- 「夜驚症(やきょうしょう)は頭がいい証拠」と聞くけど、本当?
- 子どもが夜中に突然叫び出して、どう対処すればいいかわからない
- いつまで夜驚症の症状が続くか不安で、病院に行くべきか迷っている
子どもの夜中の叫び声やパニック状態に不安を感じていませんか?夜驚症という言葉は知っていても原因や正しい対処法がわからず、心を痛めているお父さん・お母さんも少なくありません。
この記事では、夜驚症の主な原因やなりやすい子どもの特徴、専門医に相談すべきタイミングを解説します。記事を読めば夜驚症に関する正しい知識が身に付き、子どもの突然の症状にも冷静に対応できるようになります。
夜驚症の子どもは頭がいいという科学的根拠はありません。夜驚症は主に脳の睡眠機能が未成熟で発達途上にあることが原因で起こる現象です。成長とともに子どもの脳は成熟し、睡眠パターンが安定すると自然に改善していく傾向にあります。
慌てずに安全を確保し、子どもが安心できる環境を整えることが親子で夜驚症を乗り越えるための第一歩になります。
「夜驚症の子どもは頭がいい」に根拠はない
「夜驚症の子どもは頭がいい」という説がありますが、これには医学的・科学的根拠がありません。夜驚症は脳が活発に発達する幼児期に起こりやすいことから「脳の発達=頭がいい」というイメージで生まれた俗説です。心配する親を安心させるための言い伝えとして広まったと考えられます。
夜驚症の原因3選
夜驚症は単一の原因で起こるものではなく、子どもの心身の発達や日常生活の出来事が複雑に関わり合って発症すると言われています。主な夜驚症の原因として、以下の3つの要因が挙げられます。
- 脳の発達による影響
- 日中のストレスや不安による影響
- 生活習慣や睡眠不足による影響
脳の発達による影響
夜驚症が起こる大きな原因は、子どもの脳が発達途中であることにあります。子どもは脳の働きが未熟なため、深い眠りから突然目を覚ますときに脳の切り替えがうまくできず混乱しやすくなります。
子どもは睡眠と覚醒をコントロールする機能が整っておらず、特に深いノンレム睡眠から覚醒への移行がスムーズにできない状態です。子どもの脳の未熟さが、恐怖やパニックといった夜驚症を引き起こしています。子どもの脳が成長し、睡眠のコントロールができるようになると、夜驚症の症状は自然に治まっていきます。
日中のストレスや不安による影響
日中のストレスや不安も、夜驚症が起こる原因の一つです。子どもは大人と比べて心が繊細なので、日中に経験した出来事が睡眠に影響を与えやすい傾向があります。日中に感じた興奮や不安、恐怖といった感情を子どもがうまく処理しきれなかった場合、睡眠中に夜驚症という形で現れることがあります。
子どものストレスや不安につながる可能性がある出来事は以下のとおりです。
- 環境の変化
- 人間関係のトラブル
- イベントでの緊張・興奮
- 恐怖体験
- 過度な興奮・疲れ
一見楽しい出来事でも子どもにとっては大きな刺激となり、夜驚症を引き起こす原因になる場合があります。
生活習慣や睡眠不足による影響
生活習慣の乱れや睡眠不足も夜驚症を誘発する要因になることがあります。睡眠のリズムが崩れると、深いノンレム睡眠からの覚醒がスムーズに行われず、脳の一部だけが覚醒した状態になりやすいためです。
ただし、夜驚症の主な原因は発達段階における神経系の未熟性とされており、生活習慣はあくまで誘発要因の一つと考えられています。
日常生活の中で、以下のようなことが夜驚症の原因になる可能性があります。
- 就寝時間や起床時間が毎日バラバラ
- 日中の遊び疲れやイベントによる興奮
- 寝る直前のスマートフォンやテレビの視聴
- 旅行や引っ越しによる環境の変化
- 発熱による体調不良
心身の疲れや生活リズムの変化が夜驚症につながる場合があるため、注意が必要です。
夜驚症になりやすい子どもの特徴3選
夜驚症は以下のような特徴がある子どもに起こりやすい傾向があります。
- 幼児期(3歳)から小学校低学年の子ども
- 発達障害の特性を持つ子ども
- 敏感な気質の子ども
幼児期(3歳)から小学校低学年の子ども
幼児期(3歳)から小学校低学年の子どもは夜驚症が起こりやすいとされています。睡眠と覚醒をコントロールする機能が十分に成熟していないからです。
幼稚園や小学校での新しい生活は、子どもにとってたくさんの刺激があります。日中に体験した出来事を子どもが寝ている間に脳は整理しようとしますが、うまく処理できず混乱してしまうことがあります。
心身の成長段階にある幼児期(3歳)から小学校低学年の子どもは、一時的に夜驚症が起こりやすい時期です。ほとんどの場合は成長とともに症状が自然に落ち着くため、焦らずに見守ることが大切です。
発達障害の特性を持つ子ども
発達障害の特性を持つ子どもは定型発達の子どもと比べて、夜驚症を含む睡眠障害を経験しやすい傾向があります。脳機能の発達の特性や感覚過敏、情緒のコントロールの困難さなどが子どもに影響していると考えられているからです。
音や光などの刺激に敏感だったり、普段と違う場所や出来事に不安を感じやすかったりする特性も睡眠の質に影響を与えると言われています。日中に興奮した気持ちが持続され、夜になっても落ち着かないことがある点も、発達特性のある子どもによく見られる傾向の一つです。
発達障害のある子どもには睡眠の問題が生じやすいことが知られており、入眠困難や中途覚醒などの睡眠障害が報告されています。夜驚症は発達障害に伴う不安の強さや睡眠リズムの乱れなどが原因として指摘されていますが、因果関係は解明されていません。
夜驚症は発達障害の子どもだけに起こるものではなく、睡眠不足やストレス、生活環境の変化など、さまざまな要因が関係しています。睡眠に関する困りごとがある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
敏感な気質の子ども
敏感な気質を持つ子どもは、日中に強いストレスや刺激を受けることで、夜驚症を引き起こしやすくなる可能性があります。日中の心理的ストレスや刺激が睡眠中の脳の興奮状態に影響を与えるからです。ただし、夜驚症の原因は遺伝的要因や睡眠不足なども関与するため、気質だけが唯一の原因ではありません。
敏感な気質の子どもには以下のような特徴が見られます。
- ささいなことにも敏感に反応する
- 新しい環境に強い不安を抱く
- 完璧主義なところがある
- 心配性な性格である
敏感な気質の子どもは繊細な心を持つ故に、日中に多くの刺激を受けやすい傾向があります。
夜驚症の予防法4選
子どもが突然叫び声をあげたり、暴れたりする夜驚症の発症を防ぐ方法は以下のとおりです。
- 子どもが安心できる環境を作る
- 規則正しい生活リズムを維持する
- リラックスできる時間を確保する
- 親自身もなるべく心穏やかに過ごす
子どもが安心できる環境を作る
夜驚症を防ぐには子どもが安心できる環境を作りましょう。子どもは無理に起こそうとするとかえって興奮させてしまい、夜驚症の発症につながる恐れがあります。
子どもが落ち着けるように以下の点に注意して対応しましょう。
- 無理に起こしたり、体を強く揺さぶったりしないようにする
- 静かにそばで見守る
- ベッドの周りから危険なものを取り除き、安全を確保する
- 「大丈夫だよ」などと優しく落ち着いた声で話しかける
子どもを刺激せずに安全を確保しながら優しく見守ることが、子どもを安心させるための基本です。
規則正しい生活リズムを維持する
夜驚症を予防するためには、規則正しい生活リズムを維持することが効果的です。生活リズムが乱れて睡眠が不足すると脳が十分に休めず、夜驚症が起こりやすくなるからです。
毎日決まった時間で生活すると子どもの心身は安定し、質の良い睡眠につながります。起床や就寝、お昼寝をする際も同じ時間帯となるように意識すれば、子どもの生活リズムが整いやすくなります。日中に日光浴や運動を取り入れることも夜驚症の対策には有効です。子どもの睡眠の質を高めることにつながります。
リラックスできる時間を確保する
寝る前に親子でリラックスできる時間を作ることは、子どもの良質な睡眠習慣の形成に役立ちます。心身を落ち着かせると子どもは安心して眠りにつけるようになり、睡眠の質が高まるからです。子どもが日中に受けた刺激や興奮を寝る前までにリセットすることが、穏やかな眠りにつながります。
夜驚症の予防策として以下のような方法を試してみることをおすすめします。
- ぬるめのお風呂に入る
- 絵本の読み聞かせを行う
- 静かな音楽を聴く
- 安心できるスキンシップを取る
- 楽しく会話する時間を作る
毎日の生活に取り入れると、子どもは穏やかな気持ちで眠りにつく準備ができます。夜驚症は睡眠不足やストレスが誘因となる場合があるため、規則正しい睡眠習慣を整えることは予防的なアプローチとしても有効です。
親自身もなるべく心穏やかに過ごす
子どもの夜驚症と向き合うためには、親自身が心穏やかに過ごすことが大切です。親の不安や緊張は子どもに伝わりやすいからです。
育児で完璧を目指そうとすると親の心身も疲れてしまいます。夜驚症は成長の一過程と捉え「うまくいかなくても大丈夫」と自分を許す気持ちを持ちましょう。親がリラックスしていると穏やかな雰囲気が子どもにも良い影響を与えます。一人で抱え込まずに、周りの力も借りながら自分の心の負担を軽くしていきましょう。
親自身が自分を大切にする時間を持つことは、決して悪いことではありません。自分を責めずにできることから少しずつ取り入れて、心にゆとりを持って子どもと接していきましょう。
夜驚症について医師に相談すべきタイミング4選
夜驚症は成長とともに自然に治まることが多いですが、専門医への相談が必要なケースもあります。受診を検討すべきタイミングは以下のとおりです。
- 頻繁に症状が起こる場合
- けがのリスクがある場合
- 10歳以降も続く場合
- 他の睡眠障害の可能性がある場合
頻繁に症状が起こる場合
夜驚症の症状が頻繁に起こるときは、小児科や専門の医療機関に相談することをおすすめします。夜驚症の症状が頻繁な場合、子ども本人だけでなく見守る家族の心身にも大きな負担がかかってしまうからです。
毎晩のように夜驚症の症状が出ていると、家族の日常生活にも影響を及ぼすことがあります。安心して夜を過ごすためにも専門家に相談し、アドバイスをもらうことをおすすめします。
ケガのリスクがある場合
夜驚症の症状によって子どもがケガをする危険があるときは医師へ相談しましょう。子どもは無意識のうちに危険な行動をとってしまうことがあり、大きな事故につながる恐れがあるからです。
以下のような行動が子どもに見られる場合は注意が必要です。
- 朝起きると、体に原因不明のあざやかすり傷ができている
- 部屋の中を走り回り、壁や家具に体をぶつけてしまう
- 無意識に部屋を抜け出し、ドアや窓を開けようとする
- 暴れたりパニックになったりして、自分や周りの人を傷つける可能性がある
- ベッドや階段からの転落につながるような危険な行動を取っている
けがのリスクがあるときは子どもの安全を第一に考え、早めに専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
10歳以降も続く場合
10歳を過ぎても夜驚症の症状が続く場合は、専門の医療機関へ相談することをおすすめします。夜驚症は小学校低学年までには自然に治まることがほとんどだからです。思春期にさしかかる年齢で症状が続くときは、背景にストレスや他の病気が隠れている可能性があります。
学業や友人関係など、年齢が上がるにつれて子どもの抱えるストレスは複雑になります。心の問題が夜驚症という形で現れているかもしれません。夜驚症と似た症状が出るてんかんや他の睡眠障害といった病気の可能性も考えられます。
心配な場合はかかりつけの小児科に相談しましょう。状況に応じて睡眠専門の病院や児童精神科を紹介してもらえます。
他の睡眠障害の可能性がある場合
夜驚症と似ていても、実は他の睡眠障害が隠れていることがあります。子どもの様子が夜驚症の典型的な症状と少し違うと感じる場合は医師に相談しましょう。睡眠中の異常な行動は夜驚症以外の病気のサインである可能性があります。医師から正しい診断を受けることは子どもの健やかな成長につながります。
起床後に子どもが見ていた怖い夢の内容をはっきりと話したり、眠ったまま歩き回ったりするときは、他の睡眠障害の可能性があります。大きないびきや睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気も注意すべきサインの一つです。気になる場合は自己判断せず、小児科や睡眠専門のクリニックを受診しましょう。
夜驚症への理解を深めて子どもとともに乗り越えよう
夜驚症は多くの場合、子どもの脳が発達する過程で起こる一時的な現象です。夜驚症を過度に心配する必要はありませんが、医学的には睡眠障害の一つに分類されます。安全な睡眠環境と規則正しい生活リズムを整えることが大切です。
子どもの症状が以下に該当するときは専門家に相談しましょう。
- 頻繁に症状が起こる場合
- ケガのリスクがある場合
- 10歳以降も続く場合
- 他の睡眠障害の可能性がある場合
親は焦らず穏やかな気持ちで子どもを見守り、一緒に夜驚症を乗り越えていくことが大切です。