2020.10.02

出生前診断

新型出生前診断でわかること―染色体と遺伝子の仕組み

新型出生前診断でわかること―染色体と遺伝子の仕組み

妊娠中の方の中には、新型出生前診断(NIPT)を受けようか考えている人もいるのではないでしょうか?検査を受けるときに注意したいのが、新型出生前診断を受ければ、赤ちゃんの持つ病気や障害について分かると勘違いしてしまうことです。

新型出生前診断では、3つの先天異常の有無について知ることができます。この記事では、検査の特徴を深く理解する上で、必要な染色体や遺伝子の仕組みや、新型出生前診断でわかることについて紹介します。これから検査を受けようと考えている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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新型出生前診断とはどんな検査?

新型出生前診断とはどんな検査?

新型出生前診断(NIPT)は、血液検査によっておなかの赤ちゃんに特定の先天異常がないかを調べる検査です。検査は、妊婦さんへの採血によって行われるので、母子の身体的な負担が少ないのが特徴です。

新型出生前診断では、妊婦さんの血液中に含まれている、胎児由来のDNAを調べます。DNAは、人間の細胞の中にある染色体に含まれている遺伝情報の集まりのことをいいます。

人によっては、染色体やDNAを同じものと捉える人もいるかもしれません。これらの2つは、厳密に言うと異なるものです。例えを用いるのなら、染色体が遺伝情報を伝える本だとすると、DNAは文字に当たります。

以降では、新型出生前診断とかかわりのある病気を理解するために、染色体や遺伝子について詳しくみていきます。

細胞の中にある染色体

細胞の中にある染色体

遺伝子である染色体は、人間のすべての細胞に存在します。まずは、細胞についてみてみましょう。

生物は細胞で成り立っている

生物には、筋肉や神経などさまざまな器官の集まりによってできています。1つひとつの器官は、生体最小の単位である細胞によって構成されています。1つ細胞は、顕微鏡によって確認しないと分からないほど小さいものです。例えば、ヒトの細胞は60兆個の細胞から成っています。

細胞の集大成であるヒトも、多くの動物と同じように、最初は1つの細胞から生まれます。これが受精卵です。精子と卵子が出会って受精に至ると、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、何百種類もの細胞へと分化していきます。生まれてきたばかりの赤ちゃんの細胞の数は2兆個であり、大人になるまで細胞の数は増えていきます。

すべての細胞の中に染色体がある

生体の最小単位である細胞の中には、さまざまな構造物が含まれています。細胞の中身は、大きく核と細胞に質に分けられています。

細胞の核の中には染色体が折りたたまれたように存在しており、遺伝情報を伝える役割を果たしています。また、そのほかにも、細胞質に存在するミトコンドリアには、独自の遺伝子を持つことで知られています。

染色体の仕組みについて

染色体は計46本あり、それぞれ対になっています。23対の染色体のうち、1番から22番目を常染色体、23番目を性染色体といいます。

性染色体は性別を決めるものであり、女性が1対のX染色体(XX)、男性がX染色体とY染色体(XY)になります。

卵子と精子は、22対の常染色体と1本の性染色体からなります。受精時に卵子と精子の性染色体が対になることで、赤ちゃんの性別が決定します。

DNAについて

遺伝子の話をするときに、よく耳にする言葉がDNAです。DNAは「デオキシリボ核酸」略のことをいいます。

DNAは二重らせん構造をしており、はしごひねったような形をしています。この構造の中には、A(アデニン)とT(チミン)、G(グアシン)とC(シトシン)が対になっており、これらのつながりがDNA配列を作り出しています。

DNA配列は生命の設計図ともいえ、32億通りもの組み合わせがあります。一方、ヒトのDNAの配列は99.9%が同じあり、残りの0.1%が多様性を決定します。たとえば、皮膚や目の色、髪の質などの身体的な特徴も、DNAのわずかな配列の違いによって決まるのです。

遺伝子について

DNAの配列は親から子へ受け継がれるもので、遺伝子といいます。特に、精子と卵子から成る受精卵は、父親と母親の両方の遺伝子を受け継ぐことになります。

近年、医療分野で遺伝子が注目されています。病気や障害によっては、遺伝子の影響を強く受けるものがあるからです。一方で、すべての病気が遺伝子によって左右されるわけではありません。

例えば、がんや生活習慣病など一般的にみられる病気も、遺伝子の影響を受けます。しかし、実際に遺伝子の影響は30%程度で、残りは毎日の生活習慣が大きくかかわっています。

新型出生前診断でわかること

新型出生前診断でわかること

近年登場した新型出生前診断は、妊婦さんの血液中に含まれる胎児由来のDNAを解析する検査です。2020年時点では、新型出生前診断でわかるのは以下の病気になります。

ダウン症(21トリソミー)

ダウン症は、21番目の常染色体の異常によって起こる先天異常です。トリソミーは通常2本である染色体が3本ある状態のことをいいます。

ダウン症の子どもの顏は特徴的ですが、幼児になって顔つきに気づくケースもあります。知能の発達に遅れがみられますが、ばらつきがあります。また、子どもによっては心臓や消化管に異常がみられることもあります。

ダウン症への根本的な治療はなく、社会的なサポートを利用しながらの療育必要です。心臓や消化器に病気がある場合は、手術等で治療します。

13トリソミー

13トリソミーは、名前の通り13番目の常染色体が3本あることによって起こる先天異常です。

13トリソミーの赤ちゃんは、おなかの中での動きが少なく、小さい体で生まれる傾向があります。鼻から口がさけている「口蓋裂(こうがいれつ)」や心臓に異常がみられることもあります。また、脳の発育に遅れがあるため、重度の知的障害が現れることがあります。

13トリソミーの赤ちゃんへの治療法はありません。生まれた赤ちゃんが1年以上生きられる確率は10%であり、ほとんどの子は生後1か月でなくなります。

新型出生前診断で、赤ちゃんが13トリソミーの可能性が分かったときは、遺伝カウンセリング等の支援を受けるのがよいでしょう。

18トリソミー

18トリソミーは、18番目の常染色体が3本あることによって起こる先天異常です。

18トリソミーの赤ちゃんは、小さい体で生まれてくる傾向があります。筋肉の発達がよくないため、泣き声も弱い傾向があります。見た目は小さな頭、耳の形が異常、中指と薬指の上にある人差し指等の特徴があります。その一方で、出生時に身体的な特徴が明らかでないケースもあります。また、心臓、肺、消化器、腎臓などの器官に異常がみられることがあります。

18トリソミーに対する治療はなく、半分の赤ちゃんが生後1週間以内に亡くなります。1歳まで生きられる子は10%ですが、その後も障害を抱えながら生きる子もいます。

新型出生前診断で赤ちゃんが18トリソミーの可能性が分かったときは、遺伝カウンセリングを受けるようにしましょう。

まとめ

新型出生前診断(NIPT)は、妊婦さんの血液に含まれている胎児の遺伝子を調べる検査です。新型出生前診断では、ダウン症(21トリソミー)、13トリソミー、18トリソミーの可能性を調べられます。

検査で陽性になったとき、診断のためには確定検査が必要です。遺伝カウンセリングも視野に入れて、検査を検討してみてください。

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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