2025.11.06
妊娠

妊婦さんのなかには、妊婦健診で体重管理について指摘された人もいるのではないしょうか。妊娠中は赤ちゃんのために栄養摂取を心がけている一方で、体重を増やしすぎないことも大切です。
この記事では妊娠中の体重管理を始める時期、妊婦さんの体格ごとの体重増加の目安、スムーズに体重管理するためのポイントについて解説します。妊娠中の体重管理について詳しく知りたい妊婦さんは、参考にしてみてください。

妊娠中の栄養摂取は、赤ちゃんのすこやかな成長や発達に欠かせないものです。一方で、妊娠中はふだんより食欲が増えやすいため、日頃から気を付けていないと、過剰な体重増加を招くことになります。
妊婦さんの体重が増えすぎると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの病気を発症するリスクが高まります。また赤ちゃんが大きくなりすぎたり、産道に脂肪がついたりすることで、お産が難産になるリスクが高くなります。
妊娠期間中に妊婦さんが体重を増やさないことも、母子の健康によくありません。やせている妊婦さんは、貧血になって疲れやすくなったり、赤ちゃんが標準よりも小さく生まれる原因になるためです。
妊娠中は適切な体重管理を行い、妊婦さんが太りすぎず、痩せすぎないことが大切なのです。
妊娠中の体重管理は、妊娠初期から始めるようにしましょう。大半の妊婦さんは妊娠初期に、体重管理を始めることが多いようです。
とくに、つわりが落ち着いてくる妊娠13~15週以降は、妊婦さんの食欲が増えて、少しずつ体重増加がみられるようになります。母子の健康や安全な出産のために、妊婦さんが体重管理をするのであれば、妊娠13~15週頃から取り組むのがおすすめです。
妊娠中は赤ちゃんや胎盤、循環血液量の増加により、妊娠前より7~8kgほど増えるものです。また出産後は授乳や赤ちゃんの世話で体力を使うため、プラス2kgほど、合計10kgほど体重増加するのが望ましいといわれています。
実際の妊娠中の体重増加の目安は、妊娠前の体格によっても異なります。以降で詳しくみていきましょう。
妊娠前の妊婦さんの体格は「BMI:Body Mass Index」によって知ることができます。BMIの計算方法は、「身長(m)÷体重(kg)÷体重(kg)」で計算することができます。妊娠前の体格別の妊娠中の体重増加の目安は次のとおりです。
| 妊娠前の妊婦さんの体格(BMI) | 体重増加の目安 |
|---|---|
| やせ(18.5未満) | 12~15kg |
| 標準(18.5以上25未満) | 10~13kg |
| 太り気味(25以上30未満) | 7~10kg |
| 肥満(30以上) | 個別対応(上限5kgが目安) |
上記のように、妊娠前の体重が多めの妊婦さんは、体重増加の程度を抑える必要があり、体重管理も厳しめになります。一方、やせの妊婦さんは妊娠で増加する体重にプラスして脂肪を付ける必要があります。
妊婦さんの体重増加は、時期によっても体重増加の程度が異なり、期間中に一様に増やすものではありません。一般に妊娠初期にあたる妊娠13~15週頃は、おなかの赤ちゃんがまだ小さく、胎盤も完成していないため、体重増加はないか、あっても2kgほどにとどまります。
妊娠13~15週以降になると、つわりが治まってくる妊婦さんも多くなり、食欲がアップして体重増加がみられるようになります。それ以降の体重増加は、赤ちゃんの成長にともない出産直前まで続きます。
妊娠中の体重管理のために、妊娠中期から妊娠後期にかけて、1週間あたりの体重増加を次の範囲内にとどめるとよいでしょう。
| 妊娠前の体格(BMI) | 1週間当たりの体重増加の目安 |
|---|---|
| やせ(18.5未満) | 0.3~0.5kg/週 |
| 標準(18.5以上25.0未満) | |
| 肥満気味または肥満(25.0以上) | 個別対応 |

妊娠中の体重管理の基本となるのが食事です。妊婦さんが適正範囲内で体重を増やすために、栄養バランスのよい食事を心がけるようにしましょう。
妊娠中に必要な摂取カロリーは、妊婦さんの体格や妊娠期によっても異なるものの、一般的には摂取カロリーを増やす必要があります。妊娠の時期別の追加すべきカロリーは次のとおりです。
| 妊娠の時期 | 追加カロリー | 食品例 |
|---|---|---|
| 妊娠初期 (妊娠15週まで) | +50kcal | 妊娠前とほぼ同じ |
| 妊娠中期 (妊娠16週〜27週) | +250kcal | 冷奴1皿、サラダ1皿、果物1個 |
| 妊娠後期 (妊娠28週〜40週) | +450kcal | おにぎり1個、冷奴1皿、サラダ1皿、果物1個、チーズ1個 |
上記のように、妊娠週数が進むにつれて、妊婦さんの摂取カロリーも増やさなければなりません。ただカロリーを取るだけでなく、主食や副菜などを追加して、栄養バランスにも配慮しましょう。以降では、具体的な食事のコツについてみていきます。
妊娠中は体重管理が必要ですが、欠食するのではなく、1日3食の食事をしっかり取ることが大切です。体重が増えすぎたからといって、食事を抜くと、次の食事の血糖値が急上昇し、かえって体脂肪をためこみやすくなります。
体重管理を行うには、摂取カロリーを気にするだけでなく、栄養バランスに配慮しましょう。1回1回の食事で、「主食・主菜・副菜」を食べるようにすると、自然と栄養バランスを整えられます。
| 区分 | 栄養素 | 食品例 |
|---|---|---|
| 主食 | 炭水化物 | ごはん・パン・麺類・芋類 |
| 主菜 | タンパク質 | 肉・魚・卵・乳製品・大豆製品 |
| 副菜 | ビタミン・ミネラル | 野菜・果物・きのこ類・海藻類 |
外食が続くときも、丼ぶりものではなく、定食を選んだり、副菜を1品追加したりすることで、栄養バランスを整えられます。

妊婦さんの体重管理には、適度な運動を取り入れるのもおすすめです。運動で消費できるカロリーは少ないものの、体脂肪が燃えやすくなり、ストレス発散にも効果があります。
妊娠中はウォーキングやストレッチなど、体に負担のかからない運動を取り入れましょう。激しい運動はお腹を打ったり、転倒したりする危険があるので避けましょう。また体調が悪い時は、無理せず休息を取ることも大切です。

妊婦さんが適切に体重を増やすには、ストレス管理も大切です。ストレスと食欲は密接な関わりがあるためです。
またストレスと食行動については、「ストレスで食べすぎてしまう人」と「ストレスで食べられなくなってしまう人」に分けられます。個人差があるものの、交通事故や親しい人の死別といった急性ストレスでは、食欲が減退する傾向があります。
一方、仕事や人間関係の問題のように、慢性的にストレスを受けているもとでは、食欲が増進し、食事量が増える傾向があります。
また、日常的に感じる小さなストレスに対して、甘い物や脂肪分の多いジャンクフードを慰めのために食べ物を取る人もいるでしょう。感情的な食行動は、脳内の報酬感薄れるため、さらに食べ物を欲するようになります。
このように、食欲や食行動はストレスとも密接な関わりがあります。妊娠中も気分転換活動やストレス発散に努め、食欲をコントロールしやすい状態にしましょう。
妊娠中の体重管理は、母子の健康を守り、安全な出産を迎えるために欠かせません。一般的に、つわりが落ち着くと妊婦さんの体重は少しずつ増加していきます。適正な体重増加の範囲は、妊娠前の体格によって異なります。記事内で紹介した内容を参考に、無理のない範囲で適切な体重管理を心がけましょう。
参考:
妊娠中の体重管理と食欲について(栄養課より)
妊娠中の体重増加指導の目安
妊娠中の体重管理
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