2024.02.26
妊娠
妊婦健診を受けた女性の中には、医師から「子宮頸管(しきゅうけいかん)が短い」と指摘された人もいるのではないでしょうか。子宮頸管が短いと妊娠や出産にどのような影響を与えるのか気になりますよね。
そこで、子宮頸管の役割や子宮頸管が短い原因について解説します。子宮頸管の役割や子宮頸管に関連した病気について知りたい人は参考にしてみてください。
子宮頸管は子宮の下部にあり、膣と子宮の内側をつなぐ筒状の部分です。妊婦さんによって個人差がありますが、一般的な子宮頸管の長さは35~40mmになります。
子宮頸管には女性の時期によって、次のような役割があります。
妊婦さんの中には、医師から「子宮頸管が短い」と指摘された人もいるかもしれません。先天的に子宮頸管が短い原因には、生まれつき子宮の入り口部分の筋肉が弱いことが挙げられます。
一方、後天的に子宮頸管が短い原因には、子宮頸管の炎症があります。子宮頸管には雑菌の侵入を防ぐ役割がありますが、妊娠中はママの免疫力が寛容になります。妊婦さんの体がおなかの赤ちゃんを異物とみなさないようにするためです。
妊娠中は免疫が鈍くなっている状態であるため、感染しやすく細菌感染が子宮頸管に及ぶことがあります。子宮頸管の炎症を引き起こす病気は以下の通りです。
上記の病気により、子宮頸管の炎症が起こっても自覚症状がないことがほとんどです。
子宮頸管の長さはどのようにして分かるのか気になっている妊婦さんもいるでしょう。子宮頸管の長さは、妊婦健診で行われるエコー検査で調べることができます。
子宮頸管の計測では、子宮内口から子宮外口までの長さを計測します。通常は、妊娠中期の経腹エコー検査にて、子宮頸管の長さに加えて、子宮口が開いていないか調べます。経腹エコーで異常がみられれば、経腟エコー検査で詳細に調べていきます。
子宮頸管の短さと早産のリスクの間には相関関係があります。「子宮頸管が短い」といわれたことのある妊婦さんの中には、子宮頸管の長さの平均について気になっている人もいるでしょう。
早産のリスクについて注意しなければいけないのが、子宮頸管が30mm未満であるときです。また、20~25mm未満では早産のリスクが6~7倍、20mm未満では早産のリスクが10倍になるといわれています。
とはいえ、子宮頸管の長さは妊娠週数が進むにつれて、短くなっていくものです。重要なのは、子宮頸管の長さが急激に短くなっていないか、あるいは子宮口が開いてきていないかになります。
「子宮頸管の長さが○○cm」といわれても、必要以上に心配しすぎないことが大切です。
例えば、子宮頸管が短くても、子宮口がしっかり閉じていれば、すぐに早産ということにはなりません。反対に、子宮外口が閉じていても、赤ちゃんの頭の下降により子宮内口が開き始めていれば、子宮口の開大が始まる可能性があるためです。
早産のリスクとなる状態に、子宮頸管無力症があります。子宮頸管無力症とは子宮収縮などの自覚症状がないのにもかかわらず、子宮口が開いていく状態で、妊婦さんの100〜200人に1人の割合でみられます。
子宮頸管無力症では、子宮口の開大や子宮頸管の短縮の症状みられます。子宮頸管無力症を発症すると、子宮口がどんどん開いていくため、流産や早産のリスクが高まるので注意が必要です。
子宮頸管無力症の原因には、過去の流産や中絶、子宮頸がんに対する円錐切除術、子宮頸管の感染などがあります。一方で、原因がはっきりせずに起こることもあります。
そのため、1人目の妊娠では異常がなくても、2人目の妊娠で発症するケースもみられます。
子宮頸管無力症になると、一部の妊婦さんでは、少量の性器出血、お腹や腰の痛みがみられます。一方で、妊婦さんの多くは自覚症状がほとんどなく、切迫早産をきっかけに判明することがあります。
なお、子宮頸管の感染が原因であるときは、おりものの増加や変化がみられることもあります。
子宮頸管無力症に対する治療は、子宮頸管の状態によっても異なります。子宮頸管の長さが25~30mmであれば、経過観察と安静が必要になります。
子宮頸管の長さが25mmを切ると、「子宮頸管縫縮術」という手術を行います。子宮頸管縫縮術では、一時的に子宮頸管を糸で縛り、妊娠36週頃になったら、抜糸をしてお産に備えます。
抜糸後に異常がなければ、経腟分娩でのお産も可能です。子宮頸管縫縮術は経過に問題がなければ、入院期間は1週間ほどになります。ただ、手術で子宮頸管を縛っても、早産のリスクが完全になくなるわけではありません。
また、子宮頸管無力症は再発しやすく、30%の妊婦さんが次回の妊娠で繰り返します。再発する可能性が高い妊婦さんに対しては、予防的に子宮頸管縫縮術を行います。
子宮頸管の短さ以外にも、妊娠をきっかけに子宮頸管の病気が見つかることがあります。ここでは、子宮頸管ポリープについてみていきましょう。
子宮頸管ポリープは、子宮頸部の組織が増殖してできものができる病気です。病気の原因は明らかになっていませんが、ホルモンバランスや細菌感染による子宮頸管の炎症が考えられています。
子宮頸管ポリープのほとんどは良性腫瘍ですが、放置すると不正出血がみられるようになります。治療は切除術を行います。
子宮頸管ポリープは、出血により感染や炎症のリスクが増えるため、妊娠にも影響を与える可能性があります。しかし、妊娠中の手術治療は早産や流産のリスクがあるため経過観察を行います(子宮頸管ポリープが良性である場合)。
子宮頸管は子宮の入り口に当たる部分で、妊娠中には子宮の入り口を閉じておなかの赤ちゃんを子宮に留める役割がありますが、お産の際には産道として赤ちゃんの通り道になります。
子宮頸管の長さが短すぎると、妊娠を維持できずに早産のリスクとなることがあります。子宮頸管が短い原因には、生まれつきのものだけでなく、子宮頸管の炎症が原因になることがあります。
子宮頸管が短く、子宮頸管無力症と診断された場合には、安静や手術が必要になります。正常な妊娠では子宮頸管が30mm以上である必要がありますが、あくまで目安になるので、平均値について心配しすぎないことも大切です。
出典:
日本産婦人科医会/子宮頸管長の意義
杏林舎/子宮頸管縫縮術
ABOUT ME