2022.10.03

妊娠

羊水検査とは?検査方法やリスク、メリット・デメリットを解説

妊娠中に受ける出生前診断の1つに羊水検査があります。羊水検査にはメリットとデメリットがあり、また検査を受けることそのものにリスクがあることを理解した上で、受けるかどうかを決定します。今回はそんな羊水検査についてのお話です。

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羊水検査とは?

羊水検査は妊娠中に受ける出生前診断の1つで、出生前に胎児の染色体や遺伝子を調べることができます。

羊水検査を含む出生前診断には様々な種類があり、非確定的検査と確定的検査に分けることができます。

非確定的検査

ダウン症などの染色体異常の可能性を調べる検査です。母体や胎児への負担が少なく流産のリスクがないが、確定検査ではありません。超音波検査、母体血清マーカー検査、コンバインド検査、新型出生前診断(NIPT)などがあります。

確定的検査

疾患を確実に調べる検査です。お腹に針を刺すため、流産や死産のリスクがある。羊水検査の他に絨毛検査などがある。

羊水検査を受けることのできる期間は妊娠中期の16~18週で、染色体の分析方法は以下の4つがあります。

①染色体分染法(G分染法)

スライド上に標本を作製した後、ギムザ染色を行うことで判明する縞模様のバンドを評価します。染色体全体の数や構造の変化をおおまかに判定することができます(※②)。

②FISH法

染色体を蛍光プローブで発色させ、特定領域の微細な欠失等を判定します。染色体構造異常の確認も行うことができます(※②)。

③マイクロアレイ法

胎児の染色体を細かく分け、蛍光物質をつける方法です。G分染法よりも細かく胎児の染色体を調べることができます。

④qf-PCR法

特定の染色体を増やし、染色体異常を調べる方法です。ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)、ターナー症候群(モノソミーX)、トリプルエックス症候群(トリソミーX)、クラインフェルター症候群などを調べることができます。

羊水検査の検査方法

羊水検査は羊水穿刺(羊水に針を刺すこと)し、羊水を採取します。

①まずは超音波(エコー)で胎児の位置や胎盤の位置、胎児の発育や羊水量を確認します。

②妊婦のお腹に細い針を刺します。病院によっては局所麻酔を使用する場合もあります。痛みの感じ方は人それぞれですが、採血程度の痛み、もしくは採血よりも痛くなかったと感じる方がほとんどのようです。

③10〜20ml程度の羊水を採取します。穿刺時間は10~20秒程度です。通常羊水穿刺は1回ですが、きちんと採取出来なかった場合は2〜3回行う場合もあります。採取後は穿刺部分に絆創膏をはります。

④30分程度安静を保った後、超音波(エコー)で胎児に異常がないかを確認します。検査全体の所要時間は1時間程度です。

羊水検査後の流れ

羊水には胎児の細胞が含まれていますが、少量です。正確に検査を行うため、羊水検査後は胎児の細胞を増やす目的で、2週間程度培養します。培養で胎児の細胞が増えないこともあり、検査可能な週数であれば再度検査を行うこともあります。培養後に胎児の染色体の数や形状などを調べます。

培養期間も含めると、羊水検査から結果が出るまでには2〜4週間程度かかります。

羊水検査のリスク

羊水検査は羊水採取のために針を刺すため、リスクがあります。

羊水検査による流産のリスクは約0.1~0.3%(※①)と言われています。また検査は慎重に行うものの、羊水穿刺の針により胎児が傷つく可能性もわずかながら考えられます。

その他起こりうるリスクとして、感染のリスクや子宮収縮、検査後に出血や下腹部痛が生じることもあります。

羊水検査のメリットとデメリット

羊水検査のメリット

羊水検査のメリットを紹介します。

①胎児の状態を知ることができる

高齢出産の場合や両親のどちらかが染色体異常保因者である場合、これまで染色体異常児の出産経験がある場合や非確定的検査で陽性となった場合などに、羊水検査を受けることで胎児の染色体異常や遺伝性疾患の有無、遺伝子変異などを調べることができます。

調べることのできる内容は以下の通りです。

  • 染色体異常:ダウン症(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)、ターナー症候群、クラインフェルター症候群など
  • 染色体の構造異常:転座(染色体の一部が正常の位置ではない場所へ移動している状態)、部分欠失(染色体の一部が欠けている)など

②胎児が陰性以外の結果であった場合、出産までに情報収集や準備を行うことができる

羊水検査で染色体異常など、陰性以外の結果が出た場合、残念ながら染色体異常そのものへの治療を行うことはできません。

しかしながら、心臓疾患などの合併症やリスクに備えて、病院側のフォロー体制を整える、出産や今後の育児に向けて情報収集を行うなど、赤ちゃんの出産に備えて、妊娠中から準備を行うことができます。

羊水検査のデメリット

①検査にリスクがある

確率は低いものの、羊水検査には流産や早産、胎児が傷つく可能性があります。

②羊水検査では分からない障害もある

羊水検査は診断の精度が高く、確定的検査に分類されます。しかしながら羊水検査で検査することができるのは胎児の染色体異常であるため、全ての障害の有無を調べることはできません。羊水検査で異常がなくても、何らかの障害をもって生まれる可能性は十分にあります。

また羊水検査は羊水を2週間程度培養しますが、上手く培養ができない、細胞数が少なすぎるなどの理由で検査結果そのものが出ない場合もあります。

③費用は全額自己負担である

羊水検査は全額自己負担で、保険適用外となります。また医療費控除、高額療養費制度の対象外でもあります。医療機関によって検査費用は異なるものの、10万円〜20万円程度が必要です。

④羊水検査を受ける事のできる医療機関が限られている

羊水検査を受けることのできる医療機関は限られています。妊婦健診で通院中の医療機関で検査を行うことができない場合は、別の医療機関を受診、検査を受ける必要があります。

羊水検査に限らず、検査を受けることにはメリットとデメリットが存在します。ご自身や家族がメリットとデメリットの両方を把握した上で、検査を受ける、受けないことを納得して決定することが大切です。

羊水検査のまとめ

今回の記事では、羊水検査について、検査方法やリスク、羊水検査を受けるメリットやデメリットを紹介しました。

羊水検査は妊娠中に受けることのできる出生前診断の1つで、お腹に針を刺し(羊水穿刺)、羊水に含まれる胎児の細胞から、染色体異常などを調べる検査です。お腹に針を刺すことから、流産や早産、また胎児を傷つけるリスクなどが存在します。

羊水検査で調べることのできる疾患は染色体異常などです。また費用は全額自己負担のため、検査に伴うメリットやデメリット、リスクを把握した上で、検査を受けるか決定する必要があります。

【参考文献】
①Practice Bulletin No. 162: Prenatal Diagnostic Testing for Genetic Disorders. Obstet Gynecol. 2016 May;127(5):e108-e122. doi: 10.1097/AOG.0000000000001405.
埼玉県立小児医療センター – 染色体検査(G分染法/FISH法)

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平野香菜子
内科、精神科にて看護業務に従事経験を持つ看護師・保健師のライター。2020年には、食事や運動をはじめとした生活習慣改善のための保健指導などを行う企業保健師としても活動中。 略歴:2016年 美容系専門学校講師、2017年 大学教員(助手)、2018年 看護師、2020年 企業保健師。取得資格:看護師、保健師。

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