2024.12.10
妊娠
安産祈願は「戌の日参り」とも呼ばれており、妊娠中に行うイベントのひとつです。妊娠の発覚から2~3か月経ち、安産祈願へ行こうと考えている妊婦さんもいるのではないでしょうか。安産祈願はいつ行くのか、何をするのか気になりますよね。
この記事では、安産祈願について詳しく解説します。これから安産祈願に行きたいと考えている人は参考にしてみてください。
安産祈願である「戌(いぬ)の日参り」は、古くから日本で行われている風習です。妊娠中の女性が腹帯をして神社やお寺を参拝し、安全に出産を迎えられるように神様にお祈りをします。
安産祈願は、お産が軽い犬にあやかって妊娠5か月目頃の「戌の日」に行います。また地域によっては、戌の日ではなく「子(ねずみ)の日」に安産祈願を行う地域もあります(※1)。ネズミも犬と同様に、子だくさんの安産であるためです。
安産祈願のお参りをしたい人の中には、仕事や体の不調などで都合が合わない人もいるでしょう。働く妊婦さんは4割ほどおり、戌の日が平日のことも多くあります(※2)。
戌の日の安産祈願は、土日など仕事のない日や自分にとって大切な日付などに行くこともできます。戌の日にこだわりすぎずに、自分の体調や仕事に配慮して調整するようにしましょう。
戌の日がダメなら、仏滅を避けて大安を選ぶ人もいます。六曜は陰陽道に基づくもので、安産祈願の日程を選ぶときに気にする必要はありません。縁起が良くないとされる仏滅や赤口でも神社仏閣では安産祈願の祈祷が行われています。
戌の日参りで腹帯を巻くのは、日本の古代書物から読み解くことができます。古事記や日本書紀には、3世紀頃、神功皇后が征伐先の朝鮮半島で産気づき、腹帯に小石を入れ陣痛を鎮め、帰国後に元気な赤ちゃんを産んだことが由来といわれています(※3)。
妊婦が腹帯を付けることで、周囲の人々が妊娠を把握しやすくなり、赤ちゃんの霊魂を安定させられると考えられていたようです。
また近代までは、産婆が付き添った自宅出産が当たり前でした。出産は女性にとっても命がけのイベントであるため、神社仏閣で祈祷を受けた腹帯をつけるのは、当時の妊婦さんにとって理にかなっていたといえます。
戦後から現代は、医師が出産に介入するように、より安全に出産を迎えられるようになりました。しかし現代でも、妊娠や出産の経過中に命を落とすこともあり、安産を願って腹帯を巻く習慣が今なお続いていると考えられます。
戌の日参りで神社やお寺を参拝するときは、きれいめで楽な服装を着用しましょう。
「神社やお寺へのお参りは着物を着た方がよいのでは…」と考える妊婦さんもいるでしょう。妊娠5か月頃はつわりも治まり、体調の良さを感じる妊婦さんも多くいますが、着物のように体を締め付けやすい衣類は、当日の体調によっては負担がかかることがあります。
戌の日参りへ行くのにラフすぎる服装は好ましくありませんが、妊婦さんが来ていて楽に感じる服装を選ぶようにしましょう。
安産祈願に行く際の履物は、足によくなじんでいる靴を選びましょう。神社やお寺は砂利道が多く、長い階段を上る必要なところも多くあります。妊娠中に転んでお腹を打つのは母子の健康に良くありません。普段から履き慣れている靴を選ぶようにしましょう。
参拝予定の神社に急な坂があったり、歩く距離が長かったりする場合は、違う場所を再検討するのもよいかもしれません。
戌の日参りの流れは神社やお寺によっても異なります。一般的な安産祈願の流れについて紹介します。
神社やお寺に到着したら、受付にて安産祈願を申し込みます。場所によっては、当日ではなく事前予約が必要なこともあるので、前もって確認しましょう。
安産祈願を申し込む際に、初穂料(神様や仏様にお備えするためお金)を渡します。戌の日参りの初穂料の相場は5千円から1万円です。
安産祈願の祈祷を受けます。祈祷は神社仏閣で神様や仏様に対して、お願い事を伝えるための儀式で、戌の日参りの祈祷は20~30分ほどで終わります。
腹帯の祈祷をしてもらいたい人は、腹帯を巻いていくか持参しましょう。神社やお寺によっては、祈祷後に腹帯を授与するところもあります。
安産祈願の祈祷が終わると、お札やお守りなどの授与品を受け取ります。
戌の日参りが終わった後は、参加者で食事会をすることも多くあります。神社やお寺から近いところに予約すれば、参拝後の移動もスムーズに行えます。また、写真館で記念写真を撮りたい人は、当日の予定に組み込んでみるのもおすすめです。
戌の日参りを計画している妊婦さんの中には、疑問や心配事がある人もいるでしょう。安産祈願でよくみられる質問とその回答を紹介します。
安産祈願のために神社やお寺を訪れるときは、必ず祈祷を受けなければいけないというわけではありません。戌の日参りに祈祷を受けず、参拝だけで済ませる人も多くいます。
安産祈願は必ず行わなければいけないというものではなく、体調を考慮してあえて参拝に行かない妊婦さんもいます。
安産祈願は誰とでも行うことができます。一般的に多いのが、夫婦と赤ちゃんの兄弟による参拝です。また、妊婦さん両親や義両親も安産祈願に参加することもあります。
安産祈願で神社やお寺を参拝し、赤ちゃんが無事に生まれたときは、お礼参りに行きましょう。お礼参りは、安産祈願をした神様や仏様に報告し、感謝の気持ちを伝えるために行います。
お礼参りへ行く時期は決まっていないので、ママと赤ちゃんの体調が良い日を選びます。戌の日参りと同じ場所でお宮参りをする場合は、お宮参りと一緒にお礼参りをすることもできます。
安産祈願はお産が軽い犬にあやかって、妊娠5か月頃の最初の戌の日にお寺や神社で参拝する風習です。戌の日参りで受け取る腹帯は妊娠経過に影響を与えるわけではありませんが、妊娠や出産は安産を願って、今もなお伝統的な風習として受け継がれています。
戌の日参りを行う時期は、妊婦さんの体調も安定してくる頃ですが、無理をしすぎないことが大切です。「戌の日」にこだわりすぎずに、自分の体調が良い日に、神社やお寺で安産祈願の参拝をするようにしましょう。
参考:
1:鎌田久子/産育習俗再考
2:株式会社コズレ/妊婦のはたらき方 実態調査(2021年11月) ~妊婦たちの就労状況は、コロナ禍にどう変化したか~
3:産育儀礼における腹帯の実態と動向の検討
4: 村松虚空蔵尊だより
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