2025.11.06
妊娠

妊婦さんのなかには、「大きなお腹で寝苦しい」「体勢が定まらない」と悩む人もいるのではないでしょうか。妊娠中にリラックスできる体勢に、「シムス位」があります。シムス位はどのようにすればよいのか気になる妊婦さんもいるでしょう。
この記事では、シムス位の特徴や体勢の取り方、シムス位になるときのポイントについて解説します。妊娠中に心地よい体勢を取りたい妊婦さんは参考にしてみてください。

シムス位とは、体の左側を下にして横向きになる姿勢です。すべての妊婦さんに適した体勢ですが、とくにお腹が大きくなった妊娠後期の妊婦さんが楽に取れる体勢として優れています。
シムス位を取るうえで、「体の左右のどちら側が下になっても同じでは…?」と考える妊婦さんもいるでしょう。シムス位で体の左側を下にするのには、きちんとした理由があります。
お腹の内部には背骨が通っています。背骨の右側には、下半身の血液を心臓に送る「下大静脈」があります。シムス位で体の左側を下にするのは、この下大静脈の圧迫を防ぐためです。
とくに妊娠後期は、大きくなった子宮により下大静脈が圧迫されやすい状態です。これにより血液の流れが滞り、下半身がむくみやすくなります。シムス位を取ることで、下大静脈が圧迫されにくくなり、血液の流れを良くすることができます。

妊婦さんがシムス位を取るメリットはいくつかあります。
睡眠時に妊婦さんがシムス位を取ると、低血圧を予防することができます。ふだん仰向けで寝る人は多いですが、妊娠後期の妊婦さんが仰向け(仰臥位)で寝ると、下大静脈が圧迫されて低血圧を起こすことがあります。
シムス位により、妊婦さんの血流が良好に保つことは、赤ちゃんの成長や発育に必要な酸素や栄養をスムーズに届けることにもつながります。
シムス位は、妊婦さんがお腹の重さを感じづらい体勢です。これはシムス位により、敷布団にお腹を預けるような体勢になるためです。
また妊娠後期は、腰痛を抱える妊婦さんも多くなります。大きくなったお腹を支えるために、体のバランスの取り方が変化し、反り腰気味になるためです。シムス位により横向きになることは、腰痛の軽減にも効果があります。
シムス位の体勢は胃酸が逆流しにくく、妊娠中の胃の不快感を防ぐことができます。胃は体の左側にあり、シムス位で体の左側を下にすることで、胃酸が逆流しにくくなるためです。
とくに妊娠後期になり子宮が大きくなると、出産の直前までは胃が持ち上げられて、胃の不快感を抱く妊婦さんは多くいます。出産間近になると、赤ちゃんが下に降りてくるため、胃の不快感は改善していきます。
妊娠後期に胃酸の逆流やげっぷがみられる場合は、休息時や睡眠時にシムス位をとるとよいでしょう。
妊婦さんがシムス位を取ると、リラックスすることができます。妊娠後期の妊婦さんは、大きくなったお腹に負担を感じて、眠りが浅くなる人もいますが、シムス位を取ることで、お腹に感じる負担を和らげることができます。
夜間リラックスできないと感じる妊婦さんは、シムス位を取ってみるのもおすすめです。

シムス位により、妊婦さんのお腹がつぶれることはありません。一方で、長時間シムス位を取ることは、デメリットもあります。シムス位を取るデメリットは次のとおりです。
ふだんから睡眠時に仰向けや足を伸ばした状態で寝ていることが多い妊婦さんは、シムス位の体勢により違和感を抱くことがあります。
シムス位を楽に感じるのは、妊婦さんのお腹が大きくなる妊娠後期です。妊娠初期から妊娠中期にかけて、今までの睡眠の姿勢で問題ない場合は、無理にシムス位を取る必要はありません。妊娠中は自分が心地良いと感じる体勢を取りましょう。
シムス位の状態で眠りについても、寝返りにより体勢が崩れてしまうことがあります。一般に、夜間の睡眠中に平均して20回ほどの寝返りをうつものです。
シムス位は、単なる横向きの体勢ではなく、体の左側が下にならなければなりません。そのため、睡眠中に寝返りをうてば、同じ体勢を維持しにくくなる可能性があります。
とくにシムス位からの寝返りで仰向けになることもあるでしょう。お腹が大きい妊婦さんの場合、下大静脈が圧迫されることで、寝苦しさを感じる原因になります。
シムス位はお腹の大きくなった妊婦さんがリラックスできる体勢です。しかし妊婦さんの体型や寝具の状態によっては、シムス位を取ることで、肩や腰に痛みを生じることがあります。
とくに妊娠後期はお腹の大きさによって、体のバランスが変化しやすくなるものです。シムス位を取るときは、抱き枕やクッションを使って体をサポートするようにしましょう。
「お腹の重苦しさから解放されるために、シムス位を試してみたい」と考える妊婦さんもいるでしょう。ここでは、実際に妊婦さんがシムス位を取るための手順についてみていきます。
妊婦さんがシムス位の体勢を取るときは、両足を重ねずに、上側にくる右足を曲げることでお腹への負担感を和らげることができます。なお、厳密なシムス位では、左手を背側におきますが、手の置き位置が定まらない、手の置き位置に違和感を抱く場合は、前方に左手を出す形でも問題ありません。

妊婦さんがシムス位の体勢で休むときに、あると便利なのが抱き枕です。シムス位を取るのにおすすめなのが、バナナ型の長い抱き枕です。ゆるやかなカーブがある抱き枕は、妊婦さんの体にフィットしやすく、体勢が安定します。
自宅に抱き枕がない場合は、頭に置く枕とは別に、局所を支えるための枕やクッションをはさむとよいでしょう。シムス位の体勢を取るときは、両足の間にひとつ、右腕の下側にもうひとつの枕またはクッションを入れ込みます。
シムス位は体の左側を下にして横向きになる体勢です。シムス位はどの妊娠期からも始められますが、お腹が大きくなる妊娠後期の妊婦さんが取る体勢として適しています。
お腹の大きい妊婦さんがシムス位をとると、下大静脈が圧迫されにくくなり、お腹の張りや圧迫感も和らぎます。
「お腹が気になって眠れない」「夜間、寝苦しい」といった悩みのある妊婦さんは、ぜひシムス位を試してみてください。
参考:
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