- 赤ちゃんが急に母乳を飲んでくれなくなった
- 母乳育児を続けたいのに、どうしたらいいかわからない
- 母乳拒否は自分のせいだと悩んでしまう
子育てを始めたばかりのお母さんで、赤ちゃんの母乳拒否に悩んでしまう人は数多くいます。赤ちゃんの母乳拒否は、お母さんだけが原因ではありません。赤ちゃんの成長や授乳の環境も母乳拒否を起こす要因です。この記事では、赤ちゃんの母乳拒否の原因や具体的な対処法を解説します。
記事を読めば母乳拒否の原因がわかり、赤ちゃんに母乳拒否されても落ち着いて対処しやすくなります。赤ちゃんの母乳拒否は珍しいことではありません。一人で抱え込まず、専門家の力も借りて母乳拒否を乗り切りましょう。
母乳拒否とは赤ちゃんが母乳を飲むことを拒否する状態
母乳拒否に関する以下の2点を解説します。
- 母乳拒否の定義
- 母乳拒否の発生時期は生後2〜3ヵ月頃
母乳拒否の定義
母乳拒否とは、赤ちゃんがお母さんのおっぱいから直接母乳を飲むことを嫌がって拒否する状態です。母乳拒否には医学的な定義はありません。お母さんが「赤ちゃんがおっぱいを嫌がっているな」と感じる、赤ちゃんの授乳に対する拒否的な態度全般を母乳拒否と呼びます。
赤ちゃんが母乳拒否の際に示す行動は下記のとおりです。
- 顔をそむける
- 泣き出す
- 吸ってくれない
赤ちゃんが授乳時に顔をそむけたり、泣き出したりする反応は、一時的な場合もあればしばらく続くこともあります。母乳拒否は赤ちゃんがすべての授乳で拒否する場合や、特定の時間や場所などで嫌がる場合も見られます。
母乳拒否の発生時期は生後2〜3ヵ月頃
母乳拒否は生後2~3ヵ月頃によく見られる現象です。生後2~3ヵ月頃の赤ちゃんは心身ともに目覚ましい成長を遂げ、授乳への向き合い方にも変化が現れます。以下の赤ちゃんの成長や変化が、母乳拒否と関連している可能性があります。
- 満腹を感じる力が発達し始めて自分で飲む量を調整している
- 外の世界への興味が湧いてきて授乳に集中しにくくなっている
- 目や耳が発達して周りの音や光などの刺激に敏感になっている
生後2〜3ヵ月頃は理由なくぐずりやすい時期と重なる場合もあります。赤ちゃんの発達段階に見られる変化が、一時的に母乳を嫌がるように見えている可能性があります。
赤ちゃんが母乳拒否になる3つの原因
赤ちゃんが母乳拒否になる原因は以下の3つです。
- 【乳頭混乱】哺乳瓶に慣れて母乳をうまく飲めなくなる場合
- 母乳の味や匂いの変化
- 赤ちゃんの体調不良
【乳頭混乱】哺乳瓶に慣れて母乳をうまく飲めなくなる場合
赤ちゃんが哺乳瓶に慣れると、お母さんの母乳を上手に飲めなくなる「乳頭混乱」が起こる場合があります。乳頭混乱は赤ちゃんの母乳拒否の原因の一つです。哺乳瓶の乳首とお母さんのおっぱいでは、赤ちゃんが吸うときの口の形や力の入れ方が異なります。多くの哺乳瓶は簡単にミルクが出てくる構造になっています。
赤ちゃんが哺乳瓶の授乳に慣れてしまうと、母乳を飲むために必要な飲み方ができなくなり、母乳がうまく出てきません。赤ちゃんは飲みにくさを感じると母乳を飲むことを嫌がります。哺乳瓶に慣れると赤ちゃんが乳頭混乱を起こし、母乳をうまく飲めなくなることがあります。
母乳の味や匂いの変化
母乳の味や匂いの変化は、赤ちゃんが母乳拒否になる原因の一つです。以下の原因により、母乳の味や匂いが変化します。
- 栄養の偏った食事
- 生理の再開や妊娠によるホルモンの影響
- 乳腺炎になっているとき
- 服薬しているとき
- 搾乳した母乳の時間経過による酸化や脂肪分の変化による影響
- 酒やタバコの影響
- 激しい運動後
お母さんがスパイスやニンニク、ニラなどの香味野菜を食べたときは、母乳の味が変化する場合があるため注意が必要です。乳腺炎になるとおっぱいが炎症を起こし、母乳がしょっぱく感じられる場合があります。激しい運動をした後は乳酸が増加するため、母乳の味や匂いが変わる恐れがあります。
母乳の味や風味の変化に敏感な赤ちゃんは、いつもと違う母乳の味や匂いに戸惑う場合があるため注意が必要です。
赤ちゃんの体調不良
赤ちゃんの体調不良により、母乳拒否を引き起こす場合があります。赤ちゃんが母乳を飲まなくなる原因は以下のとおりです。
- 風邪の症状がある場合
- 口内炎
- 中耳炎
- 歯ぐずり
- ゲップ困難
- 腹部不快感
- 便秘による腹部膨満
体調が悪い赤ちゃんは食欲がなく、母乳を飲む元気がありません。赤ちゃんの体調が優れない場合やいつもと様子が違うときは、赤ちゃんをよく観察して原因を探しましょう。
母乳拒否されたときに有効な対策8選
母乳拒否されたときに有効な対策は下記のとおりです。
- おっぱいに正しく吸い付くラッチオンを意識する
- 授乳姿勢を見直す
- 授乳環境を整える
- 乳頭マッサージを行う
- 栄養バランスの整った食生活を意識する
- 知識と経験が豊富な助産師に相談する
- 病気が心配なら小児科を受診する
- 母乳育児専門の母乳外来を利用する
おっぱいに正しく吸い付くラッチオンを意識する
母乳拒否が起きたときは、赤ちゃんがおっぱいに正しく吸い付く「ラッチオン」を意識しましょう。正しいラッチオンができていないと、赤ちゃんは母乳を上手に飲めず、お母さんもおっぱいや乳首に痛みを感じる場合があります。赤ちゃんがお母さんの乳輪部まで深く口に含んでいる状態が正しいラッチオンの状態です。
赤ちゃんの口を大きく開けさせて乳輪まで深くくわえさせます。赤ちゃんの下の唇が、アヒルの口のようになっているか確かめましょう。赤ちゃんのあごがお母さんのおっぱいにくっつき、鼻はおっぱいから少し離れて呼吸ができる状態かも確認してください。
赤ちゃんの体全体をお母さんの方へ向け、お腹と胸がしっかり密着するように抱っこしましょう。授乳を始めるときは乳首で赤ちゃんの上唇を優しく触り、口を開けるサポートをします。授乳中にお母さんが痛みを感じる場合は、吸い付き方が浅い可能性があります。
規則正しくおっぱいを吸って母乳を飲む音が聞こえると、赤ちゃんがリラックスできている証拠です。正しいラッチオンを意識した授乳は、母乳拒否の改善だけでなく、お母さんの快適な授乳にもつながります。
授乳姿勢を見直す
赤ちゃんが母乳を飲みやすくするため、授乳姿勢を見直しましょう。赤ちゃんがリラックスして母乳を飲めるように、横抱きやフットボール抱きなどの姿勢を試してください。フットボール抱きは赤ちゃんの体を脇の下で抱えながら授乳する方法です。赤ちゃんの足はお母さんの背中側になるように抱っこします。
寝ながらの姿勢が好きな赤ちゃんもいるため、添い乳を行うと赤ちゃんが母乳を飲む場合があります。授乳の際は授乳クッションやタオルなどを使用して、お母さんと赤ちゃんが楽な姿勢を探しましょう。
授乳環境を整える
周囲の刺激に敏感な赤ちゃんは落ち着かない環境では授乳に集中できないため、授乳環境を整えましょう。普段と違う環境で授乳すると赤ちゃんが母乳を拒否する場合があります。授乳場所は一定にし、静かで安心できる空間をつくります。
部屋の温度は20~25度、湿度は50%前後になるよう心がけましょう。夜間授乳の際は部屋を明るくしすぎないよう注意が必要です。赤ちゃんが授乳に集中しやすい環境を意識することで赤ちゃんはより穏やかに、しっかりと母乳を飲めます。
乳頭マッサージを行う
乳頭マッサージを行うことで赤ちゃんが母乳を飲みやすくなったり、母乳の出が良くなったりします。乳腺炎といったおっぱいのトラブル予防にも役立ちます。乳頭マッサージを行う前は手を洗い、爪は短く切っておきましょう。マッサージオイルや保湿クリームを乳首と乳輪に塗ると、マッサージがやりやすくなります。
乳頭マッサージの際は乳首の根元部分を親指と人差し指、中指で挟みます。赤ちゃんがおっぱいを吸うように、やさしく数秒圧迫してください。指の腹を使って、乳輪部を外側から内側へつまむようにマッサージする方法もあります。
乳頭マッサージはやや痛さを感じる程度の心地よい強さで行いましょう。1回数分程度のマッサージで十分です。お風呂上がりなど、体が温まっているときに乳頭マッサージを行うとより効果を感じやすくなります。
栄養バランスの整った食生活を意識する
お母さんの食事内容により母乳の味が変化することがあるため、栄養バランスの整った食事を意識しましょう。お母さんが食べたものは母乳を通して赤ちゃんに届き、赤ちゃんの成長を支えます。バランスの取れた食事は良質な母乳を作るだけでなく、お母さんの体力回復にもつながります。
食事では主食や主菜、副菜をそろえ、いろいろな種類の食品から栄養を摂るよう心がけてください。鉄分やカルシウム、葉酸などの栄養素を積極的に摂りましょう。授乳中は水分が不足しがちなため、こまめに水分を補給することも重要です。
ニンニクや唐辛子など刺激の強い香辛料やカフェイン、アルコールは母乳の味に影響を与える恐れがあります。
知識と経験が豊富な助産師に相談する
母乳拒否で困ったときは知識と経験が豊富な助産師に相談しましょう。助産師はお母さんと赤ちゃん一人ひとりの状態をよく見て、的確なアドバイスや温かいケアをしてくれます。授乳時の正しい姿勢や赤ちゃんの吸い付き方の確認やアドバイスもしてくれます。
母乳拒否だけでなく、助産師にはお母さんの乳房のトラブル(乳腺炎や白斑など)に関する相談も可能です。助産師は育児中の不安な気持ちやストレスを和らげるための心のサポートもしてくれます。助産師は母乳育児で直面する疑問や悩みに親身に対応し、解決の糸口を一緒に探してくれる心強い存在です。
助産師を中心として、母乳に関するさまざまな相談に対応してくれる母乳外来がある病院もあります。母乳外来はかかりつけの産院や地域の助産院、クリニックなどで開設されており、事前に予約して利用します。
病気が心配なら小児科を受診する
赤ちゃんの様子が普段と違い、病気が原因で母乳拒否を起こしている可能性がある場合は、小児科を受診しましょう。医師に診てもらうことで母乳拒否の原因が病気によるものかを確認でき、適切な対応を取れます。赤ちゃんに以下の症状が見られる場合は、小児科医に相談しましょう。
- ぐったりしている
- 体重が増えない(または減っている)
- おしっこの回数や量が極端に少ない(色が濃いなど脱水のサインが見られる)
- 顔色が悪く元気がない
- 呼吸が苦しそう
受診の際はいつから母乳拒否が始まったか、他に症状はあるかなどをメモしておくと医師に正確な情報を伝えられます。
母乳拒否に関するよくある質問
母乳拒否に関するよくある質問は下記のとおりです。
- 母乳拒否のときはミルクをあげてもいい?
- 医師や助産師への相談のタイミングは?
母乳拒否のときはミルクをあげてもいい?
母乳拒否が起きた際、一時的にミルクをあげても問題ありません。赤ちゃんが哺乳瓶での哺乳に慣れて落ち着くと、再びおっぱいを吸うきっかけになる場合があります。哺乳瓶を使う場合は、おっぱいに近い感覚で吸える乳首の形や素材を選びましょう。母乳拒否が続く場合はミルクとの混合授乳への切り替えも検討してください。
赤ちゃんが母乳を十分に飲めないときにミルクで栄養を補うことで、健やかな成長をサポートできます。混合授乳の際は母乳を与えてから足りないと感じる分をミルクで補います。赤ちゃんの体重が順調に増えているか、機嫌は良いかなどを見ながらミルクの量を加減しましょう。
母乳の分泌を促すために直接おっぱいを吸わせる時間を作ったり、搾乳をしたりするのも有効です。母乳での育児を続けたい場合は哺乳瓶の使用はあくまで一時的なものと考え、できるだけ早くおっぱいに戻せるように試みます。頻繁に哺乳瓶を使うと、母乳の作られる量が減少する可能性もあるため注意が必要です。
医師や助産師への相談のタイミングは?
さまざまな方法を試しても母乳拒否が改善しないときや、赤ちゃんの体重が増えないときは、医師や助産師に相談しましょう。おっぱいに痛みやしこりがある場合や、自身が精神的につらいと感じる場合も専門家に相談する目安です。赤ちゃんの母乳拒否以外にも、気になる症状がある場合は医師や助産師に相談しましょう。
搾乳した母乳やミルクの与え方など、今後の授乳のやり方について相談したい場合も専門家が力になってくれます。一人で抱え込まず、気になることがあれば早めに専門家を頼りましょう。
母乳拒否はよくあること。困ったら専門家へ相談しましょう
赤ちゃんが母乳を飲まない母乳拒否は、多くのお母さんが経験する悩みです。母乳拒否は珍しいことではないため、自分を責めたり一人で抱え込んだりする必要はありません。授乳の姿勢を変えたり、食事の栄養バランスを整えたりすると、授乳拒否が改善する可能性があります。
授乳する際は、赤ちゃんが落ち着ける環境を整えましょう。困ったときや不安なときは、助産師や医師の力を借りることも検討してください。