2020.10.01

出生前診断

NIPTが陽性になったら受けるべき確定検査(染色体検査)―非確定検査との違い

NIPTが陽性になったら受けるべき確定検査(染色体検査)―非確定検査との違い

新型出生前診断を検討している人の中には、検査を受ければ特定の病気かどうか分かると考える人も多くいます。実際には、検査で陽性になったとき、診断をするには確定診断が必要になります。この記事では、新型出生前診断における確定診断や非確定検査との違いについて紹介します。

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新型出生前診断とは?

新型出生前診断とは?

新型出生前診断(NIPT)は、日本では2013年4月から導入された新しい出生前検査です。検査では、妊婦さんの採血することで、特定の先天異常の可能性を知ることができます。

これまでも出生前診断の意味合いを持つ胎児への検査には、超音波検査や羊水検査、絨毛検査がありました。これらの2つの検査は、妊婦さんのお腹に直接針を刺して検体を採取するため、母子ともに負担がかかる検査です。

新型出生前診断は、妊婦さんへの採血を行うだけなので、身体的な負担が小さいというメリットがあります。

新型出生前診断で分かる病気―検査の精度について

検査で陽性になったとき、胎児への診断をするためには確定検査が必要です。すべての検査に共通して言えるのが、検査には「精度」があることです。検査の精度とは、検査が「陽性のものなら陽性」「陰性のものなら陰性」と結果を出す度合いのことをいいます。反対に言えば、検査で特定の結果が出ても、100%正しいとは限りません。

新型出生前診断の精度は、99.9%とあらゆる検査の中でも高い精度を誇る検査です。一方で、検査の精度は100%でないため、本来は陽性なのに陰性と出たり(偽陽性)、陰性なのに陽性(偽陰性)となることがあります。

つまり、新型出生前診断で分かるのは、特定の病気の“可能性”の有無についてです。新型出生前診断の結果が陽性になると、人工妊娠中絶を選ぶ人も少なくありません。苦渋の決断で中絶を選んだとしても、新型出生前診断の結果が正しいかどうかを知るという選択肢もあります。

新型出生前診断の検査後、正確な診断のために行うのが「確定検査」です。以降では、妊娠・出産にかかわる非確定検査と確定検査について見ていきます。

出生前診断の非確定検査について

出生前診断の非確定検査について

出生前診断における非確定検査は、おなかの赤ちゃんの異常の“可能性”を知ることができます。非確定検査は、母子への身体的な負担が少ない特徴がありますが、陽性になっても、診断には至りません。

検査の中には、妊婦健診で行われているものでありながら、出生前診断の意味合いを持つものもあります。具体的な出生前診断の非確定検査には以下のものがあります。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、超音波の出る器械をお腹に当て、その反響を画像化する検査です。検査では胎児の形が確認でき、性別の判断も可能です。超音波検査は、妊婦健診で必ず行われる検査で、胎児の成長や発達の様子を確認することができます。

母子の健康にリスクがなく、手軽に行える検査です。妊婦健診では、妊娠初期から後期の全期間にわたって行われます。

出生前診断というと、両親の希望や了解の元で行われる検査のイメージがあります。一方、超音波検査でも胎児の成長状況を確認することで、病気や障害の可能性を知ることもできます。

妊婦さんの中には、おなかの赤ちゃんの健康状態に問題がある場合、告知を望まれない方も多くいます。妊娠期間中は、ただでさえ精神的に不安定になりやすく、不安を増大してしまう可能性があるからです。

妊娠健診等で超音波検査を受けるときは、胎児の異常の可能性が見つかったときに、どのような対応してもらいたいかを意思表示することも大切です。妊娠中の嬉しい時期でも、万が一の時の対応について、事前に医師に相談してみましょう。

なお、一般的な超音波検査のほかにも、精密検査として行う胎児超音波検査もあります。この検査では、おなかの赤ちゃんの内臓や機能を詳しく調べることが可能です。

新型出生前診断

新型出生前診断は血液検査によって、胎児由来のDNAを解析する検査です。検査では、以下の3つの染色体数異常の可能性について知ることができます。

新型出生前診断は妊婦さんへ採血するだけなので、母子ともに身体的な負担が少ないのが特徴です。また、妊娠してから早い段階で、検査を受けることもできるというメリットもあります。

母体血清マーカー検査

母体血清マーカー検査は、新型出生前診断と同じように、血液検査によって胎児由来の物質を調べる検査です。検査は、妊婦さんの採血を通して行われるため、母子への負担がかかりません。

母体血清マーカー検査では、以下の先天異常の可能性について知ることができます。

  • ダウン症(21トリソミー)
  • 18トリソミー
  • 無脳症、脊椎裂などの神経管の奇形

検査は妊娠初期から中期に行います。検査の精度は80%程度で、検査結果もパーセンテージによって表示されるので、検査結果の判断が難しいのがデメリットです。母体血清マーカー検査で気になる点がある場合は、確定検査にて診断を行います。

出生前診断の確定検査について

出生前診断の確定検査について

新型出生前診断をはじめ、非確定検査で陽性が出たり、おなかの赤ちゃんに異常の可能性がある場合は、確定検査を行います。妊娠中の確定検査として行われるものには、羊水検査と絨毛検査があります。

絨毛検査 羊水検査
検査の時期 妊娠11-15週 妊娠16週以降
検査による流産リスク 1/100 1/300
合併症 出血、感染、流産など 破水、感染、出血、流産など
イメージ イラスト:絨毛検査 イラスト:羊水検査

羊水検査

妊婦さんのお腹に針を刺して、子宮の中にある羊水を調べる検査です。羊水に含まれる胎児の細胞を調べることで、おなかの赤ちゃんの染色体やDNAに異常がないかを調べることができます。

羊水検査は、母子に対して身体的・精神的な負担がかかることがあり、0.2~0.3%の割合で、破水や流産を引き起こすことがあります。もちろん、このようなリスクを避けるために羊水検査は、超音波エコーを使って胎児の位置を確認しながら、安全を配慮しながら実施されます。

羊水検査は、胎児を傷つけないレベルまで羊水が増えている状態で行うため、実施時期は妊娠15~18週くらいになります。また、検査の結果が出るまでには、3週間以上かかるのが一般的です。

絨毛検査

胎盤にあるひだ状の組織である絨毛を採取して調べる検査です。絨毛中に含まれる胎児由来の染色体やDNAの異常の有無を調べます。羊水検査と同じように、妊婦さんのおなかに針を刺して検体を採取するため、流産や破水のリスクがあります。リスクは羊水検査よりもやや高く、3~4% になります。

絨毛検査は妊娠9~11週に行われ、早期の検査が可能です。それ以前の検査では、胎児の体を傷つける可能性があり、またそれ以降では、絨毛組織が現局していくので、検体の採取が難しくなるためです。

採取した検体は、母親由来の細胞が含まれるため、誤った診断が出ることもあります。また、絨毛検査は技術的に難しい検査であるため、実施している医療機関が限定されています。

まとめ

新型出生前診断は、さまざまな検査の中でも精度が高いという特徴があります。一方で、検査結果は100%確証するものではないので、診断のために確定検査を行う必要があります。新型出生前診断で陽性になったら、重大な決断をする前に、確定検査を受けることも選択肢に入れましょう。

確定検査は、少なからず母子に負担もかかるので、確率は低いものの流産のリスクをともないます。新型出生前診断を受けるときは、陽性になったときのことも想定することが大切です。

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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