2021.10.08
出産
近年、女性の社会進出や晩婚化などにより、高齢出産は珍しいものではなくなりつつあります。みなさんも女性芸能人の高齢出産や、身近な方の高齢出産を耳にすることがあるのではないでしょうか。
何かと話題の高齢出産について、みなさんはどの程度ご存知でしょうか。また、高齢出産について、どのようなイメージを持っていますか。今回の記事は、そんな高齢出産についてのお話です。高齢出産におけるリスク、注意点等についてご説明しますので、参考にしていただけたら幸いです。
まずはじめに、何歳から高齢出産と呼ばれるのでしょうか。日本産婦人科学会によると、初産婦では35歳以上を「高年初産婦」と定義しています。世界規模でみると、世界産科婦人科連合では「初産婦では35歳以上、経産婦では40歳以上」を高齢出産と定義しています。
女性の社会進出が進んだことや晩婚化などから、初産の平均年齢は年々高くなっています。厚生労働省の人口動態統計によると、令和元年(2019年)時点において、35歳以上の出産はおおよそ29%と、3~4人に1人は高齢出産であるという結果となっています。高齢出産は珍しくはないということがお分かりいただけたでしょうか。
高齢出産はママや赤ちゃんの健康や体力面でのデメリットが取り上げられやすいですが、いくつかのメリットもあります。高齢出産によるメリットは以下のものがあります。
35歳以上の高齢出産は、20代の若いカップルよりも経済的な余裕を持てるカップルが多いです。30代半ばになると、仕事でもある程度の地位についている方も多く、世帯収入が1000万円を超えるパワーカップルの割合も増えてきます。
妊娠や出産後、子ども成人するまで、衣食や教育費などがかかります。高齢出産のカップルは、若いカップルよりも収入や蓄えが多く、出産や育児にもお金をかけられるメリットがあります。 経済的な余裕があれば、急に人手が必要なときも、ベビーシッターや家事手伝いへの依頼もできます。緊急時にも選択肢があるので、子育てがしやすいといえるでしょう。
高齢出産で赤ちゃんを迎える場合、育児に対して精神的な余裕を持つことができます。赤ちゃんや子どもの世話は、親の思った通りに行かない場面がしばしばです。
若くして出産すると、人生経験が少なさから、子育て中に気持ちが振り回されてしまうことがあるかもしれません。 一方、年を重ねたカップルは若いカップルよりも、人生経験が豊かであるため物事を達観できる傾向があります。赤ちゃんや子どもの世話で、思い通りに行かなくても、受け入れて余裕を持って育児に取り組める人が多いです。
高齢出産の大きなメリットといえるのが、子育てに気持ちを専念できることです。若いうちに子どもを産むと、遊び足らずに子どもを持ったことを後悔してしまう人も少なくありません。
35歳以降の高齢出産であれば、仕事に遊びにと独身時代を十分満喫した人も多くなります。出産後に育児に集中しやすいメリットがあります。出産をきっかけに、家庭に入る女性も、仕事への未練を抱かずに、育児に取り組めるでしょう。
日本は少子高齢化社会であるため、赤ちゃんや子どもと接した経験があまりない方も多くいるでしょう。妊婦さんの中には、初めてのことばかりで戸惑ってしまう方もいます。
高齢出産であれば、周りに子育てをしている人が多く、先輩ママから色々なアドバイスを聞くことができます。子育ての方法はママによって違いがありますが、さまざまな意見を参考にしながら、自分の家庭に合った方法を選びやすくなります。
日本では女性の社会進出や晩婚化が進んでおり、それらにともなって女性の初産年齢が高くなっています。女性の初産年齢のピークは、年々高くなっており、1990年代は25歳の初産がピークでしたが、2005年以降は30歳が初産のピークとなっており、その後はほぼ高止まりしています。
厚生労働省の統計でも、2015年には高齢出産が全体の出産の約3割弱を占めており、35歳以上の出産は一定の割合で存在します。
出産は年齢を重ねるほど、ママや赤ちゃんの健康リスクを伴うので、高齢出産には危険性ばかり注目されがちです。リスクを踏まえて妊娠管理をしていけば、いくつかのものは回避することもできます。また、高齢出産による赤ちゃんの染色体異常は回避できませんが、事前に調べることで、備えることもできます。 最近は医療技術も急速に発展しており、高齢妊娠や出産へのフォローもあります。昔ほどリスクが高いわけではないので、心配しすぎないようしましょう。高齢で妊娠した場合も、前向きな気持ちで妊娠期間を過ごして出産に臨むことが大切です。
妊娠・出産には年齢ごとにリスクが異なります。ここでは、妊婦さんの年齢別のリスクとその対策についてみていきます。
日本では、30歳の妊娠・出産でも多く、年齢による特別なリスクが大きいというわけではありません。とはいえ、健康面から見た妊娠のベストな時期は、やはり20代といわれています。
30歳に妊娠して出産を迎える場合でも、妊娠管理をしっかり行い、安全なお産を迎えましょう。具体的には、妊娠週数に応じた体重増加を行い、喫煙やアルコールを避けるといったことが挙げられます。 また、30歳は年齢的に十分若いという年代でもありません。30歳を過ぎると、妊娠や出産にかかわるリスクが少しずつ上がっていきます。30歳の妊婦さんの中には、体力的にも余裕のある方が多いですが、流産や早産のリスクを避けるためにも、妊娠期間中は体に無理をしないように過ごすことが大切です。
出産時に35歳を迎える場合は、高齢妊娠に入ります。日本では高齢出産がそれほどめずらしくありませんが、母子の健康面のリスクが上がるので注意が必要です。
特に、35歳の妊婦さんは、若い妊婦さんと比べると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧のリスクが高くなります。また、お産も難産になりやすく、出産後は新生児の管理が必要になる場合もあります。
安全なお産を迎えるために、妊娠中はきちんと健康管理を行うことが大切です。特に、適切な体重管理により、妊娠合併症を防ぐことが大切です。万が一、妊娠合併症になった場合も、医師の指示に従って妊娠期間を過ごすことが大切です。
また、35歳以降は赤ちゃんの先天異常の確率も高くなる時期です。特に、染色体異常は高齢妊娠との関連があることが分かっています。赤ちゃんの健康状態が気になる方は、NIPT(新型出生前診断)など検査で事前に調べることもできます。
35歳で1人目を出産して、その後も2人目の妊娠を希望する場合は、計画的に行いましょう。35歳という年齢は、女性が家族計画をする上で、ラストスパートの時期といえます。
35歳の妊娠確率は18%で、40代になると妊娠確率がさらに下がります。2人目の妊娠を望むのなら、なるべく早くしなければなりません。家庭のライフプランと合わせながら、家族計画を立てていきましょう。 なお、不妊治療で1人目の赤ちゃんを授かった場合は、一般的なステップを踏んだ不妊治療ではなく、すぐに体外受精を受けることを検討しましょう。すぐに体外受精することに抵抗がある方は、期間を決めて不妊治療を受けてから、体外受精に進むようにしましょう。
40歳の女性の妊娠確率は5%で、妊娠しにくい年齢です。そのため、40歳の妊娠は、不妊治療後の待望の妊娠であることもあれば、予期せぬ妊娠ということもあるかもしれません。
40歳の妊娠はハイリスクであるため、40歳になる前に妊娠をするのが適しています。40歳になると、流産や早産だけでなく、死産のリスクが高くなります。また、お腹の赤ちゃんも染色体異常による先天異常の確率が高くなります。
40歳の妊娠・出産のリスクを上がるのが、出産歴がないこと、肥満と喫煙です。特に、妊娠中の肥満や喫煙は、40歳の妊娠・出産に関わらず、20代30代の妊娠・出産でも注意しなければなりません。 母子健康に妊娠期間を過ごして、お産を迎えるために、妊婦健診で母子の健康チェックを欠かさず行いましょう。検査で異常が起きた場合は、医師の指示に従って、残りの妊娠生活を過ごすことが大切です。
1つ目の理由が、加齢による卵子の老化です。女性の体には生まれたときから卵子があり、体が年を取るにつれて、卵子も同じように年を取ります。卵子の老化により、30歳頃からそもそも妊娠自体がしづらくなります。
加齢に伴い卵子が外的影響を受ける期間が長くなり、染色体が影響を受けることから、赤ちゃんには、染色体異常が現れる可能性が高くなるといわれています。ダウン症候群の生まれる確率は、30歳未満では約1/1000、40歳以上では1/100に、45歳以上では1/30に上昇します。ダウン症候群の他にも、様々な染色体異常が起こる確率が高くなり、また流産の確率も高くなります。
高齢出産のリスクの一つに、合併症が発生しやすいことがあります。年齢が上がるにつれ、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病といった合併症のリスクが高まります。
妊娠20週以降、分娩後12週まで、高血圧が見られる場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかのことです。妊娠中の高血圧と、それに伴う症状により、お母さんや赤ちゃんに危険な状態をもたらします。原因ははっきりわかっていませんが、何らかの理由で胎盤の血管が正常に形成されず、お母さんと赤ちゃんの間の血流が十分に維持されなくなり、胎盤が血液を得ようと、お母さんの血管を収縮される物質を分泌することが原因と考えられています。
妊娠高血圧症候群になると、常位胎盤早期剥離や脳出血、胎盤機能が低下することによる、胎児発育不全や胎児機能不全などが起こりやすいとされています。
妊娠中に発症または発見された耐糖能異常のことを言います。妊娠によってお母さんの体のインスリン抵抗が亢進して、耐糖能異常を起こすことがあります。流産、早産、羊水過多、巨大児、新生児低血糖などのリスクが高くなります。合併症を予防するためにも、妊娠中の血糖コントロールが重要です。
胎盤が赤ちゃんの出口を塞いでいる状態です。前置胎盤の場合、予定日より前に帝王切開になります。お腹の張りを感じたらできるだけ安静にし、出血がある場合はすぐに病院を受診しましょう。
赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまう状態です。妊娠高血圧症候群を発症している場合などは起こりやすいといわれています。母子ともに危険な状態のため、帝王切開に切り替えます。
その他にも子宮口が開きにくい(軟参道強靭)、微弱陣痛や遷延分娩による緊急帝王切開など、妊娠や出産にトラブルが起こる確率が高くなります。
高齢出産のリスクをなるべく軽減させるためにも、以下の内容はぜひ守っていただきたいポイントです。
妊娠中は急に体調が変化することもあります。加えて高齢妊娠、出産は様々なリスクを伴います。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といった、妊娠中の異常の早期発見や早期治療のためにも重要な役割を果たしますので、定期的な妊婦検診は必ず受けましょう。
仕事も家事も頑張るお母さんが多いかと思いますが、自分ひとりの体ではないことを忘れず、お体を大切にいたわるようにしましょう。こまめな休憩も忘れないでくださいね。
働いている方に関して、高齢出産の場合、職場では役職に付いている方や、多くの仕事を任されている方などが多いのではないでしょうか。仕事の負担があまりにも大きい場合は調整が必要です。妊娠中であること、リスクがあることについて、周囲の方々への理解を得ると同時に、必要時お仕事量の調整を行うことが大切です。
職場環境の改善、仕事量の調整が難しい場合や、職場に配慮してほしいと伝えにくい時は、「母性健康管理指導事項連絡カード」を使うことをお勧めします。母性健康管理指導事項連絡カードは、働く妊婦や産後の女性の健康状態を守るために、医師から指示事項(通勤緩和や休憩について)を職場に正しく伝えるために利用できる書類です。こちらを活用し職場に提出することで、希望を伝えることをお勧めします。
3食のバランスのよい食事をはじめ、適度な睡眠をとるなど、規則正しい生活を心がけましょう。正しい食事管理や規則正しい生活は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクを軽減することにも繋がります。
また、ストレスは血管を収縮させる作用があり、血液から栄養や酸素を得ている赤ちゃんには少なからず影響が出ます。もちろん適度なストレスは問題ないですが、過度なストレスを感じることは禁物です。ご自身にとってストレスを感じることはなるべく減らし、リラックスできるよう環境を整えましょう。
今回は高齢出産についてのリスクをたくさん説明したため、不安ばかりが大きくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
出産への不安な気持ちを軽減するために、新型出生前診断(NIPT)を検討してみるのもおすすめです。
もちろん、今回ご紹介した通り、高齢出産には様々なリスクがつきものです。しかしながら、社会経験が長いため、様々なトラブルなどに落ち着いて対応する適応力が身についていたり、これまでの豊富な経験をもって子育てに取り組むことができるという点もあります。
今回ご紹介したリスクを正しく理解し、病院やお医者さんの指示をしっかりと守ることで軽減できるリスクもたくさんあります。これまでの人生の経験を生かして、出産に臨んでいただけたら幸いです。
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