赤ちゃんの睡眠パターンが突然変化し、夜中に何度も起きるようになることは多くの親が経験する悩みの種です。この記事では、赤ちゃんの睡眠退行の発生時期や原因、対処法を解説します。記事を読めば、睡眠退行への理解が深まり、適切な対応が可能です。
睡眠退行は一時的な現象で、適切な対応で乗り越えられます。赤ちゃんの発達段階に応じた睡眠パターンの変化を理解し、忍耐強く対応しましょう。
睡眠退行の基礎知識

睡眠退行の基礎知識を、以下の項目にわけて解説します。
- 睡眠退行とは赤ちゃんの睡眠リズムが不規則になること
- 睡眠退行の症状
睡眠退行とは赤ちゃんの睡眠リズムが不規則になること
睡眠退行は安定していた睡眠パターンが突然乱れ、夜中に頻繁に目覚めたり、寝かしつけが難しくなったりする現象です。新しい運動能力や認知能力を獲得する時期に重なる場合が多く、成長の証でもあります。親にとってはストレスになりますが、赤ちゃんが成長する段階の正常な現象だと理解しましょう。
睡眠退行の症状
睡眠退行の症状は、赤ちゃんの睡眠パターンや行動に現れるのが特徴です。主な症状として、夜間の頻繁な目覚めや寝つきの悪さが挙げられます。睡眠時間の全体的な減少や、昼夜逆転のような不規則な睡眠パターンも見られます。成長や発達に伴う一時的な変化であり、自然に改善するのが一般的です。
症状が長期間続く場合や赤ちゃんの様子が気になる場合は、小児科医に相談しましょう。
睡眠退行の発生時期

睡眠退行が起こりやすい時期は以下のとおりです。
- 生後4か月頃
- 生後8~10か月頃
- 1歳半~2歳頃
睡眠退行の発生には、赤ちゃんの成長や環境の変化が関係します。複数回経験する赤ちゃんもいますが、成長に伴い発生頻度は減少します。
生後4か月頃
生後4か月頃は、浅い睡眠と深い睡眠のサイクルが形成され始めるのが特徴です。夜間の睡眠時間が長くなり、昼寝の回数が減少し始めます。寝返りや首すわりなどの運動発達が進むほか、視覚や聴覚の発達により外部刺激への反応も増加する傾向です。分離不安の兆候が現れ始める時期でもあります。
睡眠パターンの変化により、夜泣きや頻繁な目覚めが増加します。授乳回数や授乳時間に変化が生じるのも特徴です。赤ちゃんの睡眠時間の個人差も顕著になります。赤ちゃんが新しい睡眠リズムに慣れるまで、忍耐強く対応しましょう。赤ちゃんの成長に合わせて、適切な睡眠環境を整えてください。
生後8~10か月頃

生後8~10か月頃の睡眠退行は、赤ちゃんの身体的・精神的な変化と密接に関連しているのが特徴です。ハイハイや立ち上がりなど運動機能の発達で昼間の活動量が増え、睡眠パターンに変化が生じます。昼寝の回数が減少し、夜間の睡眠が不安定になる傾向です。分離不安のピークを迎えるのも特徴です。
親離れへの不安が強まり、夜泣きや夜中の目覚めが増加します。歯が生え始める時期と重なるため、歯茎の痛みや不快感も睡眠を妨げる要因です。赤ちゃんの自我も芽生え始め、周囲への好奇心や探索行動が活発になります。新しい環境や刺激に敏感になるため、就寝時の環境変化にも反応します。
就寝前のルーティンの確立が重要です。毎日決まった時間に、絵本の読み聞かせやお風呂、マッサージなど、赤ちゃんがリラックスできる一連の活動を行いましょう。赤ちゃんが安心して眠れる環境を整えるのも大切です。寝室を適度な暗さに保ち、静かで落ち着いた空間を作りましょう。
日中の活動と休息のバランスにも気を配ってください。適度に体を動かしてエネルギーを発散させると、夜間の睡眠の質が向上します。
1歳半~2歳頃
1歳半から2歳頃の睡眠退行は、言語能力の発達や自我の芽生えに伴って起こり、夜泣きや寝つきの悪さが見られます。主な特徴は以下のとおりです。
- 親との分離不安が強くなる
- 昼寝の時間や回数が変化する
- 活動量が増え就寝時間が遅くなる
夜中に目覚めて遊びたがったり、寝室から出たがったりするのも特徴です。就寝時のこだわりや儀式が現れ、ぬいぐるみを抱いて寝たがったり、決まった順番で絵本を読んで欲しがったりします。夢や想像力が発達するため、夜驚症(やきょうしょう)が現れる可能性もあります。
トイレトレーニングを始める時期と重なることも、睡眠リズムが乱れる要因です。引っ越しや保育園入園など、外部環境の変化も睡眠に影響を与えます。
睡眠退行の原因

睡眠退行の原因は以下のとおりです。
- 睡眠パターンの変化
- 分離不安
- 歯の生え始め
睡眠パターンの変化
睡眠サイクルの90分周期への移行で、赤ちゃんの睡眠は大人に近い形になります。変化に慣れるまでは、夜間の目覚めが増えたり、寝つきが悪くなったりします。レム睡眠とノンレム睡眠のバランスの変化も特徴です。レム睡眠は脳の発達に重要な役割を果たし、赤ちゃんの成長にとって必要なプロセスです。
昼寝の回数や長さの減少は、夜間睡眠の長時間化に関連します。睡眠の浅い時間帯が増えるため、夜中に目覚めやすくなる傾向です。睡眠時間全体の減少や睡眠パターンの個人差の顕著化、環境音や光への反応の変化も見られます。寝つきの悪化や早朝覚醒の増加など、一時的に睡眠の質が低下する場合もあります。
分離不安

分離不安は、赤ちゃんが親から離れることに不安を感じる状態です。生後4か月頃から始まり、8~10か月頃にピークを迎えるのが一般的です。親の姿が見えないと不安になり、夜中に目覚めて泣きます。分離不安は赤ちゃんの認知発達の一過程であり、正常な現象です。
効果的な対処法は以下のとおりです。
- 一貫した就寝ルーティンを作る
- 親子の距離を徐々に広げる練習を行う
- 安心感を与える環境作りを徹底する
分離不安は赤ちゃんが「親が視界から消えても存在し続ける」といった概念(対象永続性)を獲得する過程と関連します。赤ちゃんの自立心の芽生えの表れでもあります。ただし、過度の分離不安は睡眠の質を低下させ、昼間の分離不安は夜間の睡眠に影響を与えるため注意が必要です。
歯の生え始め
生後8~10か月頃から歯が生え始めます。歯が生え始めると現れる症状は以下のとおりです。
- 歯茎の腫れや痛み
- 夜泣きや睡眠の乱れ
- 唾液の分泌増加
- 指しゃぶりや物を噛む行動の増加
- 食欲の低下
- 機嫌の悪さ
- 発熱
症状の程度には個人差があります。通常2~3日で落ち着きますが、20本の乳歯が生えるまで繰り返し起こる可能性があります。不快感や痛みにより、夜中に目覚めたり、寝つきが悪くなったりしがちです。
睡眠退行の影響

以下の睡眠退行の影響について解説します。
- 赤ちゃんへの影響
- 親への影響
赤ちゃんへの影響
睡眠退行は赤ちゃんにさまざまな影響を与える症状です。最も顕著な影響は、昼夜の区別がつきにくくなり、生活リズムが乱れることです。夜泣きが増加し、睡眠の質が低下する可能性があります。睡眠不足によって普段よりもぐずりやすくなったり、泣きやすくなったりする傾向です。食欲にムラが出る可能性もあります。
急に昼寝をしなくなったり昼寝の時間が短くなったり、反対に長くなったりする場合もあります。夜間の起床回数が増えるのも特徴的です。寝つき自体が悪くなり、ベッドに入ってから眠りにつくまで時間がかかります。
親への影響
赤ちゃんの睡眠退行で、親の生活や心身の状態が大きく変化します。主な影響は以下のとおりです。
- 睡眠不足による疲労や体力低下
- ストレスや不安の増加
- 育児への自信喪失や罪悪感
精神的な負担は、イライラや短気につながります。夫婦関係への悪影響、仕事や日常生活への支障が出る場合もあります。自分の時間が減少し、睡眠の質も低下しがちです。育児バーンアウトのリスクも高まります。親自身の健康と幸せを守るためにも、適切なサポートを受けましょう。
睡眠退行への対処法

睡眠退行への対処法は以下のとおりです。
- 睡眠環境を整える
- 生活リズムを見直す
- 愛情を持って接する
睡眠環境を整える
快適な睡眠環境を整えると、赤ちゃんの良質な睡眠を促せます。部屋を暗くすると、赤ちゃんの体内時計を整え、睡眠を促せます。カーテンやブラインドを使って外からの光を遮断するのも効果的です。適度な室温と静かな環境は、赤ちゃんがリラックスして眠るために重要です。エアコンや扇風機で室温を調節しましょう。
騒音が気になる場合は、ホワイトノイズの活用がおすすめです。快適なベッドや寝具は赤ちゃんの体を支え、安眠をサポートします。赤ちゃん用の専用寝具を使用し、安全な睡眠空間を確保しましょう。必要に応じて加湿器や除湿器を使用し、寝室の湿度を50~60%に保ってください。
空気清浄機を使えば、さらに快適な睡眠環境を作れます。
生活リズムを見直す

規則正しい生活リズムを確立すると、赤ちゃんの睡眠パターンが安定し、夜間の睡眠の質が向上します。生活リズムを整える方法は以下のとおりです。
- 就寝時間と起床時間を一定にする
- 昼寝の時間を適切に調整する
- 夕方以降は刺激が少ない環境作りを行う
- 夜間の授乳は必要最小限にする
- 日中の活動量を増やす
就寝前のルーティンの確立も効果的です。入浴や絵本の読み聞かせ、優しく抱っこしながら子守唄を歌うなどの流れを毎日繰り返しましょう。赤ちゃんの体と心を睡眠モードに切り替えやすくなります。食事時間を一定にすると、生活リズムの安定につながります。
朝・昼・晩の食事時間を決めて、できるだけ規則正しく食事を取るよう心がけてください。光環境の調整も重要になります。日中は明るい光を浴び、夜は暗い環境で過ごすと赤ちゃんの体内時計を整えることが可能です。家族全員が規則正しい生活を心がけると、効果的に睡眠退行に対処できます。
愛情を持って接する
愛情を持って接すると赤ちゃんに安心感を与え、不安を和らげられます。効果的なアプローチは以下のとおりです。
- 優しく抱きしめる
- 安心感を与える言葉をかける
- スキンシップをする
- 一緒に寝る時間を作る
- 寝かしつけ時に歌を歌う
忍耐強く対応し、赤ちゃんのペースに合わせると信頼関係を築けます。一貫した態度で接することも重要です。赤ちゃんの気持ちを言葉で表現すると、コミュニケーションを深められます。
睡眠退行の持続期間と変化

睡眠退行の持続期間と変化について解説します。
睡眠退行の持続期間
睡眠退行の持続期間は、2~6週間程度が一般的です。個人差が大きく、数日で終わる場合もあれば、3か月ほど続く場合もあります。具体的な持続期間は、赤ちゃんの年齢や発達段階、親の対応方法などの要因で変わります。適切な対応をすれば、睡眠退行の期間の短縮が可能です。
成長とともに自然に改善する場合が多いため、焦らず対応しましょう。一度改善しても再び睡眠リズムが乱れる赤ちゃんもいますが、落ち着いて対応してください。
睡眠退行後の変化
睡眠退行後、赤ちゃんは夜間の睡眠時間が長くなり、昼寝の回数が減少します。現れる変化は以下のとおりです。
- 自力で寝つける
- 夜泣きが減少する
- 睡眠の質が向上する
- 起床時間が規則的になる
寝かしつけにかかる時間が短縮され、睡眠中の動きも少なくなります。赤ちゃんの睡眠が安定すると親の睡眠時間も改善されるため、家族の生活の質を向上させることが可能です。
睡眠退行に関するよくある質問

睡眠退行に関するよくある以下の質問に回答します。
- 睡眠退行と病気の見分け方は?
- 他の赤ちゃんと比べて睡眠退行が長いときの対処法は?
赤ちゃんの睡眠退行に悩んでいる方は参考にしてください。
睡眠退行と病気の見分け方は?
睡眠退行と病気を見分けるには、睡眠パターンの変化が一時的か持続的かを観察しましょう。睡眠退行は一時的な現象であり、数日から数週間で改善されるのが特徴です。発熱や食欲不振など、他の症状がないか確認し、昼間の機嫌や活動性に変化がないか注意します。
夜泣きの頻度や激しさが異常に増加していないか注意し、体重の増加や発達に問題がないか定期的に確認してください。睡眠の質が極端に悪化したり、日中の眠気が著しく増加したりする場合は、病気の可能性が考えられます。呼吸の様子や皮膚の状態、色に変化がないかも確認しましょう。
不安になる場合や症状が長引く場合は、小児科医への相談がおすすめです。専門家のアドバイスを受けると適切な対応ができます。
他の赤ちゃんと比べて睡眠退行が長いときの対処法は?
他の赤ちゃんと比べて睡眠退行が長く続く場合でも、焦らずに対応しましょう。赤ちゃんの発達ペースは個人差が大きいので、比較しないことが大切です。睡眠退行が長引く場合は、睡眠環境や生活リズムを見直しましょう。部屋の温度や明るさを調整し、快適な睡眠環境作りを心がけましょう。
昼夜のメリハリをつけ、規則正しい生活を送れるよう工夫してください。以下の一貫したルーティンを維持すると、赤ちゃんに安心感を与えられます。
- お風呂に入る
- 絵本の読み聞かせ
- 軽いマッサージ
改善が見られない場合は、小児科医や睡眠コンサルタントに相談しましょう。個々の赤ちゃんに合った対処法を見つけられます。親自身の休息も大切にしてください。周囲のサポートを積極的に求め、心身ともにリフレッシュすると赤ちゃんに適切な対応ができます。
まとめ

睡眠退行は赤ちゃんの成長過程で起こる一時的な現象です。主に生後4か月頃や8~10か月頃、1歳半~2歳頃に発生します。睡眠パターンの変化や分離不安、歯の生え始めなどが原因です。
赤ちゃんと親の両方に影響を与えますが、以下の対処法で改善できます。
- 睡眠環境を整備する
- 生活リズムを見直す
- 愛情を持って接する
長期化や症状が気になる場合は専門家に相談しましょう。睡眠退行を理解して適切に対応すると、赤ちゃんの健やかな成長をサポートできます。