
妊娠中の方や、妊娠を希望している方の中には、子宮外妊娠(異所性妊娠)について気になっている人も多いのではないでしょうか?子宮外妊娠について何となく知っていても、どのような症状やリスクがあるのか知っておくことが大切です。
この記事では、子宮外妊娠の症状や原因、治療法について解説します。

子宮外妊娠(異所性妊娠)とは

通常、精子と卵子が出合って受精卵となり、受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠の成立となります。一方で、受精卵が子宮内膜ではなく、他の場所に着床した妊娠を子宮外妊娠といいます。子宮外妊娠は、すべての妊娠のうち約1~2%の頻度で起こります。
子宮外妊娠の多くは卵管妊娠ですが、そのほかにも受精卵が着床した部位ごとに、卵巣妊娠・頸管妊娠・腹腔妊娠などの種類があります。
子宮外妊娠と異所性妊娠との違い
子宮外妊娠ではなく、異所性妊娠という言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれません。異所性妊娠とは子宮外妊娠のことで、両者に違いはありません。
2009年に日本産婦人科学会で、子宮外妊娠を「異所性妊娠」に統一することが決定されました。そのため、医療機関の公式サイトでは子宮外妊娠ではなく、「異所性妊娠」が用いられている傾向があります。
本記事では、広く認知されている「子宮外妊娠」を用いていきます。
子宮外妊娠(異所性妊娠)になる原因

受精卵の元となる精子と卵子は卵管で出合い、受精卵となった後、細胞分裂を繰り返しながら、卵管を移動して子宮にたどり着きます。
卵管は漏斗状の形をしており、排卵期に卵巣から排出された卵子を卵管采がキャッチします。受精卵は卵管で発育に必要な物質を得ながら、卵管の内側を覆う腺毛運動や、卵管そのものの蠕動運動によって、卵管内を移動します。
子宮外妊娠は、受精卵がうまく移送できなかったり、卵管の環境に原因があったりすることで起こることが分かっています。
喫煙は子宮外妊娠のリスクになる
直接の原因ではないものの、喫煙は子宮外妊娠のリスク因子です。喫煙は上記の卵管での働きを抑制する作用があるため、子宮外妊娠のリスクを高めます。
体外受精との関連も
体外受精は不妊治療のひとつで、排卵直前に卵子を取り出し、シャーレの中で精子と受精させて育てた後、子宮内に戻す方法です。体外受精は、子宮外妊娠の頻度が1~3%上がることが分かっています。
子宮外妊娠(異所性妊娠)でみられる症状

子宮外妊娠になると、以下のような症状がみられます。
- 不正出血
子宮外妊娠では妊娠中に出血がみられます。もともと月経不順の女性では、子宮外妊娠で出血が起こっても、生理と勘違いしてしまうことも少なくありません。 - お腹の痛み
子宮外妊娠でよくみられる卵管妊娠では、胎児が大きくなることで卵管の破裂を引き起こす恐れがあります。卵管が破裂すると大量出血が起こるので、妊婦さんが命を落としてしまう危険もあります。 - お腹の張り
子宮外妊娠により、腹腔内で出血が起こると、出血がみられずに、お腹が張った感じがみられることがあります。
子宮外妊娠でも妊娠検査薬は陽性になる?
子宮外妊娠は異常な妊娠ですが、妊娠はしているため月経が止まります。妊娠をすると、胎盤から「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンが分泌されます。
市販の妊娠検査薬は、尿中に含まれるhCGを調べることで、妊娠しているかどうかを調べます。そのため、子宮外妊娠でも妊娠検査薬が陽性になります。妊娠検査薬はあくまで妊娠の有無をチェックするためのものなので、子宮外妊娠であるかどうかを調べることはできません。
子宮外妊娠(異所性妊娠)の診断

子宮外妊娠の診断には、以下の検査を行います。
- 問診
妊娠歴や最終月経、既往歴を確認します。妊娠週数を確認するために、妊娠のきっかけとなった性行為の時期や、妊娠反応が陽性になった時期を聞くこともあります。 - 尿検査
尿中に排出されているhCGの量を調べて、妊娠しているかどうかをみます。子宮外妊娠の場合、hCGの産生が十分でなく、数値が低く出ることもあり、再検査が必要になることがあります。
受精卵が本来の子宮内膜ではなく他の部位に着床しているため、着床後に十分に絨毛が発育しないためです。 - 超音波検査(エコー検査)
超音波を当てて、その反響を画像化する検査です。検査時は専用のジェルを塗るため、冷たく感じますが、痛みなどはありません。
検査では、お腹の赤ちゃんの元である胎嚢がどこにあるか調べます。胎嚢は妊娠5週目頃に確認できることがほとんどで、妊娠の確定のためにも行われます。
子宮外妊娠では、超音波検査で子宮以外の卵巣や卵管に胎嚢を確認できることもありますが、部位によっては胎嚢が確認できないこともあります。そのほか、子宮外妊娠では、超音波検査により子宮周りの器官に腫瘤がみられることもあります。 - 腹腔穿刺
子宮外妊娠により腹腔内出血が疑われる場合は、直腸と子宮の間を穿刺することがあります。 - 内診
胎嚢が着床している部位に痛みがあるかどうかを調べます。妊娠週数に対して子宮が小さくないか、内診時に圧痛などの痛みがないかも調べます。
子宮外妊娠(異所性妊娠)の治療
子宮外妊娠では、胎嚢が正常に発育するケースと発育が十分でないケースがあります。子宮外妊娠で胎嚢が発育すると、破裂して出血のおそれがあります。また、子宮外妊娠で胎嚢があまり発育せずに流産しても、内容物が体内に残ることもあり、感染を引き起こす原因となります。
ここでは子宮外妊娠と診断されたときの治療についてみていきます。
待機療法
子宮内膜以外に着床した胎嚢が自然吸収されるのを待つ方法です。hCGの数値が上昇せずに、継続して低下がみられる場合は、待機療法が選択されることがあります。
薬物療法
抗がん剤として使用されている「メトトレキサート(MTX)」を投与する治療法です。子宮外妊娠の症状がない例や、症状があっても軽い例が対象となります。日本では保険適用の治療ではありません。
動脈塞栓術
動脈塞栓術は、動脈内に細い管を挿入して動脈を塞ぐ薬を入れる方法です。頸管妊娠や帝王切開に関連した子宮外妊娠で行われます。
手術
子宮外妊娠が卵管膨大部に起きた場合は、腹腔鏡手術により、子宮外妊娠が起きている部位を取り除きます。卵管破裂などにより、卵管の損傷が著しい場合は、開腹手術が行われます。
将来の妊娠・出産の希望がある場合は、子宮外妊娠の部位によっては卵管を温存できる場合があります。卵管を切除したり縫合したりしても、妊娠する確率に差はありませんが、子宮外妊娠を繰り返すことがあります。
なお、将来の妊娠・出産の希望がない場合は、卵管切除が行われます。
まとめ
子宮外妊娠は、子宮内膜ではなく他の部位で受精卵が着床することで起こる妊娠です。子宮外妊娠が起こると、妊娠の進行とともに、妊婦さんの命にも影響が出る危険性があります。
妊娠中の方で不正出血や腹痛がみられる人や、妊娠の自覚がない方でも、記事内で紹介した症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
参考:異所性妊娠
