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出生前診断の倫理的問題をわかりやすく解説

更新日:2020.10.02

出生前診断

新型出生前診断の倫理的側面

出生前診断を検討する中で、「命の選別につながるのではないか」「倫理的に問題はないのか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

出生前診断の普及は、優生思想や法整備の遅れなど、さまざまな倫理的問題と密接に関わっています。正しく理解したうえで検査に臨むことが、自己決定を守ることにつながります。

この記事では、出生前診断における倫理的問題の全体像と、その問題に向き合うための遺伝カウンセリングの重要性について解説します。

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出生前診断における主な倫理的問題

新型出生前診断の倫理的側面

出生前診断には、倫理的な観点から議論されている問題がいくつかあります。

  • 命の選別と優生思想への懸念
  • インフォームドコンセントの不備
  • 偽陽性リスクと確定診断の重要性
  • 産む圧力・産まない圧力
  • 検査アクセスの格差

それぞれ説明していきます。

命の選別と優生思想への懸念

出生前診断の倫理的問題として、まず挙げられるのが「命の選別」への懸念です。

検査結果をもとに出産の可否を判断することは、「障害のある命を選別することにつながる」という議論を生んでいます。障害者団体の一部は、NIPTの普及が優生思想を助長すると訴えています。優生思想とは、特定の形質を「望ましくない」とみなし排除しようとする考え方です。

出生前診断は、あくまで情報を得るための手段です。検査結果をどう受け止め、どう行動するかが重要です。

インフォームドコンセントの不備

インフォームドコンセントとは、医療者が患者に十分な説明を行い、患者が納得したうえで検査や治療に同意することです。

出生前診断においては、このインフォームドコンセントが不十分になりやすいという問題があります。検査が手軽に受けられる一方で、検査の意味やリスクを十分に理解しないまま受けるケースも少なくありません。

検査結果が出た後に後悔しないためにも、事前の説明は非常に重要です。医療者側には、正確でわかりやすい情報を提供する責任があります。

偽陽性リスクと確定診断の重要性

NIPTで「陽性」と判定されても、必ずしも胎児に染色体異常があるわけではありません。これを「偽陽性」といいます。

陽性的中率は妊婦さんの年齢などによって異なります。そのため、NIPTの陽性結果だけで最終的な判断をすることは非常に危険です。

確定診断には、羊水検査または絨毛検査が必要です。NIPTの結果はあくまでスクリーニング(ふるい分け)であることを、正しく理解しておく必要があります。

産む圧力・産まない圧力

出生前診断の普及に伴い、検査を受けるかどうか、また結果をどう受け止めるかをめぐって、当事者が周囲との関係で葛藤を抱えるケースがあります。

「検査を受けるべき」「陽性なら産まない選択が当然」といった価値観の押しつけは、妊婦の自己決定を妨げる可能性があるとして、倫理的な観点から議論されています。

どのような選択をするかは、本人とパートナーが十分に話し合ったうえで決めるものです。

検査アクセスの格差

出生前診断は、費用や居住地域によって受けやすさに大きな差があります。NIPTの費用は医療機関によって異なり、高額になるケースも少なくありません。

また、遺伝カウンセリングを実施している医療機関は都市部に集中しており、地方在住の妊婦は十分な支援を受けにくい状況です。

検査へのアクセスが経済状況や居住地域によって左右されることは、公平性の観点から倫理的な問題といえます。

出生前診断に関連する法的・社会的課題

倫理的問題

出生前診断をめぐっては、倫理的問題と密接に関連する法的・社会的な課題も存在します。

  • 母体保護法と法整備の限界
  • 妊婦・家族間の葛藤と精神的負担

それぞれ説明していきます。

母体保護法と法整備の限界

日本では、人工妊娠中絶は母体保護法によって規定されています。認められる条件は、母体の健康上または経済上の理由に限られます。

諸外国の一部には「胎児条項」として胎児の疾患を中絶理由として認める法律がありますが、日本にはその規定がありません。そのため実務上は、重篤な障害が確認された場合でも、健康上または経済上の理由として手続きが行われているケースがあります。

また、日本には出生前診断そのものを規定する法律がありません。検査の実施基準や情報提供の質にばらつきが生じやすい状況です。法整備の遅れは、倫理的問題をより複雑にしています。

妊婦・家族間の葛藤と精神的負担

出生前診断で陽性判定が出た場合、妊婦さんには大きな精神的負担がかかります。さらに、パートナーや家族との間で意見が分かれることもあります。

「産む・産まない」という判断は、どちらが正しいとは言えない非常に重い決断です。短期間でその答えを出さなければならないことも、精神的な負担をさらに大きくします。

このような状況では、妊婦さん一人が抱え込まないことが大切です。パートナーも当事者として一緒に考え、支え合うことが求められます。

出生前診断の倫理的問題を乗り越える遺伝カウンセリングの重要性

遺伝カウンセリングの重要性

出生前診断の倫理的問題に向き合うために、遺伝カウンセリングが重要な役割を果たします。

  • 遺伝カウンセリングで受けられる支援
  • 自己決定を守るために必要なこと

それぞれ説明していきます。

遺伝カウンセリングで受けられる支援

遺伝カウンセリングとは、専門家が妊婦さんやパートナーに正確な情報を提供し、自分たちで意思決定できるよう支援する場です。

具体的には、検査結果の正しい理解を助ける説明や、確定診断へのコーディネートなどが受けられます。また、妊婦さんとパートナーが自分たちで選択できるよう、精神的な支援も行います。

カウンセリングを受けることで、正しい知識をもとに冷静に判断する時間と場所が確保されます。

自己決定を守るために必要なこと

出生前診断を受ける際には、必ず遺伝カウンセリングを実施している施設を選ぶことが重要です。

カウンセリングなしに検査を受けると、結果の意味を正しく理解しないまま判断を迫られる状況に陥る可能性があります。また、疾患に対する正しい知識がないまま決断してしまう危険性もあります。

検査後も継続して支援を受けられる環境を整えておくことが、妊婦さん自身の自己決定を守ることにつながります。

まとめ|出生前診断の倫理的問題と正しく向き合うために

出生前診断は、胎児の状態を早期に把握できる有用な検査です。一方で、命の選別や法整備の遅れなど、さまざまな倫理的問題をはらんでいます。

大切なのは、検査を受ける前に十分な情報を得ることです。正しい知識がないまま結果だけを受け取っても、適切な判断はできません。

どのような選択をするかは、妊婦さんとパートナーが十分に話し合い、自分たちで決めることが重要です。その判断を支えるのが、遺伝カウンセリングです。

出生前診断を検討している方は、カウンセリング体制が整った施設で検査を受けることをおすすめします。

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ABOUT ME

大河友美
国立大学医学部保健学看護科卒業後、大学病院で6年、看護師として勤務。その後、国立大学医学部保健学大学院へ進学し修士号取得。現在は、子育てをしながら医療ライター・監修者として活動中。学歴:平成21年 国立大学医学部保健学看護科 卒業、平成28年 国立大学医学部保健学大学院 修了。取得資格:看護師、保健師、修士(保健学)。

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