2024.06.05
出産
お産を控えている妊婦さんの中には、陣痛について知りたい人もいるのではないでしょうか。陣痛が現れる時期や痛みの程度について気になりますよね。
そこで、陣痛の特徴や種類、陣痛がみられたときの対処法について解説します。臨月前の妊婦さんもぜひ参考にしてみてください。
陣痛とは、お産の際にみられる反復する子宮収縮のことを指します。出産では、陣痛の子宮収縮により赤ちゃんが押し出される必要があります。陣痛の発生にはリズムがあり、収縮と休止を繰り返します。
一般的に「陣痛」というときは、分娩が開始する「分娩陣痛」を指します。一方で、陣痛には種類があり、妊娠中や産後の子宮収縮も広い意味で陣痛といいます。
以降では、陣痛の種類についてみていきましょう。
妊娠陣痛とは妊娠中に起こる不規則な子宮収縮のことです。妊娠中の子宮収縮は不定期で、ストレスや膀胱や腸の充満によって引き起こされます。臨月が近づくと妊娠陣痛が頻繁に起こるようになります。
また、妊娠陣痛の中には「前駆陣痛」があります。前駆陣痛とは、分娩開始の数時間から数日前から起こる陣痛です。分娩開始前の陣痛であるため、妊娠陣痛のひとつでもあります。
分娩陣痛とは分娩時に起こる陣痛です。陣痛が10分間に1回または1時間に6回と規則的にみられると分娩開始となります。
分娩陣痛の中には、子宮口が全開するまでの子宮収縮である「開口陣痛」、お産で赤ちゃんの娩出により起こる「娩出陣痛」があります。
後陣痛とは産後の数日間に起こる陣痛です。後陣痛も子宮収縮による痛みであり、産後の出血量を抑えたり、子宮が元の大きさに戻ったりするために起こります。
微弱陣痛とは、陣痛の間隔が弱かったり、力が弱かったりする状態をいいます。微弱陣痛では、赤ちゃんを無事に分娩する力がないため、遷延分娩(分娩が遅くなること)の原因になることがあります。
微弱陣痛の原因には、子宮の形態異常や多胎妊娠による子宮壁の過剰な進展が挙げられます。そのほか、子宮内での赤ちゃんの位置や姿勢、妊婦さんの疲労や麻酔なども微弱陣痛の原因になります。
陣痛がどのような痛みなのか気になっている人もいるでしょう。陣痛の痛みの程度や部位は、陣痛の種類によっても異なります。
例えば、分娩陣痛では子宮収縮にともなう筋肉の痛みだけでなく、おなかの赤ちゃんの下降にともない、子宮頸部が開かれることで痛みが起こります。また、出産の際には赤ちゃんの娩出により骨盤底や会陰が開かれることで痛みがあります。
分娩時の痛みは個人差があり、多くの産婦さんが陣痛に対して大きな痛みを感じる人で、強い痛みを訴えない人もいます。時期にもよりますが、子宮収縮によるものでは、下腹部や腰に強い痛みを感じます。
特に、分娩陣痛の発生には規則的なリズムがあり、子宮収縮が休止しているときは痛みが消失するのが特徴です。
臨月はお産がいつでも起こりえる時期です。特に、陣痛は分娩開始のサインであるため、いつ陣痛が起こるのか気になっている人もいるでしょう。お産が始まる前兆には、おしるし・破水・陣痛の3つがあります。
おしるしは、赤ちゃんを包む卵膜が子宮壁から剥がれることで起こる出血のことです。妊娠中は卵膜が子宮壁にぴったり付いていますが、お産が近づくと子宮下部が開いていきます。
人によってはおしるしによる出血が数日続くこともありますが、経血と同程度の量であれば問題ありません。おしるしから陣痛が始まるまで数日かかることもありますが、おしるしがみられずに陣痛が始まることもあります。
破水とは、赤ちゃんの下降により卵膜が破れて、羊水が流れ出ることです。卵膜の下側が破れると、破水により大量の水分が流れ出ることもあります。
一方で、卵膜の上側が破れると(高位破水)、チョロチョロと少量ずつ水分が流れるため、尿漏れと勘違いする妊婦さんもいます。
妊娠中は不随意に子宮収縮が起こることもありますが、臨月を過ぎると子宮収縮の頻度が多くなります。陣痛が規則的に10分間隔で来ると、分娩陣痛となりお産が開始します。
本格的な陣痛が始まってもお産が進行するには時間がかかるので、焦りすぎる必要はありません。10分間隔で陣痛がみられたら、産院に連絡を受けましょう。
ただ経産婦の人は初産婦の人よりも、お産の進行が早くなります。陣痛が規則的にみられるようであれば、早めに産院に連絡する必要があります。
陣痛が続く時間は、分娩の時期によっても異なります。ここでは、分娩の時期ごとの陣痛の特徴についてみていきましょう。
分娩第1期は、分娩開始から子宮口が全開までの時期を指します。陣痛が10分間隔で起こると分娩開始となりますが、お産が本格的に始まるのは、子宮口が10cmに全開してからです。
分娩第1期の時間は初産婦さんが10~12時間、経産婦さんが4~6時間ほどになります。陣痛開始時は10分おきに20~30秒続きますが、子宮口が全開するときには2~3分ごとに40~60秒の陣痛が起こります。
分娩第2期は、子宮口が全開してから赤ちゃんが生まれるまでの時期です。この時期の所要時間は、初産婦さんで1~2時間、経産婦さんで0.5~1時間ほどになります。
分娩第2期では陣痛が2~4分毎に起こり、40~90秒ほど続きます。赤ちゃんが子宮口や膣から出てくると、膣や会陰部に痛みが現れるようになります。
分娩第3期は赤ちゃんが生まれてから胎盤が出るまでの時期です。赤ちゃんに続いて胎盤が出てくる必要があるため、軽い陣痛のような痛みを感じます。所要時間は5~15分ほどです。
多くの産院では産後すぐの母子のコンタクトを取るために、カンガルーケアを取り入れています。
分娩第4期は、お産後に胎盤が出てから病室に戻るまでの時期です。お産が終わると、子宮が元に戻るために後陣痛がみられますが、後陣痛は1週間ほど続きます。
人によっては、後陣痛の痛みにはうつ伏せで和らぐことがあります。後陣痛や会陰の痛みに対しては痛み止めを使うことができます。強い痛みを感じるときは、遠慮なく医療スタッフに相談しましょう。
お産は医療機関で行われるため、適切な時期に来院する必要があります。陣痛が始まってからの病院へ行くタイミングは、初産か経産かによっても異なります。
初産の場合は、本格的な陣痛になるまでの時間が長めです。陣痛が10分間おきにみられるようになったら、産院に連絡するようにしましょう。施設によっては、7分おきになったら来院するように指示するところもあります。
一方、経産婦の場合は陣痛がみられてからお産までの時間が短い特徴があります。産院によって指示内容に違いはあるものの、陣痛が規則的になったら病院へ連絡してみましょう。
そのほか、規則的な陣痛が始まる以前に、産院へ連絡が必要なこともあります。破水や持続的な出血が続く時は、産院へ電話しましょう。胎動が感じられなかったり、判断に迷ったりしたときも、電話で産院に相談するのがおすすめです。
陣痛が規則的になると、病院へ連絡する必要がありますが、多くの妊婦さんが慌ててしまうものです。お産が近づいているときは、以下のことを伝えるようにしましょう。
そのほか、妊婦さんの健康状態によっては、妊婦健診時に医師から注意点を受けていることもあるでしょう。医療機関への電話連絡で必要なことは医療スタッフに伝えておくとスムーズな対応が受けられます。
初めての妊娠では、最初に陣痛らしき痛みがみられてから、病院へ行くまで時間がかかるケースが多く見られます。自宅待機の間は以下のことを行うようにしましょう。
初産では、陣痛の痛みがそれほど強くなく、20~30分おきのことが多くなります。初めての妊娠ではお産までの時間もかかるので、自宅待機中に入浴をしておくとよいでしょう。
湯船でじっくり体を温めることで、血液の巡りが良くなり、お産もスムーズに進みやすくなります。また、陣痛が始まり、お産に対する心の緊張をほぐす効果もあります。
ただし、破水が起きている場合、子宮内に雑菌が侵入しやすい状況といえます。入浴はせずに、すみやかに産院に行くようにしましょう。
お産にかかる時間は、初産婦さんで10~12時間、経産婦さんで4~6時間ほどかかります。出産は体力を必要とするので、自宅待機のあいだに食事を取っておきましょう。
食欲がない場合は、何も食べないでいるよりも、ゼリー飲料や果物などさっぱりしたものを口にするのがおすすめです。
陣痛が来ると、規則的な陣痛になるまでやきもきしてしまう妊婦さんは少なくありません。お産のために体力を温存するためにも、リラックスして過ごすようにしましょう。
自分の好きな音楽を聴いたり、お気に入りの映画を観たりして過ごすようにしましょう。
陣痛バッグとは、本格的な陣痛が始まったり、破水をしたりしたときに持っていくバッグです。出産のための入院に備えて、入院バッグを用意している人も多いですが、陣痛バッグには最低限の荷物が入っています。
陣痛バッグと入院バッグの中身の違いは以下です。
陣痛バッグ | 入院バッグ |
・お財布 ・健康保険証 ・診察券 ・母子手帳 ・筆記用具 ・印鑑 ・スマホ ・充電器 ・小さめのタオル ・ペットボトルの飲み物 ・軽食 ・産褥用パッド | ・パジャマ ・羽織り物 ・授乳用ブラジャー ・産褥ショーツ ・産褥用パッド ・洗面用具 ・バスタオル |
規則的な陣痛が来るまでは時間がかかりますが、外出時に破水が起こることもあります。陣痛バッグは少量の荷物なので、出産予定日が近づいてきたら、外出時に持参するようにしましょう。
陣痛開始時は、深呼吸や呼吸法をしてリラックスするようにしましょう。陣痛がみられている間は子宮が収縮しているため、赤ちゃんに酸素が届きにくくなるためです。
また、体が緊張していると痛みを感じやすくなります。お産の進行を進めるためには、散歩などで体を動かすのもおすすめです。
陣痛開始後に尿意があるときは我慢せずにトイレへ行くにようにしましょう。膀胱が充満していると、子宮口が開きにくくなるためです。
子宮口が全開するまでの分娩第1期であれば、食事を取ることができます。家族の付き添いがあれば、食べ物や飲み物を買ってきてもらいましょう。おにぎりやサンドイッチ、ゼリー飲料などは陣痛開始後も摂取しやすいのでおすすめです。
お産の進行とともにお腹の赤ちゃんが下がってくると、肛門にいきみのような圧迫感が出ることがあります。
子宮口が全て開いていないときにいきむと、子宮の入り口や膣が裂けるリスクがあります。また体に力が入ることで、子宮口が開きにくくなり、お産の進行が滞ったりします。
肛門の感覚が気になるときは、テニスボール等で圧迫する方法があります。自分で肛門を圧迫するのは難しいので、付き添いの家族に手伝ってもらうのもよいでしょう。
妊婦さんやその家族の中には、早めに規則正しい陣痛が来てほしいと考える人もいるでしょう。陣痛を早めるといわれてるのが陣痛ジンクスです。ここでは、いくつかの陣痛ジンクスの医学的な根拠について紹介します。
ウコン・ターメリック・シナモン・ナツメグなどカレー粉のスパイスの中には、子宮収縮作用を持つものがあります。カレーを食べてからといって、すぐに陣痛間隔が短くなるわけではありませんが、自宅待機時に食べてみるのもよいでしょう。
パイナップルに含まれるたんぱく質分解酵素(ブロメライン)には。子宮の入り口を柔らかくする効果があります。パイナップルそのものは食品であり、医薬品のように有効成分が濃縮されているわけではありません。お産を待っている間の食事のデザートとして摂取するのもよいでしょう。
多くの産院では、本格的な陣痛を待つ間にスクワットやウォーキングなどの軽い運動を勧めています。分娩第一期の運動に関しては、陣痛間隔を短縮するという根拠はありません。
しかし、運動をした妊婦さんは運動をしなかった妊婦さんよりも、トータルの分娩時間が短くなったというデータもあります。自宅や産院で待機している際に、軽い運動を取り入れてみるのも良いでしょう。
出産予定日が近づいている妊婦さんは、お腹が大きくなっているため、体のバランスが崩れやすくなります。
出産予定日が近づくと、子宮を収縮させるホルモンが分泌されて陣痛が起こりますが、母子の状況によっては陣痛促進剤によって出産を早めた方が良いことがあります。
陣痛を誘発する方法にはいくつかありますが、薬剤を使用する方法であるのが陣痛促進剤です。陣痛促進剤は子宮収縮を促す薬剤です。
陣痛促進剤が用いられる例には、以下があります。
陣痛促進剤の投与法には内服と点滴があります。内服ではプロスタグランジンを投与し、点滴ではオキシトシンを投与します。陣痛促進剤を使用するにあたって、分娩監視装置により陣痛と赤ちゃんの心拍を観察した上で、適切な薬剤を使用します。
一般的に「陣痛」というときは、分娩が始まる「分娩陣痛」を指します。一方で妊娠からお産にかけて、時期別に陣痛の種類があり、痛みの部位も異なります。
陣痛について知ることは、お産のサインの理解にもつながり、いざというときに落ち着いて行動することができます。記事の内容を参考にして、分娩陣痛の特徴やお産の進行について理解を深めてみてください。
参考:
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