2021.10.08
その他
皆さんは「バニシングツイン」という言葉をご存知でしょうか。 おそらく大多数の人が、聞いたことがない、初めて聞いたという言葉ではないでしょうか。 双子を妊娠している方は、バニシングツインについて耳にしたり、主治医から説明があったかもしれません。今回はそんな双子の妊娠で起こりうる、バニシングツインについてのお話です。
現段階で判明している、バニシングツインについての原因、症状、影響や治療方法、また新型出生前診断(NIPT)についてご説明しますので、 参考になりましたら幸いです。
はじめにバニシングツインについてご説明します。バニシングツイン(Vanishing twin)とは、双子の妊娠で起こり得るもので、双子の赤ちゃんのうち、片一方の成長が妊娠中におなかの中で止まってしまい、おなかの中からいなくなってしまうように見える現象のことです。実際にはいなくなったのではなく、子宮に吸収されることで消失したように見えています。
双子(ツイン)の片方が亡くなり、消失した(バニシング)ように見えることから「バニシングツイン」と呼ばれています。
双子の片方の赤ちゃんが、おなかの中から消失、お母さんの体に吸収されてしまうバニシングツインですが、胎児染色体異常などとの関連も指摘されていますが、現在のところ、はっきりとした原因はわかっていないのが現状です。
近年バニシングツインは増加傾向にあります。バニシングツインは、超音波検査で双子の片方が消失していることを確認します。超音波技術の向上により、以前よりバニシングツインを発見できる確率が多くなったことが、増加の理由の一つとして考えられています。
また近年、女性の社会進出が進んだことから晩婚化が進み、高齢出産などの理由から不妊治療は決して珍しいものではなくなっています。 不妊治療では、双子をはじめとした多胎を妊娠する確率が、一般的な自然妊娠よりも高く、双子が生まれる割合が年々高くなったことに比例し、バニシングツインが増加傾向になったという背景があります。
双子の分類には一卵性双生児と、二卵性双生児があります。
一つの受精卵が二つに分かれたものから、二人になる場合のこと。
二人は胎盤を共有(一絨毛膜)しており、へその緒が絡むなどの危険性もあります。
同性で血液型は同じです。
二つの卵子にそれぞれ精子が受精した場合のこと。
胎盤も別々です。
血液型や性別が異なることもあります。
バニシングツインの確率について、「一卵性双生児」か「二卵性双生児」かによっても異なり、一卵性双生児の方がバニシングツインの確率が高いと言われています。
一卵性双生児の方がバニシングツインの確率が高い理由として、一つの受精卵から二人に分かれた一卵性双生児の場合、二人は胎盤を共有しており、胎盤から運ばれる栄養を2人で分け合っています。胎盤からの栄養供給が片方に偏った結果、片方の胎児が成長しきれず亡くなってしまうことがあり、バニシングツインの確率が高くなります。
また、一卵性双生児はへその緒が絡むなどの危険性があります。へその緒が絡まって栄養が送れなくなることで胎児が亡くなることもあり、二卵性双生児と比べてバニシングツインになりやすいと言われています。
妊娠中に片方の赤ちゃんが亡くなり、お母さんの体に吸収、赤ちゃんが消失するバニシングツインですが、バニシングツインそのものを止める方法は、残念ながら現在はありません。授かった命がなくなってしまうという、精神的にも辛いバニシングツインですが、はっきりとした原因が分かっていないことからも、止める方法や治療方法がないという現状があります。よって、お母さん側に責任はありません。あまりご自身を責めすぎないようにしましょう。赤ちゃんがなくなってしまった悲しみという心のケアに対しては、必要時精神的な治療を受けることもできます。
バニシングツインの症状について、出血といった流産の症状を伴うケースもありますが、 自覚症状が乏しい、全く無い場合がほとんどです。
バニシングツインはおおよそ6~8週目に起こることが多いです。亡くなった赤ちゃんはお母さんの体に吸収、消失するため、この時期のバニシングツインについては、お母さんと残されたもうひとりの赤ちゃんへの体への影響はないと言われています。
8週以降で片方が亡くなった場合、胎児が成長していることから、お母さんの体に吸収されない可能性もあります。一般的に初期時に亡くなってしまった胎児は、自然に排出されるのを待つため、特に治療は行いません。しかし胎児が成長し、自然排出が難しい場合には、子宮内容除去術を行うこともありますが、子宮内膜を傷つけることもあり、行わないことも多いようです。
またごく初期の場合、すなわち超音波検査の前に片方の赤ちゃんが消失した場合、お母さん、医者の両方がバニシングツインに気が付かないこともあります。
バニシングツインは新型出生前診断(NIPT)でも可能でしょうか?
結論から申しますと、バニシングツインであっても新型出生前診断(NIPT)は可能です。
出生前診断とは、妊娠中に胎児の遺伝病や染色体異常、先天性代謝異常等を診断するもので、新型出生前診断(NIPT)は妊娠10週から可能となります。検査方法は採血だけで、流産・死産リスクがないというメリットがあります。
新型出生前診断(NIPT)のメカニズムは、妊婦の血液中にある胎児DNAから、染色体の数的異常を検出する検査となっています。バニシングツインの場合、片方の胎児がお母さんの体に吸収され、消失していることから、偽陽性が出る可能性もあります。何も聞かずに検査をしてしまうと間違った判断をすることになりますので、通常の双子の検査とは、違う説明を聞いて理解することが必要です。
弊社の新型出生前診断(NIPT)を予約される場合、受付時にバニシングツインの場合の説明をしっかりしていますのでお気軽にお聞きください。
今回の記事では、妊娠中に双子の片方の赤ちゃんの成長が止まってしまい、お母さんの体の中に吸収されてしまう、バニシングツインについてご紹介しました。
せっかく宿った大切な命がなくなってしまうというのは、非常に辛く悲しいことであり、 自分を責めてしまうお母さんもいらっしゃるかもしれません。しかしながら、原因やメカニズムもまだまだ解明されていないことが多く、お母さんのせいでは決してありません。またもう片方の赤ちゃんは、日々おなかの中で成長しています。
そもそも双子の妊娠では、大切な命を二つ授かっています。妊娠出産に関して、一人の妊娠よりもリスクが高いこともあり、残された赤ちゃんの成長に関しても、まだまだ油断はできず、出産まで適切な管理が必要です。残された赤ちゃんの成長のためにも、自分の体と気持ちを大切にし、心穏やかに過ごすことができれば幸いです。
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