2025.04.06
妊娠
「妊婦だけど昆布は食べても大丈夫?」
「昆布は栄養があるけど、ヨウ素が心配…」
このようなお悩みはありませんか?
妊婦さんが昆布を食べることは基本的に問題ありませんが、含まれるヨウ素の量には注意が必要です。実は、乾燥昆布わずか0.08gで妊婦さんの推奨摂取量に達してしまいます。
この記事では、妊婦さんが昆布を安全に摂取するための適切な量や食べ方、昆布だしや塩昆布などの製品別の注意点、そして万が一食べ過ぎた場合の対処法まで詳しく解説します。正しい知識で安心な食生活を送るために、ぜひ最後までお読みください。
妊婦さんが昆布を食べても基本的には問題ありません。適量であれば妊娠中の食事に取り入れることができます。
ただし、昆布に含まれるヨウ素の摂取量には注意が必要です。昆布は適量であれば母体と胎児の健康をサポートできる栄養豊富な食品です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2025年版)によれば、成人女性におけるヨウ素の推定平均必要量は75μg/日です。妊婦さんの場合は、さらに110μg/日を付加することをすすめられています。つまり妊婦さんは、ヨウ素を185μg/日(0.18mg/日)摂取するとよいでしょう。(1mg=1000μg)
一般的な乾燥昆布1gには約2300μgのヨウ素が含まれているため、ヨウ素摂取量を推奨範囲内に抑えるには、摂取量を0.08gしか摂取できません。そのため、昆布そのものを食べるよりも、昆布だしとして利用するのが現実的です。たとえば、4cm四方の昆布1枚で取っただし汁を何人かで分けたり、複数の料理に分けて使用するとよいでしょう。
参考:厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
参考:文部科学省:食品成分データベース|藻類/(こんぶ類)/刻み昆布
妊婦さんのヨウ素の摂取推奨量185μgに対して、実際の昆布製品からどのくらいのヨウ素を摂取することになるのか見てみましょう。
昆布のヨウ素含有量を2300μg/gとして計算します。
【妊娠中のヨウ素の摂取推奨量185μgを含む昆布の量】
非常に少ない量でも推奨量に達してしまうことがわかります。日常的な料理で使用される昆布の量と比較してみると、その差は一目瞭然です。
※研究によると、調理法にかかわらず昆布だしには昆布中のヨウ素の大部分(80%以上)が溶出します。そのため、わずか0.1gの昆布から取っただし汁150mlでも、その中に含まれるヨウ素量は妊婦の推奨摂取量(185μg)に達する可能性があります。
出典:日本微量栄養素学会|関西大学化学生命工学部栄養化学研究室
【一般的な料理に使用される昆布に含まれるヨウ素の量】
料理例 | 昆布使用量 | ヨウ素含有量 | 推奨摂取量(185μg)との比較 | 上限摂取量(2,000μg)との比較 |
おにぎりの刻み昆布 | 5g | 約11,500μg | 約62倍 | 約5.8倍 |
みそ汁の昆布だし | 100g | 約2,300μg | 約12倍 | 約1.2倍 |
煮物の昆布だし | 150g | 約3,450μg | 約19倍 | 約1.7倍 |
このように、普段何気なく食べている昆布製品や昆布だしを使った料理には、妊婦さんの推奨量を大きく超えるヨウ素が含まれています。さらに、めんつゆやインスタント食品、ドレッシングなどに含まれる昆布エキスからもヨウ素を摂取することになります。
健康な方の場合、過剰なヨウ素は尿として排出されますが、妊婦さんの場合は胎児への影響も考慮する必要があります。長期間にわたって毎日摂り過ぎることは避け、昆布製品の摂取頻度や量に注意することが大切です。
参考:厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
参考:文部科学省:食品成分データベース|藻類/(こんぶ類)/刻み昆布
ヨウ素には摂取上限量が設定されています。これは健康被害を起こさないとされる最大量のことです。
厚生労働省の定める「日本人の食事摂取基準」では、妊婦さんと授乳中の女性のヨウ素摂取上限量は2,000μg/日(2mg/日)とされています。これは一般成人女性の上限量3,000μg/日(3mg/日)よりも低く設定されています。
上限量を一時的に超えたからといって、必ずしも健康に悪影響があるわけではありません。しかし、安全性を考慮すると、この範囲内での摂取が望ましいでしょう。
妊婦さんが昆布を食べ過ぎてヨウ素の摂取上限2,000μgを超えた場合について説明します。1回の過剰摂取でただちに深刻な健康被害が起こる可能性は低いですが、継続的な過剰摂取は避けるべきです。
昆布の食べ過ぎによるヨウ素過剰摂取で起こりうる症状は以下の通りです。
これらは個人差があり、少量の過剰摂取では現れないこともあります。甲状腺疾患の既往がある方はより注意が必要です。
昆布を食べ過ぎてしまった場合の対処法は以下の通りです。
一度の過剰摂取なら体は自然に調整できますが、心配な症状がある場合は医療機関を受診してください。
妊婦が昆布を食べることには、適切な量であればさまざまなメリットがあります。一方で、摂取量や体質によってはデメリットもあるため注意が必要です。
ここでは、妊婦が昆布を食べることのメリットとデメリットについて解説します。
昆布には妊婦と胎児の健康に欠かせない豊富なミネラルが含まれています。カルシウム、鉄分、マグネシウム、亜鉛などのミネラルは、妊娠中に必要量が増加するため、昆布からの摂取は健康維持に役立ちます。
特にカルシウムは胎児の骨格形成に不可欠で、鉄分は妊婦の貧血予防に効果的です。マグネシウムは筋肉の緊張をほぐし、妊娠中の足のつりや腰痛の緩和に役立ちます。これらのミネラルが昆布には豊富に含まれているため、適量の摂取は妊婦の栄養バランスを整えるのに役立ちます。
昆布に含まれるヨウ素は、適切な量であれば胎児の発育にとって重要な栄養素です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの産生に必要で、特に胎児の脳や神経系の発達に不可欠な役割を果たします。
妊娠中のヨウ素不足は胎児の知的発達に影響を与えるリスクがあります。適切なヨウ素摂取は胎児の甲状腺機能の正常な発達をサポートし、将来的な知能発達にも関わります。ただし、あくまでも推奨量の範囲内で摂取することが重要で、過剰摂取は避けるべきです。
昆布には食物繊維が豊富に含まれており、妊娠中によく見られる便秘の解消に役立ちます。妊娠中はホルモンの変化や子宮の拡大による腸への圧迫で便秘になりやすくなります。
昆布に含まれる水溶性食物繊維のアルギン酸は、腸内で水分を吸収して膨らみ、腸の働きを活発にします。また、不溶性食物繊維も便のかさを増やし、排便を促進する効果があります。適量の昆布を摂取することで自然な形で腸内環境を整え、妊娠中の便秘対策に役立てることができます。
一部の妊婦さんにとって、昆布だしの優しい風味がつわり対策に役立つことがあります。特に固形の昆布ではなく、昆布だしのように希釈された形での摂取は、胃への負担が少なく、つわりで食欲が落ちているときでも受け入れやすい場合があります。
少量の昆布だしを使ったさっぱりとしたスープや温かいお吸い物は、胃の不快感を和らげる効果が期待できます。ただし、個人差が大きいため、体調に合わせて少量から試してみることをおすすめします。つわりの症状が強い場合は無理せず、医師に相談しましょう。
昆布の最大のデメリットは、過剰なヨウ素摂取により甲状腺機能に悪影響を及ぼす恐れがあることです。妊婦のヨウ素推奨摂取量は1日185μgですが、昆布はわずか0.1gでも約230μgのヨウ素を含んでおり、この推奨摂取量をすでに超えてしまいます。
過剰なヨウ素摂取は、妊婦自身の甲状腺機能障害を引き起こすリスクがあります。また、胎児の甲状腺機能にも影響を与え、甲状腺腫や甲状腺機能低下症を引き起こす恐れがあります。これらは胎児の発育や将来の知的発達に影響することがあるため、昆布の摂取量には特に注意が必要です。
参考:厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
参考:文部科学省:食品成分データベース|藻類/(こんぶ類)/刻み昆布
昆布には自然な塩分が含まれており、特に加工された昆布製品(塩昆布など)は塩分含有量が高くなります。妊娠中は高血圧や妊娠高血圧症候群のリスクが高まるため、塩分摂取には注意が必要です。
妊娠後期には特に体がむくみやすく、高血圧になりやすい傾向があります。過剰な昆布の摂取は塩分過多につながり、血圧上昇やむくみを悪化させる恐れがあります。妊娠高血圧症候群のリスクがある妊婦さんは、塩分を多く含む昆布製品の摂取を控えめにすることが望ましいでしょう。
昆布は食物繊維が豊富ですが、特に固形の昆布は消化に時間がかかる食品です。妊娠中はホルモンの影響で消化機能が低下しているため、固形の昆布の摂取により消化不良や胃もたれを引き起こす恐れがあります。特に胃が圧迫される妊娠後期は注意が必要です。
個人によっては、つわりがある妊娠初期でも昆布だしなど希釈された形であれば受け入れやすいこともありますが、逆に症状を悪化させる場合もあります。また、固形の昆布はヨウ素含有量が非常に高く、わずか1gでも上限摂取量の2,000μgを超えてしまうため、おしゃぶり昆布や塩昆布などの直接食べる昆布製品は避け、昆布だしなど希釈した形で摂取するのが望ましいでしょう。
甲状腺疾患を持つ妊婦さんは、昆布の摂取に特に注意が必要です。バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患がある場合、昆布に含まれるヨウ素が症状を悪化させる恐れがあります。
甲状腺機能亢進症の方は、ヨウ素の摂取により症状が悪化することがあります。一方、甲状腺機能低下症の方も、ヨウ素摂取により甲状腺ホルモンの生成がさらに抑制されることがあります。甲状腺疾患で治療中の妊婦さんは、昆布の摂取について必ず主治医に相談してください。場合によっては昆布だけでなく、ヨウ素を含む食品全般の制限が必要になることもあります。
昆布からのヨウ素摂取に加えて、ヨウ素を含むサプリメントや他の食品を摂取すると、知らず知らずのうちにヨウ素の過剰摂取になる恐れがあります。
妊婦用サプリメントや総合ビタミン剤にもヨウ素が含まれていることが多いため、昆布と併用する際は注意が必要です。また、わかめ、ひじき、海苔などの海藻類、魚介類もヨウ素を含んでいます。これらの食品を同日に摂取する場合は、総摂取量が推奨範囲を超えないよう計算する必要があります。
ヨウ素が強化された塩や加工食品にも注意が必要です。食品表示をよく確認し、日々の食事におけるヨウ素の総摂取量を把握することが大切です。不安がある場合は、栄養士や医師に相談して適切な食事計画を立てましょう。
日常生活の中で意識せずにさまざまな食品からヨウ素を摂取していることがあります。妊婦さんは特に総摂取量に注意が必要です。食品から摂取するヨウ素の量を把握するためには、購入する食品の表示を注意深く確認することをおすすめします。特に原材料名リストで「昆布エキス」「昆布末」「ヨウ素」などの表記がないか、また栄養成分表示でヨウ素含有量が記載されていないかチェックしましょう。
以下では、意外にもヨウ素を含んでいる食品を紹介します。
口腔内から吸収されるヨウ素も無視できない量になります。妊娠中は頻繁な使用を避けるべきでしょう。
めんつゆ、インスタントラーメンのスープ、ドレッシング、だしの素など多くの加工食品に昆布エキスが使用されています。「和風」と表示された調味料には特に注意が必要です。
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品にもヨウ素が含まれています。搾乳時の消毒剤などからヨウ素が混入することがあります。
海外では一般的なヨード添加塩(ヨウ素強化塩)も、気づかないうちにヨウ素を摂取してしまう食品の一つです。輸入食品を多く食べる方は特に注意してください。
鶏の飼料にヨウ素が含まれているため、卵や肉製品にもヨウ素が含まれています。
パン製造時に使われる添加物にヨウ素が含まれていることがあります。また、一部の加工穀物製品にもヨウ素が含まれていることがあります。
マルチビタミンやミネラルサプリメントにもヨウ素が含まれていることがあります。妊婦用サプリメントを摂取している場合は特に注意が必要です。
妊婦さんは昆布を適量なら摂取しても問題ありませんが、ヨウ素含有量に注意が必要です。妊婦のヨウ素推奨摂取量は1日185μgで、乾燥昆布わずか0.08gでこの量に達してしまいます。昆布はだしとして希釈して使用するのが望ましく、おしゃぶり昆布や塩昆布などの固形昆布は控えましょう。
また、加工食品や乳製品、うがい薬などからも知らず知らずにヨウ素を摂取していることを意識し、食品表示を確認して総摂取量を管理することが大切です。正しい知識を持って適切に摂取すれば、昆布の栄養素を活かしながら、妊婦さんとおなかの赤ちゃんの健康を守ることができます。
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