2022.12.21
出産
「会陰切開」という言葉をご存知でしょうか?聞き慣れない言葉ではありますが、出産予定の方は本やインターネットなどで知ったり、病院で説明を受けた方もいらっしゃるかもしれません。
会陰切開って痛くない?なるべく切りたくないと思う方もいらっしゃるかと思います。今回は会陰切開について、必要性や傷や痛み、回復までの期間などを紹介します。
会陰は「えいん」と読み、膣と肛門の間、その周辺部分を指します。会陰は個人差があるものの約3~5cmで、伸縮性があるため出産時に伸び縮みすることができます。
会陰切開の前には局所麻酔をし、麻酔の効きを確認してから2~3cm程度、器具を使用して切開します。ただし緊急性の高い場合には麻酔をせずに行うこともあります。分娩の痛さに気を取られ、会陰切開の痛みはさほど感じなかったという方も多いようです。
会陰切開後、分娩が終わったら切開した部分の縫合を行います。抜糸は出産から5日程度で行う場合が多いですが、最近では溶ける糸を使用しているため抜糸が必要ない病院も増えてきています。
会陰切開は手術ではなく、出産に必要な一連の介助措置とみなされます。その場合保険適用外となります。
ただし、吸引・鉗子分娩の場合や医療に必要な措置と判断され会陰切開を行った場合は、医療措置となり保険適用となるケースもあります。
「なるべく会陰切開したくない」「会陰を切開する、切るなんて痛そう」と思う方も多いかと思いますが、会陰切開が必要とされるのには理由があります。会陰切開の必要性と会陰切開を行うケースを紹介します。
会陰切開の最も大きな目的は、胎児の命を守るためと、会陰損傷を軽減するためです。吸引・鉗子分娩など、機械を使用して引っ張って出す分娩が必要な場合に、会陰の伸びが悪いと会陰部の大きな裂傷に繋がります。
会陰切開を行うケースを紹介します。
会陰の伸びが悪い、硬い場合に会陰切開を行わずに出産すると、裂傷が肛門にまで達することもあります。特に初産の場合は会陰の伸びは悪い場合が多いです。重度の会陰裂傷を予防するために行います。
吸引・鉗子分娩とは機械などを使用して、赤ちゃんを引っ張りだす方法です。お産の進みが悪い場合や、赤ちゃんにリスクがある、異常がある場合に行います。
吸引・鉗子分娩の場合、会陰の伸びを待っている時間がなく、すみやかに処置を行う必要があります。会陰が伸びていないのに無理やり処置をすすめると重度の会陰裂傷につながるため、会陰切開を行います。
約3~5cmの会陰には多くのひだがあり、しっかりとひだが伸びると約15〜25cm程度に伸びることができると言われています。
しかし会陰が伸び切っていても、赤ちゃんの頭が通るのはギリギリです。赤ちゃんの頭囲の平均は男児で32.0cm、女児で33.0cmと言われています。赤ちゃんに異常やリスクがあり、赤ちゃんの頭部の圧迫を減らす必要がある場合、会陰切開を行うことがあります。
特に初産の場合、会陰切開をルーティーンに行うことも多いようですが、必ずしも会陰切開をルーティーンに行う必要はありません(※①)。
会陰切開を行う必要がない妊婦さんに共通しているのは、会陰の伸びが良かった人です。また分娩時にできる限りリラックスし、正しくいきむことができた、いきみが上手な場合は会陰の伸びが良かったという方もいます。
分娩の際、助産師が「まだいきまないで」と言っている際にいきんでしまうと、会陰の伸びが悪い状態でいきむ場合が多く、会陰裂傷となります。
会陰裂傷は、会陰の伸びが悪い場合に発生します。分娩時は赤ちゃんの頭がゆっくり通ると、会陰がゆっくりと伸びるため会陰裂傷がない、または小さくなる場合があります。
ただし個人差があり、一般的に初産婦よりも経産婦のほうが会陰の伸びが良いと言われています。また赤ちゃんの頭の大きさにも関係があります。
また会陰の伸びを良くする方法の1つに、会陰マッサージがあります。
①お風呂上がりなど、手と会陰が清潔な状態でオイルを取り、会陰をUの字に優しくなぞる
②会陰の周りをくるくると円を描くようにマッサージする
妊娠34週以降に5〜10分程度、毎日実施するよう指導される病院が多い(※②)ようです。ただし赤ちゃんやお母さんの状態よっては、行わないほうがいい時期もありますので、必ず病院の指示に従って、ご自身に無理のない範囲で行いましょう。
なお会陰マッサージを行っても、会陰の伸びや分娩の状況によっては会陰切開を行う場合は十分に考えられます。会陰切開を行わない場合は重度裂傷のリスクがあり、会陰切開を行ったほうが良い場合もありますので、会陰マッサージを行ったからといって、必ず会陰切開をしなくて良いという訳ではありません。
会陰を切るって、どれくらい痛いの?トイレやお風呂はいつから行ける?など傷や痛み、回復までの期間を質問される方は多くいらっしゃいます。会陰切開の傷や痛み、回復までの期間について紹介します。
会陰切開は分娩状況やお母さん、赤ちゃんの状態、会陰の伸びをみて2~3cm程度切開する場合が多いです。一般的には局所麻酔をしますが、切開時は分娩の痛みに気を取られ、痛みを感じなかったという方も多いようです。
会陰の痛さは退院までにはピークが過ぎる方が多く、産後1ヶ月も経過すると痛みがなくなる方が多いです。
産後1ヶ月を過ぎても痛みや違和感がある、腫れなどの症状がある場合は病院に相談しましょう。
会陰切開後、トイレでいきむと傷が開くことを心配する方もいらっしゃいますが、会陰は伸縮性があるため便でいきんでも問題はありません。
便意を我慢すると、便秘や産後の回復にも影響しますので、便意は我慢しないようにしましょう。便秘ぎみでいきむと痛みが強い、などの場合は医師に相談しましょう。
痛みが強くて座ることが難しい場合は、ドーナツクッションのようなクッションを利用すると痛みが軽減される場合があります。
また会陰切開後は傷口から感染のリスクがあります。分娩後は悪露などで会陰部の清潔を保つことが難しいです。パッドなどはこまめに交換し、会陰部の清潔を保つようにしましょう。
今回の記事では、会陰切開について、具体的な流れや会陰切開の必要性、会陰切開を行うケースや行わないケース、傷の回復についてお伝えしました。
会陰は「えいん」と読み、膣と肛門の間、その周辺部分を指します。約3~5cm程度ですが、伸縮性があるため出産時には約15〜25cm程度に伸びることができると言われています。
会陰切開が必要な理由は重度の会陰裂傷を防ぐためです。会陰の伸びが悪い場合や、分娩の進行状況に応じて行います。会陰切開の痛みは個人差があるものの、分娩の痛みに気を取られていた方が多く、産後1ヶ月程度で痛みや違和感はほぼなくなります。
【引用・参考文献】
①公益社団法人日本産婦人科医会 – 【第4回】11.会陰切開と満足度
②日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 34, No. 1, 114-125, 2020
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