2024.05.21
妊娠
妊娠を望んでいる女性の中には、妊娠のサインについて気になっている人が多いでしょう。妊娠超初期には、いくつかの変化が表れることがあります。ここでは、妊娠超初期の定義や症状について解説します。
妊娠期間を表す言い方には、妊娠週数以外にも、妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期という表現があります。妊娠初期は妊娠1~4か月の期間のことで、中でも妊娠0週から4週未満までの期間を「妊娠超初期」と呼ぶことがあります。
妊娠超初期は医学用語ではありませんが、妊娠の成立にともない体に症状が現れることがあるため、用いられている表現です。妊娠超初期というと、すでに妊娠が成立しているイメージがありますが、実際には異なります。
妊娠0週0日目は妊娠前の最後の月経開始日にあたるため、このとき妊娠は成立していません。月経最終日から2週間ほど経つと、卵巣から卵子が飛び出す排卵期に入ります。排卵期に異性との性行為などにより、卵管内で卵子と精子が出会うと、2つの細胞が1つになり受精卵となります。
受精卵は数日かけて、卵管から子宮へゆっくり移動します。妊娠3週目頃に入ると、子宮内膜に受精卵がもぐりこみ、ようやく妊娠成立となります。上記の妊娠週数と時期は、月経周期が28日である場合となるため、実際の月経周期により日数が前後することがあります。
妊娠超初期は、最終月経から妊娠成立後の期間を指すもので、特に受精卵の着床前後に表れる症状を「妊娠超初期症状」と呼ぶことがあります。
妊娠超初期は、妊娠していない場合の排卵期や生理前にあたる時期です。この時期は女性の多くが、何かしらの身体的または精神的な症状が現れやすく、妊娠超初期症状と混同してしまうこともあるでしょう。
市販の妊娠検査薬で検出可能となるのは、次回の生理予定日の1週間後以降になります(※月経周期28日の場合:受精後3週目ごろ、妊娠5週目ごろ)。妊娠超初期症状の中には通常の生理前でもみられやすいものもあり、症状があることで妊娠を確証するものではありません。
むしろ、妊娠が分かった後に「あの時の症状は妊娠超初期症状だったのかも」と感じる程度の方が多いでしょう。妊娠超初期症状については「こういった症状を感じることがある」と、あくまで目安のひとつとして捉えることが大切です。
妊娠が成立している場合、妊娠超初期に症状がみられることがあります。ここでは、妊娠初期でみられやすい症状についてみていきます。
妊娠をしていると、次回の生理前にあたる時期に少量の出血がみられることがあります。これは着床出血と呼ばれているもので、卵子と精子によってできる受精卵が子宮内膜に根を張ることで起こります。
受精卵が子宮内膜に着床するとき、絨毛という細胞が子宮内膜に入り込む際に、血管が破れるため出血が起こります。着床出血の量や程度には個人差があり、おりものが茶色くなる程度のものから、少量の出血が付着する程度など人によって様々です。
妊娠をすると女性ホルモンの影響で、普段より体温が高い状態が続きます。一般に、基礎体温は排卵期を境に0.3~0.5℃くらい上がり、生理が来ると元に戻りますが、妊娠をすると体温が高めの状態が続きます。
また、着床が始まるタイミングで1~2日ほど一過性に基礎体温が下がる着床ディップ(黄体ディップとも)と呼ばれる現象がみられる場合があります。
妊娠超初期の体温の上昇は、風邪と間違えられることもありますが、咳や鼻水などの症状がないことで見分けられます。
妊娠すると黄体ホルモンの分泌が増えるため、体にいくつかの変化が起こりますが、その中のひとつに胸の張りがあります。生理前でも黄体ホルモンの影響で胸の張りがみられますが、次回の月経予定日以降も胸の張りが続く場合は、妊娠超初期の症状といえます。
妊娠すると女性ホルモンのプロゲステロンの影響で、眠気を強く感じることがあります。プロゲステロンは妊娠を維持する働きがあり、流産を起こしやすい妊娠初期に体を休ませるために眠くなりやすいともいわれます。
眠気があると、コーヒーやエナジードリンクのようなカフェイン飲料についつい頼ってしまう人もいるでしょう。妊娠中のカフェインの摂取は、おなかの赤ちゃんの発育不良を起こすことがあるので、妊娠の可能性がある時期は控えましょう。
おりものは子宮や膣から出る分泌物で、子宮内を潤したり衛生を保ったりする働きがあります。生理周期と合わせておりものは変化しますが、妊娠をすると、おりものが変化したり量が増えたりすることがあります。これは妊娠によって女性ホルモンの分泌が増えるためです。
おりものの変化には個人差がありますが、人によっては水っぽくなったり、クリーム状になったりすることもあります。これまでの生理周期におけるおりものとの違いあるかを把握していると分かりやすいでしょう。
妊娠後、出産をするには、赤ちゃんが母親の産道を通らなければなりません。赤ちゃんが狭い産道を通るには、リラキシンというホルモンが関わっており、産道や骨盤をゆるめる働きがあります。
リラキシンは出産前に急に分泌されるのではなく、妊娠してから分泌されるものです。リラキシンは3週頃から分泌され始め、12週頃にピークを迎え、30〜40週にかけ高値が維持されます。妊娠してリラキシンが分泌されると、骨盤が不安定になるため、人によっては、妊娠初期から腰の痛みを感じることがあります。
妊娠により女性ホルモンの分泌が増えると、ホルモンバランスの変化により、自律神経のバランスが乱れて、頭痛を感じることがあります。頭痛に慣れている人の場合、普段は痛み止めで対処している人もいるでしょう。
妊娠4週未満であれば、薬の使用による赤ちゃんへの影響は、殆ど無いものとされています(いわゆる無影響期)。
しかし妊娠中の内服薬の使用は、比較的に安全と考えられてきた薬剤であるプロプラノロールやアセトアミノフェンでさえ、最近の報告では子宮内発育不全との関連や発達障害との関連が指摘されており(頭痛ガイドライン)、医師と必ず相談の上で行うべきでしょう。
また頭痛には、器質的病変を伴う二次性頭痛(器質性頭痛とも:髄膜炎・脳腫瘍・脳卒中など)と、機能性疾患として頭痛自体が問題である一次性頭痛(機能性頭痛とも:片頭痛・群発頭痛・筋緊張型頭痛など)があります。
二次性頭痛の原因となる器質的病変の中には妊娠中の発症や増悪を特徴とするものもあり、まずは頭痛診療の基本として、これらの危ない病気でないことを病院で確認して貰う必要があります。
一次性頭痛であった場合も、予防薬としてプロプラノロールが、頭痛発作時鎮痛薬としてアセトアミノフェンが慣用的に使われることが多いものの、安易に薬に頼るのではなく、まず食事や睡眠をはじめとした生活習慣の改善やストレス管理を心掛けるべきでしょう。
また江戸時代からの知恵である病鉢巻(やまい ハチマキ)が有効とする意見もあります(岡山県医師会HP 、頭痛大学(温知会間中病院)HP )。
胃のむかつきや、げっぷがみられている場合は、妊娠超初期症状の可能性があります。妊娠で女性ホルモンのプロゲステロンの分泌が増えると、胃のムカムカ感がみられることがあります。
プロゲステロンには子宮の収縮を抑える作用があり、胃などの消化器の働きが抑制されることがあるためです。
妊娠によりプロゲステロンの分泌が増えると、イライラしやすくなったり、不安を感じやすくなったりします。プロゲステロンは生理前にも分泌が増えるため、こういった気分の変化は妊娠していない人にもみられます。ただし、気分の変化が続く場合は、妊娠によるホルモンバランスの変化の可能性があるでしょう。
においに敏感になる、ちょっとしたにおいで気分が悪くなるというのも、妊娠超初期にある症状です。妊娠すると、今まで特に気にしていなかったにおいに敏感になることがあり、吐き気やむかつきを覚える方もいます。
敏感になる、気分が悪くなるにおいの代表例は、ご飯の炊けるにおいをはじめとした、あたたかい食事のにおいです。食事の準備をするだけでも、においで気分が悪くなる妊婦もいます。
妊娠によりプロゲステロンの分泌が増えると、腸の動きが低下することがあります。運動不足などの要因も合わさり、便秘の症状が出現します。またにおいに敏感になったことにより食事が食べられないなど、食生活や食事内容の変化により、便秘になることもあります。
妊娠前から継続的に便秘の症状があり、便秘薬を常用している方もいらっしゃるかと思います。便秘薬を服用したい際は、医師に相談し、酸化マグネシウムやポリエチレングリコールなどの妊娠中でも服用できる便秘薬を処方してもらうことをおすすめします。
妊娠したことによりホルモンバランスが変化し、貧血や低血圧、自律神経の乱れなどからめまいやふらつき、立ちくらみを感じることがあります。
めまいやふらつき、立ちくらみを我慢すると、転倒して頭やお腹を打つなどの危険性もあります。不調を感じたら無理せずすぐに休憩し、横になれる場合は横になりましょう。
妊娠超初期は妊娠前の食欲と比べ、食欲がなくなる場合と、逆に食欲が増す場合があり、症状や程度は人それぞれです。
食欲が変化する原因も、ホルモンに関係があります。妊娠中に増加するプロゲステロンは胃腸の働きを抑制し、消化不良を起こす作用があります。つわりの原因でもあり、食欲がなくなる、止まらないといった症状が出現します。
食欲がない場合は、無理せずに自分が食べやすいと感じる食べ物ををおすすめします。食欲が止まらない場合、極端に体重が増えすぎるリスクがあるため、自分がストレスのない範囲での制限や、運動をはじめとした生活習慣を整えることで調整しましょう。
妊娠超初期症状と生理前の症状は非常に似ており、妊娠していても生理前の症状と勘違いしたり、あるいはその逆であったりすることも多いです。
前述で紹介した、胸が張る、眠くなる、腰の痛み、頭痛、胃のむかつき、気分の変化、便秘、めまいやふらつき、立ちくらみ、食欲がなくなる、食欲が止まらないといった症状は、生理前にも見られる症状であり、生理前にこのような症状があるという方も多いでしょう。
特に、生理前の症状や精神的な変化は妊娠超初期症状と似ています。妊娠超初期症状と生理前の症状の違いがある部分を紹介します。
妊娠超初期症状と生理前で大きく違いが見られるのが基礎体温です。妊娠超初期症状の1つに、いつもより体温が高いことがあると前述しましたが、一般的に、妊娠が成立していると高温期(排卵期を境に0.3~0.5℃くらい高い)が続きます。
一方生理が始まると体温は下がり、約2週間、低温期が続きます。これは妊娠が成立していないことによる、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量減少が理由です。
基礎体温を測定している方は、基礎体温の変化で妊娠超初期症状か生理前の症状かを、ある程度、確認することができます。
着床出血とは受精卵が子宮内膜に根を張ることで起こる出血で、4人に1人程度の割合で起こると言われています。着床出血の量は、単回の少量の出血から数日続く程度まで様々ですが、生理ほどのドロッとした経血のような量が出ることはありません。
いわゆる生理が始まるときのような出血ではない少量の出血で、生理がこない場合は妊娠超初期症状の1つである着床出血の可能性が高いと考えてよいでしょう。
妊娠超初期は、おりものの量が増えたり変化することがあります。これまでの生理周期と比較して、いつものおりものと違う場合は、妊娠超初期症状の1つの可能性があります。
これまで紹介したように、妊娠超初期症状を感じても、生理前の症状と似ている場合もあり迷われる方も多いかもしれません。妊娠超初期症状を感じた際に行ってほしい対応を紹介します。
市販の妊娠検査薬は、生理予定日1週間後から検査が可能です。あまりに検査日が早すぎると、検査結果が正しく出ない可能性がありますので、妊娠検査薬の指示に従いましょう。
市販の妊娠検査薬で陽性が確認できた後は、産婦人科を受診しましょう。
胎児の心拍が確認できるのは生理予定日から2週間程度と言われています。あまりに早く産婦人科を受診すると、妊娠していても胎児が確認できない場合があります。妊娠5週目の終わり〜7週目あたりでの受診をおすすめします。
また市販の妊娠検査薬で陽性が出たから、産婦人科で陽性の診断はいらないかも?と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし陽性反応があっても、子宮外妊娠などの異常性妊娠の可能性もあります。胎児やお母さんの命に関わるような危険なケースも十分にありますので、必ず産婦人科は受診しましょう。
産婦人科は女性にとって身近な診療科ですが、妊娠で受診が初めてという人もいるかもしれません。初めて産婦人科を受診するにあたって、不安に感じる女性も多いものです。
診察の流れは医療機関ごとに異なりますが、初診の場合は、問診票に記入することが多いです。現代ではWEB問診もあるので、予約時に自宅で必要事項に記入することもあります。診察では問診票を元に、医師から質問されたり、問診票に記載した内容を詳しく聞かれたりすることがあります。
問診票や妊娠の初診時で必ず聞かれる内容は以下になります。
産婦人科の問診では、初経年齢と月経周期など月経に関する質問を聞かれます。特に、最終月経の開始日は、妊娠週数を数えるのに用います。これにより出産予定日を計算したり、お腹の赤ちゃんの成長や発達が妊娠週数に見合っているかどうかを確認したりします。
月経周期が不規則だったり、メモと取っていなかったために、最終月経が分からない場合は、エコー検査で赤ちゃんの大きさから、およその妊娠週数を把握することもできます。
また、日本の産婦人科では受診の際に結婚歴を聞かれることも多いです。妊婦さんが結婚しているかどうかにより、妊娠中や出産後の育児をサポートしてくれるパートナーがいるかどうかを把握する目安にもなります。
妊娠・出産・人工中絶の経歴については、妊娠や出産の経過に影響を与えることがあるためです。例えば、初産の場合は、出産を経験している女性に比べて、お産にかかる時間が長くなります。
また、帝王切開の経歴がある場合は、前回の手術の傷跡部分が裂ける可能性もあるので、妊娠経過が順調でも次回も帝王切開を選択しなければいけないことがあります。
人工妊娠中絶は、早い時期であれば女性の体に大きな負担がかからず、妊娠の継続にも問題がありません。しかしながら、人工妊娠中絶を重ねると、着床率が悪くなったり、流産を繰り返したりする可能性もあります。
産婦人科の問診では、持病や内服に関する質問もあります。病を抱える妊婦さんは治療をしながら妊娠の管理をする必要があるためです。例えば、糖尿病のある患者さんでは、妊娠により血糖コントロールが不良になることもあるので、きちんと管理されなければなりません。
さらに、病気によっては家族歴も参考になります。近しい家族は遺伝背景だけでなく、生活習慣も似ていることが多いためです。糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、妊娠中の健康管理にも大きな影響を与えるので、問診の際に持病と合わせて聞かれることが多くなります。
持病があると、出産時のリスクが高まる可能性もあります。緊急時にも対応できるように、出産は設備の充実した病院を選ぶなど、お産の計画にも知る必要があります。
また、病気により薬を使用している場合、お腹の赤ちゃんの健康に影響を与える可能性があることもあるので、必要に応じて減量したり、他の薬に置き換えたりするなどの調整を行うこともあります。
妊娠中はこれまでと違い、免疫力が低下している可能性があります。また妊娠中に感染症にかかっても、妊婦が安心して服用できる薬には制限があります。
感染症の種類によっては、胎児に感染すると流産や早産、障害のリスクが高まるものもあります。妊婦自身はもちろん、家族や周りの人も、これまで以上に感染対策を徹底し、免疫がない場合は予防接種を受けることをおすすめします。
妊娠超初期は胎児の脳や脊髄などのもととなる神経管が作られる大切な時期です。次に説明する、妊娠超初期に気をつけることである、たばこや飲酒(アルコール)はストップしましょう。
妊娠超初期は妊娠自体に気づいていない方も多く、見た目の変化もほとんどないことから、これまでと変わらない生活を送る方も多いです。しかしながら、妊娠超初期は胎児の細胞増殖が盛んな時期で、脳や脊髄などのもととなる多くの神経管が作られる重要な時期です。
喫煙は妊娠超初期に限らず、妊娠中は絶対駄目な行為です。煙草は本来であれば妊娠前までに辞めておくべき毒物であり、また妊娠中に限らず人生にとって百害あって一利もない有害物質です。
喫煙による胎児へのリスクは流産や早産、低出生体重児など多くあります。副流煙も影響がありますので、喫煙所の近くを通るのは避け、パートナーも禁煙しましょう(禁煙させましょう)。禁煙を拒むパートナーに対しては考えを改めさせるか、諸々考えなおした方が良いでしょう。
タバコと並んで控えていただきたい行為が飲酒(アルコール)です。アルコールによる胎児への影響は多く、低出生体重児や胎児性アルコール症候群のリスクを高める原因になります。アルコールは「控える」ではなく「やめる」ようにしましょう。
どうしてもお酒が好きな方はノンアルコール飲料で代用しましょう。またチョコレートやティラミスやラムレーズンなどの洋菓子に含まれるアルコールも避けるようにしましょう。
過剰なカフェインの摂取は、低出生体重児をはじめとしたリスクがあるとされています。世界保健機関(WHO)は、カフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、珈琲を1日3~4杯までに、英国食品基準局(FSA)およびカナダ保健省(HC)は1日2杯までにすることを呼びかけています(厚労省HP)。
健やかな妊娠継続のためにもカフェインの摂取し過ぎは避けましょう。
通常の珈琲・紅茶・緑茶・コーラ・エナジードリンクなどではなく、デカフェ珈琲・デカフェ紅茶・カフェインレス緑茶・コーラ風味ノンカフェイン炭酸水・ノンカフェインVitamin A無添加エナジードリンク等を選んだ方が比較的安全でしょう。他のアイディアとしても、理想的にはタンポポ珈琲・麦茶・ルイボス茶・コーン茶・ごぼう茶・小豆茶・黒豆茶などのノンカフェイン飲料で代用した方が良いでしょう。玄米茶やジャスミン茶(さんぴん茶)は単に香り付けした緑茶や烏龍茶であり、普通にカフェインは含まれているので望ましくありません。
また『デカフェ』および『カフェインレス』という単語は、それぞれ『カフェインを除いた』『カフェインが少ない』という意味であり、『ノンカフェイン』とは異なり含有量がゼロではないことに注意しましょう。
これまで継続的に市販薬を服用していた場合などは、妊娠中も服用ができるか、必ず医師に相談しましょう。
また新しく薬を処方してもらう場合も、妊娠中であることを初めに伝え、妊娠中でも服用できるか確認しましょう。
葉酸はDNAや新しい細胞を作ったり、神経や血液の元を作ったりする上で重要な役割を果たしています。
特に妊娠前~妊娠初期において、葉酸は神経管閉鎖障害のリスク低減のために重要とされています。
なお、神経が主に作られるのは妊娠7週未満、特に神経管が作られるのは妊娠4~6週であるのに対して、検査薬が妊娠を検出可能な時期は主に妊娠5週~であるので葉酸は妊娠に気付いてから内服を始めたのでは遅すぎるくらいであるため、妊娠可能な全ての女性にとって普段からの葉酸摂取が重要であり、習慣として0.4mg/日の葉酸をサプリから摂取するのが望ましい旨の通達が厚労省から発出されています( 厚労省HP )。
まだ飲んでいない方は今日から飲み始め、その後も継続しましょう。具体的には、妊娠初期は食事性葉酸0.24mgに加えサプリで0.4mgを、妊娠中期~後期は食事性葉酸で0.48mgを、授乳期は食事性葉酸で0.34mgを摂取することが推奨されています( 厚労省資料12頁目 )。
妊娠すると「赤ちゃんの分も食べよう」と周りから言われることがあります。実際には、妊娠初期に追加する食事は、エネルギー換算すると+50kcalです。そのため、葉酸以外には、特定の栄養素を積極的に摂取する必要ありません
妊娠超初期は、その後の妊娠期間もバランスのよい食事が続けられるように、以下の事に気を付けましょう。
妊娠前から体や脳のエネルギー源となる主食をしっかり取ることが大切です。最近では妊娠期間中の体重増加が少ない、やせ気味の妊婦さんも増えています。やせている妊婦さんは、赤ちゃんが妊娠週数に比べて小さくなる傾向があります。
日本人の一日の平均的な食物繊維の摂取量は不足気味です。食物繊維が豊富な野菜・果物・海藻類・きのこ類には、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。微量栄養素もまんべんなく取れるように、日頃から食物繊維が豊富な食品をしっかり取るようにしましょう。
妊娠中は便秘になりやすいので、食物繊維の摂取はお通じの改善にも効果的です。
妊娠中に取る食事は、お腹の赤ちゃんの栄養になるものです。妊娠中に栄養バランスの良い食事を心がけることは、赤ちゃんのすこやかな成長に欠かせません。
妊娠中の過剰な体重増加は、妊娠高血圧症候群のリスクを高めます。また、近年では妊娠中に適正な体重増加に至らず、低出生体重児や早産のリスクが高くなっている例も報告されています。
具体的な妊娠中の食事のポイントは以下になります。
食事は炭水化物の主食に、タンパク質の主菜、野菜や海藻類、キノコ類を使用した副菜を組み合わせましょう。1品料理よりも、おかずの品数を確保することで、栄養バランスを整えやすくなります。主食・主菜・副菜で用いる食材例は以下です。
妊娠したら薄味の食事を心がけましょう。妊婦の1日の塩分摂取量の推奨量は、6.5gです。日本人は塩分を取りすぎの傾向があり、女性の場合、1日の塩分摂取量の平均は9.3gとなっています。日本の伝統的な食事は、みそ汁や漬物など塩分量が高い品が多く、加工食品や外食は濃い味付けのことが多いです。
塩分摂取が増えるときに注意したいのが、妊娠高血圧症候群です。妊娠高血圧症候群はいわゆる妊娠中毒症と呼ばれたもので、妊娠中に高血圧とタンパク尿がみられる状態です。
妊娠高血圧症候群になると、妊婦さんとお腹の赤ちゃんの健康に影響を与えます。子癇というけいれん発作や、腎臓や肝臓の機能障害、赤血球の膜が破れる溶血などが起こるリスクが高まります。また、お腹の赤ちゃんの発育が悪くなったり、胎盤の機能低下や子宮壁から剥がれたりするリスクもあります。
妊娠中は、妊娠前の体格に合わせた体重増加をする必要があります。妊娠前の体格別の体重増加の目安は以下です。
妊娠前のBMI | 体格 | 体重増加の目安 |
18.5未満 | やせ | 12~15㎏ |
18.5~25未満 | 普通 | 10~13㎏ |
25~30未満 | 肥満 | 7~10㎏ |
30以上 | 重度の肥満 | 個別対応 |
肥満の人は体重増加を抑え、太り過ぎないように注意する必要があります。反対に、やせ気味の人は、妊娠で増える分につかして体重を増やしましょう。
日本ではやせている状態を望む女性が多く、妊娠しても体重増加を望まない方もいらっしゃいます。妊娠中の体重増加が適正な場合、赤ちゃんの体重の分、胎盤や羊水の分、大きくなった子宮や乳房の分に該当します。
妊娠中の太りすぎてもやせすぎてもいけません。妊娠前の体重に合わせて適切に体重管理を行っていくことが大切です。
参考:
妊娠前からはじめる!バランス良い食生活で健康なからだづくり
妊娠高血圧症候群
妊娠超初期症状は、妊娠成立後まもない時期にみられる心身の症状です。妊娠超初期症状といわれる心身の変化は、妊娠していないときの生理前の症状ともよく似ているものがあるため、本人にとっても気づきにくいものです。
妊娠超初期症状に気づけば、妊娠後とはいえ、かなり早い段階から、生活習慣に気を付けることにもつながるでしょう。
ただし、症状の表れ方には個人差があるため、症状の有無にこだわりすぎないことも大切です。
足立明彦先生
赤十字病院副部長・国立大学非常勤講師。首都圏の徳洲会やセンター病院での勤務歴もあり。現在はクリエイター・医療監修者としても活動中。学歴:2003年 薬学部卒業、2007年 医学部卒業、2014年 大学院修了。取得資格:薬剤師、医師、博士(医学)、複数分野の専門医・指導医。
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