2023.05.22
妊娠
妊娠中の女性の中には胎盤の存在について知っている人もいるでしょう。「赤ちゃんのベッド」である胎盤ですが、具体的にどのような役割があるのか知らない人も多いのではないでしょうか?
この記事では胎盤の機能や病気について解説しているので、胎盤について詳しく知りたい人は参考にしてみてください。
胎盤とは妊娠が成立した後に、子宮で作られる女性特有の器官です。円盤の形をしていますが、お腹の赤ちゃんとともに成長するため、妊娠週数が進むにつれて大きくなっていきます。
出産を迎える頃には、直径20~30cm、厚さ2~3㎝、重さは500g程度になります。胎盤の内部には多くの絨毛という細かい突起状の器官があり、お腹の赤ちゃんに必要な機能を担っています。
受精卵が着床すると、絨毛が発生し胎盤を形成します。胎盤ができる位置は個受精卵が着床した場所によって決まりますが、多くの場合、卵管の入り口からも近い子宮の上側にできます。
胎盤の形成は妊娠7週頃から始まり、妊娠15週頃に完成します。この頃の胎盤は100g程度ですが、赤ちゃんの成長に必要なさまざまな役割を担うようになります。
妊娠中、胎盤はお腹の赤ちゃんにとって重要な働きをします。妊娠における胎盤の機能は以下になります。
お腹の赤ちゃんに必要な酸素や栄養素は、胎盤を介して運ばれます。赤ちゃんは自分で呼吸したり食事をしたりすることができないため、胎盤がその役割を担います。
胎盤では赤ちゃんから排出された二酸化炭素や老廃物を受け取ります。お腹の赤ちゃんは、胎盤に腎臓や排泄器を代行してもらっています。
胎盤には赤ちゃんに有害物質が届かないように、フィルターのような働きがあります。ただ、妊娠初期は胎盤の機能が完成していないので、十分なフィルター効果を得ることはできません。
また、分子量が小さいニコチンやアルコールなどの物質は、胎盤を通じて赤ちゃんに届くので注意が必要です。
胎盤からはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。hCGは、妊娠の維持に必要な女性ホルモンである「プロゲステロン(黄体ホルモン)」分泌を保つ働きがあります。
胎盤は赤ちゃんの命綱のような存在であるため、妊娠中に異常をきたすと、ママや赤ちゃんの健康に大きな影響を与えます。妊娠中に起こりうる胎盤の異常に関連した病気は以下になります。
胎盤の機能が低下している状態をいいます。胎盤の機能を測る方法はなく、お腹の赤ちゃんが妊娠週数と比べて小さい場合に疑われます。
また、正常な妊娠は妊娠37週から41週までになりますが、妊娠42週を過ぎると、胎盤の機能が低下していきます。そのため妊娠42週近くになっても、お産の兆候がみられない場合は、陣痛促進剤などを使って、計画分娩を行います。
胎盤が子宮口を覆っている状態をいいます。通常、胎盤は子宮の上側にできますが、過去の手術で子宮に傷跡がある人や、子宮内膜が萎縮していたり、子宮の形に変形があったりする人にみられやすいです。
妊婦さんが前置胎盤の場合は、帝王切開によるお産が行われます。前置胎盤は子宮の筋肉の薄い部分にあるため、お産で子宮の収縮が始まると、胎盤が剥がれて大量出血のリスクがあるためです。
前置胎盤は診断に時間がかかることがあるので、妊娠中にお腹が張ったり、出血がみられたりする場合は、かかりつけ医に相談するようにしましょう。
胎盤が子宮の下の部分にある状態で、子宮口が塞がれていない状態をいいます。胎盤が子宮口からどのくらいの近さにあるかによって、対処方法が異なります。
子宮口から2㎝以内の距離にある場合は、前置胎盤と同じ対応が取られます。経腟分娩が可能な低置胎盤のケースでも、お産時に大量の出血が起これば、緊急で帝王切開へ変更することも多いです。
出産になる前に、子宮から胎盤が剥がれてしまう状態をいいます。お産は赤ちゃんが先に出て、次に胎盤が出るのが基本ですが、胎盤が先に出ると、赤ちゃんに必要な酸素や栄養が届かず、命に危険が及びます。
妊娠高血圧症候群や、喫煙、お腹への衝撃などは、常位胎盤早期剥離のリスクを高めます。位胎盤早期剥離が起こると、激しいお腹の痛みや性器出血により、ショック状態になることもあります。
少量の出血やお腹の張りが続いたり、赤ちゃんの動きが少なくなったと感じたりする場合は、かかりつけの病院に受診しましょう。症状が軽いからといって、そのままにすると胎盤の剥離が進む危険もあるので注意が必要です。
胎盤が子宮に癒着して剥がれなくなる状態です。子宮と胎盤の間には脱落膜(子宮内膜が変化したもの)があり、お産の際には脱落膜が割けることで、胎盤が子宮から剥がれます。
脱落膜に欠けた部分があると、胎盤の基である絨毛が子宮の筋層まで侵入するため、癒着胎盤を引き起こします。癒着胎盤のリスクを上げるものに帝王切開があります。
張り付いている胎盤を無理やり剥がそうとすると大量出血の危険があり、ママの命に危険が及ぶため、慎重に行わなくてはなりません。そのため、帝王切開後に子宮そのものを摘出することもあります。
近年、海外の有名人を中心に胎盤食が注目されており、日本でも一部の施設で産後に胎盤を提供しているところもみられます。胎盤は血液が豊富な器官であるため産後の滋養に良いとされることや、一部の動物でも赤ちゃんを出産後に胎盤を食べる行為であることが理由と考えられています。
そもそも産後に胎盤を食べる動物は限られており、敵を呼び寄せる臭いの元を処理するために行われています。そのため、胎盤を食べる草原の動物に多く、大型動物や水中動物で胎盤食を行う動物はいません。
胎盤食に関する医学的な根拠はなく、胎盤は赤ちゃんへ有害物質が届くのを防ぐためにフィルターの役目もあるので、健康に悪い化学物質が残留している可能性もあります。また、きちんと処理しないと感染症の原因になる恐れもありえるでしょう。
出産時の出血が多くなる妊婦さんもいますが、現代は医療が発達しているので輸血も可能ですし、栄養豊富な食事を取ることもできます。胎盤食は自然で体に良いイメージが先行しがちですが、注意点も十分理解した上で、自己責任で行う必要があります。
胎盤は妊娠中に作られる女性特有の器官で、お腹の赤ちゃんのさまざまな器官を代替する働きがあり、命綱ともいえる存在です。胎盤の異常や病気により、赤ちゃんの成長や出産時の対応に影響を与えたりすることもあります。
お腹の張りや性器出血など気になる症状が続く場合は、早めにかかりつけの病院を受診することが大切です。妊娠高血圧症候群は特定の胎盤の異常のリスクにもなりうるので、妊娠中の健康管理にも気を遣いましょう。
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