2022.12.21
出産
出産時に無痛分娩を考えている方は年々増加傾向にあると言われています。「無痛」と言われているけど本当に痛くないの?無痛分娩のリスクはある?メリットやデメリットが知りたいという意見にお答えして、今回は無痛分娩の流れやメリット、デメリットを紹介します。
分娩方法にはいくつか種類があり、赤ちゃんやお母さんの状態をふまえながら、希望に合わせて分娩方法を選択することができます。現在一般的に広く行われている、分娩方法を紹介します。
陣痛が自然にくるのを待ってから出産する方法で、いわゆる一般的に世間でイメージされている分娩方法になります。日本で最も多い分娩方法は自然分娩です。医療的処置などを全く行わないという訳ではなく、お母さんや赤ちゃん、分娩の進行状態によっては、点滴や会陰切開などを行います。
腹部を切開し、子宮から赤ちゃんを取り出す方法を帝王切開といいます。基本的に帝王切開は自然分娩ではリスクがある場合に行い、予定帝王切開と緊急帝王切開に分けられます。
予定帝王切開とは、その名の通りあらかじめ帝王切開を行う日時を決めて行うもので、逆子(骨盤位)、双子などの多胎妊娠、前置胎盤などの場合に選択されます。
緊急帝王切開はお産が長引く遷延分娩や常位胎盤早期剥離、胎児機能不全などの場合に選択されることが多く、自然分娩時にお母さんの身体や赤ちゃんに異変やリスクがある場合などに行われる場合が多いです。
麻酔を使用し出産の痛みを和らげる、減らしながら出産する方法を無痛分娩といいます。一般的には「硬膜外鎮痛」といって背中にチューブを入れ、麻酔を注入します。
無痛分娩の流れや具体的な方法を紹介します。
日本で行われている無痛分娩の多くが「硬膜外鎮痛」で無痛分娩を行っています。硬膜外鎮痛は背中にチューブを入れ、麻酔薬を注入します。
無痛分娩で使用する麻酔は全身麻酔ではないため、お母さんの意識もあり、上半身の感覚などは通常のままです。麻酔が効いているのは下半身で、陣痛に伴う痛みを和らげる、減らすことができます。
いつ麻酔を使用するかは、病院や主治医の方針、お母さんの状態によって異なりますが、一般的には陣痛が始まり、子宮口が開いてから開始します。
病院によっては、出産する日を決め、麻酔を使用してから意図的に陣痛をおこす計画無痛分娩もあります。
一般的な無痛分娩の流れとしては、陣痛がきて、子宮口が3〜5cm程度開いたら背中に麻酔を入れるための管を刺し、管から麻酔薬を注入します。麻酔薬の副作用などがないかなど、お母さんと赤ちゃんの状態を確認、異常がないかテストをします。麻酔薬が入ってから5〜30分ほど経過すると徐々に麻酔が効きはじめ、陣痛の痛みを和らげることができます。
無痛分娩の場合、分娩後にすぐに麻酔が切れるわけではなく、麻酔が切れるまでには数時間程度かかります(病院によって異なります)。
無痛分娩が多い国はアメリカやフランス、カナダやイギリス、スウェーデン、フィンランド、ベルギーなどで、これらの国は半数以上が無痛分娩での出産を行っています。
日本でも無痛分娩を選択する人は徐々に増加傾向にありますが、日本産婦人科医会の2016年の調査によると、硬膜外無痛分娩は6.1%程度(※①)と、まだまだマイナーな分娩方法となっています。
無痛分娩という名前の通り、無痛分娩は出産の痛みを和らげる、減らすことができるというメリットがあります。痛みを取ること以外にも、無痛分娩には様々なメリットがあります。
無痛分娩の最大のメリットは痛みを和らげる、減らすことができることです。麻酔がしっかりと効き、うまく分娩の痛みを和らげることができると、精神的、身体的にもリラックスしてお産に臨むことができます。
また出産時には会陰切開などの処置が必要な場合があります。これらの処置の場合も、硬膜外麻酔を使用している場合は切開、縫合などの痛みがないというメリットがあります。
出産は初産婦で14〜16時間、経産婦で6〜8時間程度が平均と言われており、陣痛が開始してから長時間痛みを伴うことは、体力の消費に繋がります。また出産がゴールではなく、出産してから始まる子育てには、体力が必要とされます。
無痛分娩では痛みを和らげることができるため、体力の消耗を防ぐことに繋がります。産後の回復が早いと感じる方も多く、子育てにも精力的に取り組むことができると言われています(体力の消耗や産後の回復には個人差があります)。
分娩の痛みにより一般的に血圧は上昇しますが、無痛分娩は血圧の上昇を防ぐことができるというメリットがあります。分娩の痛みを和らげたいと思うかたはもちろん、妊娠高血圧症候群のような血圧に異常がある場合、無痛分娩を選択すること血圧上昇を防ぐことができる場合があります。
無痛分娩は一般的に硬膜外麻酔を使用しています。分娩中の異常や赤ちゃん、お母さんにリスクがあった場合、緊急帝王切開に移行する必要がある場合がありますが、無痛分娩は既に麻酔を使用しているため、帝王切開にスムーズに移行することができます。
無痛分娩に限らずですが、医療行為にはメリットだけでなく、必ず気をつけておきたいデメリットも存在します。
麻酔を使用することで陣痛が弱くなり(微弱陣痛)、分娩時間が長くなる場合があります。また無痛分娩で痛みを緩和したことにより、いきむのが難しい、いきみ方が分からないという方もいらっしゃるようです。
陣痛が弱くなったことに対して、追加で陣痛促進剤の使用が必要な場合や、赤ちゃんを引っ張ってとりあげる吸引娩出術や鉗子分娩が必要になる場合もあります。分娩がすすまない場合は、緊急帝王切開に移行することもあります。
痛みの感じ方は人それぞれです。無痛分娩で全く痛みを感じなかったという方もいれば、思ったよりも痛かったという方までそれぞれです。一般的には痛みは感じるが、我慢できないほど痛くはなかったと感じるかたが多いようです。
副作用としては、血圧低下や吐き気、嘔吐、発熱、頭痛、麻酔薬を使用したことにより身体のかゆみがある場合があります。
また極めてまれではありますが、無痛分娩のリスクとして感染や血腫などもあります。
無痛分娩にかかる費用は健康保険が適用されず、全額自費となります。金額は病院によって異なりますが、自然分娩の費用に加えて、プラスで数万円〜十数万円程度の手出しが必要です。
今回の記事では、無痛分娩をはじめとした分娩方法の種類、無痛分娩の流れや具体的な方法、 メリットやデメリットをお伝えしました。
出産方法の1つに無痛分娩があり、現在多く行われているのが硬膜外麻酔を使用した方法です。背中から麻酔を入れ、分娩の痛みを和らげます。
妊婦の約半数以上が無痛分娩を選択している国もありますが、日本での硬膜外無痛分娩は6.1%程度となっています。
無痛分娩のメリットは多くあり、痛みを和らげることで身体的、精神的にリラックスすることができるため、体力の消耗を防ぐことができます。また血圧上昇を防ぐことができるため、妊娠高血圧症候群などの場合にも適応される場合があります。また分娩時に異常がある場合は、すみやかに緊急帝王切開に移行できるというメリットもあります。
ただし無痛分娩にはデメリットもあります。分娩時間が長くなる場合や、様々な副作用が発生するなどです。また全く痛くなかったという方から、痛みを強く感じる方まで、痛みの感じ方には個人差があります。
【引用・参考文献】
①公益社団法人日本産婦人科医会 医療安全部会 – 分娩に関する調査
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