2021.11.29

出産

破水したらどうする?破水後の注意点や病院までの移動について

破水したらどうする?破水後の注意点や病院までの移動について

出産のための入院のタイミングの兆候の1つである破水。妊娠中の方の中には、どのように破水が起こるのか知りたい人もいるでしょう。

破水が起こるタイミングの目安や、行動の仕方について知ることで、当日慌てずに行動ができます。この記事では、破水の定義や、破水が起きたときの注意点やポイントについて紹介します。

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そもそも破水とは?いつ起こる?

そもそも破水とは?いつ起こる?

妊娠中、お腹の赤ちゃんは袋のような卵膜に満たされている羊水に浮かんでいます。卵膜が破れて羊水が体の外へ流れることを、破水といいます。

通常、出産が近づくと、子宮が収縮して陣痛が始まり、赤ちゃんが下に降りてくるのにともない、子宮口が開いていきます。陣痛が10分おき、または1時間に6回以上になると分娩開始となり、出産のために入院するタイミングになります。

初めての出産では分娩開始から約12〜16時間、2回目以降の出産では分娩開始から約7〜8時間で赤ちゃんが生まれます。

前期破水(PPROM)とは?

破水が起きる適切な時期は、陣痛が強くなり子宮口が全開に近づいたときです。

入院中に破水を経験する人の方が多いのですが、分娩が始まっていないのに破水が起きることもあり、専門用語で「前期破水」といいます。

前期破水では、妊娠37週前よりも以前に赤ちゃんを包む卵膜が破れ、数日後には陣痛が始まるため、十分に成長していない状態で赤ちゃんが生まれることになります。

自然早産の3~4割は前期破水によるものです。破水から時間が経過すると、膣から細菌が入りお腹の赤ちゃんが感染してしまうことがあります。

入院する前に前期破水がみられたら、すぐに医療機関に知らせましょう。この頃には入院する支度も整えているでしょうから、すみやかに医療機関へ連絡したのち向かうことが大切です。

前期破水が起こる原因

前期破水の原因には細菌感染があります。妊娠10週から20週にかけて起こる前期破水には、細菌感染がみられることが多くなります。膣の中で細菌が増殖すると、やがて子宮内に細菌が侵入することで、赤ちゃんを包む卵膜がもろくなるためです。

また、妊娠初期の出血がきっかけで前期破水が起こることもあります。妊娠初期には少量の出血がみられることがありますが、出血部分に血の塊(血腫)ができると、卵膜がもろくなる原因になります。

そのほかにも、妊婦さんの栄養状態が悪かったり、強いストレスがあったりすると、前期破水の原因になります。妊娠中の喫煙も、前期破水を起こすリスクを高めるので注意が必要です。

前期破水によるリスク

日本では新生児医療が進んでいますが、前期破水による早産は赤ちゃんの健康にもリスクがあります。前期破水により赤ちゃんが小さく生まれると、さまざまな病気や症状を抱えて生まれることが多く、成長後も医療費がかかったりするなど大きなハンディキャップとなります。

健康は個人の財産です。前期破水で子どもが出産予定日よりもかなり前に生まれることは、子どもの人生にも影響を与えてしまうかもしれません。妊娠中は、前期破水が起こらないように注意して生活しましょう。

高位破水とは?

破水には卵膜の破れる位置による種類があります。卵膜の上側部分に破水を起こるのが高位破水です。通常の破水では、子宮口の近くの卵膜が破れるため、羊水が勢いよく流れ出ます。

しかし、卵膜の周りには子宮の筋層があるため、高位破水で卵膜の上側部分が破れても、羊水の流れは少量になります。妊娠中には水っぽいおりものが出たり、尿漏れが起こったりするので、高位破水が起きていることに気づかない妊婦さんも多くいます。

以降では、羊水の見分け方についてみていきましょう。

破水時の羊水の量やにおいについて

破水時の羊水の量やにおいについて

破水というと、映画のワンシーンのように『下半身から大量に液体が流れ出る』イメージを持つ人も少なくありません。実際には破水でみられる羊水は、それなりの量の羊水が流れ出てしまう人もいれば、少し漏れるだけの人もいます。

一般的に、子宮口の近くで卵膜が破れると、大量の羊水が流れ出ます。反対に、子宮口の奥で卵膜が破れると、チョロチョロと流れ出たり、僅かに漏れるだけであったりする傾向があります。

羊水は体内にあるため、破水時の羊水は失禁時の尿と同様な生温かさを感じます。破水で流れる羊水のにおいには個人差があり、においを感じなかったという人もいれば、生臭さを感じた人もいます。

破水と尿漏れの違いは?見分け方について

破水が起きたときに、見分けるのが難しいのが尿漏れです。臨月でお腹の赤ちゃんが大きくなると、膀胱を圧迫するので、尿漏れを経験する女性も少なくありません。

破水時に流れる羊水の量が多ければ、尿漏れとの違いが分かりやすいですが、羊水の量が少ないと尿漏れと勘違いしてしまう可能性もあるでしょう。下半身に水分が流れるなど、破水のような現象を感じたものの、尿漏れかどうか分からない場合は、以下のことを確認してみてください。

  • 尿なら特有のにおいがする
    ほとんどの妊娠中の女性は、羊水がどのようなにおいか知らなくても、尿のにおいは識別できるものです。流れ出てきた水分のにおいが、アンモニア臭であれば尿漏れと考えられます。
  • 羊水は自分の意志で止められない
    破水で流れる羊水の量には個人差があり、流れが一旦おさまることもありますが、自分で流れを止めることはできません。一方、尿の場合、自分で一時的には流出を途中で止めることができるときもあります。

破水による羊水の流出が少ないと、ただの尿漏れと勘違いして、破水に気づかないこともあるかもしれません。妊娠37週になったら、水分の流出を感じたら、破水でないかチェックするようにしましょう。

破水で救急車を呼ぶのはOK?

破水をしたときに、救急車を呼ぶかどうかは状況によっても異なります。一般に、陣痛が10分間隔になると入院となりますが、中には自宅や外出先で破水してしまう人もいるでしょう。特に、はじめての出産で破水が先に起きてパニックになり、救急車を呼びたくなる人もいるかもしれません。

破水が来たときは、出産予定の医療機関に連絡して、自家用車で施設に向かいましょう。自家用車がない場合には、タクシーを利用することもできます。破水後にタクシーで医療機関へ向かうときは、大きめのナプキンを使い、念のためにタオルを敷くとよいでしょう。

破水で救急車を呼ぶ例について

妊娠中に破水が起きたときは、救急車を使わないのが基本ですが、緊急性が高いケースでは、搬送中に医療処置が必要となる可能性があります。以下のような例は、速やかに救急車を呼びましょう。

  • 破水して赤ちゃんの頭が出始めている
  • お腹の痛みが非常に強く動けない
  • 破水と同時に出血がある

破水により救急車で向かう必要があるかどうかは、出産先の医療機関でも判断してもらえます。破水をしたら慌てずに、医療機関へ連絡して医師の指示を仰ぎましょう。

自治体によってはマタニティ救急車があることも

破水後はすみやかに出産予定の医療機関へ行く必要がありますが、緊急事態でなければ救急車を呼ぶ必要はありません。一方で、自治体によっては、妊婦さんの出産をサポートするために、妊婦さん向けの救急車がある地域もあります。

妊婦さん向けの救急車は地域によって呼び名が異なり、マタニティ救急車や産救車と呼ばれています。妊婦さん向けの救急車では、緊急性がなくても、お腹の張りが強かったり、破水などの出産の兆候があったりすれば、専用の救急車を要請することができます。

また、自治体によっては事前に妊婦さんの登録をしているところもあります。お住まいの地域によっては、近場に分娩を扱っている医療機関がない人もいるかもしれません。

妊婦さんが前もって登録をしていれば、緊急性の高い破水で救急車を呼んだときに、医療機関へスムーズに搬送してもらえます。万が一に備えて、自分が住んでいる地域の救急車の利用について一度確認しておくのもおすすすめです。

破水したときの注意点

破水したときの注意点

破水後はすぐに医療機関へ行く必要がありますが、いくつかの注意点があります。

破水後にお風呂やシャワーは使わない

下半身の汚れが気になる人もいるかもしれません。身だしなみを気にして、下半身に軽くシャワーしたいと考える人もいるでしょう。

破水後のお風呂やシャワーは厳禁です。破水後はお腹の赤ちゃんが外の世界と直接つながっているため、感染のリスクがあります。お風呂やシャワーにより、膣から雑菌が侵入する可能性があります。

破水後は、足を軽くタオルで拭く程度にとどめましょう。また、羊水が流れ続けることが多いので、大人用のオムツや尿取りパッドなどを下着に当てると便利です。

タクシー等で医療機関へ行く

破水後に医療機関へ向かうときは、タクシー等を利用しましょう。車の座席では横になるのがおすすめです。自分で車を運転するのも、お腹を圧迫してしまったり、気持ちが慌ててしまったりするため、通常は避けなければなりません。また、医療機関が近くにあっても、徒歩で行くことも避けてください。

破水後に病院で行われる処置-出産まで

多くの医療機関では、本格的に陣痛が始まったときや、おしるしや破水がみられたときが入院のタイミングになります。破水後に医療機関へ入院した場合は、流れ出ているのが羊水かどうかを検査で確認します。

破水であることが分かった場合は、お腹の赤ちゃんや子宮への感染を防ぐために、膣内を洗浄したり、抗生剤を投与したりします。

出産までの流れ

陣痛が始まって子宮口が全開に近づくと破水が起こります。子宮口が十分開くと、陣痛に合わせて妊婦さんがいきむことで、赤ちゃんが産道を進んできます。

子宮口が全開してからは、初めての出産なら約1~2時間後、2回目以降の出産であれば約30分から1時間で赤ちゃんが生まれます。妊娠中から、母親学級やマザークラスなどを通して、前もっていきむ練習するのもおすすめです。

破水をしたのに陣痛が起こらない場合

妊婦さんによっては、陣痛が起こる前に破水することがあります。ほとんどのケースでは、破水後、24時間以内に陣痛が始まりますが、そうでない場合は経膣分娩の際は陣痛促進剤を使用して、人工的に陣痛を促すことになります。

破水しない場合はどうしたらいいの?

通常、破水は陣痛の後に破水が起きます。ここではケースごとの対処法についてみていきましょう。

陣痛もなく破水もないケース

出産予定日を過ぎても、妊婦さんと赤ちゃんの状態に問題なく、経腟分娩が可能であれば、陣痛が自然に来るのを待ちます。

妊娠42週近くになっても、陣痛が起こらないときは薬剤の投与により、陣痛を誘発することもあります。

陣痛があるのに破水しないケース

陣痛が来ても破水とならず、なかなかお産が進まないこともあります。このような場合は、医師が内診時に卵膜を破り、人工的に破水を起こさせます(人工破膜)。赤ちゃんの頭を下降させて、お産が進みやすくするためです。

破水させずに赤ちゃんが生まれることもある

赤ちゃんの状況によっては、あえて破水せずに出産となることがあります。帝王切開では、胎児が傷つくリスクを抑えるために、卵膜に包まれた状態で赤ちゃんが取り出されることもあります。

お産では破水が必須というイメージがありますが、卵膜内は清潔で赤ちゃんにとってストレスのない環境です。そのため、500g未満の赤ちゃんを帝王切開で取り出すときは、人工破膜をおこなわずに、卵膜に包まれた状態で取り出すことが多くなります。

破水に気づかない場合もある?

破水による羊水の流れ方はさまざまです。多くの人が破水で思い浮かべるのが、勢いよく羊水が流れ出るシーンですが、人によっては羊水がチョロチョロと流れ出ることもあります。

膣から何か液体が流れ出ていても、尿やおりものと思いこんだり、周りの人に相談しても「破水ではない」といわれることもあるかもしれません。実際に、妊婦さん本人が破水だと思って医療機関へ行っても、実は尿だったということもあります。

しかし、実際に破水が起きているのであれば、長時間そのままにするのは感染の危険があります。膣から液体などが流れ続けているときは、医療機関に電話して相談してみましょう。

状況によっては、医師の指示により、医療機関で膣から流れている液体が羊水かどうかを調べてもらえます。膣から流出しているのが羊水である場合は、そのまま入院になるため、入院グッズを事前に準備しておくことも大切です。

外出先での破水に備えるためのポイント

外出先での破水に備えるためのポイント

出産のための入院のタイミングは、陣痛・おしるし・破水のいずれかの兆候が起きたときです。出産を経験した女性の中には、自宅ではなく外出時に破水が起きた例も多くあります。やはり外出時の破水は避けたい人が多いでしょう。

妊娠37週以降は通常お腹の赤ちゃんが充分に成長しているので、いつでも、これらの兆候が起こり入院のタイミングになると考えられます。臨月に全く外出しないというのは難しいですが、外出は買い物など必要な範囲にとどめ、近場に限定するのがおすすめです。

外出先で破水をしたときのために、以下のグッズを持参しているとスムーズに対応できます。

  • 母子手帳
  • 入院予定の医療機関の診察券
  • 健康保険証
  • 大きめのナプキン
  • 大きめのタオル
  • 下着の替え

まとめ

破水は、子宮にある卵膜が破れて、羊水が流れ出ることで起こる現象です。通常、破水は強い陣痛が始まってから起こりますが、陣痛前に破水が起きることもあります。

破水後は、お腹の赤ちゃんが外の世界と直接つながっているため、感染のリスクがあります。破水がみられたら、すぐに入院予定の医療機関へ連絡して、向かいましょう。

また、陣痛の前に破水が起こることもあるので、妊娠37週になったら、外出先や持ち物にも留意しましょう。

破水が始まったら、もうすぐお腹の赤ちゃんとの対面への時間も近づきます。入院前に破水が起きても、慌てずに落ち着いて行動してくださいね。

参考:お産の進み方

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記事監修

足立明彦先生

赤十字病院副部長・国立大学非常勤講師。首都圏の徳洲会やセンター病院での勤務歴もあり。家族が前期破水当日に胎児徐脈から緊急帝王切開に至った経歴もあり破水に詳しい。学歴:2003年 薬学部卒業、2007年 医学部卒業、2014年 大学院修了。取得資格:薬剤師、医師、博士(医学)、複数分野の専門医・指導医。

ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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