2022.09.05
出生前診断
ダウン症は程度の差はあれど、心臓疾患や消化器疾患をはじめとした合併症や、知的や精神の発達に遅れを伴うことがあります。現在では医学や療養、また教育の進歩などにより、様々なサポートを受けることができ、また支援団体もあります。今回はダウン症児やその家族への支援制度について紹介します。
ダウン症は21番目の染色体が1本多いことが特徴で、「21トリソミー」とも呼ばれています。ダウン症の正式名称は「ダウン症候群」で、小児慢性特定疾病情報センターによると、ダウン症が生まれる割合は、600~800人に1人程度と言われています。
ダウン症は筋肉の緊張度が低く、顔が広く扁平で、首の後ろの皮膚が余っていることもあります。またつり上がった目と低い鼻が特徴で、舌が大きいこともあります。
身体・知的精神の発達が遅れることもあり、ダウン症の小児のIQは50程度と言われています。
ダウン症で最も多い合併症は心臓疾患や消化器疾患ですが、程度には個人差があります。また合併症のない場合もあります。合併症をはじめとした症状や、知的・精神状態に対しては、症状や年齢に応じて必要な検査や治療を行う必要があります。
現在は医療や療育環境の進歩により、ダウン症の平均寿命は伸びており、施設や作業所での軽作業、飲食店や小売業など、さまざまな分野で多くの人が働いています。趣味を生かして画家や演奏家などを目指す人もいます。プロの書道家、ダンサー、俳優として活躍している人もいます(※①)。
ダウン症には次のような支援団体があります。
公益財団法人日本ダウン症協会(JDS)はダウン症のある人たちとその家族、支援者でつくる会員組織です。全国に約5,200名の会員がおり、相談活動や会報発行をはじめ、ダウン症に関わる様々な活動をしています。
相談・情報提供・普及啓発・調査研究・その他の5分野の取り組みがあり、国内はもとより、国際ダウン症連合(DSi:Down Syndrome International)の一員として、アジア、そして世界へ向けて情報を発信しています。相談活動では、親として豊富な経験を持つ先輩が、電話で様々な相談に応じています。
引用・参考:公益財団法人日本ダウン症協会
ダウン症のある子どもをもつ親が集まって立ち上げた団体です。ダウン症の一般理解を促進するイベントや、研修・勉強会、情報発信や企業・団体とのコラボレーションを行っています。Facebook・Twitter・Instagram・YouTubeのSNS運営や、メールマガジンも行っています。
引用・参考:NPO法人アクセプションズ
ダウン症や自閉症などの障がいがある方に、ストリートダンスの指導や振付、ダンスイベントの企画・運営を行っています。茨城県や東京都が活動の中心で、ダンスレッスン教室も開催しています。
引用・参考:NPO(特定非営利活動)法人WING HEART
ダウン症を持つ子どもと家族を支援する団体で、子ども達の可能性を広げる活動の場、ご家族やきょうだいさんの繋がりの場、ダウン症に関わる様々な知識や新しい情報などを提供しています。勉強会やきょうだい支援活動、食育をはじめとした活動や、日本で初めてのNPOが運営するダウン症児専門のデイサービスの運営も行っています。
引用・参考:NPO法人 めばえ21
合併症や知的・精神障害に対して、行政から様々なサービスが提供されています。お住まいの地域や障害の程度、所得などで利用できるかは異なります。
児童の健全育成を目的として、疾患の治療方法の確立と普及、患者家庭の医療費の負担軽減につながるよう、医療費の自己負担分を補助する制度です。ダウン症の場合、治療・処置・診断などの対象基準が設けられています。
引用・参考:小児慢性特定疾病情報センター ダウン(Down)症候群
身体上の障害がある方が、サービスや制度を利用することができます。視覚・聴覚障害、肢体不自由や心臓、腎臓や小腸をはじめとした機能の障害などが対象です。
引用・参考:身体障害者手帳制度の概要
知的障害のある方が、サービスや制度を利用することができます。行政によって呼び方は異なり、東京都や横浜市では「愛の手帳」と呼ばれています。所得や等級で受けることのできるサービスは異なります。
引用・参考:厚生省 療育手帳制度について
精神又は身体の重度障害児に対して、手当を支給します。在宅の20歳未満の方
が対象で、手当月額は14,850円です(令和4年4月から)。受給には所得制限があります。
引用・参考:厚生労働省 障害児福祉手当について
精神又は身体に障害を有する児童に対して、手当を支給します。20歳未満の児童が対象です。手当月額は1級が52,400円、2級が34,900円です(令和4年4月から)。受給には所得制限があります。
引用・参考:厚生労働省 特別児童扶養手当について
医療はもちろん、療育や教育においても様々な支援が提供されています。
合併症や動作レベル、知的・発達に応じて必要とされる訓練を行います。医師の指示が必要です。個別で動作や療育をはじめとした訓練を行う場合と、集団で行う場合があります。
通院が難しい場合や、自宅でのリハビリのほうが適している場合、訪問リハビリテーションを受けることができます。医師の指示が必要です。
発達障害の特性が気になる子どもに作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、臨床心理士、臨床発達心理士などの専門職が、その子に合った療育を提供します。専門職の配置や対象年齢、内容は地域によって異なります。
引用・参考:埼玉県 地域療育センターについて
障がいのある児童に訓練や治療等を行い、児童の発達を支援する施設です。平成24年の児童福祉法改正に伴い定められた児童福祉施設で、通所で楽しみながら発達を促すよう支援します。親子や子ども同士での遊びや生活経験の他、相談支援事業も行っています。
引用・参考:児童発達支援センターの位置づけについて
知的・精神に障害がない場合、お住まいの地域の小中学校で学校生活を送る方もいます。症状や状況に応じて、小中学校の特別支援学級に在籍するか、特別支援学校に通う児童も多くいます。高校は特別支援学校へ進む人が大半です。
引用・参考:公益財団法人日本ダウン症協会 ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ
今回の記事では、ダウン症児やその家族への支援制度について紹介しました。
ダウン症児は個人差があるものの、心臓疾患や消化器疾患をはじめとした合併症や、知的や精神の発達に遅れを伴うことがあります。ダウン症児の健やかな発達・発育を支援するため、現在では様々な支援サービスや教育制度が提供されています。またダウン症の支援団体や家族の会なども活発に活動しているため、悩みや思いを共有する場としても活用できます。
現在は医療や療育、教育が進み、平均寿命も大幅に伸びています。学校生活や社会生活を送り、様々な分野で多くの人が活躍しています。ダウン症のある方がいきいきと、その人らしい豊かな人生を送ることができるよう、必要とされるサービスや支援を上手に活用することが大切です。
参考:公益財団法人日本ダウン症協会 ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ
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