2022.09.30

出生前診断

NIPTで発達障害は分かる? NIPTでは分からない障害について

新型出生前診断(NIPT)は妊娠中に受ける検査で、赤ちゃんに障害があるか、検査するというイメージを持つ方が多いかと思います。ではNIPTはどのような項目を検査することができるのでしょうか?またNIPTでは分からない障害もあるのでしょうか?

今回はそんなNIPTで分かる障害、分からない障害、そして近年急速に言葉そのものや理解が広まりつつある発達障害のお話です。

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NIPTとはどんな検査?

NIPTはNoninvasive prenatal genetic testingの略で、日本語では「新型出生前診断」と呼ばれています。

現在、出生前診断は非確定検査と確定検査に分けることができます。NIPTは非確定検査に分類され、採血のみで検査を受けることができることから、流産や感染症のリスクがないというメリットがあります。

NIPTはどんな人が受ける?対象となる場合

NIPTを受ける時期ですが、DNA先端医療株式会社では、妊娠32週目までの方が検査可能です。ただし当社としては、10週0日から15週6日までの受検を推奨しています。 検査に推奨期間を設けているのは、NIPTの検査特性によるものです。

NIPTは非確定的検査に分類され、陽性の結果となった場合、確定的検査へ進んでいただくことを推奨しています。

確定的検査の1つである羊水検査を受けられる時期は、医療機関によって違いはあるものの16~18週頃までが多いです。また羊水検査は結果が出るまでに2~3週間を要することから、弊社では10週0日から15週6日までの受検を推奨しています。

NIPTの対象者ですが、これまで35歳以上の妊婦や、出生前診断で胎児の染色体異常の可能性が示唆されるなどした妊婦に限られていました。しかし現在はNIPTの検査基準に動きがあり、年齢制限を条件付きで撤廃する指針が国や学会などによる運営委員会から示されるなど、年齢や条件は今後変更される可能性があります。

弊社のNIPTは年齢制限を設けていないため、35歳未満の方でも安心して受けていただくことができます。検査は全国にあるNIPT提供医療機関で受けることができ、かかりつけの産婦人科の紹介状なども必要ございません。

NIPTで分かること

弊社のNIPT検査では、13トリソミー(パトー症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)、性染色体異常、全染色体異常、微小欠失の染色体異常検査、性別の判定などを検査することができます。

NIPTで発達障害は分かる?

NIPTは染色体異常をはじめとした検査をすることができるとお伝えしました。ではNIPTで発達障害は分かるのでしょうか? 結論から申し上げますと、現時点での技術では、NIPTで発達障害を確認するのは難しいと言われています。

発達障害とは、自閉症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれ、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しています(※①)。

発達障害の原因については現在のところ明らかになっておらず、また複数の要因が影響している可能性も指摘されています。

根本的な原因が明らかになっていないということもあり、NIPTで発達障害を確認するのは難しいと言われています。

発達障害は一般的にコミュニケーションや対人関係が苦手と言われていますが、年齢や程度、生活環境や性格などにより症状は様々であり、多様な側面があります。

現在は徐々に治療や支援が整えられつつあり、発達障害そのものの理解も急速に広まりつつあります。 ここからは発達障害の具体的な症状や治療などについて紹介します。

自閉症

自閉症スペクトラムと呼ばれることもあります。行動にこだわりがある、パターン化した行動がある、コミュニケーションの障害、言語の発達の遅れなどの特徴があります。

幼少期から個別、集団の療育を受けることで対人スキルの発達を促し、適応力を伸ばすことが期待されます。成人を対象とした対人技能訓練やデイケアなどのリハビリテーションを行っている施設もあります。

現在生活自立・就労等の相談などに応じる発達障害者支援センターが都道府県や政令指定都市ごとに設置されています。

注意欠如・多動症(ADHD)

AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorderの略で、じっとしていられない、集中できない、衝動的な行動をとるなどの症状があります。

幼少期から環境を整え、接し方を工夫することで、増やしたい行動を増やすのが基本です。

保護者をはじめとした養育者がADHDへの理解を深め、対応スキルを身につけるペアレント・トレーニングも実施されています。根本的な治療ではありませんが、薬物療法で症状が緩和する場合もあります。

学習症(学習障害)

学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)の略で、読む、書く、計算するなど特定の行為が難しいことを指します。学業や日常生活に困難が生じることがあります。

知的発達には遅れはないため、気付かれにくい障害でもあり、怠けと捉えられてしまう場合もあります。その子の症状に合わせた教育的な支援を行うことが重要です。

チック症

よくイメージされるのはまばたきをする、顔をしかめるといった運動チックですが、その他にも舌打ちや咳払いなどの音声チックの症状もあります。

運動チックと音声チックが1年以上続き、重症なチック症はトゥレット症候群(TS:Tourette’s Syndrome)と呼ばれます。

NIPTのまとめ

今回の記事では、NIPTについての具体的な説明と対象となるケースや年齢制限について、NIPTで分かることや分からないこと、発達障害との関係について紹介しました。

NIPTはNoninvasive prenatal genetic testingの略で、「新型出生前診断」と呼ばれています。NIPTは採血のみで検査を受けることができることから、流産や感染症のリスクがないというメリットがあり、受検数は増加傾向にあります。

NIPTの対象者はこれまで35歳以上の妊婦や、一部の条件を満たした妊婦に限られていました。現在はNIPTの検査基準に動きがあり、年齢制限を条件付きで撤廃する指針が運営委員会から示唆されています。

NIPTは染色体異常をはじめとした検査ができますが、一方で発達障害などを確認することは、現在においては難しいとされています。 NIPTで発達障害を確認することが難しい理由について、現在発達障害の根本的な原因が明らかになっていないことが挙げられます。

発達障害は一般的に対人関係などが苦手と言われていますが、年齢や程度、生活環境や性格などにより症状は様々であり、多様な側面があります。現在は発達障害そのものの理解も広まりつつあり、治療や支援体制も急速に整えられています。

【参考文献】
厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス – 発達障害

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平野香菜子
内科、精神科にて看護業務に従事経験を持つ看護師・保健師のライター。2020年には、食事や運動をはじめとした生活習慣改善のための保健指導などを行う企業保健師としても活動中。 略歴:2016年 美容系専門学校講師、2017年 大学教員(助手)、2018年 看護師、2020年 企業保健師。取得資格:看護師、保健師。

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