2025.04.10
出産
出産を控えている妊婦さんのなかには、「いきみ逃し」について聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?いきみ逃しは何のために行うのか、やり方について気になりますよね。
この記事では、妊婦さんが出産前に知っておきたい「いきみ逃し」について解説します。いきみ逃しを行うためのポイントや便利グッズも紹介しているので、参考にしてください。
いきみ逃しとは、陣痛中にいきまないようにすることです。陣痛が起こるといきみたくなるのは、赤ちゃんの頭が少しずつ下がってくるためです。妊婦さんによっては、赤ちゃんの頭が降りてくることで、便をもよおしたような感覚を抱く人もいるでしょう。
しかし、子宮口が全開大(10cm)になる前にいきむと、産道を傷つけてしまうおそれがあります。妊婦さんがいきむときは、タイミングを図る必要があります。順調にお産を進めるためにも、お産が始まる前にいきみが起きたときは、いきみ逃しをするようにしましょう。
実際に、いきみ逃しはいつからいつまで行えばよいのでしょうか。いきみ逃しは「分娩第一期」に行います。分娩のステップは4期に分かれており、分娩の最初の段階である分娩第一期は、陣痛が始まってから子宮口が全開大するまでの時期に当たります。
規則的な陣痛が始まったら、子宮口が10㎝になるまではいきみ逃しをしましょう。子宮口が全開大すると、いよいよ出産となるため、分娩室に移動します。
妊婦さん自身は陣痛の痛みが辛く、いきみ逃しがうまくできないこともあるでしょう。いきみ逃しをするときは次のことを意識しましょう。
分娩第一期でいきみ逃しをするときに大切となるのが呼吸法です。いきみ逃しに効果的といわれているのが、陣痛の緩和を目的にした「ソフロロジー法」です。ソフロロジー法は腹式呼吸法で、長めに息を吐くのが特徴です。ソフロロジー法を用いたいきみ逃しのやり方は以下です。
ソフロロジー法による呼吸法は体に余分な力を入れないため、いきみ逃しをしやすくなります。
出産時の呼吸法というと、伝統的にラマーズ法(「ヒ・ヒ・フー」という呼吸法)を思い出す人もいるでしょう。ラマーズ法は痛みの緩和法で、胸式呼吸法であることから、お腹が大きくなった妊婦さんも行いやすいとされています。ラマーズ法を使ったいきみ逃しのやり方は、次のとおりです。
1.「ヒ・ヒ・フー」と2回短く息を吸い、3回目で息をゆっくり吐く。
2.いきみたくなったら、「フーフー」と長く息を吐き出し、いきみを逃す。
いきみ逃しで用いる呼吸法は、医療機関によっても異なることがあります。医療スタッフのアドバイスに従った呼吸法を実践するとよいでしょう。
いきみ逃しをするときは、お腹に力を入れないように注意しましょう。お産時のいきみでは、赤ちゃんを押し出すために腹圧がかかります。ただ排便時のいきみと異なり、お産時は膣のある下腹部に力を入れます。
子宮口が開ききる前にいきみすぎてしまうと、産道がむくんだり、傷ついたりすることがあります。お産の進行が滞る原因にもなるので、腹圧をかけないようにしましょう。
妊婦さんのなかには、陣痛時にうまくいきみ逃しができたか心配な人もいるかもしれません。陣痛が来るときは、強い痛みの波が来るため、呼吸法をうまく意識できない人は多いものです。
いきみ逃しはお産をスムーズに行うためのものです。子宮口が開ききる前にいきみをうまく逃せれば、赤ちゃんにも負担がかかりません。ただ、お産時にいきみ逃しをうまくできなかったからといって、赤ちゃんに障害が残るというわけではありません。
赤ちゃんが生まれ、病気や発達の遅れがみられると、妊娠から出産までの自分の行動を振り返り責めてしまう妊婦さんも少なからずいます。いきみ逃しは「いきまないようにする」ためのものであり、完璧にできなかったとしても、自分を責めないようにしてください。
タイミング前にいきみ逃しを上手に行うには、パートナーや家族のサポートも欠かせません。しかし、陣痛中に一人で過ごす妊婦さんもいます。ここでは、いきみ逃しをするときにあると便利なグッズを紹介します。
いきみ逃しをするときにあると便利なのがテニスボールです。陣痛で痛みが強くなってきたら、テニスボールをお尻や会陰部に当てるようにしましょう。医療機関の陣痛室には、テニスボールを用意しているところもあります。
テニスボールがないときは、手でげんこつを作ったり、他の丸みのあるものでも代用できます。もともと腰痛持ちの人は、ゴルフ―ボールのように少し固めのボールで押すと良いという意見もあります。
陣痛中に、姿勢を保持するのに便利なグッズがクッションです。いきみ逃しをするときに、大切なのが妊婦さんにとって楽な体勢でいることです。子宮収縮の痛みが強いときも、クッションにしがみついたり、もたれたりすることができます。
陣痛で強い痛みに見舞われると、ついつい叫んでしまう妊婦さんも少なくありません。大きな声を上げると、どうしても喉が渇くものです。手元に飲み物を用意しておけば喉の渇きを潤すことができます。陣痛中は、ストロー付きのペットボトルを使えば、水分補給もしやすくなります。
ここでは、いきみ逃しについてよくみられる質問とその回答について紹介します。
いきみ逃しをする分娩第一期にかかる時間は、出産経験によって異なります。一般的に、出産経験のある女性の方が、お産の経過が長くなります。分娩第一期の時間は個人差があるものの、初産婦であれば10~12時間、経産婦であれば5~6時間です。
無痛分娩の場合、いきみ逃しは必要ありません。無痛分娩は下半身のみに麻酔をかけるもので、陣痛による痛みを軽減できるものです。硬膜外麻酔の投与後も子宮収縮が起こっているものの、痛みを感じないため、いきみ逃しをすることはありません。
妊婦さんによっては痛みを感じることがありますが、付属のボタンを押すことで必要に応じて麻酔薬の追加注入ができます。子宮口が開ききって、お産になったら、子宮収縮の際に医師や助産師が声かけをしてくるので、タイミングに合わせていきみましょう。
いきみ逃しは子宮口が全開大する前に、いきまないようにすることを意味します。本格的にお産が始まる前にいきみ逃しすることで、産道のむくみや裂傷、赤ちゃんのストレスを抑えることができます。
実際にいきみ逃しをするときは、呼吸法を用いながら、お腹に力を入れないことを意識します。陣痛が起きているときは、痛みでいきみ逃しをしにくいことも多いため、家族のサポートや便利グッズを使いながら試みてください。
参考:
知れば安心、お産のこと
硬膜外無痛分娩は実際にどのように行われるのでしょうか?
お産の流れと過ごし方
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