2022.12.21
妊娠
妊娠検査薬で陽性だったのに生理が来る場合があります。今回は妊娠検査薬の仕組みや正しく使う方法、また妊娠検査薬で陽性が出た場合に考えられるケースや、その逆の陰性で妊娠しているケースを紹介します。
妊娠検査薬は平成3年から一般用検査薬として認められるようになりました(※①)。
妊娠検査薬は尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)濃度により、妊娠しているか、妊娠していないかの判定を行います。
通常妊娠すると、女性の体は妊娠を継続し、赤ちゃんを育てるために様々な体の変化があります。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とは受精卵が着床してから、妊娠40週頃まで分泌され続けます。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は妊娠4週目頃から尿中に出てきます。妊娠検査薬の精度は、正しく使用すると99%程度と言われています。
高い精度の妊娠検査薬ですが、陽性なのに生理がくるケースもあります。妊娠検査薬が陽性なのに生理がくる場合の、考えられる理由を紹介します。
妊娠検査薬が陽性なのに生理がくる場合の、最も可能性が考えられる原因は化学流産です。
化学流産とは、生化学的妊娠・化学妊娠と言われることもあり、妊娠検査薬でhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が検出され陽性反応が出たにもかかわらず、妊娠が終了することを言います。
この場合、産婦人科の超音波検査で胎囊(赤ちゃんを包む袋のようなもの)を確認することはできず、生理が開始します。
化学流産は決して珍しい現象ではなく、何の異常もない若く健康なカップルでも30~40%に起こると言われています。近年妊娠検査薬の尿中hCGの測定感度が上昇していることや、不妊治療の普及に伴い、妊娠早期のhCG 検出機会が年々増加傾向にあります。これまでは妊娠と確認されていなかった妊娠超初期を確認できることが多くなったこともあり、化学流産は多くなったとも言われています(※②)。
化学流産は原因が不明なため、現在のところ治療法も確立していません。
異所性妊娠とは全妊娠の1〜2%にみられる妊娠で、流産との区別がつきづらいと言われています。
異所性妊娠とは異常な場所に受精卵が着床してしまう状態で、着床部位によって卵管妊娠、間質部妊娠、頸管妊娠、帝王切開瘢痕部妊娠、卵巣妊娠、腹腔妊娠などに分類されます。また着床部位不明の着床部位不明異所性妊娠などもあります(※③)。
妊娠検査薬で確認できるのは尿中hCGのみであり、異所性妊娠かどうかは検査できません。
異所性妊娠の場合、妊娠しているため月経はきませんが、症状に下腹部と性器出血があります。この性器出血を生理と間違え、妊娠検査薬で陽性なのに生理が来た?と思うことがあります。
不妊治療を受けている場合、hCG注射の影響などで陽性反応が出る場合があります。hCG注射はある一定期間体内に残るため、妊娠検査薬が体内に残ったhCGに反応してしまいます。
尿中に糖やタンパク、血液などが混じっている場合、妊娠検査薬が正しく反応せず、検査結果で陽性を示す場合があります。
hCGの分泌が増える疾患として、卵巣がんや子宮頸がんなどがあります。hCG産生腫瘍の場合、尿中のhCGに妊娠検査薬が反応し、陽性を示すことがあります。
閉経前や閉経後は尿中のhCG濃度が上昇することがあり、検査結果で陽性を示す場合があります。
妊娠検査薬で陰性を確認したはずなのに妊娠していた、妊娠に気づかなかったケースもあります。考えられる原因を紹介します。
「早く妊娠しているか確認したい」といった理由から、妊娠検査薬に指示された時期よりも早い段階で検査をする、いわゆる「フライング検査」をした場合、陰性となる場合があります。
妊娠検査薬は、だいたいが生理予定日から1週間以上経ってからの検査を指示しています。これは検査日が早すぎると、尿中のhCGホルモンの分泌が始まっていない、少ないことが理由です。
フライングで検査してしまった場合は、1週間程度あけてもう一度検査薬を使用すると、陽性となる場合があります。
異所性妊娠の場合も妊娠検査薬の結果が陰性となることがあります。異所性妊娠の場合、妊娠初期に尿中のhCGが少ない場合があることが原因です。
双子、三つ子のような多胎妊娠の場合、尿中のhCG濃度が高くなることがあります。妊娠検査薬は尿中のhCGが高すぎても陰性となる場合があります。
尿量が多すぎる、少なすぎる場合、尿中のhCG濃度が変化することで陰性の結果が出る場合があります。
妊娠検査薬は正しく使用すると、精度は99%程度と言われています。妊娠検査薬の正しい使用方法を紹介します。
早く妊娠判定をしたいという気持ちは分かりますが、早すぎる時期の検査では尿中のhCG濃度が低く、正しい検査結果が出ない場合があります。
一般的に市販の妊娠検査薬の使用時期は生理予定日の1週間後からが多いです。指示された時期に検査をしましょう。
またフライング検査で陰性であっても、尿中のhCG濃度が低い可能性があります。フライング検査をした場合は、1週間程度あけて再度検査薬を使用してみましょう。
また現在、早期妊娠検査薬も発売されています。早期妊娠検査薬は生理予定日から使用できるもので、一般検査薬と比較して尿中のhCG濃度が低く設定されています。
どうしても早く知りたい、と思う場合は早期妊娠検査薬の使用で確認できますが、早期妊娠検査薬は値段が高めです。また早期妊娠検査薬で陽性と分かっても、赤ちゃんの胎嚢(赤ちゃんの袋)が確認できる時期はまだ先です。
また逆に妊娠検査薬を使用する時期が遅すぎても、正しい結果が出ない場合があります。妊娠検査薬に指示された時期を守って使用しましょう。
妊娠検査薬は尿量が多すぎても、少なすぎても誤った結果が出る場合があります。妊娠検査薬の指示に従って、正しい尿量を守って測定しましょう。
尿をかけてしばらくは陰性だったのに、10分以上経過すると陽性だった、などの結果が得られる場合がありますが、10分以上の放置で結果を判断することはできません。妊娠検査薬に指示された放置時間を守るようにしましょう。その他使用期限の切れた妊娠検査薬も正しい検査結果が出ない可能性があるため、使用期限も守りましょう。
妊娠検査薬は正しく使用すると、その精度は99%程度と言われています。ただし化学流産や異所性妊娠など、様々な要因で妊娠検査薬で陽性なのに生理がくるケースがあり、またその逆もあります。妊娠検査薬は指示された使用方法を守って正しく使用しましょう。
【参考文献】
①https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/toujitsu1-5.pdf
②公益社団法人日本産婦人科医会 – 1.生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方
③産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020
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