2024.08.01
妊娠
一度に2人の赤ちゃんが産まれる双子の妊娠と出産。妊娠中の女性の中には、年齢や不妊治療によって双子が生まれやすくなるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。双子には、一卵性と二卵性の双子があり、それぞれ確率が異なります。
この記事では、双子を妊娠する確率や不妊治療や年齢による影響について解説します。双子の妊娠確率について気になっている人は参考にしてみてください。
双子の妊娠は専門用語で「双胎妊娠」と呼ばれます。双子には、発生のメカニズムにより、一卵性と二卵性があります。
一卵性の双子は1つの受精卵から生まれた双子のことです。2人の赤ちゃんは遺伝情報が同じことから、性別や血液型が同じで、容貌も似ていることが多くなります。街で見かけるそっくりな双子は一卵性双胎の可能性が高いでしょう。
一卵性の双子は、1つの受精卵が2つに分裂することで起こります。受精卵が2つに分裂する原因についてははっきりと分かっていません。一方で、不妊治療による卵巣刺激や胚培養環境などが原因ではないかと考えられています(※①)。
二卵性の双子は、2つの受精卵から生まれた双子です。それぞれの赤ちゃんが異なる受精卵から発生するため、遺伝情報は異なります。性別や血液型も異なることがあり、個人差はあるものの容貌も一卵性双生児ほどそっくりではないことが多くなります。
一卵性双胎の妊娠確率は、人種によって差はみられませんが、二卵性双胎は人種によって差があると言われています。これは不妊治療のような生殖補助医療の影響と見られ、北欧は1,000分の15から20に対して日本は1,000分の6から10(※③)というデータがあります。
双子を妊娠する確率は、全体の約1%です。妊娠で最も多いのは、1人の赤ちゃんを妊娠する「単胎妊娠」で、2人以上の妊娠を「多胎妊娠」と呼びます。
双子の分娩の数は近年横ばいから微増の傾向にあり、2017年には約9,900件(※②)でした。以降では、それぞれの要素ごとの双子が生まれる確率についてみていきましょう。
双子や三つ子を妊娠する確率は、年齢によって差が見られます。日本における母親の年齢階級別の双子、三つ子などの多胎児を妊娠する割合は以下のとおりです。(※②)
母親の年齢 | 双子以上を妊娠する確率 |
30歳以上 | 2.0% |
40~44歳 | 2.71% |
45歳以上 | 5.95% |
上記のデータから分かるように、母親の妊娠年齢が高くなるほど、双子または三つ子を妊娠する確率が高くなることが分かります。
多胎妊娠では双子以上の妊娠となるため、三つ子の妊娠も含まれます。多胎妊娠の妊婦さんの中には、双子と三つ子のどちらの確率が高いのか気になる人もいるでしょう。
日本産科婦人科学会周産期委員会報告によると、多胎妊娠時の双子以上を自然妊娠する確率は以下次のように報告されています。
上記から分かるように、多胎妊娠のうち3分の2弱が双子の妊娠であることが分かります。
双子のうち、一卵性と二卵性のそれぞれの確率については以下のとおりです(※⑤)。
二卵性の双子が生まれる確率は人種差があり、統計上、北欧では1000人あたり15~20人の二卵性の双子が生まれると報告されています。
双子の性別の確率は、男女比で見ると101.5:100です。出生の男女比が106:100であることから見ると、男の子が生まれる確率が高くなります。ただ、双子では男の子が生まれる確率が少し下がります。(※⑥)
双子の妊娠は妊婦健診の超音波(エコー)検査で確認できますが、一卵性か二卵性かによって判明時期が異なります。
二卵性による双子は、妊娠初期の超音波検査で確認できます。二卵性の双子は2つの受精卵から発生しているため、2個の胎盤、2つの部屋を持つ2絨毛膜2羊膜双胎(DD双胎)が確認できるためです。
また、胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)も2つあるため超音波(エコー)検査で確認できます。個人差はあるものの、妊娠5~6週頃に2つの胎嚢、7〜8週頃には2人の胎児を確認できます。
一卵性の双子は妊娠初期に分かります。ただ、一卵性の双子では、絨毛膜と羊膜の数によって、双子の判別時期や方法が異なります。一卵性の双子の膜性は、次の3つに分けられます。
難しい言葉ですが、絨毛の数=胎盤の数、羊膜の数=胎児が成長する部屋の数、と覚えておきましょう。
一卵性の双子の絨毛膜や羊膜の数が異なるのは、受精卵の分裂時期によります。2絨毛膜2羊膜が25%、1絨毛膜2羊膜が75%、一絨毛膜一羊膜が1%(※④)と、1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)が最も多いといわれています。
改めて、絨毛膜と羊膜の数ごとの一卵性の双子が分かる時期についてみていきましょう。2絨毛膜2羊膜双胎(DD双胎)では、胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)が2つあるため、超音波(エコー)検査で確認できます。個人差はあるものの、妊娠5~6週あたりには2つの胎嚢、7〜8週頃には2人の胎児が確認できます。
1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)や1絨毛膜1羊膜双胎(MM双胎)では、妊娠6~7週頃に双子の妊娠について分かります。両方のタイプの双子は、胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)が1つのため、超音波検査(エコー)では双子かどうかを確認できません。しかし、心拍が1人分か2人分かで双子が判断できます。
双子を妊娠すると、妊娠の症状や兆候が強くみられることがあります。双子の妊娠により強くなりやすい症状や兆候は以下のとおりです。
双子以上の妊婦さんは、つわりの症状が重くなりやすいといわれています。双子の妊娠では、妊娠中に分泌されるホルモンであるhCGの量が増えるためです。
また、双子の妊娠によって心身の負担が大きくなることも、つわりの症状の強さに影響を与えている可能性があります。
双子を妊娠していると、その分子宮も大きくなるため、お腹の張りを強く感じやすくなります。単胎の赤ちゃんの出生体重は平均で3㎏ですが、双子では2.3㎏と小さめになります。(※⑦)
しかし、赤ちゃん2人分では4.6㎏ほどになるため、その分お腹も大きくなり、張りを強く感じます。
双子の妊娠によりお腹が大きくなると、赤ちゃんを支えるのに腰に強い負担がかかるようになります。
大きくなったお腹を腰で支えようとして、反り腰の状態でいる人も多いですが、腰への負担が大きくなる原因になります。妊娠中は背筋を伸ばして、正しい姿勢を維持するように努めましょう。
双子を妊娠していると、足のむくみも強く出る傾向があります。
妊娠が進むにつれて、体の中に流れる血液の量が増えます。また、通常の妊娠よりもお腹が大きくなると、足が心臓に戻る血管が圧迫されやすくなるため、むくみが強くなります。
双子の妊娠は喜びも大きいですが、2人の赤ちゃんがお腹の中にいることから、お母さんの負担も大きくなります。また赤ちゃんにとってのリスクも存在します。ここでは、双子の妊娠による母子の健康リスクについてみていきましょう。
双子などの多胎妊娠の場合、母体に大きな負担がかかります。主なリスクは以下のとおりです。
上記のリスクは、通常の妊娠と比べて高くなります。双子の妊婦さんは、妊娠中の健康管理もしっかり行うようにしましょう。
双子を妊娠していると、早産のリスクも高くなります。2017年人口動態統計によると、37週未満の早産は単胎が4.7%であるのに対し、多胎の場合は50.8%となっています。また死産率、周産期死亡率、乳児死亡率も高い(※②)ことが報告されています。
双子をはじめとした多胎妊娠では、早産予防が重要です。特に、妊婦健診は早産の早期発見においても非常に大切です。実際に、双子の妊娠中は通常の妊娠によりも、妊婦健診の頻度は高くなります。頻回な妊婦健診の経済的負担を減らすために、双子をはじめとした多胎妊娠の費用補助を行っている自治体もあるので、お住まいの自治体の支援を確認してみましょう。
1絨毛膜双胎は1つの胎盤を2人の赤ちゃんで使用しているため、2つの胎盤をそれぞれ使用している2絨毛膜2羊膜双胎(DD双胎)と比べて、さらにリスクがあります。
双胎間輸血症候群(TTTS)とは、一方の羊水が多く(羊水過多)、もう片方は羊水が少ない(羊水過少)状態のことを指します。一方の赤ちゃんから、もう一方の赤ちゃんに、血液が移動していることが原因です。流産や早産の原因でもあり、症状が進むと胎児死亡や後遺症のリスクがあります(※④)。
一児の胎児発育不全(Selective IUGR)とは、片方の胎児が標準より小さい状態です。2人の胎盤の分け合い方が不均衡であることが原因と考えられます。
双子を妊娠している場合は、妊娠経過が順調であっても帝王切開を行うことがほとんどです。双子以上を妊娠していると、早産や妊娠高血圧症候群、赤ちゃんの発育以上などのリスクが高くなるためです。
帝王切開に備えた管理入院の時期は、双子の膜性によっても異なります。特に胎盤を2人の赤ちゃんで共有する「1絨毛膜」では、お腹の赤ちゃんへの酸素や栄養の供給にアンバランスが生じやすくなります。そのため、1絨毛膜双胎では妊娠32週頃、2絨毛膜双胎では妊娠34週頃に入院して、計画的に帝王切開を行います(※⑧)。
双子の赤ちゃんを産み分けるための確実な方法はありません。双子の赤ちゃんの育児は同時進行になるため、大変なイメージがありますが、高齢出産などで、一度に2人以上の赤ちゃんが欲しい人は、双子の妊娠を望むことが多いようです。
以降では、双子を妊娠する確率に影響を与える要素についてみていきます。
妊娠時の年齢が高いと、双子を妊娠する確率が高くなります。一般に、高齢妊娠は35歳以上の妊娠を指します。
女性が年を重ねると、通常の妊娠でも体の負担になることがあります。また、女性が妊娠可能な年齢は限られており、40歳以上になると、自然妊娠の可能性が低くなります。子どもを望む人は、年齢を配慮したうえで家族計画を行いましょう。
双子の産み分け方法ではありませんが、不妊治療などで生殖補助医療(ART)を受けると、双子を妊娠する可能性が高くなることがあります。双子を妊娠の確率に影響を与える不妊治療は以下のとおりです。
・排卵誘発剤の使用
排卵誘発剤では卵巣を刺激するために、過剰に卵胞が形成されることがあります。
・体外受精
体外受精により双子が生まれる確率が高くなります。体外受精とは、卵子を体外に出して精子と接触させ、受精し分割した卵を子宮内に戻す方法です。多胎妊娠は母子のリスクが大きくなるため、ガイドラインにより1~2個までと決められています。
・不妊治療
不妊治療は、双子を産む目的で行われるものではなく、自然妊娠が難しいカップルが赤ちゃんを授かるために受ける治療です。双子以上を妊娠する多胎妊娠は母子の健康リスクを与える要因にもなるため、医療機関では多胎妊娠が起こらないように治療が進められます。
バニシングツインとは、双子の片割れである赤ちゃんが見えなくなることをいいます。双子の一方の赤ちゃんが見えなくなる理由には、何らかの理由で亡くなることが原因です。亡くなった赤ちゃんは子宮に吸収されるかは明らかになっていませんが、超音波検査(エコー検査)上では、画像に映し出されなくなります。
通常、赤ちゃんが子宮内で亡くなったときは、自然に体外へ排出されるのを待つか、掻きだす必要があります。亡くなった赤ちゃんが子宮内に長くいると、感染症の原因になったり、出血リスクが高くなったりするためです(DIC:播種性血管内凝固症候群)。
しかし、妊娠初期にバニシングツインが起きたときは、特別な処置が不要であることがほとんどです。一方で、まれに亡くなった赤ちゃんが吸収されずに、双子のもう片方の赤ちゃんに結合してしまう例もあります。
双子(双胎妊娠)は、1つの受精卵から生まれる一卵性双胎と2つの受精卵から生まれる二卵性双胎があります。双子を含めた多胎妊娠の確率は全体の1%程度で、その確率は年齢が上がるにつれて上昇します。また、不妊治療により双子を妊娠する確率が高くなることがあります。
双子以上の妊娠は、母親と赤ちゃん達に健康リスクがあります。異常の早期発見を目指すために妊婦健診の頻度は高くなりますが、欠かさずに受けるようにしましょう。自治体によっては妊婦健診の補助を行っているので活用するのがおすすめです。
【参考文献】
①産婦人科・内科 加藤クリニック – 一卵性双胎児(一卵性双生児)
②多胎児支援のポイント
③大阪大学ツインリサーチ – ふたごの確率
④大阪府立母子保健総合医療センター – 多胎妊娠の方へ
⑤一般社団法人 日本多胎支援協会 三つ子や四つ子の出生確率について
⑥一般社団法人 日本多胎支援協会 多胎児の男女比率
⑦大阪市 【第121号】双子育児についてー多胎育児の実情と支援
⑧和歌山県立医科大学 産婦人科学教室
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