2024.07.01
妊娠
妊娠中の女性の中には、妊娠安定期について気になっている人もいるのではないでしょうか?妊娠安定期はいつから始まり、どのように過ごしていけばいいのか気になりますよね。この記事では、妊娠安定期の特徴や過ごし方のポイントについて解説します。
妊娠安定期は医学用語ではありませんが、妊娠16週以降の時期を指すのが一般的です。安定期と呼ばれる理由は、妊娠中の早期流産のリスクが減るためです。妊娠安定期には、妊娠によるつわり症状が落ち着き、妊婦さんの体調も安定してきます。
妊娠期間の区切りには、週数のほかに妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期という言葉もあります。妊娠中期は妊娠5か月から7か月を指し、妊娠安定期とも時期が重なりますが、妊娠中期は安定期と同じ意味ではありません。
妊娠安定期に入ると、体調の変化を感じる妊婦さんも多いでしょう。妊婦さんによっても異なりますが、妊娠安定期には以下の変化がみられます。
妊娠初期にみられていたつわりは、妊娠安定期に入ると軽くなったと感じる人も多くいます。つわりにより日常生活が制限されていた人も、体調の改善を実感できるでしょう。
妊娠安定期は、バストのサイズが大きくなり始める時期でもあります。バストのトップだけでなくアンダーも大きくなる傾向があります。妊娠・出産によるバストの変化を抑えるために、この頃からサイズに合ったブラジャーを選ぶとよいでしょう。
妊娠により女性ホルモンの分泌が増えて、メラニン色素の沈着が促進されるため、乳輪が黒っぽくなります。乳輪が色素沈着することで、出産後に授乳する際に、赤ちゃんの目印になりやすいともいわれています。
妊娠初期には目立たなかったお腹も、妊娠安定期の時期になると、ふっくらとしたお腹のふくらみが分かるようになります。
妊娠安定期から少しすると、お腹の赤ちゃんの動きを感じるようになり、妊娠をより実感できるようになります。妊娠週数が進むにつれて、お腹の赤ちゃんの動きも大きくなっていきます。
体の調子が良くなる妊娠安定期ですが、引き続き健康管理には注意しなければなりません。安定期に気をつけたい症状や病気は以下です。
早産は妊娠22週以降かつ正期産前の出産のことです。早産になると赤ちゃんの体が小さい状態で生まれるため、体の機能が未熟であることがしばしばです。
例えば、早産の赤ちゃんは、呼吸器・循環器・消化器・脳神経などの未熟な機能を補うため、出産後はNICUで治療を受けることになります。
早産のリスクには、双子以上の妊娠、羊水過多、妊婦さんの栄養不良、生活習慣の乱れがあります。早産のリスクを低くするためにも、妊娠安定期後も引き続き母子の健康管理に配慮した生活を送ることが大切です。
切迫早産は早産になる可能性が高い状態をいいます。陣痛に似たようなお腹の張りが継続したり、子宮口が開いて出血がみられたりします。切迫早産の原因となりやすいのが、子宮頚がんの手術の既往や双子以上の妊娠、子宮の感染症です。
特に、子宮内で感染が起こると、子宮口の入り口部分が柔らかくなるため、切迫早産のリスクを高めます。妊婦健診では子宮頸管の柔らかさや長さについても確認するので、定期的にチェックを受けるようにしましょう。
切迫早産になった場合は早産を防ぐために、安静や入院治療による子宮収縮抑制薬の投与が必要です。正期産より前の出産では、赤ちゃんがさまざまな合併症を持って生まれることが多くなるためです。お腹の張りが続いたり、少量でも出血がみられたりするときは、切迫早産のサインかもしれません。早めにかかりつけの産婦人科医へ相談しましょう。
安定期に限らず、妊娠中に感染症にかかるとおなかの赤ちゃんの健康にも影響を与えます。妊娠中に注意すべき感染症と予防対策は以下です。
感染症名 | 母子への影響 | 予防方法 |
麻しん | 赤ちゃんに感染すると、流産や早産の原因になる | 麻しんの流行時期は、外出を控えるようにする |
水痘/帯状疱疹 | ・ほとんどの人が免疫を持っているが、発症により水痘肺炎になるリスクがある ・分娩前後の感染では、赤ちゃんにも感染する確率が高い | 免疫力が低下しないように、健康的な生活を送る |
梅毒 | ・汗腺により流産や早産、死産のリスクが高まる ・未治療により、赤ちゃんが先天梅毒を発症する | 性行為時にコンドームを着用する |
AIDS | 母親が感染すると、胎盤や産道、母乳を通じて赤ちゃんに感染する | ・性行為時のコンドームの着用 |
B型肝炎 | 赤ちゃんが乳児になったとき、肝炎を発症することがある | 出産後の赤ちゃんにワクチン接種をする |
性器クラミジア | ・赤ちゃんに感染すると、流産や早産の原因になる ・出産時に赤ちゃんに感染すると、肺炎や結膜炎の原因になる | ・クラミジア検査を受けて、感染の有無を調べる ・感染している場合は、抗生剤の治療を受ける |
性器ヘルペス | お産時に産道で赤ちゃんが感染する恐れがある | 性器ヘルペスを罹患している妊婦さんに対して、帝王切開を検討する |
トキソプラズマ症 | ・流産や死産の原因になる ・赤ちゃんの脳や目に障害が現れることがある | ・生肉や加熱が不十分な肉の摂取を避ける ・ネコの糞便で汚染された土に触れないようにする。土に触った後に手洗いをする |
サイトメガロウイルス感染症 | 成人のほとんどが免疫を持っているが、おなかの赤ちゃんに感染すると、流産や死産、脳の障害や難聴の原因になる | ・子どもの尿やだ液に原因ウイルスが含まれているため、これらに触れたときは手洗いをする ・子どもと食器を共有せず、食べ残しを食べないようにする |
リステリア症 | 赤ちゃんに感染すると、流産、や早産、死産の原因になる | ・十分に加熱した食品を摂取する ・生ハム・スモークサーモン・ナチュラルチーズ等の摂取を控える |
伝染性紅斑(リンゴ病) | 退治水腫や流産、死産の原因になる | 流行時期に外出を控える |
妊娠安定期は体調の改善を感じる方も多く、妊娠初期よりもアクティブに過ごしたいと感じる人も多いでしょう。妊娠安定期に入っても、体への無理は禁物です。ここでは、妊娠安定期に入ってからの生活の過ごし方のポイントについてみていきます。
妊婦さんと赤ちゃんの健康のために、規則正しい生活を過ごしましょう。妊娠中は体の負担がかかりやすいので、睡眠や休息を十分に取ることが大切です。
妊娠安定期に入ると、週数が進むにつれて妊婦さんのお腹も大きくなります。家事をすることは問題ありませんが、お腹に負担をかけないような動作をしましょう。
妊娠中の力仕事は妊娠中の体に負担をかけやすく、流産や早産のリスクを高める原因になります。職場の上司と話し合い、無理のない業務への変更を検討してもらいましょう。
妊娠中の運動は体重コントロールやストレスの解消に役立ちます。激しい運動はできませんが、体に負担のかからない運動を取り入れてみましょう。近年では、妊婦さん向けにマタニティ教室を開いているジムもあります。
妊娠安定期に入れば、性行為を行っても問題ありませんが、お腹に圧迫をかけないように配慮が必要です。パートナーとのセックスでも、感染予防のためにコンドームを使用するのがおすすめです。
早期流産のリスクが減り、体調も安定する妊娠安定期。すでに赤ちゃんを出産して育児中の方の中には、「〇〇をしておけば良かった」と感じる人も多くいます。ここでは妊娠安定期に行っておきたいイベントや行事についてみていきます。
妊娠してから最初の子どものイベントとなるのが、安産祈願です。日本では古くから、妊娠5か月目の最初の戌の日に、安産を願って神社でお参りする習慣がありました。
犬のお産は軽く、一度に多くの子犬を生むため、安産の象徴とされています。戌の日の安産祈願には腹帯を巻きますが、儀式なのでカジュアルすぎない格好で参加しましょう。
戌の日は暦カレンダーで確認でき、戌の日は12日おきにやってきます。体調が良くないときは日程にこだわりすぎないことも大切です。
妊娠安定期の時期になると、自治体や医療機関で開催されている両親学級の開催が始まります。両親学級では妊娠中の過ごし方や、赤ちゃんのお世話の方法を学べます。妊娠週数が近い妊婦さんやそのパートナーが集まるので、知り合いを作る良い機会にもなるでしょう。
妊娠安定期に入ったら意識したいのが、出産後の生活への準備です。妊娠安定期に入ると、お腹の赤ちゃんの性別が分かることがほとんどです。季節に合わせた赤ちゃんの衣類やベビーグッズなどを少しずつ準備するようにしましょう。赤ちゃんの名前の候補を考えたりするのもよいでしょう。
妊娠安定期に入った後も、妊婦さんの生活の過ごし方がお腹の赤ちゃんに影響を与えることがあります。妊娠安定期は以下のことに気を付けて過ごすようにしましょう。
妊娠中に気を付けたいのが薬の内服です。一部の薬の中には、赤ちゃんの奇形リスクを与えるものもあります。妊娠中の薬の使用で注意したいのが、胎児の重要な器官を形成している妊娠15週までです。妊娠安定期に入ると、胎児の器官形成が終えているので、薬の影響はほとんど受けなくなりますが、薬の成分は胎盤を通してお腹の赤ちゃんにも運ばれるため、過剰な薬の使用は禁物です。
妊娠安定期に入った後に、薬の使用が必要な場合は、自己判断で市販薬を使うのではなく、かかりつけ医に確認するようにしましょう。
妊娠中のお酒やタバコは控えましょう。妊娠安定期にかかわらず、アルコールの摂取により、お腹の赤ちゃんの低体重や奇形のリスクを与える可能性があります。
タバコも同様に、低体重で赤ちゃんが生まれるリスクを高めます。妊娠中もタバコがどうしてもやめられない人は、医療機関の禁煙外来へ行くのも1つの方法です。また、妊婦さんが喫煙していなくても、受動喫煙によりタバコの害を受けるので、家族の理解と協力を得ることが大切です。
妊娠中は体調が変化しやすい時期であるため、積極的に旅行へ出かけることが推奨されるわけではありません。一方、ホルモンバランスや身体の変化によるストレスを発散させるために、旅行へ行きたいと考える妊婦さんは多いものです。
妊娠安定期は、妊娠期間中の中でも比較的旅行に適した時期といえます。ただ、旅行中は意識しなくても身体活動量が増加しやすくなります。おなかが大きくなってくると、動きにくくなったり、活動しにくくなったりすることがあります。
妊娠中の旅行は妊娠28週頃までにするように計画を立てましょう。
妊娠安定期になると、つわりが軽くなり、胎盤の完成によりホルモンバランスが整っていきます。そのため、体調がだいぶ楽になったと感じる妊婦さんも多いでしょう。
しかし、安定期だから妊婦さんに何も起こらないというわけではありません。妊娠安定期に入り急にアクティブに過ごすと、体の不調を招く結果にもなります。妊娠安定期に旅行するときも、自分の体調とよく相談しながら、無理をし過ぎないことが大切です。
妊娠中は気持ちが浮きだって、旅行を楽しむ方へと向かいがちです。安定期であっても健康のリスクがゼロではないため、準備や計画をしっかり行った上で旅行に臨みましょう。
妊婦さんが旅行に行くときは、人で混みやすい時期や場所を避けるのが賢明です。人混みにいると他人とぶつかりやすくなり、お腹に衝撃が加わったり、押された拍子に転倒したりするリスクがあります。
また、車で移動する場合も、高速道路が渋滞していると、トイレへ行くタイミングが取れないことがあります。妊娠前よりも頻尿になる妊婦さんも多いので、混みやすい時期や場所への旅行を避けるようにしましょう。
妊娠中に限らず、旅行へ行くとより多くの観光スポットやグルメを堪能しようと考える人は多いものです。妊娠安定期でも無理をしすぎると、体に負担がかかりやすくなります。
疲れを感じるだけでなく、お腹の張りを感じたりすることもあるので注意しましょう。妊婦さんの体調が安定していても、余裕のあるスケジュールでゆったり旅行を楽しむのがおすすめです。
妊婦さんの中には、妊娠安定期に飛行機の利用を考えている人もいるでしょう。
機内は特殊な環境であるため、妊娠中でなくても心身にさまざまなストレスがかかるものです。
通常、妊娠経過に問題なければ、飛行機に乗ることが直接母子に健康のリスクを与えることはありません。ただ、機内は特殊な環境であるため、飛行機に乗る場合は妊娠安定期に計画するのが適しています。
また、安定期であっても、つわりや性器出血、お腹の痛みがある場合は飛行機への搭乗を見合わせる必要があります。妊婦さんの健康状態が以下に当てはまるときについても、飛行機の搭乗を避けるようにしましょう。
妊娠安定期に飛行機を利用する場合は、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
妊娠安定期に入ると、つわりが軽くなって体調の改善を感じる妊婦さんも多いでしょう。また、お腹のふくらみや胎動など体の変化も実感できます。妊娠安定期に入っても、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。
参考:
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