2024.08.01

妊娠

逆子(骨盤位)の原因についてーその確率や予防法を解説

逆子(骨盤位)の原因についてーその確率や予防法を解説

妊娠中の女性の中には、逆子(骨盤位)と指摘された人もいるのではないでしょうか?おなかの赤ちゃんの位置が逆子(骨盤位)であると、どのようなリスクがあるのか、逆子はいつまで正せばよいのか気になりますよね。

この記事では、逆子(骨盤位)の定義やリスクについて解説します。逆子(骨盤位)に対して行われる矯正方法について紹介しているので参考にしてみてください。

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逆子(骨盤位)とは?

逆子(骨盤位)とは?

妊娠中、おなかの赤ちゃんの頭が上になることがあり、「逆子(さかご)」といいます。逆子は医学用語で「骨盤位」ともいいます。おなかの赤ちゃんの向きは、頭が下にある状態の「頭位(とうい)」であるのが正常です。

妊娠中のおなかの赤ちゃんの半分は逆子(骨盤位)の状態ですが、妊娠30週頃までには自然に頭が下になることがほとんどです。一方で、全体の分娩のうち4~5%程度は、逆子(骨盤位)の状態のままになります。

おなかの赤ちゃんの位置が逆子(骨盤位)だと、経膣分娩が難しくなるため、基本的に帝王切開が行われます。条件によっては経腟分娩が可能なこともありますが、頭から出る頭位分娩に比べて、母子のリスクが高くなります。

逆子(骨盤位)の種類について

逆子(骨盤位)の種類について

逆子(骨盤位)には、赤ちゃんの姿勢によって以下の種類があります。

単殿位(たんでんい)

子宮内でおなかの赤ちゃんが、お尻を下にしてⅤ字のようになっている状態。逆子(骨盤位)の8割は単殿位です。経腟分娩ができます。

複殿位(ふくでんい)

子宮内でおなかの赤ちゃんがあぐらをかいている状態。経腟分娩も可能ではありますが、足とお尻が一緒に産道を通るため、自然分娩が難しく、緊急帝王切開になることがあります。

足位

子宮内でおなかの赤ちゃんが立っている状態。両足で立った姿勢の「全足位」と、片足で立った姿勢の「不全足位」があります。分娩時は足から出て、最後に頭が出る危険をともなうので、帝王切開の適応となります。

膝位(しつい)

子宮内でおなかの赤ちゃんがひざをついている状態。両ひざをついた「全膝位」と、片ひざをついた「不全膝位」があります。帝王切開の適応になります。

横位(おうい)

子宮内でおなかの赤ちゃんが横向きの姿勢になっている状態。分娩時に肩や手から出るものの、体が産道を通れないので、帝王切開の適応になります。

逆子の原因は?いつまでに治る?

おなかの赤ちゃんが逆子になる原因については明らかになっていません。妊婦さんの中には、「仕事やストレス、姿勢などが原因なのでは…」と自分を責めてしまう人もいるでしょう。

妊娠中期までの赤ちゃんは、子宮内で活発に動きます。そのため妊娠32週頃になると、頭が下になる「頭位」の赤ちゃんが増えてきます。実際に、妊娠週数ごとのおなかの赤ちゃんが逆子である割合は次のとおりです。(※1)

  • 妊娠30週は15%
  • 妊娠34週は10%
  • 妊娠36週は7%

妊娠35週頃になると、逆子の確率が低くなるため、妊娠32週前までの逆子であれば、大きな心配をする必要がありません。逆子になると母子の安全に配慮して帝王切開による分娩が行われますが、それ以外について、生活への大きな影響はないため、普段通りの生活を送ることができます。

逆子(骨盤位)になる要因

おなかの赤ちゃんが逆子になる直接の原因ではありませんが、関連があるものもあります。逆子の要因は以下のとおりです。(※3)

妊婦さん側の要因
妊婦さんの骨盤が狭かったり、子宮に奇形があったりすると、逆子がみられやすくなります。また羊水過多(羊水の量が多い)や前置胎盤(胎盤が子宮の入り口を覆っている)も逆子の要因になります。

赤ちゃん側の要因
水頭症など赤ちゃんの先天異常の中には、逆子がみられやすいものもあります。

逆子(骨盤位)と診断される時期

逆子の診断時期は、妊娠28週頃です。逆子は妊娠中に赤ちゃんが動くことで起こります。それ以前にも、おなかの赤ちゃんが逆子であることがありますが、妊娠経過とともに自然に矯正されることが多くなります。そのため、逆子に関しては、経過をみて出産が近づいてから診断を行います。

逆子(骨盤位)であるデメリット

妊娠中におなかの赤ちゃんが逆子(骨盤位)でも、自然に正しい位置に戻ることがあります。しかし、妊娠35週を過ぎるとその可能性は低くなり、逆子(骨盤位)のままでお産を迎える確率が高くなります。逆子(骨盤位)の状態で経腟分娩になると、以下のようなリスクがあります。

分娩外傷

分娩時に赤ちゃんが産道に引っかかることで、赤ちゃんの鎖骨や腕の骨が折れたり、腕の神経が損傷して一時的な麻痺が生じたりするリスクがあります。

臍帯脱出

へその緒が赤ちゃんよりも先に出る状態。へその緒の血液の流れが途絶えることで、赤ちゃんが低酸素になるリスクがあります。

分娩遷延

陣痛の周期が10分以内になってから、初産婦は30時間、経産婦は15時間以内に出産にならない状態です。おなかの赤ちゃんが低酸素になるリスクがあります。

逆子(骨盤位)の分娩は帝王切開が行われやすい

逆子(骨盤位)の分娩は帝王切開が行われやすい

妊娠後期の逆子(骨盤位)の経腟分娩はさまざまなリスクがあるため、多くの医療機関では帝王切開を行っています。逆子(骨盤位)で経腟分娩を予定していたケースでも、お産の進行が順調でなかったり、赤ちゃんに負担が生じたりすることで、緊急で帝王切開で行われることもあります。

帝王切開は産科手術の中でも多く行われており、手術そのものに大きな危険はありません。しかし、帝王切開にも一定の割合で以下のような合併症が起こります。

帝王切開の合併症リスク
出血・腸管損傷・腸閉塞・術後感染症・肺塞栓症など

上記の合併症のほかにも、おなかにメスを入れることで傷跡が残ったり、次回の妊娠も帝王切開で行う可能性が高くなったりします。とはいえ、帝王切開も立派なお産です。出産に関して経膣分娩を希望される妊婦さんもいますが、母子のリスクを考慮すれば帝王切開によるお産を受け入れることが大切です。

逆子(骨盤位)で経腟分娩を行うケース

逆子(骨盤位)のお産は、経腟分娩の方が帝王切開よりも赤ちゃんへのリスクが高くなります。医療機関の中には逆子(骨盤位)の経腟分娩に対応しているところもありますが、ほとんどの場合、条件を設けています。

医療機関によっても異なりますが、経腟分娩の条件は以下のような例があります。

  • 経腟分娩ができる逆子(骨盤位)の種類である
  • 子宮の入り口付近にへその緒や胎盤がない
  • 妊娠32週以降で赤ちゃんが元気である
  • 巨大児でない(赤ちゃんの推定体重が3,500~3,800g以下)
  • 妊婦さんの骨盤が広い

妊婦さんの中には、自然な方法でお産をしたいと考えている人もいるでしょう。逆子の経腟分娩は、通常の分娩と比べて時間がかかることがあります。しかし、お産で大きな問題がなければ、産後の経過は通常の分娩と大きく変わりません。

ただ、逆子による経腟分娩は上記のようなリスクがあります。逆子の経腟分娩では、赤ちゃんに障害が残る確率が3~4%、赤ちゃんが亡くなってしまう確率が1~2%と報告されています(※2)。

また、逆子の経腟分娩を選んでも、お産の進み具合や赤ちゃんへのリスクが大きい場合には、緊急で帝王切開が行われます。

逆子の予防方法はある?

逆子の原因ははっきりしていないため、具体的な予防方法はありません。逆子の原因として、冷え性がいわれることもあり、温活に力を入れている人もいるでしょう。

冷え性は手足などの末端が冷えている状態ですが、冷え性の人でも子宮などの内臓は温かく、冷え性のために子宮が冷えるというわけではありません。

とはいえ、妊娠中を快適に過ごすために秋や冬に温かく過ごすのは悪いことではありません。逆子の予防にはなりませんが、妊娠中の体のメンテナンスのために温活を取り入れてみるのもよいでしょう。

逆子(骨盤位)の矯正方法

逆子(骨盤位)の矯正方法

妊娠後期におなかの赤ちゃんが逆子(骨盤位)の状態であると、帝王切開による分娩になることがほとんどです。しかし、逆子(骨盤位)が矯正されてより安全に経腟分娩になれるように、おなかの赤ちゃんの位置を矯正する外回転術を行っている医療機関もあります。

外回転術について

超音波検査でおなかの赤ちゃんの向きや姿勢を確認しながら、妊婦さんの体の外から頭やお尻をとらえて回転させる方法です。施術は医師が担当しますが、成功率は40~60%ほどです。

外回転術により赤ちゃんのへその緒が引っ張られたり、胎盤が圧迫されたりするリスクもあり、施術後に赤ちゃんの具合が悪くなることもあります。赤ちゃんの状態によっては、緊急で帝王切開が必要になることもあり、その割合は2~4%といわれています。

以上のように外回転術には危険性もあるので、妊娠35週頃から入院した上で施術を行います。緊急手術を行える体制が必要であるため、外回転術に対応している医療機関は限られています。

ただ、ベテランの産婦人科医の中には、超音波(エコー)検査中に、外回転術を試みる医師もいるかもしれません。産婦人科クリニックの中には帝王切開を行っていても、緊急の帝王切開には対応できないところもあります。

外回転術により、妊婦さんが強い痛みやなにか異常を感じるときは、直ちに施術を中止してもらいましょう。

逆子体操について

逆子(骨盤位)を矯正するセルフケアとして、よく知られるのが逆子体操です。逆子体操では以下のポジションを取ります。

胸膝位(きょうしつい)
四つん這いになり、頭と胸を床について、ひざを立てながらお尻が高くなる姿勢を取ります。頭の下にクッションを入れるとやりやすくなります。

側臥位(そくがい)
横向きに寝ている姿勢。体の右側か左側を下にして横になります。

逆子体操は昔から行われており、医療機関でも指導を受けることがあります。しかし、逆子体操を行ったことで逆子(骨盤位)が改善する確率が上がらないことが分かっています。

ただ、おなかの赤ちゃんの位置が逆子(骨盤位)で悩んでいる妊婦さんの中には、逆子体操をしている人も多くいます。超音波(エコー)検査で逆子を指摘された妊婦さんは、ストレッチをやるつもりで取り組んでみるのもよいかもしれません。

逆子(骨盤位)に関してよくみられる質問

おなかの赤ちゃんが逆子の状態であることに関して、疑問がある人もいるでしょう。ここでは、逆子に関してよくみられる質問とその回答について紹介します。

逆子(骨盤位)の時の胎動はどんな感じ?

逆子のときの胎動の感じ方は、赤ちゃんの姿勢や状態によってもさまざまです。胎動とはおなかの赤ちゃんが動いている様子で、妊娠中期から感じられるようになります。

例えば、赤ちゃんが子宮の中を立っている足位では、妊婦さんの足の付け根近くに胎動を強く感じる人もいるようです。一方で、逆子によりへその緒が巻き付きやすくなっていれば、赤ちゃんの動きが少なくなるため、胎動を弱く感じることもあります。

とくに妊娠が初めての人では、胎動を感じるのも初めての経験になります。逆子とそうでない赤ちゃんの胎動の違いが分かりにくいかもしれません。

逆子が原因で破水はしないの?

逆子の種類によっては、破水のリスクが高くなることがあります。破水とは、赤ちゃんを包む卵膜が破れて、羊水が流れ出ることをいいます。通常は、陣痛開始後に破水が起こりますが、先に破水が起こると赤ちゃんが感染するリスクが高まるため注意が必要です(前期破水)。

前期破水が起きても、頭位であれば赤ちゃんの頭が栓のような役割をしますが、逆子ではへその緒が体外に出てしまう危険があり、緊急帝王切開となります。

とくに逆子の中でも破水が起こりやすいが、立っている状態である足位です。赤ちゃんがお尻をついている状態である臀位も、卵膜が露出しやすく破水のリスクが高くなります。

逆子とダウン症は関連がある?

逆子とダウン症候群は関連がありません。一部の先天異常は、逆子がみられやすくなるため、気になっている人もいるでしょう。ダウン症候群は21トリソミーとも呼ばれており、染色体数の異常によって起こります。

おなかの赤ちゃんがダウン症候群であるかは、妊婦検診で行われる超音波(エコー)検査による所見がきっかけになったり、新型出生前診断(NIPT)などの出生前診断で調べたりすることができます。

逆子に鍼灸施術は効果がある?

逆子に対する鍼灸施術の効果は科学的な根拠が乏しいのが現状です。鍼灸とは東洋医学の施術で、体のエネルギースポットである経穴(ツボ)を鍼(はり)やお灸で刺激するものです。

東洋医学では逆子に良いといわれるツボもあり、治療院の中には逆子に効果があると鍼灸施術を行っているところもあります。とくに妊娠中は気軽に薬等を使えないことから、鍼灸など治療院で体のコンディションを整える妊婦さんも多いようです。

逆子に対する鍼灸施術について注目する専門家もいます。ただ、通院期間中に逆子が矯正されたとしても、鍼灸施術の効果によるものか判断しにくい点があります。

鍼灸施術との関連は不明であるものの、逆子に対する施術中に妊婦さんの容態が急激に変化した例もあります。おなかの赤ちゃんが逆子であることに悩んでいる人で、鍼灸施術を試したい人は、かかりつけの産婦人科医に相談してから、施術を受けるようにしましょう。

まとめ

逆子(骨盤位)はおなかの赤ちゃんの頭が下ではなく上にある状態をいい、赤ちゃんの姿勢によって種類がいくつかあります。妊娠中に逆子(骨盤位)は、妊娠経過とともに自然に治ることが多いですが、中にはそのままお産を迎えることもあります。

逆子(骨盤位)での経腟分娩は、赤ちゃんへのリスクが高いため、基本的に帝王切開が行われます。医療機関の中には、外回転術という逆子(骨盤位)の矯正施術を行っていることもあるので、効果やリスクを十分に理解した上で、検討してみるのもよいでしょう。妊娠中のストレッチ代わりに逆子体操に取り組むこともできます。

参考:
※1:国立成育医療研究センター/逆子(さかご)について
※2:北里大学病院 周産母子成育医療センター/妊娠・分娩に際しての説明書
※3:骨盤位分娩の管理

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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