2024.12.10
妊娠
妊娠を希望している女性のなかには、インプランテーションディップについてチェックしている人もいるのではないでしょうか。毎日基礎体温を計測していると、妊娠が成立していても、高温期の体温低下を確認できることがあります。
この記事では、インプランテーションディップの定義や体温の低下がみられる時期と期間、インプランテーションディップを確認するときの注意点について解説します。
インプランテーションディップとは、「Implantation(着床)と「Dip(下がる)」を組み合わせた造語です。一般に妊娠が成立すると、2週間以上の高温期が続きますが、着床時期に基礎体温が一時的に下がることがあります。
インプランテーションディップは、妊娠をしたすべての女性にみられるものではありません。また、インプランテーションディップ以外にも高温期に体温低下がみられることもあります。そのため、高温期の一時的な体温低下がみられても、“着床の証”と期待しすぎないようにしましょう。
インプランテーションディップが起こっているかどうかを知るには、基礎体温を計測する必要があります。基礎体温は、消費エネルギーが最小限の安静状態で計測する体温です。起床直後に寝たままの状態で、毎日同じ条件で計測します。
基礎体温は体温の微細な変化を計測するため、婦人体温計と呼ばれる専用の体温計を使用します。一般の体温計がコンマ下1桁まで計測できるのに対して、婦人体温計はコンマ下2桁まで計測することが可能です。
インプランテーションディップが起こるのは着床期です。着床受精卵の着床は、排卵日後5~9日、妊娠3週目に起こるため、妊婦さんによってはこれらの時期に一時的な基礎体温の低下がみられることがあります。
インプランテーションディップは必ずみられる現象ではありません。基礎体温の変動を知りたい人は、基礎体温グラフを付けて確認する必要があります。インプランテーションディップが起こると、1~2日間基礎体温の低下がみられます。
ただ排卵期から黄体期にかけて高温期が続き、妊娠している状態ではそのまま高温期が続きますが、生理の訪れがあると低温期へ移行します。そのため、3日間以上の基礎体温の低下がみられるときは、インプランテーションディップではなく低温期の可能性があります。
基礎体温グラフで高温期の一時的な低下は、必ずみられる妊娠兆候ではありません。インプランテーションディップがみられるときは、そのほかの妊娠兆候がないか確認してみましょう。
妊娠成立時にみられる兆候として着床出血がみられることがあります。着床出血は、受精卵が子宮内膜に潜り込むときにみられる出血です。少量の出血であるため、ピンク色のおりものが出たり、茶色の出血がみられたりすることもあります。
受精卵が着床する際、下腹部痛はみられません。受精卵は非常に小さく、急激にもぐっていくわけではないため、痛みが起こる可能性は低いといわれています。受精卵の着床期にみられる下腹部痛は、着床出血が着床時のタイミングで起こった子宮収縮の可能性があります。
また着床出血がみられる割合は25%ほどで、妊娠したすべての女性にみられる兆候ではありません。着床出血の有無について一喜一憂するのではなく、インプランテーションディップと合わせて、ざっくり確認する程度にとどめておきましょう。
高温期での一時的な低下は、インプランテーションディップ以外にも起こりえます。インプランテーションディップがみられると、妊娠への期待感を膨らませる人もいるでしょう。インプランテーションディップ以外で基礎体温が下がる原因は以下です。
風邪により微熱がみられる場合、症状が改善する過程で体温の低下がみられます。風邪を引くと、免疫機能が働いて体温が上がるため、基礎体温をつけている人の中には妊娠と勘違いしてしまうことも少なくありません。
また微熱に加えて、だるさがみられることも妊娠兆候と勘違いする原因となります。
基礎体温グラフは、低温期と高温期の0.3~0.5度のわずかな体温差から確認します。とくに基礎体温の計測時間や状況が変われば、計測値に誤差が生じ、グラフ線も変化します。
また、婦人体温計で毎日同じ条件で計測していても、きれいな2相のグラフになるとは限りません。気温や体温の影響でブレが生じることもあります。
女性ホルモンのバランスが乱れていると、基礎体温グラフの変動がみられにくくなります。
生理周期が規則的な人は、低温期が約2週間、その後排卵期を経て、高温期が約2週間続きます。一方、女性ホルモンの分泌に異常があると、基礎体温の変化がみられにくく、低温期で横ばいになることが多くなります。
黄体機能に異常があると、高温期に一時的な体温低下がみられることがあります。そもそも生理周期に低温期と高温期があるのは、毎月、女性ホルモンの分泌に変動が生じるためです。
生理前である黄体期では、黄体ホルモンの分泌が増えることで体温が上昇します。しかし黄体ホルモンの分泌が不十分な状態では、体温上昇の期間が短くなり、高温期に入っても基礎体温の低下がみられることがあります。
このように基礎体温が低下する原因はいくつかあります。自分ではインプランテーションディップが起きたと感じていても、他の理由で基礎体温が変動していれば、妊娠の成立がなく月経の訪れがみられます。
妊娠を望んでいる人の中には、不妊治療に取り組んでいる人もいるでしょう。ここではインプランテーションディップがみられやすい時期について説明します。
不妊治療においてETは分割期胚移植(Embryo Transfer)、BTは胚盤胞移植(Blastocyst Transfer)のことをいいます。ETでは排卵日から2日後、BTでは排卵日から5日後に移植を行います。
BTは培養期間が長く、ETよりも良好な胚を選別しやすく、BTによる対外受精の割合が高くなっています。BT移植後の着床時期は、3日から5日になるため、BT3からBT5にインプランテーションディップがみられることがあります。
インプランテーションディップは、着床期にみられる一時的な基礎体温の低下のことです。妊娠をすると高温期が2週間続きますが、いち早く妊娠を期待できる兆候としてインプランテーションディップの有無を確認する女性も多いでしょう。
インプランテーションディップは一部の妊婦さんにみられる現象です。基礎体温グラフを確認することは、妊活や女性の健康チェックをする上で大切ですが、インプランテーションディップの有無を妊娠の確証と捉えすぎないことが大切です。
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