすめします。
切迫早産のまとめ

今回の記事では、切迫早産について、早産との違いや原因と症状、治療方法や日常生活における具体的な注意点についてご紹介しました。
切迫早産とは、妊娠22週以降37週未満の時期に、早産に至る可能性が高い状態のことで、なるべく早産を避けるようにする必要があります。
感染症をはじめとした様々な原因があり、症状として、いつもと違う、規則的なお腹の張りや痛み、出血、悪臭のあるおりものや水っぽいおりもの(前期破水)が継続的に出ます。
子宮収縮を起こさないよう、安静や投薬でできるだけ妊娠期間を延長させ、出産となります。自宅安静の場合は、なるべくリラックスできる環境を整えることが大切です。
切迫早産は、場合によっては長期安静の指示があることもあります。リスクがあることを自覚し、リラックスできる環境を整え、ご自身の体をいたわりながら妊娠期間を過ごしていただければ幸いです。
